「襲われるよりはマシだい」
駐屯地 普通科寮棟前
佐島一等陸士
「イチ、ニ!」
「もっと声出せ!」
普通科隊員たちが汗を流す。
どこまで行っても基礎体力訓練は欠かせないのだ。
しかし、その列に俺はいない。
仲間たちが必死に走っている姿が窓に映るなか、俺は寮の廊下の掃き掃除をしている。
「ハァ…」
ホウキで廊下のホコリを集めて山にする。
ホコリの活火山はどんどん成長し、富士山のようになった。
キィィ!
次の瞬間その富士山は爆発した。
凶悪な怪獣、チビジャギィの手によって…
ホコリを吸ってむせるチビジャギィ。
まぁ自業自得だが俺のこの状況は自業自得じゃない。
だいたいこいつとあのIOTV野郎のせいだ。
面倒起こしやがって。
…あれももう先週のことになるのか。
バッチリ現場を見てくれた舎監はその旨を幹部に報告、その幹部が来るまでみっっっっちりとにこやかな"お話"をされた。
正直どうすればいいのかわからなかった俺にはその状況すらも嬉しく話の内容はよく覚えていない。
その後幹部がやってきて俺達は絞られ、チビジャギィは化学科に納品されモルモット…とはならなかった。
この話はかなりの速度で広まり、俺たちがありがたいお話を受けている間に会議が開かれていたらしい。
普通科、武器科、施設科幹部の『殺処分すべき』という意見と化学科、衛生科、情報科幹部の『研究用にすべき』という意見、空自、機甲科幹部とアイルーたちの『活用すべき』という意見が三つ巴の大衝突を起こしたそうだが俺は悪くない。
結局普通科と施設科が『研究用にすべき』、武器科が『活用すべき』という意見に流れて落ち着いたという。
重ねるけど俺は悪くないからな。
「おい、こっちの掃除は終わったぞ」
そっちはまだ?といった感じに進捗報告する男、武ことIOTV野郎。
この状況その他を招いたのお前だろうが。
イラッと来た俺は奴を締め落とした。
「うおぉ…ギブギブ!やめろって!」
そんな俺達の様子を楽しそうに見守るチビジャギィ。
こいつが俺たちの手元に残されたということはつまり許された…んなら良かったんだけどね。
幹部たちの意見を総合して下された判断はこのチビジャギィの飼育。
刷り込みによって俺らを親と認識したこいつは少なくとも人を見るなり噛み付いて来たりはしないので飼育すれば生態調査等が捗るということだ。
そしてその全権は…俺たちに任された。否、押し付けられた。
こいつの飼育任務自体が俺らに課された罰則なのだ。
全寮の掃除と保守管理1ヵ月+雑用というオモテの罰則もあるが、普段からやってきたことの延長であるそれは全く苦にならない。
だが生き物の世話となると話は変わる。
赤ん坊の恐竜もどきの世話など並のものではない。
毎日ご飯とトイレの世話をしてバイタルチェックと生態調査のために衛生科に連れていき、連れ回して人に触れされ慣れさせる、と俺としては普通の訓練より疲れる。
加えて危険が発生したときに備えて常に射殺できる装備を持ち、半分監視のように気を張らなければならない。
そして何よりも。
「なんで俺が全部やってるんだよ!」
武がチビジャギィの世話をろくにやらない。
なのに一番チビジャギィに懐かれてる。
刷り込みもあるだろうが、多分あれだな。犬が普段世話するお母さんじゃなくてお父さんの方に懐くやつ。
いざやられると悲しいわ。
チビジャギィを武に抑えてもらい、俺は舞い上がったホコリを回収する。
ゴミ袋にホコリ名山の残骸を押し込んで掃除は終わった。
しかしまだめんどくさい仕事が残っている。
「健康診断の時間には早いな」
「あちらさんもどうせ暇してるだろうし早く行こうぜ」
「お前のせいで俺は暇じゃないけどな」
「ほんと悪かったって」
「思ってねぇだろ」
軽口を叩きながら衛生科へ向かう俺達。
武に抱えられたチビジャギィは嬉しそうに尻尾を振っている。
まったく…なんで生まれちゃったかな…
テストに挑んだところモチベが対消滅してだいぶ間が開いてしまいました…
サブ小説の方も更新せねば…