自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「巨船は探りを抜けました」

「やはり感づかれるか」


9話 簡単な依頼

直通道路 70km地点

野川一等陸士

 

 

目的地までもうすぐであることを確認しハンドルを握る手の力を緩める。

大型トラックの荷台に積まれた大量の木材の重みで操作が効きにくいったら無かったが、ここまでくれば誰かとすれ違うことも殆どないのでもう大丈夫だろう。…多分。

同乗者がいた方が運転が慎重になる気がするので本当は佐島を誘いたかったのだが彼はまた別に大事な仕事、依頼があるようだった。

 

「木材の納入依頼か」

 

現在は外部との交流が始まって2週間ほど、人の往来もわりと多くなってきたところでハンターたちから依頼が入ったという。

なんでもキャンプを拠点化するために資材が必要だが自分たちで調達していたら時間がかかるので備蓄した木材を分けて欲しいということらしい。

確かに木材ならば腐るほど、という比喩がそのまま体をなす程には有り余っている。

駐屯地と分屯地をつなぐ工事の際やこの直通通路を舗装した際、現在進行中の開発計画と地ならしするたびに木材…というか未加工のぶっとい丸太がどんどん増えていった。

施設科に聞くとかなり良質な木材だそうだが、加工が追いつかないのとどう考えても使い切れないとの事で現在は資材置き場を圧迫しているだけの存在だった。

 

そんなところに来た依頼、断る理由もなく基地司令はすぐさまGoサインを出した。

そして依頼というからには見返りも用意してくれているそうで…

 

『来たか!そのへんで止まってくれ!』

 

現地語の停止を求める声に前を走っていた軽装甲機動車が止まり、その後ろにいた俺のトラックも止まる。

大型トラック3台を護衛の軽装甲機動車で挟んだ車列は玉突き事故など起こすことなく停止した。

これが安全宣言が出る前だったら軽装甲機動車が普通の装甲車に変わって追加で一台M41あたりが護衛に付いていたかもしれない。

人的や燃料などのリソースを抑えられた意味でも安全宣言はかなり有益な結果をもたらしてくれた。

その情報を出した張本人…の所属するグループ、ハンターのひとりが俺の乗るトラックに近づいてきた。

 

『木材を持ってきてくれたようだな、ありがとう。話は前のクルマに乗った君の仲間と済ませたよ』

 

そのハンターは軽装甲機動車に乗っていた隊員から受け取ったらしい書類をかざして荷下ろしについて説明してくれた。

まとめるとそのへんにポイでいいらしい。

 

『木材は散らばらせておいて構わない、こちらで処理する…これ、かなり上質な紙だな』

 

トラックから降りた俺は資料のコピー用紙に興味津々なハンターをよそに木材を留めていたワイヤーを切断してほとんど投棄するような形で丸太を道端に落とす。

本当にこれでいいの?

 

自問自答になるがおそらく答えはイエス。

司令の考えの受け売りになるがこの依頼はこちらにこの世界に馴染めるようにとのハンター側からの計らいだろう。

依頼関係で成り立つ経済とそこで必要になる資金のことをこれからこの世界で暮らすことになる我々のために教示し、交易のための初期資金を渡すことが目的だと。

いわゆるビギナーズラック、初期投資。

返済不要の融資のようなものだろう。

向こうは木材も手に入ってwin-win、なるほどいい考えだ。多分。

俺は経済の事はよくわからないしハンターたちの世界がどうなっているのか実際に見ていないのでこれからどうなるかは図りかねる。

 

『よし、報酬の3万ゼニーだ』

 

もう一人いたハンターが大きく張った袋をこちらに差し出してきた。

ずしりとした重みは価値の証、中を見ると黄土色の合金製のコインが沢山入っていた。

こちらの世界の貨幣はz(ゼニー)というらしく、ギルドやそれを統括する組織の力が及ぶ場所でならどこでも共通で使用できるとのこと。

 

