自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「力を持っているのが厄介だ…」

「過度に制動するべきではない相手だな」


8話 事後処理

駐屯地 倉庫前 荷降ろし場

細田一等陸士

 

 

「大漁大漁!」

 

「ベーコンいっぱい貰ってきたぞ!」

 

「すげぇ、これ全部が鹿(ケルビ)ベーコンなのか…」

 

帰ってきた輸送車が各々の乗員と戦利品を吐き出し、迎える隊員たちもそれに応える。

狩猟祭は問題なく終わりを迎えた。ライダーが仕留めた数が64匹に対し自分たちは67匹仕留めて接戦ながら勝利、荷車一台分のベーコンを手に入れてみんな上機嫌だ。

逆に弓でそこまでできるライダーたちも凄い。本職の意地というものだろうか。

 

「僕らにとっては副産物のようなものだけどね」

 

「それでもありがたいのニャ」

 

仕留めたケルビはすべて持ち帰ってアイルーたちへのお土産に。今は彼らの中で制服を作る計画が進んでいるらしくケルビの革はだいぶ需要があるようで喜ばれた。

 

もちろん革だけではなく肉も骨も内蔵も、干したり焼いたり砕いたりして何らかの加工品になろうとしている。動物は本当に余すところがない。

まさに自然の恵み、大地とケルビに感謝。

…ライダーたちが言いたかったのはそういうことなんだろうな。

 

「…そう、ありがたいね」

 

狩猟祭が終わった後に仲間から申し出があった。

提案者は使えないバックショットを持ってきていた隊員、兄に漁師を持つという彼。話の内容はその兄から狩猟を通して教えてもらった儀式をしたいとの事。

ただ儀式といっても格式立ったものではなく、命を頂いた動植物とそれを育んだ山と自然に感謝の言葉を述べるだけの簡単なものだ。

 

『…山神よ、私を許し給え』

 

()と自然というのがまた日本らしいし、儀式自体も全編日本語で進行したためにライダーたちにはピンとこなかったかもしれない。

だが彼らは自分たち自衛隊の人間も、地球の人間も自然を敬う気持ちと文化があることをきっと察してくれただろう。

 

実際、この世界の人間がこの手の文化に非常に敏感だと知ってからだいぶ辟易していた話題なので、これで少しでも理解が得られたのならいいんじゃないだろうか。

 

「ニャ?」

 

「ああ、いや。何でもないよ」

 

荷降ろしの現場にはかつて食肉加工の職についていたという隊員達が集まって解体ショーを始めていたが向こうでたくさん見たので流石にお腹いっぱいだ。

アイルー達が居住区へと帰っていくのを見送って、自分も寮へと戻る。

が、帰り際に4号車がガレージへと向かうのを見てあとで銃の手入れをしようと言っていたのを思い出し、慌ててロッカーへと向かった。

その道のりになぜか3号車に乗っていた全員がついてきていたのは偶然のはずだ。…多分。

 

「偶然じゃないな?」

 

「メンテの件忘れてただろお前ら」

 

20式を抱えた前田さんと謎の鉄砲を持った同僚が言い合っているがどっちもどっちだ。装備も配属もみんな違うが、思い出すキッカケも考えることも一緒なら案外このメンバーは気が合うのかもしれない。

 

「そう言うお前も!」

 

「忘れてたよ!悪いか!」

 

「えっ逆ギレ!?」

 

あることないことを言いながら各々の相棒(愛銃)を手に取って歩く。その中で自分は無意識に口角が上がっていた。

気が合うに決まっている。うまく行くに決まっている。だって同じ故郷(日本)を持つ仲間なのだから。

 

「おい小夏…何ニヤついてんだよ、キモいぞ」

 

「き、キモ…!?」

 

「なんかいやらしい事考えてたんじゃないのか?」

 

「ベーコンの事考えてたんだよ!」

 

自分が適当に否定すれば皆が食い意地張ってんなお前も…とかあれは本当に旨いから仕方ないだろ…とか言って場が和んでいくのを感じてまた口角が上がる。

 

しっかりやろうと意気込んでいたのは決して無駄ではなかった。だが、必要以上に気を張っていたのは事実。

 

そういうときは気持ちを入れればいいし、そうでないときは抜けばいい。かつて米軍の知り合いにそう言われた事をふと思い出して頷く。

これから1つになるこの基地で、自分はなるべく気楽に過ごそうと決めた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

場面は移って荷降ろし場の喧騒から離れたバックヤード。

帰還した4号車は少し間を置いてから迷いなく人目のないガレージへと向かい、積荷を下ろし始める。

無論、全ては予定されていた事だ。

 

"精密検査"が必要になった車両を保管するという名目で計画の実行以前から予約されていたその場所は、今こうして"エンジントラブル"を経た輸送車の収まる場所となっている。

 

限られた人間しか入れないよう見張りをつけて、細心の注意のもと行われる荷下ろし。見られたくない相手がいる作業は楽しいものではない。

 

「鹵獲品は丁寧に扱え、ボウガンは暴発を防ぐため懸架しろ」

 

「装備類は番号ごとにここへ纏めるんだ」

 

ブツ(死体)は梱包状態のまま8番倉庫へ」

 

百キロ超のものもある装備類を動かすのは大変な作業で、ミサイルラックや牽引車がなければ訓練を積んだ隊員でも10メートル以上移動させることはできなかった。

これを身に纏い、なおかつ振り回して攻撃するハンターの異常と言えるほどの身体能力の高さが伺える。

 

