自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「商人の件はどうなった?」

「全く進展なしだ」

「…いっそ彼らに頼むか」


18話 進む計画

駐屯地 射撃場

長野二等陸士

 

 

「すっかり元通りだな」

 

俺は()()()()()ジョギングする隊員たちを眺めて呟く…ツッコミの声はない。今日も佐島とは別任務だ。

先日のイズチ襲撃は安全宣言下の不意打ちではあったものの、こういう事例(モンスター襲撃)に慣れてしまった俺達の立ち直りはセルフで驚くほどに速くなっており一週間も経たずとして駐屯地は元の雰囲気を取り戻している。

入院でブランクのあった俺も少々堪えたがそれでも許容できた。

…まあ、死者が出なかったのが一番の理由だろうな。

 

「やるか」

 

構えた得物の照準を円の中心あたりに合わせ─

 

タン!タタン!

 

短い破裂音が連続的に響き渡る。

標的に音の回数と同じ数だけ風穴が開いたのを確認し俺は引き金から指を離した。

 

アオッ!

 

耳元で爆音が響いたというのにこいつは元気だな。

それを調べるための実験だったわけだが…

 

野川が入院したことでチビジャギィの世話係がいなくなり、代役が探されることになったまではよかったのだが何故か俺が選ばれてしまった。

…よりによってジャギィに同僚が食われそうになったトラウマ持ちの俺に任せるか普通?

そう思って聞いたところ食われそうになった同僚その人である佐島が俺に任せろと指名したらしかった。

あいつもあいつで忙しいことになっているのは承知だがそれはないだろ。恨むぞお前…

こいつが全くの人畜無害で大型犬みたいな性格してるのは承知だが怖いものは怖いんだよ。

 

こいつも一挙一動するたびにビクビクする俺を見て反応を楽しんでるようなふしがあるしもうこの仕事やめたい。帰りたい。

やめられないし帰れないな。ハァ。

 

…さて、なぜジャギィに至近距離の銃声を聞かせているのかと言うと、なんだかんだ凍結されていなかったモンスター活用計画の一環としてこいつの運用が上がったからだ。

ジャギィノスサイズに成長したこいつは人一人と小さな荷物程度なら乗せられるくらいにはなっており、重火器を搭載し移動砲架として使えないかとの提案がどこぞから飛んできてしまったものだからそのための下準備を色々と頑張っている次第。

ここに来る前に行ったテストで重さのハードルはクリアしたし、大きな音についても今しがたクリア。

佐島は野川がぜんぜん世話をしないと文句を言っていたが一応こいつの訓練はしていたようで待て等のコマンドもこなせるようになっている。

後は機関銃なりを乗っけて実際に撃ってみるだけだが…

 

なぜガソリン問題が解決した今になって活用計画なのか。

それはハンターとの共同調査の件と関係がある。

 

森の中に入っていくことになる以上、車両の通れない場所も出てくるだろうということでどこへでも入って行けるこいつに再び期待が集まりうんたらかんたら、つまるところモ〇ルスーツみたいなもん。

静音性から他のモンスターに気づかれにくいという利点もあるかもしれない。

…実際そこまで汎用性が出るかは分からないが一応うまくいきそうな気はしている。パフォーマンスにもなるし。

 

俺達がモンスターに手荒に対処したことに物言いたげなハンターが存在することは周知の事実だがライダーみたく従えて共生しているところを見せれば少しはその意見も好転するのではないかと希望的観測がなされているのだ。

役に立とうが立つまいが、とりあえずこいつは向かわせることになっている。

実はパフォーマンス(こっち)がメインなのは…特に内緒でもない。

丈夫な革に包まれているとはいえ分類は非装甲、あまり戦力としては期待されていない。

 

アーオゥ

 

間の抜けた鳴き声を上げてこちらを見るチビジャギィ。

…こいつもうチビって言っていい大きさじゃないな。ジャギィノスサイズだし。

こいつはオスだから…ジャギィオス?ダメだ、寒い。

もう育て始めてふた月ほど経つというのにこいつには名前がなく、呼ぶのに苦労する。

とりあえずの名前で「チビ」と呼びすぎて自分の名前が「チビ」だと勘違いしてしまっていたりするのでもうこれでいい気もするのだが。

どこぞのお医者さんかよ。それはチョビか。

ひとまずこいつの名前はチビでいいや。

 

「あーあ」

 

何を一人で問答しているんだ俺は。

なんとなく悲しくなって再開した開発工事の現場を眺めるとドンチャカ騒音を立てながら建設が進んで行くのが見えた。

完成したアイルー居住区の隣に新たな格納庫と資材置き場が設置されるようだ。

 

進行中の計画は何もこの活用計画だけではない。

武器科は炸薬と薬莢の問題に立ち向かっているし需品科は現地食材での携帯食料作成を研究している。衛生科は医療物資の制作を行い施設科は本職ばりに開発を進めている。技術士と科学科はもう色々と過労死しそうなほど頑張っている。

こうして普通(いつも通り)にしていられるのは各科の頑張りのおかげなのだ。

普通科をやっていて特に取り柄のない俺はそれを眺めるしかないのか。

 

「調査…俺も行こうかな」

 

さっさと調査を終わらせて安全を確認すれば皆内政にしっかり集中できるだろう。

人手はあったほうがいいだろうし、上司に相談してみるか。

無論、俺ひとりが加わったところで調査がよく進むとかは思っていない。自己満足だ。

しかしこういう自己満足と集団への意欲があるからここまで持っているのだと思う。

 

「にしても、よく持ったよな?」

 

アォ?

 

問いかけにチビは首を傾げただけだった。そりゃそうか。

 

…いきなり異界に転移して、あんな状況を経由して、よくぞここまでこれたものだと思う。

離反者も離脱者もゼロ、仲間は増えはしても減ってはいない。

普段の雰囲気も業務をサボって佐島と飛行機雲を眺めていたあの頃のまま、仲間の結束力は以前よりも強い。

人間は閉鎖的な場所にいると内部でイザコザを起こすと言うがそういうものとはほとんど無縁。指揮系統や運営法が全く変化せず、給料なども当然無くなったのに異を唱える声も存在しなかった。

 

もともとこの駐屯地が特殊な環境だったというのもあるが、皆が司令を信頼していた事と、情報をうまく統制していた事と…外側に脅威があったことが大きいんだろう。

外から脅威が来れば内側で結束する、地球でも国家単位であった話だ。それに日本人は無意識に属する集団やコミュニティを好むらしいからな…知らんけど。

変わることを恐れる心理も影響したかもしれない。

 

各科の努力と仲間内の結束によって世界が変わっても持続中の「いつも通り」。

これからも()()()()()過ごしていくための行動は大切だ。

 

「俺も変わらないための努力をしましょうかね」

 

明日も、一ヶ月後も、一年後も変わらず皆で笑って過ごせるように…できればその前に日本へ帰りたいが…できることをしよう。

 

俺はチビを連れて上司のもとへと向かった。

 

 




ライダー計画始動!
基地は各科の頑張りでギリギリ持ってます。
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