大森林 調査キャンプ
フレキ
「何だとォ!?」
ライダーの親子がやってきてクックを擦り付けた件についての謝罪をしてきた。
勝手に出て行ってクックに襲われたガキ(チャコというらしい)が安全な場所として思わず逃げ込んでしまったと。
人的被害は出なかったし、ライダーとの関係が悪化しても仕方がないとしてこの件は団長によりあっさり許された。
正直俺としては気に食わないが。まあ、ガキのほっとした顔を見てこの考えは引っ込めた。
まったく、うちの団長はお人よしだ。
問題は親の方(ラダンというらしい)が先ほど出会ったという者たちについての話だ。
それはあろうことか、俺たちが監視していた密猟者集団の事だったのだ。
「彼らは話がしたいと言っている。謝罪したいとも」
ラダンが言うには奴らは話をする機会を設けて欲しいと言っていたようだ。
そしてジャギィの巣を壊滅させたのは奴らで間違いはないと。
そのことについての謝罪もしたいと。
「ふざけるな!」
隣に座っていた同期のハンターが声を荒げた。
奴らの謝るべきは我々ではなくジャギィとこの森で暮らす命全てに対してであると。
それに彼らは森を切り開いたことやランポスの件はどう申し開きするつもりなのかと。
同じようにこのことが逆鱗に触れたハンターも多かったようで、天幕に集まったメンバーの約半数が不満の声を上げた。
これについては同感だが、奴らの情報収集の管理を行っていた俺は論点がそこではないことを察していた。
「フレキ、何か言いたそうだな」
そんな俺の表情に気が付いてか、団長は俺に意見を求めた。
この人は察しが良すぎて時々怖い。
「奴らは我々とは根本的に考え方が違うように思えます、同じような考えで奴らを測ることはおそらく不可能です」
奴らは確かにモンスターを過剰に殺した。
しかしそれは『狩猟』でも『乱獲』でもなく
我々も行っている、生活圏に近づきすぎたモンスターを排除することと同じ(まことに心外であるがそう表現する)で、その規模が違いすぎるだけなのではないか。
この場合もともと生活圏から離れた巣があった場所にわざわざ住処を構え、そこから近い巣があったからと潰しているわけなので許されはしないのだが。
不思議なことに、奴らはそれらを全くと言っていいほど自覚していないふしがある。
俺はそのあたりが理解できず、一度本人に話を聞かなければわからないと判断した。
「謝罪の件はともかく、彼らの言うように話し合ってみるべきです」
団長はうーんと唸って腕を組んだ。
俺も話し合ってみるべきだとは言ったものの、手放しでやっていいことであるとは思っていない。
分かってきた情報があるとはいえ、場合によっては
そんな連中と提案があったからはいそうですかと話し合うのはどうなのか。
しかしせっかく訪れた機会、これを無駄にしたくはなかった。
ギルドナイトといえど進んで殺し合いなどしたくない。
「それに、少なくとも奴らには我々と争うつもりがないようだ」
「なぜそう考える」
「その気があればもう動いている筈であり、今回のような使節も送らないでしょう」
奴らはこちらの諜報に気づいておきながら逃げも隠れもせず、さらには間接的にであるが使節を送って話がしたいと言ってきたのだ。
これが俺が今まで対応してきた密猟者ならとっくに逃げ出すかこちらに破壊工作をかけてきている。
使節の件がなければまだ疑っていたのだがこの一件で俺の中の奴らの印象は少し変わった。
ラダンはその辺の話を詳しく聞いていないのだろうか?
あの親子はもう彼らの里に帰ってしまい、おそらく俺たちがそうしているように話し合っているだろうから聞くことはできない。
「分かった…では交渉使節を送ろう」
「団長!」
何人かのハンターがテーブルを叩いて勢いよく立ち上がる。
しかし団長は彼らの抗議をいなして話を進める。
「我々としても無駄な争いをしたいわけではない」
「相手が話をしたいというならば聞いてやればいい、うまくいかなければ当初の予定でいくまでだ」
それを聞いて立ち上がっていたハンターたちが渋々と腰を下ろす。
彼らとしても無駄な戦いは避けられるならそれでいいが、それでも許せないところはある、という感情のようだ。
話し合いの方向に推し進める俺を睨みつける彼らだが俺だって納得のいかないところは多い。
それを含めて明らかにするのが今回の目的だ。
話がだんだんまとまってきたところで団長は最後に交渉に向かうメンバーを発表した。
「私とフレキ、それからヴェザとノリス、アルも来てくれ」
全員同僚だ。
ハンターではなく汚れ仕事の方の。
それを察した俺が団長の方を見ると彼は頷いていた。
俺は覚悟を決めた。
秒読み開始です。
…やっとです。