自衛隊inモンハン 異空の守り人   作:APHE

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「こんな前例は無い。やりづらくて敵わん」

「相手も同じだ、ただ後れは取らん」


10話 議論、激論

駐屯地 会議室

陸奥陸将

 

 

「ひとまず、話を前に進めましょう」

 

武器科幹部の疲労の混じった声が静かになった会議室に響く。

今までの会議で誰かが真剣ではなかった事はないのだが、真剣な話を長く続けると人は疲れてしまうのだ。

 

武器科幹部だけではない、施設科、衛生科、通信科、情報科、普通科…すべての幹部が渋い顔を浮かべて黙り込んでいる。

しかし議論は終わらない。

白熱した言葉の応酬の時間が過ぎ去り、一言が重くなる時間が来ただけだ。

 

「…では、もう一度初めから。密猟者に加担していた商人、彼らの所持品からは間接的なギルドの関与があったものと解釈できます」

 

プロジェクターのレンズが光り、会議室の白い壁が即席の画面となる。

映し出されたのは血にまみれた書類。そこには商隊をこの地域に派遣するという計画が書き記され、その命令をしたものがドンドルマのギルドであることを示すスタンプが押されていた。

 

「しかし、この書類には密猟者についての文言や加担せよとの言葉はありません。…常に持たせる書類に足のつくような事を記さないというのは当たり前のことですが、私は()()()()()()()()()()()記されていない、そう考えます」

 

情報科幹部はそこまで言ってひと呼吸おき、隣で書類をまとめていたアイルーから追加の資料を受け取る。

スキャナを通して映し出されたその内容はギルドの関与を徹頭徹尾疑うものだった。

 

「ギルドは国家とも見做される巨大な組織です。軍事、経済、流通を担い勢力圏を持つとともに、諜報力にも優れています。もともと彼らの領有地とはいえ、辺境の森の真ん中に転移した我々の存在を把握するほどです。…無線も通信ケーブルも無いのに、です。そんな彼らの中で以前より注目度の高かった密猟者、その動きを見過ごすとは思えません」

 

「密猟者はギルドを介さずに素材を売ることで利益を得ている集団です。しかし商業についても文化的、経済的な勢力圏を持つギルドのことですから、どの商人がどのような事をして稼いでいるのかを把握していたことでしょう。そこで当然、不自然な取引きをする商人も見つける事になる」

 

スキャナの書類が入れ代わり、ふやけた日記帳の1ページが映し出される。

 

「ギルドは密猟者を悪の枢軸のように言いましたが、調べるほどに彼らもただの人間です。おおかたが生活に困って違法な稼業に手を出すもの、金欲しさに密猟に走るもの、モンスターを恨むもの…そんな具合ですから、密猟で得られた素材を買い上げる商人もいる訳です。珍しいものや禁製品に目がないとか、金欲しさだとか、そちら側の理由もいくらでもあるでしょう」

 

「そこで、密猟者に友好的な商人たちを増員を求める密猟者のキャンプに付近に派遣すれば…どうなるかは先日起こってしまった事態の通り。そこには確かに密猟者がいて、商人もいた。それが我々の味方かどうかの言及ははじめから無かった。全ては予定調和だったのです」

 

幹部たちからため息が漏れる。

ギルド側としては"ただ商人を派遣しただけ"であり、それ以上は憶測の域を出ないために追求の余地がない。

 

「キャンプにいるハンターたちはこの出来事を知らない。故に正規の窓口での抗議は不可能、裏の窓口ではそもそも取り合われる事はないだろう…」

 

「してやられたという訳だな」

 

「前提として、彼らが我々の指摘を受け取るかという疑問もある」

 

ギルドにとっては異界から突然現れた存在、キワモノ扱いの我々が何か言い返してまともな話ができるとは思わない。例外として向こう側から歩み寄られれば対等に話せるかもしれないが、それが実現したのは現場の指揮官が優秀でなおかつ融和的であったからであり常にそのような状況を期待するべきではない。

