自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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《目標ロスト》


2話 忍び寄る危険

駐屯地 東部

佐島一等陸士

 

 

「なんだこいつ!?」

 

俺の目の前のそれは常軌を逸した見た目をしていた。

鶏のようなトサカと黄色いクチバシ、とても保護色になるとは思えない鮮やかな青色の体表と縞模様を持つ奇妙な生き物。

形状と動きは恐竜のヴェロキラプトルのようで、そうでない何かだ。

そしてそれ()は鋭い牙をむき出しにし、こちらへ駆けてくる。

 

グォォ!

 

「うわッ!」

 

先頭を走っていた一頭が突然大きく飛び上がり、鋭い爪を振り下ろす。

突然の襲撃に面食らっていて回避の遅れた一人が胸に攻撃を受けてしまった。

彼は仲間に無事回収されたが、着用していた防弾チョッキ2型が真ん中から大きく裂けて防弾プレートが剥き出しになっている。

後方にいる隊員はセラミックプレートの入っていない通常型の戦闘防弾チョッキを着用しているために今の攻撃を受けていたら危なかったかもしれない。

 

「クソッ!自由射撃にて応戦せよ!」

 

その声に俺を含めたすべての隊員が銃を構える。

 

「畜生、俺の初戦闘はバケモノ(モンスター)相手かよ!」

俺のぼやきは発砲音にかき消された。

 

 

 

-10分前。

 

 

 

俺はいつも通り同僚とサボっ…基地の保守点検をしていた。

しかし実際のところ与えられた任務は保守点検というよりも基地の中で変化したところがないか見て回るというものだった。

 

この二日間駐屯地の中は非常に慌ただしい。

 

初めのうちは起こったことが謎すぎて実感が全く湧かなかったが、途切れた電線や彼方まで続く森を見ると底知れない不安の感情が湧き出してきた。

他の隊員たちもそうだったようだが、パニックを起こさなかったのはさすが訓練を積んできた俺たちだからだろう。うん。決してアホほど呑気だとかそういうことではない。

そう弁解したところで寮監の幹部はジト目を向けてくるだろうが…

しばらくすると緊急事態の宣言と同時に戦闘装備の常時着用が呼びかけられ、そんな俺たちでも流石に事態の深刻さを察する。

 

明らかに普通ではない状況、駐屯地周辺の調査を望む声も多かったが、駐屯地の外に出るどころか基地の境界付近に近づくことも禁止され、現状はただこうして基地の中を見回ることしかできない…というわけだ。

そういえば境界辺りの見張りについていた隊員が変な生き物を見たとか言っていたな。そういうの怖いからやめてほしい。

 

「ビビってるのか?」

 

「まさか」

 

同僚にはそう答えたが、実際はちょっとビビっている。

心なしか愛銃の64式小銃を握る手に力が入る。

 

「骨は埋めてやるよ」

 

「その役目は入れ替わるかもしれないぞ」

 

そんな他愛もない会話をしながら歩いていると、前方で騒ぎが起こっていた。

ひとりの隊員がしきりに何かを主張している。

 

「…だから、俺は見たんだ!あれは歩くネコだった」

 

「この基地にもネコはいるだろ?見間違いじゃないか?」

 

「間違いないんだ!ドングリをもってた!」

 

その隊員は興奮しながら見たものについて語るが、周囲の隊員たちは半信半疑だった。

というか、歩くネコ…?猫は普通歩くものじゃないのか?

…は?直立二足歩行!?

 

ついにおかしくなる奴が出始めたかと思った矢先、近くの境界付近で小さな爆発音がした。

 

皆一斉にその方向を向いて注意深く観察する。草が茂っていてその奥で何が起きているのかは全く分からない。

だがただならぬものを感じた俺は銃を構えて先行した。

 

「おい、境界付近には近づいちゃダメだって…」

 

「静かに!何かの鳴き声がしないか?」

 

同僚と俺は耳を澄ましてその正体を探る。

後ろにいた隊員たちも耳を澄ましている。

やがてその鳴き声がこちらに近づいてきていることに気が付いた。

だがその正体に気が付いた俺たちは混乱する。

 

「ネコ…?」

 

がさり、と茂みが揺れてネコが飛び出す。

だがそのネコの姿はよく知られているようなものではなく…

後ろ足二本で立ち上がり、走っていたのだ。

 

ネコが二足歩行もとい走行してる。

 

「はぁぁぁぁ!?」

 

「ほれみろ!!」

 

ネコは大声を上げてリアクションをとる隊員たちに驚いた様子を見せたが、それどころではないというような面持ちでそのまま走っていった。

追いかけようとする隊員もいたが、次に現れたものによってそれは実行されなかった。

 

キィィィィィィ!