「狩りが終わった感想はどうだ」

 

「…二度と御免です」

 

だからこそ遠くない存在の密猟者のサンプルが手に入ったのは幸運なことで、これから行われる衛生科による解剖と化学科による分析の結果次第ではそのカラクリを解明できるかもしれない。

当然倫理には反する。が、双方の隠密部隊が水面下でしのぎを削る中でそう言っていられる余裕はない。

 

「また行きたいという事だな」

 

「まぁ、言われれば何度でも行きますよ」

 

またモンスターの素材が使用されていると推測される装備類も非常に重要な資料で、ハンターたちの装備水準のみならずこれから対峙するかもしれない素材元のモンスターの防御力を測るにも有用。

 

あとは1番の収穫としてボウガンの鹵獲に成功したことが上がる。遠隔火器が一般的だった地球において、自衛隊においてはボウガンの存在が最も気がかりなものだった。

撃ち合いで負けないのか、歩兵装備で防御可能なのか、またその火力によってはどれほどの威力があればモンスターに対抗できるのかの指標にもなる。

 

「2mの距離で非貫通だったそうだな」

 

「見立てではレベルIII以上の防御力があれば問題ないとの事ですがね、各種実験は行われるでしょう」

 

「IIIAでは駄目か」

 

「フルロードのライフル弾以上の威力はあるようです」

 

自衛隊が銃器(ボウガン)を重視していることは民間のハンターからギルドの暗部にまで知れ渡っているようだが、なぜそこまでの警戒を抱いているのか知るものは少ない。

 

前提として、今回の救出ミッションのような特殊なケースを除き現代的な戦闘において近接戦闘は滅多に発生しない。もし正面から殴り合うのであれば100m以上離れた位置からになる。

あるいは10km以上か、位置が割れているのであれば地平線のはるか先から殴り合うことすらある。

 

逆に接近するというのは非常にリスクを伴う事であり、100キロ超えの全身鎧を纏って戦う余裕などない地球人ことさら日本人にはわざわざ近づいていってモンスターと直接格闘するなどと言う発想は必要に迫られない限り取らない手、普通ならば自殺行為だ。

 

そのため距離を取って戦う事が求められるが、その交戦距離においてこちらに被害を与えうる存在で、なおかつ自らがよく知る銃に類する存在であるボウガンはとくに注目を集めている…と。

そういうことである。

 

「万全を取るならレベルIVか。生産の目処は…立っていないな」

 

「我々は事実上ひとつの国家のように見做されているようですし、早めに手を打たなければなりませんね」

 

「実際にそれを考えるのは我々ではないが、な」

 

この基地ではどこに目を向けても何かしらの計画を持って進めている者が目に入る。

当然、この話も今持ち上がった訳ではなく。

 

「隊員から提供されたIOTVを元にした簡易型の生産の話が上がっていますから、暫くはそれで凌ぐことになりそうですね」

 

「そもそもそれで凌ぐような戦いが起きないでほしいところだ」

 

願うのはそれらの計画が完了するまでの平穏。何か起きるなら体制を整えてからがいいというのは誰もが思う当たり前の話だが、転移してから今までそうだった試しはない。

しかし今回ばかりは少しだけ安心できるだろう。

 

「まぁ、共同調査が終わるまでは大きなことは起こらないだろう。根拠のない安全宣言よりは信頼できる筋さ」

 

「そういえば、()()()()()()()()()()()()んでしたね」

 

汚れた仕事の見返りに提示された本来の報酬、当面の不干渉。

ハンターと同等の装備を持つ相手からの人質救出という不利な状況の任務を与えてこちらの力を測り、情報を持ち帰ろうとしていたと思われるこの依頼(クエスト)はそれだけの報酬では到底釣り合わない。

だが我々の微妙な立場としてはこんなものでも受けるしかなかった。

 

だから、釣り合わせようとしたのだ。

持ち帰れるものは持ち帰って調べ尽くし、逆に探ることでこちらの得るものを増やして丸損とはならないように。敵も味方も命がかかる作戦なのだからむしろそこまでやって当然だろう。

 

「その言葉をどこまで信用するか、ですけどね」

 

その目論見がある程度成功し、相手にとって得られるものが減った今不干渉の約束が守られるのかは分からない。

分からないし、いつも悪い方向へと考えるのが仕事だった我々に言わせれば出てくるのは不安と不信ばかりだ。

 

しかし、わざわざ異界に来てまで人どうしの争いをしたくはない。

何だって本当はいい方に考えたいんだ。

 

「…我々が諦めてはいけないな」

 

恐らく叶わないことではあるが、これ以上の仕事が無いことを祈ってみる。

 

《東門で不審な動きあり、2番隊は現地へ急行せよ。繰り返す、2番隊は東門へ急行せよ》

 

「了解」

 

早速飛び込んだ仕事。やはり叶わなかった。

 

それでも、それが組織を守ることになるのならばいくらでもやってやる。

彼は心の中でそう呟いた。

組織を守るため。たとえ相手が同じ志を持っていたとしても、自分は"この"組織のために…

 




ライダーの中で自衛隊の好感度が上がりました。
密猟者の装備を鹵獲しました。
駐屯地と分屯地の隊員の間で交流が深まりました。

ギルド暗部は黙っています。
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