「目撃場所から、その何かというのは…」
「巨船か…」
大森林 調査キャンプ
フレキ
クオオオオッ!クオオオオッ!
クックが怒りの咆哮を上げる。
あれは完全にキレているな。
クックはキャンプの一角を破壊した勢いそのまま、辺りのすべてのものに当たり散らしていた。
このままでは設営したてのキャンプが更地になってしまう。
クックは臆病だが縄張り意識が強い。
特に自分より小さな相手、人間などに対しては特に。
黙らせるには…倒すしかない。
「フレキ!行くぞ!」
「ああ!」
通路にいた仲間のハンターに促され、その列に加わる。
撤退していく非戦闘員の列と戦線へと進む戦闘員たちの列からなる人の流れを押しのけて、俺達はクックの元へと向かっていった。
と、その途中でランポスに乗ったガキとすれ違った。
付近にいたライダーもこの事態に逃げ込んできたのか。
まったく、頼りにならない奴らめ。
ゴオッ!
クックの吐き出した火炎弾がテントに命中し激しく燃え上がる。
クックの火炎液は粘性のある炎を生み出し、まとわりつくように燃やすために巻き込まれたらひとたまりもない。
おまけにカムフラージュのために燃えやすい素材を使っていたためか、周辺のテントにも引火し炎がすごい勢いで広がっていった。
これ以上被害を広げないためにも急がなければならない。
キョオオオオオオオオ!
燃え盛る資材の山の上で勝ち誇ったように鳴くクック。
それを取り囲んで機会をうかがう円陣の最前線に俺はいた。
片手剣と小盾を握る手に力が入る。
最近は事務に回されて長らく剣を振るっていなかったが、それでも日々訓練を積んでいた。
かつては筆頭ハンターを張っていた身だ、そこまで腕はなまっていないはず。
クックはそんな俺をジロジロと見つめて一歩も動かない。
よし、やってやる!
「オラぁ!」
ギョ!?
クックが何かの音に反応してそっぽを向いた一瞬の隙に一気に距離を詰め、下段から腹を思い切り斬り上げる。
反撃と返り血を体のひねりと小盾でいなし、距離を取ったのちに再び仕掛ける。
キョオオッ!!
怒り狂ったクックはがむしゃらにクチバシを振り下ろすが、間合いが開けているため俺を捉えることはできない。
俺は投げ込まれた閃光玉でクックが目を回している隙に追加でふた太刀入れて爪が届く前に離脱した。
バンッ!バンッ!
ヒュンッ!
味方のライトボウガンと弓矢の牽制が入り、弾丸と矢がクックの皮膚を貫いて穴を空ける。
通常弾の射撃に織り交ぜられた榴弾がボロボロになった皮膚にさらにダメージを与える。
強い痛みにクックの意識がそちらに向いたところで、後ろに回りこんでいた仲間が大剣を鋭く振り下ろす。
ザシュッ!
ギャア!
有効打となる一撃にクックが悲鳴を上げた。
重い武器の一撃はやはり効く。
仲間はクックの背中から吹き出す鮮血を浴びて赤くなった大剣を再び振るい、今度は足を狙う、が、クックが咄嗟に飛び上がったことで武器は大きく空振りした。
ドスン!
そのまま踏みつぶそうとしたのか、仲間の方へと体重をかけて着地するクック。
だが仲間はローリングで素早く回避しておりすでに射程外だった。
そこに射かけられた爆発ビンを括り付けた矢が直撃し、クックがのけぞる。
相手に息をつかせぬ連携攻撃。
悔し気に地団駄を踏むクックを横目に、俺達は次の攻撃を準備する。
大型のモンスターは強い。
筋力も機動力も防御力も桁違いに高く、人間がまともに張り合えるものではない。
その攻撃をもろに食らった場合、半端な装備を着ていればお陀仏だ。
だが、我々はハンターだ。
そんな強力なモンスターを狩る術を知っている。
強力なモンスターも狩れることを知っている。
技術を、装備を、技を、戦術を…蓄積されてきたそれらを動員して強烈な力を持つ
人間は弱い…が、それは一人での話。
集団での戦闘。
小型のモンスターたちがそうするように、強大な個に見合うだけの戦力を用意し、多彩な動きと連携で追い込み弱らせる。
効率的な狩りの技だ。
覚悟を決めたように向き直ったクックに俺は正面から突っ込んでいく。
右から振るわれたしっぽを見てから回避し…なっ!?
「グハッ!」
クックは反対方向からも翼を振るって俺を突き飛ばした。
まともに受けてしまったがしかし、それは力を込めた一撃ではなく俺を払いのける素早い一撃だった。
こいつ、やってくれる!
仲間がすぐに追撃を加えようとするが…クックが大きく飛び上がり、それは叶わなかった。
クックはこの状況を不利とみて逃げることにしたらしい。頭の回る奴だ。
臆病なクックらしいと言えばらしいが。
…そもそも、クックはなぜ襲撃してきたんだ?
ともかく、去ってくれるなら都合がいい。
キャンプも6分の1が焼けた程度だし人的被害は殆どない。
クックとはいえ、大型モンスターの襲撃を受けた被害としては小さすぎるといってもいい。
「行かせてやるか?」
受け身を取って立ち上がりながら考える。
しかし、これからのことを考えると、この近辺にクックをのさばらせておくのは危険な気がする。
調査のこともある。クックには悪いがここで…
「うん?」
俺の脇をさっき見たガキが駆けていったことで俺の思考は途切れた。
小柄なランポスに乗ったそいつを俺はライダーの里で見たことがある。
確か…レウス乗りのライダーの息子だったはずだ。
後々変な誤解が起きてほしくはない、少し話させてもらおう。
「おい、お前…」
「……」
制止の声をかけるがガキはそれを無視して森の中へと駆け込んでいった。
一瞬イラっとしたが、彼は何かとても焦っているようだ。
すぐに追いつけなくなってしまったため、その真意はわからない。
何か訳ありならば巻き込まないで欲しい。
密猟者のことで大変な時だというのに、これ以上の面倒ごとはたくさんだ。
キェェェェェェ!
クックが森へと降りて行った。
続いて子供の悲鳴が聞こえた。
今しがた、ガキの真意と訳ありの意味がわかった気がする。
面倒ごとを増やしやがったな!
どの視点でどの戦いを書くのかすごい迷った。