自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「例の里だが、依頼はないのか?」

「取り下げになったらしい…」


20話 情報係の思悩

調査キャンプ 入口

フレキ

 

 

「こりゃ大仕事だ」

 

キャンプの入り口にこれでもかと積載された生活物資が今回の計画の大きさを物語る。

少し前に起きたイズチ襲撃の出所を調査する"だけ"という言い方は違うかもしれないが、それにしたっていささか過剰な準備だ。

ハンターが普段行うような普通の調査ではないことが全てと言ったらそれで終わりなのだが。

 

「共同調査か…」

 

ここから"少し"(彼らの単位で150km)離れた地点に住処を構える方々、自衛隊の姿が浮かぶ。

そう、今回は彼ら自衛隊との共同調査なのだ。

彼らから開示された情報と共同調査の報せをセットで受け取ったギルドは過剰なまでの物資と予備人員を寄越し、問題を起こさないようにとの厳重な注意までつけてくれた。

彼らの明かした正体のことを考えれば残当だとも取れるが、俺はいささか行き過ぎた心配のように思える。

 

「なぁフレキ…ジエイタイはいつ来るか聞いてるか?」

 

作業が最終調整に差し掛かり暇になったのか、アルがこちらに歩いてきた。

 

「団長が先ほど通信を受け取ったそうだ。こちらの準備ができ次第2時間で来ると」

 

「あの距離を2時間か…」

 

腕を組むアル。

急いでも半日はかかる距離を2時間で、それも陸路で済ますとは確かに未だに信じがたいことだ。

アイルーたちが全力で引くネコタクでも倍かそれ以上の時間がかかるし運べるのはせいぜい一人。

 

「あの乗り物…クルマか」

 

「ああ」

 

「乗り心地良かったよな」

 

だが、彼らが広く運用する動力機関を搭載した荷車、自動車または車と呼ばれる乗り物は違った。

会談の際に一度その速さと快適さを経験しているが、あれが純粋な機械(からくり)である事を聞いて驚いた記憶がある。

 

「空を飛ぶ乗り物もあるんだって?」

 

「…らしいな」

 

「飛行船より速いって話じゃないか。あれが飛ぶとこ、近くで見てみたいぜ」

 

彼らを見たあとでは我々ハンターは、というかこの世界ではあまり乗り物が発展していないように思える。

飛行船や砂上船、あとは普通の船が思い浮かんだがあれらは行けない場所や行きたい場所に行くための必要に伴って生まれたもので利便性を求めてさらに進化させようという動きはほとんど無い。

それに陸路は草食モンスターの引く荷車、空は翼竜と既に利用できるものがあった。

あとは何より…

 

「ライダーなんて初めて見たぞ」

 

「そのレウス、本当に暴れたりしないんだろうな」

 

新しくギルドから派遣されてきたハンターたちがライダーを遠慮がちに取り囲んでいるのを見て俺は一人で納得する。

 

彼ら自衛隊が元いた世界にはモンスターがいない。

どう猛な野生動物の一つは居たのだろうが、見かけたキャラバンを片っ端から襲うようなモンスターは居なかったはずだ。

日常的に襲われるような危険を切り捨てることができたからこそインフラやそれに対応した乗り物を進化させることができたのだろう。

 

こちらの世界で個人用乗用機械を作るとなるとモンスターの襲撃を考慮して装甲化または大型化、多くの場合両方を避けられず利便性や運用性を捨て去ったものとなってしまうだろう。

機関を搭載した車が登場しないのは他にも様々な理由があれどモンスターの存在が大きな一因、次点に技術力の問題が来る。

…と語ってみたものの、私の専門は情報収集であって技術士ではないので正確なことはわからない。

彼らの扱う動力機関の内部構造が分かれば職人たちの手で真似ることもできなくはないと思いたい…が実際のところは普段ならば全権の信頼を置くギルドの職人たちの技術でも彼らの扱う装備の一つ作れるかも怪しいと思っている。

彼らの技術力は"我々より遥かに高い"事実以外測定不能なのだ。

連絡用として貸し出され、ついさっき団長へ連絡を寄越した"無線装置"も中身がどうなっているのか見当がつかない。

 

と、レウスが翼の手入れを止めて森の一点を見つめ始めた。

跨る茶髪のライダーも同じ方向を見ている。

程なくして視線の先にあった草むらが揺れ、一人の男が現れる。

 

黒い小銃(ライトボウガン)を背負った緑の服の…自衛隊だ。

その彼は露骨に表情が明るくなったライダーとレウスに近づいていき何かを話し始めた。

…そんな様子を見た派遣組ハンターたちの話題はすぐさま自衛隊についての事へと切り替わる。

 

