「それを強いられてるんだけどな」
普通科 ガレージ
宮島技術士
戦闘各科に存在する、兵器がひしめくガレージ。
この駐屯地でそれらは変な隠語で呼ばれている。
『技術屋の巣窟』『変態修理屋の巣』『機械中毒患者の隔離病棟』…
そんな場所にいる俺、宮島直孝(みやじまなおたか)もその技術屋の変態とやらの一人なのだろう。
そして俺の前に山のように積まれたホーク対空ミサイル。
旧式化、使用期限切れ、メンテナンス不足と様々な理由でこの駐屯地に流れ着いたものだ。
隣を見れば
役に立たない旧式装備と呼ぶ者も居るだろうが、ここではまだ現役だ。
…この駐屯地が倉庫みたいに使われた弊害でそうせざるを得ないという方が正しいか。
新型の装備や兵器もあるのだが、全部隊に行き渡る数がなくだいたい半分ぐらいを旧式兵器で賄わなければならない。
そう、俺達はこれらの型落ちを使わされているのだ。
もうおっさんかおじいさんの粋に入った兵器、使い続けていれば当然ぶっ壊れる。
訓練のあとには不具合の1つ2つ平気で起こる。兵器だけにな。
…失礼、とにかくこいつらを扱うのは大変だ。
それでも根気強く相手をし続ければ応えてくれる。
俺の腕が。
「アメリカさんのお古だ、大切にしなきゃな」
俺はM41のメンテナンスを再開する。
まさかこいつも、こんな異世界で第二の人生を送るとは思っていなかっただろうな。
故障するたびに腕を振るい、技術を吸収して次に活かす。
そんなことを何度も何度も重ねているうちに俺はこいつを含め陸上兵器のことならだいたいわかるようになってしまった。
オーバーホールでさえたいてい一日で終わる。
そういう経緯もあって、この駐屯地には特定の兵器や技術に成通した隊員がたくさんいる。
特殊な環境で腕が磨かれてなんとも皮肉なもんだが、そのおかげでこんな状況でもやりくりできている。
今運ばれていったボフォースは確かジャギィの襲撃の際に砲身が裂けたもの。
それが見る影もなく…完璧に修理されている。
丁寧に溶接と研磨と補強が施された砲身はまるで新品のようだ。
俺が直したんだけどね。
シャッターの向こうでは1人の隊員がミサイルとにらめっこしている。
彼は俺が車両でそうやっていたように着任してからずっとミサイルの整備に携わってその方面の技術をかなり吸収、昇華させている。
彼が倉庫で腐っていた対空ミサイルを軒並み再プログラミングして使い物にしてしまい、防空網強化に二役くらい買っていたのは記憶に新しい。
この前は半導体とエンジンが作れたら新たにミサイルが作れるのにとぼやいていた。
彼の場合あながち冗談じゃないかもと思えるのが凄い。
俺もそういうふうに言われたい…というわけではないが今日も明日もメンテナンスを頑張る。
旧式兵器の言うことをきかせ続けて、時には他の基地の隊員に変な目で見られながらも身につけたこの技術が今役に立つなら存分に振るいたい。
他の科にも同じように技術の矛でこの駐屯地を支えようと頑張っている仲間がいると思えばなおさら。
俺が、俺達たちがいる限りこの駐屯地は安泰だ、そう胸を張って言える状態にしたい。
まだ言うには俺も"直し足りない"ようだ。
明後日も、明々後日も、その次の日も。
俺は直し続ける。
裏方も戦ってます。