彼らの領有していた土地の一部を間借りしている状況の今、これ以上不利になることはできるだけ避けたいのだ。

だから利益のない影の任務にも手を貸した。そしてこの仕打ち。

異義の声を上げることもできない。

 

「…死者が出ていないことが唯一の救いですな」

 

「ええ。これまでに殉職者が出ていないこと、その事実で隊員たちの士気を維持しているようなものです。イズチと交戦したあの陸士も、ジャギィと交戦したあの陸士も、特戦群の彼も…命が助かって良かった」

 

衛生科幹部の言葉に顔をしかめる普通科幹部。度重なるモンスターの襲撃に対応してきた隊員たちの苦労を思い出したのだろう。

 

「部下にはかなり無理をさせてしまった…」

 

「現場に立っていない我々が言うべきではありませんが、不可抗力です。あなたが悪いわけではありません。…払ったリスクと釣り合うとは言いませんが、今回の作戦で得られたものもあります」

 

悶々とする普通科幹部をたしなめ、情報科幹部は本筋の話を進める。

 

「密猟者たちの装備していた武器と防具です。彼らは元ハンターであった事が多いらしく、性能はハンターたちの装備するものと同等であると考えられます」

 

新たに映し出されたのは全身鎧に大剣、小盾、片手剣、そしてボウガン。

 

「まずは武器についてお話します。近接装備については我々の中に100kgの大剣を振るえるものがいないために詳しい威力は不明です。しかし単純に100kgの鉄塊が衝突したものと計算してもかなりの威力となることは言うまでもないでしょう。片手剣などはまだ常識的な大きさではありますが、それでも地球で言えばグレートソード以上の威力と質量があります」

 

「次にボウガンですが…我々が想定していたよりも性能は低いようです。大量の火薬を使用し大口径の弾丸を発射するにも関わらずその総合的な威力は7.62mmライフル弾と同等、弾丸質量から衝撃力は高いようですが大きな口径の割に貫通力はあまり持っていないようです。最終的にレベルIII以上の防御力があれば即死は免れると判定されています」

 

と、ここで武器科幹部が手を上げる。

 

「追加の情報を。射撃試験を行う中でこの武器が発射ガスを有効に活用できていないことがわかっている。独特な装填機構のために薬室の閉鎖が不完全で装薬威力の殆どが外へ逃げ、完全な閉鎖機構を持つ銃と比べて弾丸の威力が低くなっているんだ。…そしてこの装填機構はボウガン共通のものらしく、この武器は我々が思っていたほどに驚異ではないのかもしれない」

 

「無論、中口径ライフル弾と同等以上の威力を持つのだから脅威であることには変わらないが、あれは我々の考えるような大口径火器ではないということだ」

 

それを聞いた施設科幹部が腕を組む。

 

「聞き伝えで得た情報ではボウガンは小銃と言うより様々な弾丸を発射するランチャーのようなものだという話だ。炸裂弾や散弾など目標に合った弾丸を装填し的確に仕留める、と」

 

「だとするならば、弾種次第では脅威になりうるという事でもあるな」

 

「我々の感覚ではショットガンやグレネードランチャーに近い存在なのか…」

 

「むしろその両方、主力火器の役割を持ちつつ多用途ランチャーでもある武器と考えるべきじゃないか?」

 

機甲科幹部が唸る。

なまじ既存の概念として知っていた兵器が異なる形で出現したものだから判定が難しく、実際に狩りをしているところを誰も見ていないために応用性が掴めない。

 

「防具については武器科が耐久試験を実施、合金性のものはレベルIII以上、モンスター素材を用いたものはレベルI〜VI以上、中には12.7mmの直撃にある程度耐える防御力を持つものもあったようで、程度を測りにくいというのが問題です」

 

「しかし我々もよく知るモンスター、ジャギィの素材を用いたものは裏地に革を貼り付けただけでそこまで特別な加工はされておらず、防御力自体はジャギィそのものと同程度であったことからモンスター素材の防具は使用する素材の耐久力に大きく依存していることが伺えます。つまり素材元となるモンスターの防御力を知っていれば対処は可能であるということです」

