自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「なんだって新たに作れるもんだな」

「例のごとくそれを強いられてるんだけどな」


閑話 技術者たちの憂鬱

駐屯地 反射炉

宮島技術士

 

 

「設備が揃ってりゃなぁ…」

 

「これで揃ってないなんて言ったらバチが当たるぞお前」

 

俺は同僚の技術士の肩をグリグリと揉んで悶絶させると作業を再開する。今は鉄の純度を上げる大事な段階なのだ。

 

この駐屯地は整備拠点やモスボール拠点として扱われていた経緯からかプレス機やフライス盤、旋盤などといった加工機械がある程度揃っており絶大に我々の手助けをしてくれた。

技術士を名乗らせてもらっている立場であるが自分のそれはその技術を活かす場所と必要な道具がなければ役に立たないものだ。

その両方が揃っていたことにただただ感謝。あれがあれば、これがあればと歯噛みすることになったら一番嫌だった。

 

「…俺もまさかこんなに苦労する羽目になるとは思わなかったよ」

 

しかし実際問題とてつもなくキツい。

ライフラインと補給線を絶たれた自衛隊を現状維持するためだけの地盤を固めるのにもにも4ヶ月かかった。油田と高純度鉱脈の発見というボーナス…我々が使えるようにする訳なので正確には違うが…があってもだ。

 

本格的にそれが始まったのは(我々にとっては)ごく最近、施設科の協力で高炉、転炉、炭焼炉、反射炉の4つの炉が完成したあたりから。

金属精製加工能力を得た我々はそれはもうとにかく頑張った。

今まで言い訳に等しかった材料がないという言葉はもう使えない、いざ"直す以上の何か"ができるようになってしまったものだからそれをしないという選択肢はなかった。

 

そして、案の定大変な苦労をした。

はじめは喜々として取り組んでいたものだが、直すことに慣れていてもイチから作るということはまた別であることを思い知らされると同時に当たり前の事実とぶつかってヤケドすることになった。

技術は確かにある。加工機械もある。施設科の協力で重機も使える。しかし当たり前の話だが…ひとりでにものが出来上がることはなく、誰かがそれらを駆使し、操作して作らなければならないのだ。

手始めに要求された上水道管は鋳造とプレス機の酷使によってなんとか完成、ガス欠にハラハラしながら行った溶接も結果はどうにかなり納品に成功した。

 

だが隣で行われていた石油精製施設の加工については400を超える部品を3日間休みなくほぼワンオペかツーオペ(1日だけ俺が参加した)で作っていたものだから疲労と心労が半端なかったようで担当していた彼は一週間ほど寝込んでしまい、精製施設が実際に動く姿を見たのは安定稼働が確立したあとだったという。

勿論その部品の元となる鉄材を製造した同僚の技術士と建設科の隊員たちも休みなく働いてデスマーチ状態、アイルーの乗るけん引車によってぶっ倒れた隊員が運ばれていったのも記憶に新しい。

 

「もはや製鋼所の人間だよな」

 

「否定はしないさ」

 

そして次はアイルー居住区の整備…に必要な構造材と電気設備の製造依頼が飛んできた。

倉庫として使われてきた経緯から災害派遣用の物資なども整っており避難所住宅のプレハブ建設用資材も置いてあったのだがまぁ当然足りない。そこでやっぱり我々の出番というわけだ。

構造材ということで引き伸ばして整形後にプレス切断する程度、あまり手間はいらなかったがなにぶん要求数が多かった。

やっぱり死ぬほど疲れたし製鋼メンバーたちは精気を失ってうーとかあーとか言っていた。ヤバかったねあれは。

 

「で…今度はホントに製鋼所を作ってしまうのか」

 

「俺はやる気だぜ?」

 

先日司令が発布した『自衛隊がこの世界で生き残る為の成長目標』にはもちろん技術的目標も記されている。

 

具体的にはこうだ。

 

 

・RHA(均等圧鋼板)、防弾鋼板を製造可能な設備施設の建造、整備

 

・高度な合金を製造、加工可能な設備施設の建造、整備

 

・旧式兵器を再装備及び新規生産可能な設備施設の建造、整備

 

・歩兵火器の新規生産可能な設備施設の建造、整備

 

・薬莢及び弾体の新規生産が可能な設備施設の建造、整備

 

 

これらを真に受けるならば本気で工場を作ることになる。

…いや、最終的には作ることになるのだろう。

スケールが大型化してあまりピンとは来ないが、どんな機械だってはじめは誰かが作ったから存在するのだ。

存在することを知っていて、その仕組みも、作り方も想像できるのに作ることができない訳が無い。

 

部品一つづつでも作って絶対に完成させてやる。

俺にも技術者の意地というものがあるからな。

 

…結局俺は今まで磨き上げてきた自分の技術が誰かから必要とされ、それで喜ばれることが嬉しいのだ。

変態どもだとかよく言われているようだがそれでもいい。

私が作りましたって胸を張って言えるんだから。

 

「やってやるよ、"直す以上の何か"をな」

 

これまでやってきたことの何倍も大変な事が確実に待ち受けているだろうが、それでもやってみせる。

技術を嗜んだ人間はできないと言わない。言えない。言いたくない。

 

「強いられてるよな」

 

「仕方ないだろ」

 

互いにどつきあって止まっていた作業の手を再び動かし始める。

さて、まずはこの仕事を終わらせるところからだ…

 




材料製造/加工は一番大事なことですから…
彼ら技術士と加工機械がなければ半分くらい詰んでいました。

実は挿絵を描こうか迷っています。
PCのペイントでちまちまやる予定なので絵柄はかなりゆるーくなるかと…
読んでいただいている皆様にも伺っておきたいのでアンケートをば。
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