初投稿です。頑張る。
今回は導入なので超短いです。
「ザック!この山に入ろう!」
「おー」
闇を裂くライトとサイレンが遠くから聞こえる。少女を守るように抱えた男は闇に紛れるように走っていた。
「にしても真っ暗でなんも見えねぇ!ライトかなんか持ってねえのか!?」
「施設にライトは無かった……」
どこか儚く、表情の薄い少女を抱え包帯だらけの男は闇へ溶け込むように逃げる。
側から見れば完全に犯罪者、実際に犯罪者ではあるが、罪を背負っているのは男に限ったことではなかったし、抱えられている少女が誘拐される恐怖に慄いているわけでもなかった。
友人、恋人、家族。
彼らの関係はどれにも当てはまらない。
ただ、とあるビルで紡がれた確かな絆と約束があるのみだ。
「結構走って警察を撒けたし、そろそろ降ろしてもいいよ?」
「お前、靴履いてないだろ……」
「……そうだった。」
そう言って少女は表情の乏しい顔に少し笑みを浮かべる。
追われる身でありながら、二人の間にどこか弛緩した空気が流れる。
優れた頭脳を持ちつつもどこか抜けた少女に、素直で身体能力の高い包帯だらけの男。
一日に満たない期間で作られた関係ではあったが、深い信頼で繋がれている証拠だろう。
「もし山の中に小屋とか休めそうな場所があれば少し休もう。あと…… ザック、暗いから足元に気をつけてね。」
「おー……つってもよく見えねえけど…」
男は卓越した眼と勘を持っていたが、闇の山中を走ることは困難だ。
歩いた方が安全だろうが、男は間違っても捕まってあんな場所に戻りたく無かったし、漸く少女を取り戻し気分が高揚していた事もあって歩幅と足の回転を下げることは無かった。
きっと少女に言われるか、建造物を見つけるまで走ってしまうだろう。
しかし、闇夜の山を走り抜けるなど普通は木を避けるだけで精一杯だ。加えて男は今までの逃走劇で少なからず体力を消耗していたし、人を運ぶ事にも慣れていなかった。
それ故、男が足元を見誤ってしまうのは仕方の無い事だったかもしれない。
「おっ!?」
「きゃっ!?」
自転車並みの速度で進んでいた男の足が不自然な位置で急停止する。
男の足は木の根に引っかかり、体の重心は傾き、バランスが崩れる。咄嗟に腕の中の少女を守ろうと自身の体を地面側に回す。
身構えていた衝撃が体に伝わらない。
男がそう思った頃には意識が飛んでしまいそうな途轍もない落下感を全身は感じ取っていた。
彼らは知る由も無かったが、転んだ先には人が平気で落ちてしまうほどの穴が大きく口を開けていたのだった。
「ど、どうなって!?」
「ザック!」
レイチェル・ガードナー、アイザック・フォスター。
二人の天使は、地下に舞い降りる。
今回は第三者視点でしたが次回からは基本的にザック、レイチェルの視点になります。