「あれがその…ジエイタイってやつか?」

 

「噂じゃ他の世界から来たって聞いたぞ」

 

「そんな連中と共同調査なんて大丈夫なのか」

 

「ギルドからの情報を信じるなら相当の手慣れだと…」

 

俺は派遣組ハンターたちの間に不安が立ってきた辺りで流石に割りこもうとしたアルを制止する。

 

「問題ないさ、彼らは平和のために調査に参加するんだ」

 

確かマークスと言ったか、彼を中心にこのキャンプで臨時に雇い入れていたハンターたちが自衛隊の事を語り始めた。

派遣組のハンターたちは通常の依頼と同じ仕組みで集められた者たちであるゆえにギルドナイトより同じような境遇のハンターから話を聞いたほうが信用できるだろう。

そうして一連の話を聞いた派遣組ハンターたちの反応は半信半疑といった感じだが先ほどよりはましになった。

 

「心配なかっただろう」

 

「そうだな…でも機密一歩手前の情報もあったぞ」

 

「さて、どこから仕入れたのやら」

 

身なりや装備が違えども中身の部分、彼らの人間的な性格については日常的に命の駆け引きをするハンターよりも柔らかく、落ち着いた人当たりのよい対応は関わった多くの人間を味方につけていた。

だがこれ以上民間に任せすぎると統制している情報が漏れてしまいそうな感じがする。今も2、3個ギリギリのものがあった。

ギルドとの関係が深い我々よりも彼らから情報が得やすいというのもあるか。情報を扱う身としては少し羨ましいが今後は民間分類のハンターたちにも注意しておく必要があるな。

 

本部派遣のハンターが調査に加わることについて幾らか不安があったが彼らが間に立ってくれるならなんとかなるだろう。

と無意識に上がっていた口角をアルに指摘される。

 

「フレキ、お前ジエイタイのこと好きだろ」

 

「お前もな。俺は集まった情報から客観的に判断しているだけさ」

 

 

「私は少し贔屓があると思うがな」

 

「ウェザ…」

 

いつの間にか後ろに居たウェザに険しい顔をされていた。

自衛隊に対し強硬派の姿勢を崩さない彼はこの状況をよく思っていないらしい。

 

「奴らはライダーも参加させるといきなり具申してきただろう、やはり信用ならん」

 

「でもよ、ライダーと仲良くなれるかもしれないチャンスじゃ…」

 

「アル、お前はロマンチストが過ぎる。眼の前の状況と危険を見極めろ」

 

「そしてフレキ、どこまで知っているかは関係ない。前提として奴らは部外者なのだ。警戒心が抜けている」

 

「警戒した上での答えだ。少なくとも今は彼らを信用できる」

 

「今はそうだろう、だがその後はどうだ?奴らは危険だ」

 

ウェザの言うことは間違ってはいない。

彼らの操る測定不能の技術力が我々へ向けられる危険性がゼロではない事は理解している。

しかし何より彼らがそれを望んでいない現状、こちらが過度に身構えていては双方ともやりづらい状況を招いてしまう。

 

「彼らの危険性のことは誰よりも理解しているつもりだ。その上で今はその時ではないと言っているんだぞ」

 

「その場をしのいだだけでは駄目だ。…これは私だけの意見ではない」

 

口を挟もうとしたアルを制してウェザが続ける。

先日の情報開示からギルドナイト含むキャンプ内のハンターでも意見が割れており、ギルド本部では異界の軍隊である自衛隊をどう扱うかの議論が現在進行形で行われていると。

 

「持ち帰ったイズチの亡骸を見た者は怒りに震えていたぞ」

 

「彼らの小銃(ライトボウガン)が強力であることは今更の話だろう」

 

俺の淡白な返事が気に触ったか、ウェザは顔をしかめて強い語調で言う。

 

「フレキ、お前はどうしてしまったんだ!奴らへの対策を一番に練っていただろうに…」

 

「そして彼ら自衛隊のことをよく知った。それで間違いだったと気づいたんだ」

 

俺達はしばらく睨み合ったが、ウェザの方から先にどこかへ行ってしまった。

 

「もういい、ギルドは既に動いている」

 

「………」

 

その後ろ姿を見送って、俺とアルは何も言えない気分になった。

始まる前からこんな状態とはこの先どうなるか心配でならない。

 

「…確かに、この後のことは大変だな」

 

 

ライダーと民間ハンターたちを引き合わせて談笑する自衛隊員。

微笑ましいであろうその様子を見守る心境は複雑だった。

 

 




長らくお待たせしました。
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