【第三部】『こちら転生者派遣センターです。ご希望の異世界をどうぞ♪』【追放者編】   作:阿弥陀乃トンマージ

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第11話(3)常識外れ

「俺らはこの南西の塔担当か……エドアルド?」

 

「既に確認されている情報によると、塔の周囲に強い障壁魔法がかかっていて、外部からの破壊は難しいということだね」

 

「っていうことは内部から攻略するしかないってことだな……」

 

 ダビドが後頭部を掻く。ディーデイーが叫ぶ。

 

「HAHAHA! とにかく暴れ回れば良いんだろ? お安い御用さ!」

 

「俺らを阻むなんて誰にも出来ないぜ!」

 

「派手にやってやりマース!」

 

「OH! 全く頼もしい限りだぜ、ブラザー&シスター!」

 

 ゴメスとワンダの言葉にディーデイーが頷く。ダビドが呆れ気味に呟く。

 

「……なんでこいつらと一緒なんだ?」

 

「それぞれの塔を守る八闘士との相性を見て割り振ったらしいよ」

 

「相性ねえ……」

 

「ははっ、面白い連中だから良いんじゃない?」

 

「モニカ、お前さんもお気楽だなあ……」

 

「まあ、今更文句を言ってもしょうがない、塔に入ろう」

 

「あ! い、今、『バウンティハンター』と『怒髪天』の二チームが塔の内部に入っていきます! が、頑張って下さい!」

 

「あの赤髪の娘は確か……?」

 

「ヌーブっていうリポーターだね、彼女たちは各地点の情報中継役を担っている」

 

「そりゃあご苦労なことだな……終わったら飲みにでも行きたいねえ……」

 

「兄さん、今は塔のことに集中してくれよ」

 

「分かっているよ」

 

「それ!」

 

 モニカが塔の扉を豪快に蹴飛ばす。内部には黒い人影が多数ひしめいている。

 

「ワット⁉ なんだいコイツらは⁉」

 

 ディーデイーが首を傾げる。エドアルドが冷静に説明する。

 

「なんでも人の生命力を吸収したことによって出来上がった影……ハサンという男の情報によると、この塔の警備兵のようなものだそうだ」

 

「倒しても問題ナッシングかい? 黒スーツのブラザー⁉」

 

「ブラザーって……ああ、問題はないそうだ」

 

「YEAH! パーティーの始まりだ!」

 

 エドアルドの言葉を受け、ディーデイーたちが影の群れに突っ込んでいく。

 

「切り刻んでやるぜ!」

 

「突き進みマース!」

 

「!」

 

 ディーディーがアフロ爆弾を巻き散らし、ゴメスがモヒカン剣を乱舞させ、ワンダのドリルリーゼントが炸裂する。三人の猛進を受けて、影の群れは次々と霧消していく。

 

「おいおい! 剣はまだしも、爆弾とドリルはもうちょっと加減しろよ!」

 

「建物自体が崩れて生き埋めになるぞ!」

 

 ダビドとエドアルドが慌てる。

 

「『ハリケーンキック』!」

 

「どおっ⁉」

 

 モニカが長い脚を一閃すると、塔の厚い壁にヒビが入るほどの強風が吹き、影が消える。

 

「だ、だからモニカ! お前も少しは自重しろ!」

 

「え~? なかなか難しいことを言うね~」

 

 ダビドの言葉にモニカは唇を尖らせる。

 

「ま、まあとにかく、この階は片付いたみたいだ、上に向かおう」

 

エドアルドが皆を階段へと促す。六人が階段を上っていく。そして、いくつかの階層を経て、多くの影を撃波すると、一番上の階層までたどり着く。ダビドが呟く。

 

「どうやらここが最上階みたいだな……」

 

「……妙だな? 最上階には八闘士が番人のようにいるという情報だったが……?」

 

 エドアルドが首を傾げる。ディーデイーが大声で笑う。

 

「HAHAHA! 俺たちに恐れをなして尻尾を巻いて逃げたんじゃないか⁉」

 

「……尻尾はない」

 

「うん? 今声がしなかったか?」

 

 ダビドが周囲を見回す。ゴメスが部屋の中央にある物を見つけ、近づく。

 

「なんだこりゃ? 石板か?」

 

「尻尾はないが手足はあるぞ!」

 

「どわっ⁉」

 

 部屋の中央にあった赤茶色をした長方形の石板から手足が生え、ゴメスに殴りかかる。ゴメスはなんとかこれを躱す。ディーディーが問う。

 

「ユーは何者だい⁉」

 

「石板の青年、その名もアクエスだ!」

 

「OK、分かった! 良いファイトにしよう!」

 

「ちょっと待て! 理解が早すぎんだよ! なんだよ、石版の青年って⁉」

 

