「古龍の仕業か、あるいは…」
駐屯地 化学科実験室
二村仁3等陸曹
私、二村仁(にむらひとし)は目の前のちっこい恐竜ぽい生き物を見る。
これがジャギィの幼体というものか。
その後ろでソワソワしている2人はこのジャギィ幼体がここに来る原因となった普通科の隊員たち。
掃討作戦中に見つけたジャギィの卵をあろうことか持ち帰り、自室で孵してしまったというだいぶアホなことをやらかした当事者である。
彼らに課された寮の総合管理1ヶ月という罰則はちょっと軽すぎる気もするが、ジャギィの飼育も任されていると聞いて納得した。
なかなか大変だろうがまぁ頑張ってくれとしか言えない。
すまんな。私にもこちらの仕事があるのだ。
その当事者の片割れ、隊員佐島一等陸士にジャギィ幼体が暴れないよう抑えてもらい心電図を取る。
…ふむ。
昨日の血液検査の結果からもわかるが、やはりモンスターは強い生き物だ。
生まれてすぐすべての身体機能が揃っており、免疫も生後一日で外を駆け回っても病気にならない程度には強い、成長も非常に早く生後一週間だというのに体重が数倍になっている。
このペースで行けば彼らの罰則が終わる頃には基地を襲撃したジャギィたちの図体と同じくらいになるだろう。
なるほど、上司の考えも理解できる。
飼育の理由は研究だけではなく、『活用』すなわち戦力化も視野に入っている。
幹部たちからそんな話が出たのはやはり先々週に領空侵犯したドラゴン乗りの事もあるだろう。
既知のモンスターはいずれもスピードパワーともに兵器に及ぶものではないが、燃料量産の目処がまだ立っていない今は森から豊富に取れる食料で回せるモンスターの力を借りることも視野に入っている。
このジャギィはその試験段階ということだ。
アイルーたちから得た情報ではこの世界の人間は草食モンスターを荷運びに使っているらしく、もとの世界基準では牛や馬を使うのと同じようなものか。
とはいえ部隊編成にモンスターをねじ込むのは少し無理があるため実用化しても燃料が量産できるまでの繋ぎ程度になるだろう。
それでも、この世界で生き残るためには何でも使っていかなければならない。
そんな様々な思惑のことなど知らずにジャギィ幼体は尻尾を振って愛想を振りまいている。
アイルーたちはジャギィやランポスのような生物をモンスター、鳥やシカ(ケルビと言うらしいが自衛隊内愛称はシカ)などの温厚な小型生物を獣または環境生物と区別しているが私からすればみな動物。
人間もヒト科の動物である。
そしてこいつもモンスターである以前に一匹の動物。
怪我をすれば痛がり血を流して死ぬ。
親と触れ合えばじゃれついて喜ぶ。
食物を与えればうまそうに食べる。
我々と何ら変わらない。
だからといって彼らに黙って食われるのは違う。
生き残って次世代を残すのが生物ならば我々が抵抗するのは生物学的に正しい。
今までそうしていたように、『こちら側』と『あちら側』の区別、線引きをして受け入れるものと排除するものを決めて生きていけばいい。
何より我々は自らを守る軍隊、自衛隊だ。その権利と力がある。
…前線に立って戦ったわけではない私が言うのは傲慢だろうか。
しかし、戦力化となるとやはり…乗るのだろうか。
それなら刷り込み親の野川二等陸士が適任だろうが、絵面がなかなか想像しにくい。
ん、確か彼の名前は武だったな。
武士…なるほど。悪くない。
そんな想像をして無意識にニヤける私を見る二人の視線がちょっと痛い。
変な想像をしたのは謝るが種をまいたのは君らだぞ。
健康診断と言う名のデータ取りは無事終わり、隊員たちは興奮した様子のジャギィ幼体を伴って出ていった。
急に静かになった実験室に土木工事の音が届く。
発見された人里への道を整備しながら接近するという前代未聞の計画は着実に進んでいるようだ。
…私も原油の蒸留実験の続きをしなければ。
森を裂く道は伸びてゆく。
そろそろ接触です。
キャラ解説とかあった方がいいですかね?