「やる気100倍だぜ」
「手が止まってたら同じだ!ほらサボるな!」
「ひぃ!」
駐屯地 倉庫
三壁一等陸士
「なぁ、弾詰まってるぞ」
「………」
「感なし、オワリ」
俺はとうとうお釈迦になったハンドローダーをがしゃん、がしゃんと無心で操作し続ける同僚から離れて無事なほうのローダーを操作する。
いかれたローダーは技術士にオーバーホールを頼んで直してもらうとして、魂が抜けてローダーのハンドルを下ろすだけの存在となってしまった同僚はどうしようか。
戦闘が落ち着いてきた今、弾薬の消費は訓練用の小銃弾少数に留まりハンドロードでも補えるレベルであるがそれでも多い。無限に思えるノルマは健在でこうなるのも無理はなかった。
「評判はまあまあか」
今手元にある資料は各部隊から貰った試製天然炸薬1号、要は火薬草から抽出した炸薬の試作品を使用した弾薬の実射データと評価と感想。ざっくりまとめると性能についてはおおむね良好、整備性の低下がみられるもののそこまで酷くはない、という感じだ。
当然試作品であるので今後も改良が加えられていくことは確定しており、化学科隊員からは抽出精製の純度を上げればかなり良質な炸薬ができるだろうと前向きなコメントを頂いた。
有用性が各幹部に認められれば量産用の設備機器の整備まで一気に行けそうだとも言われている。
と、炸薬の問題は(化学科と技術者たちのとてつもない努力のおかげで)何とか解決しそうだ。
「あとは…」
資料をその辺のデスクに放り投げ、空いた手でジャラジャラと音が鳴る布袋を手繰り寄せる。
中には黄色い輝き、銃にとって重要な要素が銃弾ならばこれは弾薬にとっての重要な要素、薬莢だ。
これは例のごとく回収したものである。が、そう何度も何度も詰め直して使っていると流石に限界が来る。ましてやハンドロードなのだ。
弾体についてはまだ備蓄があるものの薬莢のストックはもう殆どなく、そろそろイチから生産しなければ供給が追いつかない。
それに忘れてはいけないのが炸薬に火をつける重要な役割を持つ雷管の問題。手の空いた技術者に頼んでプレス整形にて発火薬を詰める前の状態のものを作ってもらっているが原料の銅の生産が難航している事でまだ消費量を上回るほどにはなっていない。
発火薬は火薬草由来のものに添加剤を加えれば殆どそのまま使えるというデータを取ることができているのだが今のところすべて手作業。手作業なのだ。
大変なんてもんじゃない。
科内のアイルーたちはそんな様子に喜んでネコの手を借してくれたが、いかんせん彼らの手には細かすぎる作業であり一度誤爆が起きかけてからは遠慮してもらっている。
今は科内の手の空いた人間を片っ端から引っ張ることで人海戦術を展開し無理やり間に合わせているが…
万単位の雷管一つ一つに発火薬を詰めてふたをする作業は気が狂いそうになる。
というか狂う。
一応、雷管部品を別に製造する必要のないリムファイア式薬莢への転換も考えられていたが採掘できるとはいえ今は少しでも資源が惜しい状況。
リロードが難しく使い捨ての運用になるリムファイア式を採用することは相対的に非効率として結局今後もボクサー式雷管と通常の薬莢を生産することに。
手作業での組み立ては確かにとてつもなく大変だが何年もかかる大変なプロジェクトというわけではない、労力を割けば不可能ではない事柄。
なので頑張れ(訳)ということになったわけだ。
オ゛ーーッ!!(発狂)
とはいえ、発火薬の生産も化学科の手作業なので安定していないのが現状。
そろそろ持ち込んだ物資と機材では限界が来ているのは誰もが知っていた。
上の指示にもそういう意図がしっかり含まれていて、今できることをまずやれと言うことなのはこちらも分かっている。
それに文句を言うのはお門違いってなもんだ。
「何も座して待ってるわけじゃないさ」
俺は倉庫の片隅に置かれた板金製の機械を操作する。
これは手動のプレス機、ガレージにある工業用のものと比べると遥かに簡素だがやりたいことはほとんどできる。
ちなみに結構前に要望を出しておいたら手の空いた(とても手の空いたようには見えなかったが)技術士が造ってくれたものだ。ありがたい。
使い方は簡単、薬莢を溶かして作った薄い真鍮板をセットしレバーを下ろすと丸く打ち出され、少し凹んだ部品ができる。
これをあと3回ぐらいプレスすることで使える薬莢が完成するのだ。
簡単だろう?
大変だということに目をつむればな!
「作らなきゃ…な」
それでもやらなければならない。
この弾丸の一発一発が、今後の俺達を支える力、守る力となるのだ。
それに。
「弾切れで死ぬなんてカッコ悪いからな!」
…爺さんの爺さんの意地。
いつでも弾は切らすな、そう言われてきたんだ。
俺も職人の端くれとして頑張るよ。
だから…
「もうちょい消費抑えてくんないかな?」
素早く動く標的への実弾射撃訓練を絶賛開催中の普通科に妬ましい眼差しを向けてしまうのであった…
弾切れの危機は手作業とリサイクルで回避。
えっ、砲弾?機関砲弾?ナンノハナシカナ…
まだまだ大型弾の再生産は遠いです。
観覧、感想、評価、誤字報告など本当にありがとうございます…