 ダビドが叫ぶ。エドアルドが冷静に尋ねる。

 

「君がこの塔を守る八闘士かい?」

 

「ああ、そうだ」

 

「気を悪くしたら申し訳ないんだが……君は一体何なんだい?」

 

「石板の青年……としか答えようがないな、気が付いたら存在していたからな」

 

「石板が意志を持ったのか? まあ、それは良いとして、青年なのかい?」

 

「……少なくとも少年少女ではないからな」

 

「そ、そうか……何故八闘士に?」

 

「あるところで朽ち果てようとしていた俺をピカピカに磨き上げてくれて、そして、『良い角をしているな、うちに来ないか?』と勧誘してくれて……」

 

「誰がだよ⁉」

 

 ダビドが思わず口を挟む。

 

「恩は返さなくてはならないと思い……古の八闘士に名を連ねることになったんだ」

 

「古感があんまり感じられないが……」

 

「まあ、俺のことはどうでもいいだろう、ここまで来たなら倒すまでだ!」

 

 そう言って、アクエスが構えを取る。ゴメスが斬りかかる。

 

「ふん、むしろ良い的だぜ!」

 

「はっ!」

 

「のわっ⁉」

 

 アクエスの形が長方形から正方形に変わり、ゴメスの剣を躱してみせる。ダビドが驚く。

 

「そ、そんなことが⁉」

 

「おらっ!」

 

「ぐはっ⁉」

 

 アクエスがすかさず反撃し、ゴメスを倒す。ディーディーが叫ぶ。

 

「やるじゃないの! 爆弾を喰らえ!」

 

「ふん!」

 

「OH⁉」

 

 ディーディーが投じた爆弾をアクエスが長方形に戻った自身の体を使って豪快に打ち返す。ディーディーが自身の爆弾で派手に爆発する。ダビドが再び驚く。

 

「そ、そんなことが出来るのかよ⁉」

 

「ははっ! 面白いね! 『スーパーハリケーンキック』!」

 

「うおっ!」

 

 モニカが脚を鋭く振ると、凄まじく強い風が吹き、アクエスの体が浮き上がって、壁に向かって飛んで行く。モニカが笑う。

 

「壁にぶつかって終わりだね!」

 

「そうはいくか!」

 

「なっ⁉」

 

 アクエスが自身の体を上手く風に乗せて、まるでブーメランのように戻ってきて、モニカに迫っていき、体の形状をひし形に変化させる。

 

「『ひし形突き』!」

 

「ぬっ!」

 

 アクエスの尖った角がモニカの体に刺さり、モニカは苦しそうにうずくまる。

 

「どうだ!」

 

「ならばワタシのドリルで砕くまでデース!」

 

 ワンダがリーゼントドリルを高速で回転させ、アクエスに突っ込んでいく。

 

「ド、ドリル⁉ それは困るな」

 

「もらったデース!」

 

「これでどうだ!」

 

「ん⁉」

 

 ワンダが崩れ落ちる。ダビドが三度驚く。

 

「な、なんだ、何をしやがった⁉」

 

「石板を自ら指でなぞったようだったが……?」

 

 エドアルドが冷静に呟く。アクエスが胸を張る。

 

「ふふん! この石板には古代文字で様々な呪文が刻まれているのだ! ちなみに古代文字なので俺にもなんて書いてあるのかはさっぱり分からん!」

 

「そんなことで威張るなよ!」

 

「いずれにせよ、お前らに勝ち目は無い!」

 

「ちっ、常識はずれの連中の常識が通じねえとは……!」

 

 ダビドが舌打ちする。アクエスがゆっくりとダビドたちに歩み寄る。

 

「さて、そろそろ終わらせてもらうぞ……」

 

「くっ……」

 

「エ、エドアルド……」

 

「モ、モニカ! その体で無理に動こうとするな!」

 

「石板の右から三列目、上から八段目の字と、左から四列目、下から七段目の字を狙え……」

 

「! わ、分かった!」

 

 エドアルドはモニカの指示に従い、コインをアクエスの体に向かって投げつける。

 

「⁉ な、なんだ⁉ 体が動かん!」

 

「今、コインが当たった文字……それは動きを止める呪文だよ……」

 

「な、何だと⁉」

 

「ダビド!」

 

「ああ! 喰らえ! 『ロイヤルストレートフラッシュ』!」

 

「がはっ⁉」

 

 ダビドの投じた五枚のカードがアクエスの手足と体の中央に当たり、アクエスは倒れる。

 

「へっ……倒せたか? エドアルド、こいつはどれくらいの賞金になるかね?」

 

「さあね、大体どこに持ち込めば良いのやら……それにしてもモニカ、なんで古代文字が読めたんだ? 君は一体……」

 

「ふふっ……」

 

 エドアルドの問いに対し、モニカはただ笑うのみであった。


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