「ジエイタニウムになるんですかね?」
「…却下だな」
駐屯地 化学科実験室
二村三等陸曹
「ムッ…」
私は
転移直後からこちらの世界の分析を始めているために想定外のことが起こったとかそういうわけではないのだが、何というべきか…
装置に投入しなかった分のサンプル液を目の高さに掲げる。
見た目は本当に何の変哲もない液体だ。
これは駐屯地の外側から採取したこの世界の土壌成分を溶かしたもので極めて陳腐と言える存在のはずである。
私はもう一度分析結果を見る。
・セルロース
・リグニン
・フルボ酸
・ポリアミン
・リン脂質
ここまではいい。よくある土壌有機物だ。
・データにない分子(セルロースに類似)
・データにない分子(ペプチド系)
・データにない分子(謎)
・データにない分子(謎)
・謎分子
・謎分子
・
・
・
あとが完全に謎なのである。
謎なのである。
今日までに類似の分子すら見つからないマジモンの謎分子が29個も見つかって眉間のしわは増える一方。
「何なんだよ」
転移前の最新データを参照しているために、データが古くて一致しないということはない…はずだ。
だとすれば何なんだというと、一番考えやすいのはやはり。
「未知の元素…だよな…」
違う世界に来たのだ。十二分にあり得る話だろう。
実際に別のチームが未知の元素の尻尾をつかんでいる。
単離には至っていないもののそれが安定した状態で存在するという事実はもう確定だ。
前の世界で新元素と言えば重ウランビームを重い元素に向けて照射し極々低確率で生まれ、その後数ミリ秒にも満たない半減期を経て崩壊するような学術的な意味しかないものだった。
だがこれらは、存在が割れた謎の元素は今のところすべてが安定元素。
これまで採取場所を変えて何度も行った土壌分析の全てにおいて検出されたことからこれらの謎元素が広く分布しこの世界を形作っていることは容易に想像できる。
「うむ…うーむ…」
実は今しがた飲んだコップの水にも、昨日食べたモンスター肉のローストにもこの謎元素はたぶん大量に含まれている。
初回の成分分析時にももちろんこれらの物質は検出されていたが、既知の有毒物質が検出されなかったこと、鳩とネズミを用いた動物実験で問題なかったこと、物資枯渇の危機感からスルーされ今までこうしてきたのだが…きたのだが…
やっぱり気になる毒性。
はたして人間が、
実験に協力してもらった鳩もネズミもピンピンしてるし(むしろ元気になっている)短期間の問題はないらしいが…
整っていないとは到底言えないこの設備を使っても単離に今まで手こずっている物質、本当に何なのか。
薬品の備蓄が少ないため大っぴらに使えないというのもある。そういうことにしておこう。
「………」
ざわわ、と開いた窓から巨木のざわめきが聞こえる。
あんな巨木が育つとはよく考えればおかしなものだ。
切り倒されたものを分析すると密度や成分は殆ど地球の木材と同じだったが、やはり謎元素と謎分子を含んでいた。
モンスター肉も然り。土壌に大量に含まれるような存在ならば当然かもしれないが。
この生命に溢れすぎた世界はもしやその謎元素のお陰で成り立っているのではなかろうか。
「…そもそもこの星はどうなっているのか」
満点に広がる星空に天の川銀河の姿はなく、月は全く別の表情を見せ(クレーターや海の形が全く違う)、重力加速度も地球よりわずかに低いことからここが地球かどうかという議論は速攻で消滅した。
…のだが、重力加速度が低い割には地平線が遠く、この星は地球よりも大きいくせに重力が(誤差単位で)弱い変な星である事がわかった。
それに酸素濃度が高い以外地球の大気と全く変わらない組成、同じ進化の系譜を踏んだとしか思えないような容姿の人間、ありえないほど生命に溢れた自然ともう…もう、何だろうね。
不思議と元素分析が進めばこの謎も解けていくように思えた。
「…さて」
遠くの空でライダーたちのリオレウスが空を舞っている。
この謎を解き明かせば私も空を舞えるだろうか。
謎元素
モンハン界の不思議物理──主に生き物の巨大化や生命力の強化を司ったり司らなかったりするかもしれないししないかもしれない。謎。
実は"龍因子"等と呼ばれる存在。