「お近づきになりたくないね、こりゃ」
「俺らの実力じゃまず巨塔に近づけねぇだろ」
「悲しいこと言うなよ」
1話 銀の翼
大森林 オッカの里
チャコ
「ふー、疲れた」
里のパトロールを終えた僕は相棒のランポス、バリーから降りる。
これも外の人から見れば不思議なことなのかな?
ハンターが狩り人なら僕たちは乗り人、ライダーだ。
モンスターの力を借りながら共に暮らしている。
里には僕を含めて60人くらいが暮らしている。
だいたいその半分が里を守るためのライダーになって、武器の訓練とお供のモンスターをつける。
父さんにまだ早いって言われて行ったことはないけど、遠くにはたくさんの人が暮らす街があるらしい。
里とは比べ物にならないくらい広くて、ものすごくたくさん人がいて…モンスターはいないんだって。
早く大人になって、行ってみたい!
バリーが僕に頭を近づける。
これは撫でてほしいときのサインだ。
トサカを優しくさすってやるとバリーは気持ち良さそうに目を閉じた。
僕が初めて絆を結んだモンスター。
ずっと大事に育ててあげたい。
いつかきっと、父さんを超えるライダーになってみせる。
厩舎から出た僕は里の外れにある家に向かった。
「チャコ!おかえり!」
「ただいま母さん!」
「さっき父さんが帰ってきたわよ」
「ほんと!?」
父さんのモンスターはリオレウスのリディ、ずっと一緒のパートナーだって聞いた。
人を乗せて空を飛べるモンスターを扱うライダーは遠くまで偵察をしに行くことが多く、父さんもリディに乗って毎日見回りに行っている。
今日も見つけたものについていろいろ聞きたいな。
そんなことを考えながら家に入ろうとしたとき、鐘の音がなった。
里の人みんなを集める緊急招集だ。
何があったのだろう?
母さんと一緒に里の中心の広場に向かうと、すでに里のライダーたちが何人か集まって話している。
「これはまずいぞ」
「この里の位置はまだバレていないんだな」
何かを話すライダーたちの顔はみんな真剣だ。
その中には父さんの姿もあった。
元気のない表情で腕を組み、周りのライダーたちの質問に答えている。
「父さん!何があったの?」
「チャコか…実はな」
「あっ長老さま!」
「すまん、この話はあとだ」
父さんが何かを言いかけたところで長老さまがやってきた。
長老さまは立派な白いひげをたくさん蓄えていて、いつ見ても貫禄があってかっこいい。
若い頃はすごいライダーだったらしいけど…
みんな長老さまの方に向き直ったところで父さんが長老さまの隣へ歩いていく。
父さんがなにか知っているんだろうか?
段の上に立った2人は顔を見合わせて、まずは長老さまが話し始めた。
「皆に集まってもらったのは…遠くない場所に人の住む町が作られていた事だ」
「ハンターの大規模キャンプか?」
「長老さまは『町』って…」
「それくらいでみんなを集めるかよ」
「生きづらくなるな…」
と、長老さまがかるく手を上げてざわめきを止める。
話はこれだけじゃないみたいだ。
「問題はその町の場所が…ランポスの巣のあった場所なのだ」
さっきよりも大きなざわめきが広がった。
モンスターの巣を潰してそこに住むなんて信じられないことだ。
それにこのあたりのランポスの巣を僕らは一箇所しか知らない。
相棒のバリーと出会った場所でもあった。
それが潰れて町になっているなんて…
「詳しくはラダンが話してくれるだろう」
父さんの名前が出たことで、みんなの視線が集まる。
父さんは少し照れくさそうにしながら、それでも真剣な顔で話し始めた。
「あれは遠距離偵察を終えて、帰路につくところだった」
「ランポスの巣がある方角に塔のようなものが見えたので偵察に向かったのだが…そこであれを見たんだ」
細い塔の根本は森が切り開かれ、大きな建造物が立ち並び町と言えるような人里が形成されていた。
近くにもう1箇所同じような町があり、それらは道で繋がっているようだった。
もっとよく見ようと近づいたが、バリスタのようなものがこちらを向いていることに気がついて軌道を逸らして逃げた。
しかしずっと見られている、追いかけられているような違和感が消えずかなり遠回りして帰ってきた。
「…ちなみに、そこにランポスの姿はなかった」
「そんなことが…」
しばらくはみんな何も言えなかった。
僕も突然すぎることにどうしていいかわからない。
「ハンターだろうな…我々と彼らとでは考え方が違う」
ベテランライダーのひとりが不機嫌そうにつぶやく。
ハンターたちは何度かこの村に来たことがある。
でも僕は直接会ったことはなく、話の中でしか知らない。
「しかしハンターたちもむやみな殺生はしないはずだ。人の生活圏から離れた巣を潰して町を作るなんてことは特にな」
「ハンターでないとしたら何なんだ?」
「それが分かっていればまず議論せんぞ」
長老さまが収拾がつかなくなってきた場を咳払いで鎮め、総括を始めた。
「この事については探らねばならない、自信のあるライダーは名乗りをあげよ」
ベテランライダーのみんなと父さんが立候補する。
自信の有無なら僕もいいはずだ。
と思ったら父さんに止められた。
「チャコ、お前はだめだ」
「なんで!?」
「危険な任務になるかもしれないから新米のお前では…待て、この音はなんだ?」
ゴオオオォ…というような、今まで聞いたことのない音がする。
木々のざわめきが大きくなり、空気の振動が激しくなる。
みんなが慌てる中で、僕は空を見上げた。
そこにはモンスターが飛び立つために切り開かれた、森に空いた穴がある。
そこから差し込む光の中に、銀の輝きを見た。
「!!!!」
キィィィィィィィィン!
一瞬の事だった。
空気を押し退け切り裂く音とともに現れて去っていったそれ。
太陽の光を受けて輝く銀の翼を広げた美しい龍。
「銀翼の龍…伝承の…まさか…」
それが僕らに何をもたらすのかはわからないけれど、きっと素敵なことだと思う。
2章スタート
聞かれてないけど好きなモンスターはジンオウガです。
アオーン!