「鉄分足りてないんじゃない?」
駐屯地より南方1km地点
権田二等陸士
僕の見つめる先にあるのは褐色の錆をところどころに蓄えた金属。
そのくすんだ淡い輝きはよく見覚えのあるものだった。
元素記号Fe、鉄だ。
しかしこのありふれた元素こそが今の僕たちが求めてやまないもののひとつだった。
「あー、本部、鉄鉱脈を発見しました」
『アイルーたちの情報は確かだったようだな』
無線で本部へと鉄鉱の発見を伝える。
アイルーたちに事前に提示された情報の通りの場所に確かにそれはあった。
やはりこの手の事はもともとこの地域で暮らしていた彼らの力を借りたほうがいいな。
僕は彼らから託された地図の記号に丸をうった。
どこに採掘ポイントがあるかが示されたその地図にはたくさんの印が打たれており、種類までは書かれていないがそれぞれ一つ一つが何かの鉱脈があることを示している。
ここもその地図に従って見つけた場所だ。
この他にも鉄鉱脈は4ヶ所、銅鉱脈が2ヶ所、亜鉛3ヶ所、その他金属6ヶ所と駐屯地から1kmまでの地点内でもかなり多数の資源が眠っていた。
…多すぎて逆に怖くなってくるくらいだ。
それで、問題の鉄鉱脈だが…一言で表すとすごい。
岩肌から露出しているのは鉄を含んだ石とかではなく鉄の結晶だ。
それもわりと純度が高そうな良質なもの。
錆の少なさがそれを物語っている。
他の鉱脈もすべてこれぐらいのレベルで高純度なものであり、とても…
不自然だ。
確かに地球にも結晶として鉄鉱があったり高純度の銅鉱があったりもしたがこれは目を疑うレベル。
地質を調査してもこのあたりで大噴火があったような形跡はなく、科学科の隊員たちも首を傾げていた。
アイルーたちの反応を見るにこの世界ではこれが普通なのだろうが…
もしかしたら、太古の昔に彼らも知らない古代文明の遺跡か何かがあったのかもしれない。これがその遺産という可能性も無きにしもあらず!?
古代の遺物は(一部の)男の子のロマンをくすぐる良いものだ。
僕がそんなロマンチックな妄想をしているところに鉱石を満載したトラックがやってきた。
こうして発見された鉱脈のうちいくつかは既に採掘が始まっており、我々施設科はお馴染み地ならししただけの簡易舗装路をそれぞれの鉱脈へとつなげている。
それの向かう先は…つい先日駐屯地の南、資源集積所に出来たばかりの木炭高炉と反射炉だ。
作ったのはもちろん僕ら施設科。と、アイルーたち。
彼らがもともと持っていた単純な金属加工技術と建築技術程度の地盤があったからなのか、僕らのやろうとしていることと技術を素早く理解して全面的に協力してくれた。
特にレンガの加工は(あちこちに肉球マークがつくことを除けば)かなりの手腕だった。
これは負けていられないと施設科メンバーの間に熱が入ったのも彼らの手柄と言えるだろう。
…流石にその後の運用に伴う作業もすべて請け負うと言い出したときは流石に止めさせて分担性にしたが。
彼らが僕らに協力してくれるのはありがたいし、いい印象を抱いくれているのならこの上なく嬉しいのだが、その…
アイルーたちだけがそういう作業をしているのを見るとなんだかすごく申し訳ないような、罪悪感か何かそういうものを感じるのだ。
資源集積所に帰ってきた僕は木炭高炉の横に併設された炭焼き炉に陣取り、その小さな体で一生懸命働くアイルーたちを見てそんなことを考えていた。
資源問題は解決しかかってます。
返しきれない恩をもらったアイルーたちは運命共同体のつもりでいます。
いっぽう自衛隊はそのクソデカ恩義に戸惑っています。