自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「そんでさ、その巨船が…」

「その話詳しく聞かせてもらおうか」

「ぎ、ギルドナイツ!?」


5話 タマゴが先

駐屯地 普通科寮

佐島一等陸士

 

 

「なぁ起きろ!」

 

現在の時刻は夜の11時。

寝ていたところを随分慌てた様子の部屋違いの同僚に叩き起こされた。

こいつは確かIOTVマンこと武と同部屋の隊員だ。

戦闘で疲れて気持ちよく眠っていた俺は不機嫌になりつつも体を起こす。

何かよほど大変なことが起こったのか。

しかしその割には寮内は静かだ。

 

「何だよもう…騒ぐと上官にシバかれるじゃないか」

 

武の同僚は寝ぼけた目をこする俺の手を掴んで寮室の外へと引きずり出した。

 

「IOTVの野郎がやらかしたんだよ!」

 

「武が…?」

 

手を引かれるまま向かった先はIOTVマンの寮室。

なにか騒ぎをむりやり押し殺したような雰囲気が漂っている。

それとかすかに何かの声が…これは鳴き声?

 

アウ!アウアウ!

 

「静かにッ…おうっ!?」

 

続いて聞こえる武の声。何かに襲われている?

そしてこの鳴き声には聞き覚えがあるというか、午前中の作戦で聞いたものの延長線上というか…

盛大に嫌な予感を蓄えつつドアノブに手をかけ、扉を開放する。

 

そこにあったのは…

 

小さなジャギィに馬乗りにされる武の姿だった。

 

「…ッ!?」

 

俺はすぐさまそのへんにあったモップを掴んで武ごとそいつをぶっ叩こうとした。

その攻撃は武本人によって制止されチビジャギィに届くことはなかったが、かばった武を叩いたところから変な音がした。

 

「いっでぇ…」

 

アウアウ!?アオッ!

 

それを見たチビジャギィが俺に飛びかかろうとする。

が、武の同僚に首根っこを掴まれたそいつは空中でジタバタするだけにとどまった。

 

「佐島、説明させてくれ…」

 

武がさっき俺にぶたれたところをさすりながら立ち上がる。

こっちはもとよりそのつもりだ。

 

「お前…タマゴ孵したのか?」

 

部屋の状況を見ればこれがどういう状況なのか大体わかる。

ずれたカーテン、めちゃくちゃになった布団。

そして部屋の一角に散らばった赤い斑点のある欠片。

これは昼間に武が抱えていた卵のものと一致する。

そして何より…

 

アオッ!アオオオオオッ!

 

小さいながらもいっちょ前にこちらを威嚇しているこのチビジャギィ。

どうすんだよこれ。

 

「卵は化学科に預けたんじゃなかったのか?」

 

「部屋に置いてみたらなんかいい感じだったから1日だけ家具として置いとくことにしたんだよ…そしたら…」

 

「お前さぁ…」

 

アオーッ!

 

と、チビジャギィが同僚の腕を抜け出して俺に飛びついてきた。

まだ歯のない顎で俺の太ももにかじりつく。

痛くはな…いや、痛い。噛む力が強い。

本当にこんなのどうするつもりだ。

昼間俺たちが殺しまくったジャギィのチビだぞ?

 

「そこでなんか俺、そいつに親だと思われてるらしくて」

 

「刷り込みってやつか?」

 

「そいつが最初に見たのが俺だったらしいんだよ」

 

「じゃあお前が育てるのかよ」

 

それで親(刷り込み)に危害を加えた俺に怒ってるのかこいつは。律儀だな…

最初に武を襲っているように見えたのはじゃれていたのか?

俺はチビジャギィを太ももにぶら下げたまま考えを巡らせる。

 

「どのみち報告しなきゃならないぞ」

 

「でも…なんつーか、そいつ可愛くてさ…今からぶん殴って殺せとか言われたらできねぇんだよ俺」

 

「じゃあ俺がやろうか?」

 

「やめてくれ」

 

「冗談だっての」

 

どうしたものか。マジで。

武と俺の会話で仲間内の雰囲気を感じ取ったのか、チビジャギィは俺を噛むのをやめて匂いを嗅いでいる。

それが済むと頭を足首に擦り寄せたり周りを走り回ったりしてはしゃぎ始めた。

防衛戦や掃討戦でぶっ殺しまくった後だというのに、不覚にもこう思ってしまった。

何こいつかわいい。

武も同じような気持ちか。なるほど。

隠して卵を自室に持ち込んだりしたのを許す気はないが少し同情した。

動物の幼体というのは可愛いものだ。イヌもネコもゾウもキリンもライオンも、人間も。

ちっちゃいときはみんなかわいい。

誰の言葉かは忘れたが、生まれちまったものはしょうがないな。本当に。

 

 

ドアの向こう、廊下の方からドテドテと足音が聞こえる。

聞き慣れた人にとっては嫌な音。

しかしまさかこの音を聞いてこれほどありがたいと思う日が来るとは…

 

「お前らァ!消灯後に何やってるッ!」

 

ドカン、ともはや爆音に等しい音とともに開かれた寮室のドア。

その先にいたのは舎監の普通科幹部。

 

アオーッ!?

 

「はぁ?」

 

俺たちの状況を見た幹部の顔はしばらく忘れられなさそうだ。

いい意味でも悪い意味でも…




繋ぎ回になっちゃった…

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