「歴史に残る損失だよ」
日本国 某所
ある日突然、一か所の駐屯地が日本の地図から消えた。
突然の通信の途絶を受けて衛星写真を確認すればそこにあるはずのものはもう存在しなかった。
その実情を見た者は「空間から切り取られたよう」と。
またある者は「型で抜いたよう」と表現した。
駐屯地と分屯地が丸々切り抜かれたかのように長方形の更地が連なる絵面は奇怪としか言えないだろう。
切り抜かれたそれらがどこに行ってしまったのかは研究者にも幕僚にも総理大臣にもわからない。
整備拠点のような役割も担っていたそれの消失は隊内でも大きな騒動になり、彼らの記憶には新しい演習艦隊行方不明の話と合わさって様々な憶測も飛び始める。
「何かの実験が失敗した」「隣の国の空間兵器」「土地ごと神隠し」「偶然が重なって量子テレポートした」…エトセトラ。
さらにどこかから情報が洩れ、演習艦隊の件とともに駐屯地消滅が報道されてしまいそれはもう大変なことに。
不可解すぎる出来事に国民は興味を持ちつつも混乱し、理解外の事への不安を募らせる。
メディアは連日この件についての報道を続け、国民の感情を煽る。
各政党はここぞとばかりに議論や追求を繰り返す。
説明責任を問われた首相の眉間のしわは増えた。
憶測も過熱していき、しまいには「ここもいきなり消えるかもしれない」「日本が消えるかもしれない」「地球終焉の前兆」とよからぬ方向へ。
このあまりにも不測すぎる事態には誰も対応できず、この調子が半年は続くことになる。
そんな騒動の裏でも駐屯地跡地については逐次調査が行われる予定、だった。
その決定には日本の議会の悪いところが出てだいぶ時間がかかってしまっている。
当然時間は待ってはくれず、その間にも様々なことが起こっていった。
駐屯地跡地の近隣住民からまずは「恐竜を見た」「緑の鹿を見た」等の謎の報告が上がり、続いて「家畜が襲われた」「野良猫が殺されている」という物騒な被害報告へと変わっていく。
単なる事件事故で片付けられないような事態も起こり始め、その類の目撃情報も増える一方。
そんな中、『戦う熊』というタイトルでSNSに投稿された一本の動画。
その内容はヒグマに襲い掛かる2匹の…『恐竜のような生き物』。
それは保護色とは程遠いどぎつい水色と赤いトサカを持った恐竜のような何か。
それ以外の表現もしくは固有名詞をこの世界の人間は知らない。
ヒグマは首筋に噛みつかれて鮮血を吹き出しながらも、強烈なタックルと前足の振り下ろしで恐竜もどきに相打ちでなんとか勝利。
その迫力ある映像は当初フェイクを疑われたが映像鑑定で本物とわかると大きな注目を集めることになり…
ついにその被害が人にまで及び、恐怖も集めることになった。
家屋に浸入した恐竜のような生物によって一家が惨殺された事件は驚きをもって報じられ、平和に浸かっていた国民の恐怖心をおおいに煽った。
熊やマムシとはわけが違う明確な危険生物の発生に平穏でいられる者などおらず…『力』が求められた。
もちろん自衛隊である。
自衛隊は(こちらの世界では)初の防衛出動を決行、同時に駐屯地跡地の調査を繰り上げで行い巻き返しを図ろうとする。
しかし駐屯地周辺の環境をめちゃくちゃに破壊した異物の存在が自衛隊の足並みを狂わせる。
なんと駐屯地跡地は彼らの巣に変貌、いや、
地面の少し盛り上がったところに巣穴があり、多数の入り口を持つそれはまるで要塞であったと対応に当たった隊員は語った。
衛星写真に写らない脅威に足をすくわれかけた自衛隊だったが、
苦戦はしても敗北はなく制圧任務は完遂されたが、すでに危険生物は散り散りに広がっており初動の遅れのつけは日本の山中に残り続けることになってしまった。
その後の調査で日本の植生とは全く異なる未知の植物や小動物、虫、魚が発見されるとある説が唱えられるようになる。
それはあまりにも非現実的で荒唐無稽、しかしそうだとすればほとんどの出来事に説明がつく
『駐屯地は転移した』
後日発表された公式見解の全文である。
当然マスコミは騒ぎ、議会は荒れ、首相のしわは増えたがもはやこの先はまた別に語られるべき話だ。
『土地や物がどこか他の場所に転移したならばもともと転移先にあったものはどうなるのか?今我々が対峙している状況こそがその答えではないだろうか』
調査日報より抜粋
イキテマス
エタったりはしません…
タイトル変更いたしました