「こいつがまだ動くとはな」
駐屯地 滑走路
河野空士長
三山一等空士
「また爺さんがヘソ曲げちまったよ」
「特に悪いところは見つからなかったんだが…」
目の前の戦闘機は俺たち二人の愛機と言える存在、F-4Ejファントム改だ。
そのフォルムとペイント、機体に映える横の日の丸と自衛隊の航空戦力の顔とも言っていい存在だと思う。
俺達はこの駐屯地に配属されてからずっとこの機体のお世話になっておりなかなか長い付き合いの間柄。
基本的に"愛機"というものを持たない航空自衛隊だがここでは大抵割り当てがあり、パーソナルマークも入っていたりするわりと特殊なケースかもしれない。
おかげでコレを飛ばすことについてはかなりの自信があり、模擬戦でも負け知らずだ。
しかしこのファントム改、言わずと知れたご長寿戦闘機であり…その、だいぶガタが来ている。
この駐屯地の抱えるスーパー技術者の手によってかなり改善されているがそれでも酷使には向かずデリケートなのは否めない。
乗らなすぎてもダメで、最近は燃料問題から特殊なケース以外で飛べなくなり先々週くらいに一回飛んだっきりだったのが災いしたかエンジンの調子が悪い。
点検して異常な箇所はなかったので単なる接触不良のようなのだが、俺達の知る限りこれの解決方法は…
「お願いしますんでエンジンかかってください!」
「頼みます!頼みます!何でもします!」
おだててすかして頼み込むこと。
アンティーク車にときたま行うようなこういう光景は俺たちの周りでもちらほらと見られる。
例えばそっちのハンガーではさっきから10分間ほど同じような状況が続いていたり…なんか他に原因あるだろそれ。
ゴオオオオ…
丁寧に頼み込んだかいがあったのかこちらのエンジンは5回目くらいでしっかりかかった。
あとは残った作業を済ませてメンテ終了。
「おい、終わったんなら手伝ってくれ!」
かからないエンジンと格闘していた隊員からお声がかかった。
空いた手は休む暇もなくもれなく他の機体の整備へと回される。
今日の空自全体の整備ノルマ、願いましてはF4が5機にF15が2機なり。
当分かかりそうだ…
そういえば、この基地の航空戦力はわりと充実しているんだな。
滑走路などを含めた航空エリアはこの駐屯地の3分の1ほどを占めているがそのうち空自の管轄のものだけをとっても割と多い。
まず俺たちもいつも乗っているF-4EJ改が6機、F-15が3機。
旧式のものはF-104Jが2機、F-1が3機動かせる状態のものがあり、F-86も動くものが4機ほど、F-86Dも動作の可否は分からないが2機ぐらいあったと思う。
もっともそれらの旧式機はすべて、滑走路端のハンガー内に空母に満載数詰めるような配置よりもキツキツな感じで置かれているので戦力として数えていいのかは微妙だが。
一応それを戦力と数えた上で陸自の管轄のものや回転翼機を加えればだいぶ増えるだろう。
…分屯地の方には大戦中の戦闘機がいくつか動く状態で残っているとかいう噂もある。噂だよな?
まぁ、その、戦力量自体には困っていないんだ。
ただ肝心のあるものがないために全くこれらを活用できていない。
さっきも言った通り燃料だ。
これは全兵器に共通のことだが、中でも航空機はことさら消費が多い。
そのため他の車両などを差し置いてどでかい規制を食らってしまいよほどのことがない限り飛ばない、飛ばさない規則となってしまった。
例えば人里の捜索など。
「で、久々の空はどうだったよ」
「まだその話すんのかよ」
俺たち二人はその任務にあてがわれ、久しぶりの空を味わった。
そして他の空自隊員からジト目を向けられた。
俺はこの航空機が活かせない状況打破のため…俺たちの世間体のためにも早めに燃料問題が解決してくれることを望んだ…
航空戦力開示回です。
旧式機が空母内よりキツイ密度で詰まったハンガーは開かずの間と化しているので実質の戦力はF-4EJ改6級とF-15J3機の計9機です。
分屯地には骨董品が眠っています…
閑話は一旦これくらいで。
次回から3章突入です。