自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「群れの移動が観測された」

「今月で2度目じゃないか」


12話 終わりと始まり

駐屯地 開発地区

佐島一等陸士

 

 

ブロロロ…

トラックが異臭をばら撒きながら通り過ぎる。

今しがた直通路の向こう側からやってきたトラック数量はみな荷台にイズチの死体を満載し焼却炉に運んでいる途中だ。

死体の腐敗による悪臭や疫病の発生を抑えるため死体はすべて焼くことになっているが、ハンターたちの『モンスターの命を無駄にしないため使えるものは剥ぎ取る』『モンスターは自然に還るべき』という考え方には反する。

 

「灰は後で撒いておこうかね」

 

しかし壮絶な戦闘で原型を留めている死体の方が少なく、剥ぎ取れるものもほぼ無い状況だったがために救援に来たハンターに確認したところ二つ返事で火葬の許可を貰ったそうだ。

不始末だと祟られたりするのかな、これ。

ジャギィの襲撃と殲滅作戦の際にさんざん見まくったおかげであの血だらけ骨だらけ内蔵だらけの地獄みたいな光景もある程度流せるようになったがハンターたちはそういう状況は見慣れているのだろうか。

見慣れてるんだろうな。ハンターだし。

いささか過剰な火力をもって撃退したことについて何か言及があるかもしれないが、俺達にできる戦いはこれしかない。

それで手を抜いて戦って死ねとか言われたら全力で拒否する。

 

トラックがすっかり焼却炉の方へと向かってしまうのを見届けて、俺は大きなため息を吐いた。

 

「武…」

 

結論から言うと武は助かった。

しかしもう少し遅れていたら帰らぬ人となっていたかもしれないとの事だった。

搬送を急いだのは正解だったか。

 

"こいつ、IOTV量産するって自分の着てるやつを武器科に渡しやがって…こんなに古い戦闘防弾チョッキ着てどうするつもりだったんだよ"

 

"それを分かってて襲われたやつを庇うために前に…"

 

武を搬送する過程で聞いた言葉が蘇る。

…果たしてそれは、正しい判断だったのか。

 

再生産のためのリバースエンジニアリングは駐屯地のアチコチで行われているし、武のIOTVはアメリカの実績のあるものを自主的に購入したもので性能は申し分なかったから絶好の素材になったと思う。

装備提供をしたのは悪くない。

タイミングがとんでもなく悪かったのだ。

平和宣言の真っ只中、こんな惨劇が起きるなど予測不能であったがいたたまれない。

武が庇わなければその隊員がやられていたし、どのみちこいつの性格なら一発くらい貰いそうだ。

 

俺達が駐屯地に戻る頃には既に輸血縫合手術が始まっており、集中治療室の扉の前で情けない声を上げながら右往左往するジャギィを見て俺は結構堪えた。

扉をカリカリと引っ掻くそいつをなんとかなだめて撫で回しているうちにいつの間にか手術は終わっていて、奴は今は病棟で安静にしている。

まだ意識は戻らず人工呼吸器も取れないが容態が急変することも無さそうだと衛生科からお墨付きを頂きとりあえずの安心はできた。

 

こちらの世界に来てから何度かあった戦闘、今まで死ぬかもしれないとは思いつつも実際に死ぬような怪我を負った事例はなかった。

しかし今回その事例が見事に出来上がってしまったワケだ。やるな武。馬鹿野郎。

本当にあと一歩間違えたら、あと数センチ傷が深ければ死んでいたんだ。

 

お前が自衛隊初の殉職者になるのは…なんか嫌。

だから死ぬな。

 

戦地となった直通路の"お片付け"もあらかた終わったようで、廃車となった特大型トラックを戦車回収車が引っ張ってきている。

その他の荷物を回収したトラックの列とそれに続く若干やつれた隊員たちを見てだいたい何があったかの想像はついた。

 

決してそれは奴のせいではないが、個人的な思念と労いの意を込めた眼差しで衛生科の病棟を睨む…と、視界の端に甲冑を着込んだ大男、ハンターの姿が目に入り…こっちに近づいて来てる?

 

『やぁ、ジエイタイ君』

 

『マークスさんでしたか』

 

咄嗟に身構えていた体を元に戻し挨拶を交わす。

そのハンターとは一度話した知り合いだった。

しかし近づいてからバイザーを上げたのは完全に確信犯だと思う。

彼は俺と数秒間見つめ合ったあと、笑顔を引っ込めて俯いた。

 

『なんと言ったらいいか…大変なことになったな』

 

『…はい』

 

彼は最近この基地との中継地点となったハンターキャンプに滞在して自衛隊からの依頼が来るのを待っていた…というのは半分冗談で、補欠要因として臨時に雇われていたらしい。

…半分は本気なのね。

そこに入ってきた救援要請に急いで飛んできたが到着したときにはすべてが終わっていて力になれなかった事が残念だと。

そういえば、遅れてやってきたハンターの救援部隊の中にマークスと同じ甲冑を装備したハンター…というかマークス本人が居た事に今気がついた。

 

『君たちに睨まれた時は嫌われてしまったかと…』

 

『いいえ、あの時はなんて言ったらいいか分からなくて』

 

あの時間に合わなかったハンターたちにガンを飛ばした事を本人たちはだいぶ気にしていたらしい。なんか申し訳ない。

あれは一時の感情で今は特に気にしていない事を伝えると彼は心底ホッとしたような表情を浮かべて俺の隣に座る。

 

『知らないかもしれないが、君たちに好意を感じているハンターは以外と多いんだ』

 

礼儀正しい姿勢に人当たりの良さと暖かさ、話していて感じる温情。交流開始初期の頃からここを訪れていたハンターはすっかりその気に当てられてみんな自衛隊贔屓になっているそうだ。

全然そんなんじゃないんだけどな。恥ずかしい。

俺達がおだてに弱いってバレてるのか?

 

『社交辞令ですよ』

 

『お世辞は言ってないんだが』

 

『聞いてて恥ずかしいんです』

 

共感性羞恥で死にそうだ。

称賛される、ということに慣れていないからかもしれないが…

 

 

『だから…その…』

 

『あんまり身構えなくてもいいんだ』

 

照れくさそうな顔から一変して真剣な表情でそう述べるマークス。

思っていたことを突かれて返そうとした言葉は喉の途中で引っかかり出なくなってしまった。

 

『君らのいた世界には…モンスターはいなかった、そうだろう』

 

『…そうだ』

 

俺の答えを聞いたマークスは驚きはせず、ただ黙って頷いた。

武器、装備、文化、感性…自衛隊と接していて感じたあれこれからその予想はある程度ついていたそうだ。

しかし自らにとっての、この世界にとっての当たり前である「モンスターがいる」という事実が存在しない世界、というものの想像がつかず最後まで確証はつかなかったらしい。

彼の仲間もだいぶその真実に近いところまでたどり着いているがあと一歩の確証、モンスターが存在しないという"ありえない"事実に阻まれているとのこと。

 

『ギルドの連中もいい線までは行ってるみたいだがな』

 

気づかれた…いや、いい加減気づくか。

 

『…それを知った今、君らを嫌ったりはしないから安心してくれ』

 

俺達が、何よりも"人"を恐れていたことを。

 




話のわかるハンターガチャSSR。
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