「聞いた話じゃ新しくできた里の援助とか」
「その話詳しく」
1話 開拓計画
自衛隊 駐屯地近辺
陸奥陸将
「ようやく、だな」
「そうですな」
相槌を打つ分屯地司令。
私達が見つめる先には駐屯地の外側を切り開き開発を進める施設科と普通科の隊員たちの姿があった。
ドーザやトラックが木材と瓦礫を運び、ローラーで地ならしするという簡易舗装作業で見慣れた工程を何度も行い利用できる土地を増やしていく様子は見ていてなんだか誇らしい。
ようやく、本格的な開発を進めることができた。
今後ここには様々な施設が建つだろう。
長らく続いた足踏みを脱してこのステップに進むことができた要因としては外部勢力の接触が第一に挙げられる。
内側に向いていた目を外側へと向け、外部勢力と触れたことで『この世界』のことを知り俯角的に我々の置かれている状況を知った。
これからはそれを元に方針や計画を再構成し本格的に我々がこの世界で生き残るための地盤形成を進めることとなるだろう。
「駐屯地分屯地周囲2km…なかなかやりごたえがある」
「行動範囲が制限されてしまったとも解釈できますがね」
くわえて外部勢力、ハンター及びライダーとの合意により駐屯地及び分屯地周辺と既に引いてしまったところまでの直通道路周囲の開発が許され地盤確保が容易になった。
…というのは実は少し語弊がある。
開発自体は今までいつでもできたのだ。
急務だったとはいえ油田開発や水源確保が迅速に行われ成果を上げているのが何よりの証拠、我々単独でもそのまま進めることはできたのだが、今回得た合意では我々にとってかなり大切な情報が得られた。
「周辺の安全確認が取れただけで大収穫だ」
「全くです」
周囲の安全、敵対的な凶暴な気質のモンスターがこの近辺にはいない(転移と駆除でいなくなった)ということをこの世界のことを知る彼らの口から確認が取れた事は大きな収穫、意識の改革だった。
もうふた月ほども前のことになるあのジャギィの大規模襲撃だが、私も含めて未だにあれを引きずり外側に対して過度な警戒を持っていた人物は多い。
最近の襲撃がないことと大元の巣を潰したことでもはや危険は少ないのではないかという認識には向かっていたものの身内でいくら議論しようとも完璧な結論など出なかった。
それを完全なる第三者、それもその道のプロからお墨付きをもらえたことで我々こそういった疑念はようやく晴れていき、肩の荷がだいぶ降りた感覚だ。
「攻撃を受ける心配がないというのは素晴らしい」
複雑な国家関係や領域の線引きに悩まされた我々にとっては彼らの思う以上にこの言葉はありがたかったのだ。
整備拠点のような駐屯地にいる我々が直接矢面に立っていたわけではないが、それでも度々同じ自衛隊、日本人として感じることだった。
しかしだからと言って無警戒になる訳にはいかない。
それはそういう立場にいたからこそよくわかっている。
対外警戒/監視は今もしっかり続いているし、ハンターとライダーの来客の際に増設された各種障害システムの防衛網もある。
最近アイルーたちによって結成された警備組織もそうだし、最も新しいものだと対人警戒の特別チームがある。
彼らの初仕事は来客の際の警護…に見せかけた有事の際の敵対者の拘束及び殺傷。
その仕事が果たされることは無く平和に終わって良かったのだが彼らにはまだ次の仕事があった。
『司令、"お客様"は帰りました』
「…そうか」
無線から聞こえた報告に私は少しばかり気分を落とす。
ハンターとの交流が始まってちょくちょく彼らに属する人物がここを訪れるようになったのだが、中にはこちらの内情を探りに来た者もいた。
今も遠巻きにこちらを見ていた者が居たようだが、対人警戒チームの隊員がウォッチタワーからひと睨みして追い払ってくれたらしい。
あんな出会い方をしてまだ情報も少ないなか、やはり腹の探り合いになるところもあるだろう。
しかし我々は異世界に来てまで人間同士でいがみ合うことはしたくないしそのつもりはさらさらない。
なのでこういった明らかな密偵も半分見逃して我々の平和主義をアピールしなくてはならない。
「信用されるというのは、難しいな…」
「継続ですよ、彼らもいつか私達を信じてくれるでしょう」
「だといいのだが」
私は直通路のさらに向こう側、この森を抜けた場所にあるという都市について思いを馳せていた。
お墨付きを得て開発スタート。
駐屯地が2倍の広さになったよ!