 

甲高い悲鳴のような鳴き声を上げ、恐竜のようなよくわからない生き物が隊員たちの目の前に踊りこんだ──

 

 

 

-現在に戻る。

 

 

 

突然の襲撃に対応できなかった隊員が一人攻撃されてしまったが、俺含め他の隊員は咄嗟に距離を取って銃を構えた。

ふざけていようとサボっていようと、俺達はイザというときに動けるよう訓練してきた兵士だ。

 

「クソッ!自由射撃にて応戦せよ!」

 

タンッ タンッ タンッ

 

ズガガガガッ

 

誰かが合図を発するか発さないかのうちに各々の銃器が一斉に火を吹き、点射と連射で弾幕が張られる。

 

ブシュッ ブシュッ

ギャッ!

 

その火線のうちの一つ、俺の愛銃から放たれた7.62㎜NATO弾が恐竜モドキの体を捉え、首と胴体への数発の直撃で昏倒状態へと追い込んだ。

仲間たちも次々と命中弾を出して敵を排除し、最初の発砲から30秒ほどで銃声が止んで辺りには穴だらけの死体が転がった。

 

「ク…クリア!」

 

仲間の上ずった声に気が抜けて、銃身を握った手を解くとじわりと痛みを感じる。力の入れすぎだ。俺も、仲間も…いや、仲間が経験済みかどうかは分からないが、少なくとも俺は生き物に向かって銃を撃ったのは初めてのことだった。

発射した弾丸が肉を捉え引き裂いた感覚を手元で味わっているかのような奇妙な感じがする。

 

「何なんだこいつらは」

 

「恐竜…なのか?」

 

「カモシカぐらいの大きさがあるぞ」

 

足元に横たわる謎の生物。黒い縞の入った体表は今では血に濡れてベットリとしている。これで緑色の血を流したりしたのならどうしようかと思ったがこいつの血は馴染み深い赤色。

ただの生き物だとわかって少しだけ緊張が解ける。

 

「危険な原生生物か…」

 

「小銃が効く相手で良かったな」

 

銃を構えて対峙したときには何かを考えている暇はなかったが、こいつらはだいぶ弾の通りがいい。たぶんヒグマよりはいい。

それなら入射後にスピンして加害範囲を広げるというNATO弾の殺意が籠もった挙動も発現するはずで、胴体への射撃でも十分な効果が期待できそうだ。

つまり64や89でもやりようはある。

 

「俺は本部に連絡を入れる。負傷者は衛生科へ…丘島、立てるか?」

 

「ちょっと足をやりました、誰か肩貸してください」

 

「長野、連れてってやれ」

 

「俺かよ」

 

一言小言を言いつつも負傷した隊員、丘島と肩を組んで立ち上がる長野。そのまま二人三脚の要領で歩き出し───

 

 

 

 

 

 

───「佐島!伏せろ!」

 

殴られるような勢いで隣の隊員に押し倒されると一拍遅れて風を切るような音がして、数メートル先に青い何かが着地する。

 

「さっきと同じ奴だ!」

 

「まだいやがったのか!」

 

姿勢を低くしてこちらを威嚇する恐竜モドキに全員が再び銃を構えるが、別の方向からも唸り声が聞こえ始めて残党が一匹ではないことを知る。

木の影から1匹、草むらから2匹、次々とこちらを囲むように現れてあっという間に先程襲いかかってきた数を上回ってしまった。残党と言うよりむしろこっちが本隊だ。

 

「多いぞ!?」

 

「こっちに来る!」

 

「下がれ!下がりながら撃て!」

 

敵だということは既にわかりきっているため御託は無し。近くにいるものから弾丸を撃ち込んでいくが、先程より目標が多いために火力が分散しなかなか数が減らない。

形勢不利と判断した隊員の一声に全員が同調し、射撃を継続しながら小隊ごとの後退を試みる。

 

「右からも来る!右だ!」

 

「回り込まれるぞ!」

 

しかし後退すれども敵との距離が一向に変わらない。次々と脱落者を出しながらも確実に近づいてくる群れに恐怖を覚えた俺は64のセレクタを"レ"にセットしフルオート射撃を始めた。

周囲でも単発射撃をする者は減っていき、ついに連射の音しか聞こえなくなり空になったマガジンもその辺に投げ捨て始めた。もう回収のことを考えている暇はない。

 

「てき弾!」

 

と、中距離で戦っていた隊員が06式小銃てき弾を発射。

てき弾は山なりの軌道を描き、敵が固まっている場所の足元に落下し爆ぜる。

 

ズドオオオオン!