そういえば彼らは都市やギルドの拘りはあるらしいが国家的イデオロギーや、条約関係の枠組みなどはあるのだろうか。

司令はハンターへの対応に慎重な姿勢を見せており、ざっくりとした解説は事細かにしてくれるのだが詳しい情報についてはまだ秘匿しているフシがある。

あの絶望的状況からここまで駐屯地を繋ぎ止めた司令の思惑について文句を言うつもりはないがいち隊員としてもやはり気になるところがある。

聞き込みは禁止されていないしちょっと聞いてみるか。

 

『そういえば、あなた方の所属する国家はなんですか?』

 

『国ねぇ、俺の出身はドンドルマだがあんまり意識することはなかったな』

 

なんともざっくりとした返答、出自をあまり気にしない気質なのかもしれない。

そのハンターは故郷は好きだしそのコミュニティのことも気にはするが、自身が様々な場所へ赴くハンターであることから特別な拘りはないと、またこれが全般に当てはまることではない、個人の考えだとも続けた。

 

『故郷が好きなのは誰でも同じさ。アンタもそうだろ?』

 

『ああ…』

 

『おっと、すまねぇな…アンタの故郷はニホン、だっけ?』

 

向こうではわりと末端までこちらの事情が伝わっているらしく、しまったとばかりに謝るハンター。

確かにこんなことになってしまって日本にはもう帰れないかもしれない。

というか久しぶりに日本(故郷)の事を考えたな。

忘れていたわけではないが、ここで生こることばかり考えていてあまりそのことを考える暇がなかった。

しかし思い起こしてみるとやはり育った地、愛しの母国、自分が生きていくとしたらあれ以外に考えられない場所だった。

そんな場所を守れるならと志願したんだっけ。

それと、家の名誉と俺のために。

 

『いいところだ』

 

『ごめんよ、この話はもうしないよ』

 

色々回想していた俺の表情を読んだのかハンターは本気で申し訳なさそうだった。そんなに謝らなくてもいいのに。

…実際、日本に帰れる保証なんてないけれど。

やっぱり俺は。

 

『いやいいんだ…もし戻れることがあったら、あなたも日本に来るといい』

 

『そうさせてもらうよ』

 

サムズアップしながらそう言うとハンターもにっこり笑って握手し合った。

果たせない約束でも足がかりにはなる。

最後はお互いに名乗り合って笑顔で別れた。

ハンターは名をナスカと言うらしい。

 

「さて」

 

依頼を終えて軽くなった荷台で車列は駐屯地へと向かう。

トラックを何度かスイッチバックして反転するとそのまま隊列を組み直してあとはそのまま道なりに。

これからはこのお金を元手にして交易やら資材の購入やらを行っていくことになり、その際にもこういった任務が組まれるのだろう。

要望としてはもう少し道を広げてほしい。

 

「佐島のやつもそろそろヒマかな」

 

このような依頼は複数出されていて内容はきのこ狩りだったり鉱物資源の納入だったり様々だが報酬はすべて同じで、すべて合わせればそこそこの資金になるはずだ。

 

「帰ったらジャギィけしかけてやろ…ん?」

 

駐屯地まであと半分のところに来た時、森の奥の茂みががさりと僅かに動いたのが見えた。

 

ただの風かもしれない。

小動物がどこかから落っこちたのかもしれない。

しかしこの感覚、あの襲撃の日に感じた薄ら寒い感覚。

これはーーー

 

 

グァーオ!

 

 

「モンスターだ!モンスターだっ!」

 

ギャッ!

 

ガシャーン!

 

先頭を走っていた軽装甲起動車が飛び出してきたモンスターと正面衝突して止まり、後ろを走っていたトラックも止まる。

俺は跳ね飛ばされたモンスターが起き上がるのを横目に銃を手に取った。

 

「何でだよ!」

 

安全宣言が出されてまだ一ヶ月経たないくらいなのに。

しかし文句を言っている暇はない。

見たところ相手は完全にやる気であり、危険だ。

 

 

「総員防衛行動をとれ!」

 

「了解!」

 

 

佐島、まさかお前の方もモンスターに絡まれてたりしないだろうな!




味方と判断した相手にはお人好しな日本。
なお相手(と環境)
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