「たぶん儲かってるんだろ」
駐屯地西部 滑走路
長野二等陸士
滑走路に巨大な影が落ちる。
またおいでなさったな。3匹目だ。
見上げればあのドラゴン、リオレウスの姿があった。
その体を支える強靭な翼が起こす風圧でよろめきそうになる。
が俺は必死に耐えた。
ここですっ転んだら大恥だ。
何しろ、リオレウスの背にはソレを操る乗り手が居て…彼らこそが初めての人間の客人、重要な交渉相手となるのだ。
「…病み上がりの体にはきついぜ」
あのジャギィの襲撃があってもう1ヶ月半かそこらになるのか。
同僚の佐島をかばって負った傷はつい先日完治し、やっと任務に復帰することができた。
それで早速あてがわれた任務がコレ…ですか。
「…きついぜ」
リオレウスの背から降りてこちらへ歩み寄ってくる人間、ライダーを見た俺は頭がくらくらしてきた。
俺なんかにこのような役目が回されたのにはもちろん理由がある。
偶発的に開かれることになったらしいハンター及びライダーとの話し合いの場。
当初の見立てでは人里に向けて引かれていた道路上にて双方と接触し駐屯地へと護送、そこからお話を…という感じだったのがなんとライダーが空路で直接来てしまったのだ。
上司の話を聞く感じではこちらの持ちかけた提案にも言葉足らずのところがあり仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
そんな(こちらの)予定にないことが発生したせいで交渉に先立って殆どの隊員を防衛に割り当てていた都合上人手が足りなくなり、俺が引っこ抜かれた、と。
…リオレウスのツメが滑走路のアスファルトに食い込むのを見た空自隊員の顔が引きつっている。
やっぱりかなり迷惑だ。お帰り願えます?
「こんにちは、初めまして。長野と申します」
内心の葛藤は抜きにして任務をこなす。
「私はライダーのパッカだ、君たちが…ジエイタイか」
「お仲間が既にいらっしゃいます、こちらへどうぞ」
「うむ、ラダンとメイサは既に来ているようだな」
先にやってきたライダーの乗騎のリオレウスが並んで伏せているのを見てパッカと名乗るライダーは頷いた。
リオレウスに興味や畏怖、あるいは疲れたような憎らしいような様々な目を向ける俺たちに満足げな表情を浮かべるライダーだがおそらく彼らは撃墜一歩寸前であったことを知らない。
ましてや今もそれぞれのリオレウスにVADS対空機関砲とホーク対空ミサイルと重MATと155mm砲とその他諸々が向けられていることにも気づいていないらしい。
確かに集合場所や方法をしっかり説明しなかったこちらも悪いかも知れないけどいきなりそんなのに跨って飛んでこないで下さい。ホントに。
だが彼らの長だという老人の反応を見る限りではそれも彼らの想定内であるような気がしてくる。
脅しや警告の意味が込められているとしたら…それは深読みしすぎだろうか?
彼らの思想や常識というのが分からない以上、今ここで意味を汲みとろうとしても無駄かもしれないが。
そういうことは後々からわかってくるだろう。
「うむ、パッカも来たか」
「揃いましたな」
最初に来たライダー、ラダンからは合計3人来ると知らされていた。
それが揃った、イコールもう来ない。
もうリオレウスが飛んでくるたびに高精度カメラの映像とにらめっこして背中に人影を探したり着陸時に滑走路がめちゃくちゃになったりしないと思うと気が楽だ。
と、胸の無線機が鳴った。
『こちら護送部隊、たった今帰還しました!』
佐島の声だ。あいつも何だかんだ面倒な役回りをやらされているらしい。
同僚が仕事をこなしていることにニマニマしていると別の声が舞い込んできた。上司だ。
「長野、ライダーの方々を誘導してくれ!」
前言撤回、気が重い。
同僚くん復帰。
滑走路くん死亡。