「あんたはタマあるでしょ!ほらサボるな!」
「はひぃ!」
武器科 倉庫
三壁一等陸士
ガチャッ
カチッ
流石にこの音は聞き飽きた。
俺、三壁 八破(みかべ やつは)はつりそうな手と脇に置かれた果てしない数の
レバーを操作し薬莢に弾体を詰めていく単純作業。
しかし繰り返しているとものすごく疲れる作業。
だがこれは非常に、非常に大切な作業である。
…実家は職人だったが、こんな作業が職人技になっても喜ばれはしないだろう。
現在俺が作っているのは銃弾。
銃に込めて発射する弾、銃弾。
それは銃を銃たらしめる重要な構成要素。
これがなければどんなに高名な銃であろうとただの筒同然だ。
「たまに撃つ、弾がないのが玉に傷…はぁ」
よく言われる自衛隊の予算ネタだが、この状況ではもはやそれを笑うことはできない。
倉庫に眠っていた手動ローダーを持ち出して回収した薬莢に弾を詰め直す作業なんかやってる時点でもうアレだ。
それも薬莢はともかく炸薬と弾体については予備のものを使っているためにいつかこの作業には終わりが来る。
来てしまう。
それは即ち弾薬補給の断絶を意味する。
補給ナシで戦い続けることができる軍隊はいない。
とくに自分たちは普段から
初期のランポス襲撃では400発程度、最近の散発的な戦闘では一回につき約600発、あのジャギィの大規模侵攻では約1万発も消費した。
正直とても痛い。
一日の生産量は頑張っても数百発、大型砲弾に至っては作れていない。
残り弾薬の正確な数は武器科の俺たちでさえ正確に把握していない…否、できないようになっている。
大体の数さえも一般の隊員には非公開だ。
このほか一番の不安要素であるライフライン関連の事情には情報規制が課されており…遠回しにそれらが危篤状態であることを示している。
そんな状況だからますます手を止めるわけにはいかないのだ…
「でも…」
手元にあった弾体を入れていた箱がカラになった。
まだ予備はたくさんあるのでそれを引っ張り出して開封する。
すると当然、予備は一つ減った。
そう、これは根本解決ではない。
あくまでも先送りの延命措置に過ぎない。
この予備資材が切れたとき、今度こそ終わりだ。
この任を命じた幹部も本部もそれはきっとわかっている。
「作らないと」
予備資材から弾薬を、ではない。
弾薬そのものを新たに作らなければならない。
そうしなければいずれ干上がる。
幸いなことに知識はある。
自分だって伊達に武器科に居たわけではない。
倉庫として使われていた弊害…今となっては幸運で旋盤やプレス機などの機材はそろっている。
加工技術も持ち合わせているし、仲間の中にはそのプロもいる。
しかし、材料がない。
一番大事な材料がない。
画竜点睛を欠くどころかその竜の絵を描く紙すらない、といったところ。
本当にダメだ。どうするんだ。
ブロロ…
疲れた手を言い訳にして外から聞こえたエンジン音に耳を傾ける。
これは施設課の連中か。
確か、彼らは…
木炭高炉と反射炉の建設を計画していた。
「作らないと」
俺の中で何かに火が付いた。
材料、大事。