【第三部】『こちら転生者派遣センターです。ご希望の異世界をどうぞ♪』【追放者編】   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(2)準決勝Aブロック中堅戦

「さあ、続いて中堅戦です! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」

 

「チーム『バウンティハンター』、エドアルド選手、意気込みをお願いします……」

 

「まさかモニカが0ポイントとは驚きましたね。まあ、取り返しに行くだけですよ」

 

「ありがとうございます……次、お願いします」

 

「はい! チーム『近所の孫』、シャーロット選手、意気込みの程をお願いします!」

 

「ジェーンの頑張りを無駄にはしないわ! 3ポイント取って優位に立つわよ!」

 

「ありがとうございます! 次、お願いします!」

 

「は、はい! チーム『武士と戦士と騎士』、セ、セリーヌ選手、意気込みを!」

 

「ウヌカルが見事な戦いぶりだった……私もそれに続きたい」

 

「れ、冷静なコメントを頂きました! つ、次、お願いします!」

 

「はい~チーム『覆面と兄弟』、ブリッツ選手、やっぱりお食事しない~?」

 

「……悪いけど、今それどころじゃないんだ。兄貴の分を取り返さないと……!」

 

「集中している顔も凛々しいね~じゃあ、お返ししま~す」

 

「さあ、四人がリングに上がろうとしています……解説は昨日惜しくも敗退したチーム『ボイジャー』のソフィアさんとチーム『美女』のオコマチさんにお願いしています。まずはソフィアさん、この中堅戦、どう見ますか?」

 

「はい、注目はやはりあのブリッツ選手ですね」

 

「見事な体術と雷魔法のコンビネーションですよね」

 

「そこももちろん大事ですが、なんといってもあの若干のあどけなさを残したところが堪りませんね! 少年から青年に変わっていく貴重な過程!」

 

「あ、あの……」

 

 実況の方がはっきりと困惑しています。わたくしをはじめ会場中の人たちも同様に戸惑っていますが、ソフィアさんは構わず話し続けます。

 

「今もこうして大人への階段を上っておられる! その一瞬一瞬が見逃せませんね!」

 

「あ、ありがとうございます……オコマチさんはいかがでしょうか?」

 

「勝敗は 時の運にて 言葉なし」

 

「は、はい?」

 

「今はただ 名勝負こそ 期待する」

 

「は、はあ……また独特な……」

 

 実況の方が戸惑っています。こう言ってはなんですが、人選ミスではないでしょうか。

 

「あ、始まりますよ!」

 

「お、おっと四人がリングに上がった……審判が今、開始の合図を出しました!」

 

「まず一番強そうな奴を倒す!」

 

「⁉」

 

「ブリッツがセリーヌに迫る!」

 

「喰らえ!」

 

「甘い!」

 

「ちっ!」

 

 ブリッツの放った鋭い蹴りをセリーヌさんはあっさりと躱します。重そうな鎧を身に付けているのに軽快な動きです。流石は名うての騎士と言ったところです。

 

「はあっ!」

 

「ぬおっ!」

 

 セリーヌさんの振るったサーベルをまともに喰らい、ブリッツは仰向けに倒れ込みます。セリーヌさんが追い打ちをかけようとします。

 

「とどめだ!」

 

「ぐっ……」

 

「⁉」

 

「おっと、どうしたセリーヌ⁉ サーベルを振り上げたまま動きを止めたぞ⁉」

 

「隙有り! 『雷迅脚』!」

 

「ぐはっ!」

 

「セリーヌ、ブリッツの電撃を帯びた蹴りをまともに喰らってしまった!」

 

 セリーヌさんはふらふらとしながらリングアウトしてしまいます。

 

「セリーヌ、敗北! 0ポイント!」

 

「こ、故郷の弟を思い出してしまった……私もまだまだだな……」

 

 セリーヌさんはそう言って気を失われます。

 

「その気持ち、痛いほど良く分かります! 分かりますよ!」

 

「ソ、ソフィアさん、落ち着いて下さい……」

 

 実況の方がヒートアップするソフィアさんを宥めます。ブリッツは頭を掻きます。

 

「こ、子供扱いしないでくれよ!」

 

「そう言ってムキになる内はまだ子供よ!」

 

「うおっ⁉」

 

「おっと! シャーロットがブリッツに襲い掛かる!」

 

「くっ!」

 

 シャーロットさんの素早い攻撃にブリッツが圧倒されます。

 

「ふふっ、バリツの神髄をその身にとくと味わいなさい!」

 

「ちっ、女の子相手はやりにくいぜ!」

 

「し、失礼な! アンタよりも大人よ! 立派なレディーよ!」

 

 ブリッツの言葉にシャーロットさんはムッとされます。ムキになっている内はまだ子供なのではないでしょうか。

 

「シャーロット、連撃のスピードを上げる! ブリッツ、防御しきれないか!」

 

「くっ……」

 

「そろそろ終わらせるわよ! ⁉」

 

「なっ⁉」

 

「あーっと! シャーロットが崩れ落ちた! 審判が駆け寄る!」

 

「……シャーロット、敗北! 1ポイント!」

 

「ん? これは……コインか⁉」

 

 ブリッツが視線を向けると、エドアルドさんはコインを片手に肩を竦めます。

 

「運命は表裏一体……レディーに当たったのは申し訳ない……」

 

「シャーロット! 優勢に試合を進めるも、エドアルドのコインの餌食となった!」

 

「勇ましさ 裏目に出るも 定めかな」

 

 オコマチさんが独特のリズムで呟かれます。

 

「ちっ、水を差しやがって!」

 

「むしろ助けてやったんだが……感謝してくれよ、坊や」

 

 エドアルドさんがわざとらしく両手を広げます。

 

「何を!」

 

 ブリッツがエドアルドさんに向かって飛びかかります。

 

「これくらいの挑発で怒っているのか? まだまだ子供だな!」

 

「がはっ⁉」

 

 ブリッツが倒れ込みます。

 

「ブリッツ倒れたぞ、何が起こったのか⁉」

 

「丸きもの 鋭く体 うちのめし」

 

「え? ……あっと、ブリッツの周囲に多くのコインが転がっている! エドアルド、ほんの一瞬で、あれだけのコインを同時に放ったのか! まさしく達人技!」

 

 実況の方が驚いて興奮されていますが、わたくしはむしろエドアルドさんの早業よりも、オコマチさんがちゃんと解説をされたことに驚きました。

 

「ぐっ……」

 

「レディーたちの攻撃でよっぽどダメージを喰らったのか、動きがやや鈍かったかな、そのおかげで助かったよ」

 

「ち、ちくしょう……」

 

 ブリッツの首がガクッとなります。どうやら気を失ってしまったようです。

 

「ブリッツ、敗北! 2ポイント! よって、エドアルド、勝利! 3ポイント!」

 

「中堅戦もまた一瞬の決着! 勝者はチーム『バウンティハンター』のエドアルドだ! か、解説のお二人、いかがでしたでしょうか?」

 

「敗北も 明日の勝利に 繋がりし」

 

「そう、敗北が少年をまた大きく成長させるのです! 貴女、良いことおっしゃいますね! この後、お酒でも飲みに行きませんか!」

 

「……おのこ好き ここまでくると 苦笑い」

 

 オコマチさんが苦笑されています。試合よりソフィアさんの暴走が印象に残りました。


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