 

「場合によれば小銃でも対処は可能か」

 

「戦闘データを見るには機銃陣地で迎撃可能なものと思える」

 

「重機を含めた歩兵火器の威力に耐える素材があったらどうするんだ?」

 

「ハンターたちの装備にバラツキがあるのを見るに、そのような素材があったとしても全員が装備できるものではないだろう。個別にLAMで対処すれば…」

 

「もしくは砲迫射撃を加えるかだな。防具がいかに強固といえ、着るのは所詮生身の人間だ。155mm榴弾のキルゾーン内で生きながらえたとなれば話が変わるが」

 

「最悪、120mmで直接照準すればいい。仮に貫通できなかったとしても衝撃で粉微塵になるはずだ。かなり気は引けるがな…」

 

「待ってください!今は彼らとの戦争計画を立てているわけではありません!」

 

物騒な話を慌てて遮る情報科幹部。

国防組織ひいては軍隊である我々が論じれば常にこのような想定へと転じてしまうのはむしろ必然であり、転移前の平時であればむしろ好ましくもあったが状況が状況だ。

各々思うところがあったらしい幹部たちは項垂れて黙ってしまった。

まあ、今するべき話ではなかったな。

 

「…それで、我々が払った代償は何だ」

 

「隊員の負傷、弾薬の消費、対人戦闘部隊である事実の補強、戦力の程度の情報を晒した他に火器の威力が露呈したものと思われます」

 

「…まぁ、火力については何もせずともいずれ知れ渡ることだろう。派遣部隊はおそらく戦闘を経験する、そうなれば民間のハンターやギルドにも表向きに知られる事になる。遅いか早いか、それだけの違いだ」

 

「ギルド側の対応の硬化は見られませんが、それこそ見せかけならばいくらでも可能です。内部ではどうなっているか…」

 

「それ以上は憶測になる。今語るのはやめておこう」

 

たったそれだけのコストか、と思う者もいるかもしれない。

確かにこうしてコピー用紙にプリントされた文字からはそれが何でもないもののように見える。しかし、我々自衛隊にとってはひどい痛手だ。

 

「これは、いよいよ力を付けねばなりません」

 

施設科幹部が拳をきつく握る。

 

「…施設拡張計画及び工業化計画は概ね予定通り進行中、隊員たちの努力のおかげで基地拡張計画と分屯地結合計画は期日より10日ほど早く終わっております。周辺域の資源調査も完了、今こそ内政に注力すべき時です」

 

転移してから数ヶ月、日夜休まず整備を続けていた者の言葉に異義を唱えるものはいなかった。

 

「旧アイルー居住地域として申告、割譲した土地には合計で推定500億バレルの原油が埋蔵する油田が点在することがわかっていますニャ。鉄鉱、ボーキサイト鉱、アルミニウム鉱…いずれも良質かつ大型の鉱床が存在し、石材、粘土、木材も豊富、建材としては十分すぎる量になりますニャ」

 

「反射炉に続いて転炉、高炉が完成し高度な鉄材加工の礎は既に揃っていますニャ。施設科幹部の言葉を借りて…今こそ、今こそやるときですニャ。…我々アイルーも、自衛隊員として誠心誠意お助けいたしますニャ」

 

施設科、普通科所属のアイルーたちが立ち上がって現在の状況と所感を述べる。確かに、ここまで整えた下地があるのに今やらずしていつやるのだということだ。

彼らの熱い視線を感じた衛生科幹部がこちらを見る。

 

「…指令、ご判断を」

 

「ああ」

 

答えなど最初から決まっている。

私が言うべきは、皆が求めるのは、ただこの一言。

 

「やるぞ」

 

 




本気モードON!
幹部たちの覚悟もキマりました。
ボウガンは口径のわりに威力低すぎでは?と前々から思っていたので豆鉄砲です。
たぶんMSF製のARの方が強い。
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