 

小型の迫撃砲を想起する威力に数匹が纏めて倒れ、半身を吹き飛ばされた死体が宙を舞う。

小銃の銃声に一切怯まなかった敵もそれを見てわずかに怯み、体を仰け反らせて距離を取る。俺達はその隙を逃さずいっそう激しい弾幕を張りさらに数匹を無力化。

戦闘再開後からまた30秒、既に20匹ほど倒している。

 

「こいつらに逃げるって選択肢はねぇのかよ!」

 

しかし、残りの敵は仲間がやられたのを見ても全く怯まずに突っ込んでくる。小銃弾を全身に受けて血反吐を吐いた仲間を押しのけ鋭い牙を振るおうとするその原動力は何なのか。

 

タンタンッ タンッ タンッ

 

ガガガガガガッ カチッ

 

「リロード!」

 

と、最前線で銃を撃っていた隊員が弾切れを起こした。

すぐに慣れた手つきで再装填を行おうとする彼だが、チェストリグに刺していたマガジンは既に使い切っている。それに気がついて腰の拳銃を抜くが火力は大幅に下がり、それを好機と見たか一回り大きな恐竜モドキが突撃してきた。

 

「こいつ…でかい!」

 

狙われた隊員は突進をローリングで回避するが、敵はすぐに躱されたことを悟って方向転換を行う。

その間に通常サイズの個体が一回り大きな個体の前に立ちはだかり盾となっていたが、それらは排除されても別の個体が盾の役目を受け継いでいることから大型個体が重要な役割を持っていることがわかる。

 

「でかい奴は群れのリーダーか!」

 

「集中的に狙え!」

 

優先目標が定まるとバラけていた火力が一点に集中、5.56mmと7.62mmの弾幕が推定リーダー個体に殺到する。おまけと言わんばかりに小銃てき弾までもが撃ち込まれる。

 

バシュッ!バシュッ!

ギャンッ!

 

「弾着!」

 

ズドオオオン!

 

これには盾となった個体も役目を果たしきれずに肉片となり、敵はついに大型個体のみとなる。

直援を失った推定リーダー個体に攻撃を防ぐ手立てはなく、美しい青色の体はみるみるうちに穴だらけになり、吹き出した血で真っ赤に染め上げられた。が…

 

ギャオオオオオオ!

 

それほどの傷を受けても足を止めず、死なばもろともとばかりに勢いに身を任せて突っ込んでくる。

 

「最後の一発だ!」

 

ズドオオオオオン!

 

ギャオオオオオオッ!?

 

そこに直撃するてき弾。

流石にこれの命中では大きくよろけ、炸薬の威力で体に大穴が開く。本来そこにあったものは粉々に吹き飛ばされて赤い飛沫となり周囲の木々に赤い斑点をつけた。

 

顕になった骨と内臓は致命傷を与えたことを確信させ、俺も、仲間も、誰しもがこれで倒せただろうと思った。たとえ生きていても立ち上がれはしないと思っていた。

しかし。

 

ギャオオオオオオオオオオッ!!!

 

「マジかよ…」

 

「てき弾の直撃だぞ!?」

 

信じがたいことに爆発物の直撃を受けながらも大型個体は立ち上がり、激昂した様子で駆けて来たのだ。

その目線の先には…足を痛めた隊員、丘島が。

まずい!

 

「撃てっ!撃てぇっ!」

 

「来るなぁ!」

 

「もう弾がないぞ!」

 

必死に迎撃を行うもてき弾の直撃に耐えられた動揺と少しも怯まない敵への恐怖から狙いがおぼつかず、弾切れによって薄くなった弾幕では足止めすら叶わない。

ついに恐ろしい牙が振るわれた。

 

「ぐあッ!」

 

脇腹に噛みつかれた丘島がしばらくそれを信じられないといった眼差しで見つめる。

恐竜モドキの方も彼の顔をずっと睨みつけていた。

やがて力尽きた顎の力が緩み、丘島は解放される。

 

…だが、あの鋭い眼差しからはしばらく解放されないだろう。

丘島も、俺たちも…

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

俺は駐屯地の内部へと運ばれていく死体を見ながら、まだ熱を持っている愛銃を握りしめる。…今運ばれていったのは俺がやった奴だったな。

 

恐竜モドキはあれで全部だったようで、合計30匹、一回り大きいのが1匹だった。

対してこちらは20人、負傷者1名。

丘島はすぐに衛生科へと運ばれていった。

引っかかれた隊員2名は防弾装備のおかげで怪我はなかったが顔面蒼白で震えている。多分、戦闘後に装備の柔い部分がサックリ切られているのを見て変な想像をしてしまったんだろう。

 

本部はこの襲撃を重く受け止め、外部への警戒と未知の原生生物への備えを各課幹部へ要求し全隊員にこの事件を伝えた。送られる予定だった偵察も中止になったらしい。

そんな発表を受けて皆は今まで以上に警戒感を露わに森を見つめるようになっていた。

 

すぐそばに危険があるという感覚。

これが、きっと…

 

 

 

 

俺は自分の中で何かが崩れていく音を聞いた。

 




武器類の威力はMGSPWのモンハンコラボと同じくらい。
あえて比較するなら
7.62mm≒ヘビィのLv1通常弾
06式小銃てき弾≒Lv2~3徹甲榴弾
くらいでしょうか。
言うまでもなく、高速連射&リロードできるので地球のARは強いです。
ただ、大型モンスには素直にLAMとか使わないとキビシイです。
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