自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「彼らは乗るだろうか」

「乗る、絶対に」


2話 ふたつの作戦 ①

駐屯地 工業区画予定地

細田一等陸士

 

 

「この辺もだいぶ落ち着いてきたなぁ」

 

不意に口からこぼれた言葉は今踏みしめた区画に対してのもの。

かつて(一ヶ月前)駐屯地と分屯地を繋げていた連絡路は今や開発区画の延長線上となり、地ならしを終えてしまった後には連絡路の名残はない。

駐屯地と分屯地は事実上連結し外見的には一つの基地に。

指揮系統こそ別れているもののそれぞれの隊員の接触機会はグンと増えた。あと無駄話も増えた。

 

「拡張工事も終わりかぁ」

 

「バカ言えこれからが本番だ」

 

駐屯地の方から来た施設科の隊員がどつきあっているのを遠目に見ながら区画分けされた土地を歩く。

拡張工事が終盤に差し掛かったあたりで司令が発布した『自衛隊がこの世界で生き残るための成長目標』。その中で語られている製鋼施設の建設予定地であるこの場所はしばらくすればまた"賑やか"になるんだろうな。

 

連絡路の開通に喜んでいた頃にはまさかこうなるとは思っていなかった。

この世界で生きなければならない、生き残らなければならない。

自分の中でその意識が完全に浸透するのはまだ先かもしれない。

…先かもしれないが、どのみち計画はどんどん進むので次第に慣れていくだろう。人間の適応力っていうのはそういうものなんだ。

 

「調査隊は今頃森の中か」

 

そして今最も熱い話題は交易の再開や開発計画に区切りがついたことを差し置いてハンターズギルドとの共同調査。

昨日の朝礼で司令が語ったとおりこの世界で強い影響力を持つハンターズギルドとの連携は必須級と言える要素で、彼らを仲間にできるかどうかで今後の展望が大きく変わってくるのはヒラ隊員の自分にもわかる。

特に安全保障と資源の問題、人の衝突を避けるためには彼らとの友好が欠かせないだろう。

というのもこの辺りの森林や資源は現在自分たちが関わりを持つドンドルマギルドの管轄下らしいのだ。

開発計画を建てる中で一応の許可は取り付けているそうだが、無許可で広げてしまっては顰蹙を買いかねないので拡張は慎重になっている。

 

その点近くに里を構えていたアイルーたちが自衛隊に帰属したことで彼らの利用していた資源や水源が自衛隊管轄になったことはかなり助かったな。…なんというか、アイルーたちには助けてもらってばかりな気がする。

 

キュラキュラキュラキュラ…

 

分屯地からやってきたM4特車がキャタピラを鳴らす。

合体して区切りが消えかかっている駐屯地と分屯地、いつかは"旧"分屯地とか呼ばれるんだろうかと思いつつ、自分は寮に戻ることにした。…ところに声がかかった。

 

「細田陸士、幹部から呼び出しだ」

 

「自分何かしました?」

 

反射的にそう答えてしまって恥ずかしくなっていると声をかけてきた隊員は渋い顔をして笑った。

本部の方の情報科隊員だろうか、その表情から怒られるとかのそういうことではないことは察したが、分屯地のいち隊員でしかない自分になんの用があるのだろうか。

 

「ライダーとの共同作戦が予定されているんだけど、それに参加してほしいんだ」

 

「共同作戦…」

 

「詳しい話は向こうでするよ、もうメンバーは集めてある」

 

「人数の方は?」

 

「陸士が32人、パトロール隊のアイルーが20人。でも分屯地の方にうまく伝わらなかったみたいで直接招集に来たんだ。君が最後の一人だし一緒に行こうか」

 

そうして寮に向かいかけていた足を本部に向け直した道すがら、自分は色々聞いてみることにした。

 

「でも、なぜ自分が?」

 

「実戦経験者から無作為に選んでいるんだ、個別に名前が上がったとかではなくてね。因みに、分屯地からは12人が参加しているよ」

 

「…人手が足りないんですか?」

 

「そういうことでは…まあ、共同調査のバックアップと開発計画でだいぶ制限されていることは事実だね」

 

「なるほど、それで作戦内容は…」

 

作戦内容はライダーが決まってこの時期に開催するという狩猟祭への参加。周囲に生息する小型モンスターを狩猟し供養して自然とモンスターへの感謝を告げ、末永い発展を願うものだという。

 

のだが、自衛隊の転移とその後の戦闘で周囲に生息していた小型モンスターはほぼ駆逐。今年の祭りは開催できないだろうとの言葉を受け、償いの意味を込めて参加することになったらしい。

こちらとしては完全にやむを得ない状況、ランポスの巣に至っては不可抗力だったことはライダーたちも分かっていてこちらを咎めるような言葉はなかったそうだ。

が、幹部たちはだいぶマズいと判断しているとのこと。

 

この世界でモンスターと呼ばれる生き物は強い精神的影響力を持っている。

日本で例えれば狼を大神(山神)と呼んで崇めたように、アイヌ民族が熊を山の神(キムンカムイ)と呼んだように…形として似ているのはこの辺りだがこちらの世界でそれは地球のそれを遥かに上回り、生活や文化の根底まで及んでいるようだ。

 

ハンターたちが大きな例、自然とモンスターを強く結びつけた思想を持つ彼らはモンスター即ち自然との上手な付き合い方を探し実行することを行動理念としている。

であるからモンスターの生活や勢力を崩すことは自然を破壊し書き換えることと同義、自衛隊の一連の行動はやむを得ない事情にあったことから少々見逃されはしたものの激しい怒りを買ってしまったわけである。

 

一応、ライダーたちはモンスターを飼育し時には使役する関係上モンスターを対等な存在であると認知しているふしがあり、相互理解と交流を重ねたことで自衛隊への敵意はほぼ無いと言っていいレベル(情報科調べ)だそうだ。

が、(くだん)の祭が正常に開催できなくなったことについては申し開きができるものではないので少しでも埋め合わせを、具体的には自衛隊も祭りを通して自然への敬いと敬意を学び現地文化への理解を深めることが目標になっている。

 

「って感じでね、あとは僕らが肉食モンスターを駆逐してしまった関係で増え…あっ」

 

と、気づけば本部は目の前に。

話し込んでいて気が付かなかったが、もう既に駐屯地の真ん中まで来ていた。

 

「…到着する前に全部話しちゃったね」

 

「あー…えっと…名前を聞いてなかったなって」

 

「情報科の半田だよ、よろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

「……」

 

「……」

 

自分たちは妙に気まずい空気を感じながら会議室へと向かう。

作戦内容についてもあまり明るい気分になれるものではなかったが、話を聞く限り必要な事だ。

正直倉庫の倉庫(分屯地)で過ごしてきた身に大事な任務が回ってくるとは思っていなかったが、必要は満たせる人間のつもりだ。

 

…しっかり、やろう。

 

そう口ずさんだあと、半田さんが同じことを口にした気がした。

意気込んでいるのは一人じゃない。そう自分で理解してもう一度頑張ろう、と自分に言い聞かせた。

 




駐屯地周辺の森では天敵を失ったケルビが繁殖しています。
日本の山林みたいだぁ(直喩)
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