そして天使は舞い戻る   作:一般雪山遭難者

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3.遺跡探索①

 

 もしこの壁の色が続くなら、目に悪いかも……

 抜けた先も、汚れが少なくて綺麗な状態のビビッドな紫色をした壁が続いてる。ところどころヒビが入っているけれど、ホコリは少なくて掃除は行き届いているみたい。

 それが目へのダメージに拍車をかけている気もするけど……さほど気にすることでもないか。

 

 

 さっきの子供はトリエルさんにピッタリついて行っているみたい。……いや、私たちから隠れてる?

 

「ザック、あの子ザックを怖がってるみたいだから、態度には気を付けてね。」

 

「そんなこと言われても話してもねーのにどーすりゃいいんだよ。笑ってりゃいいのか?」

 

 ザックの口角が吊り上がり狂気を孕んだ笑顔に歪む……

 

「ザック……それはやめた方がいいかも……」

 

「……そーかよ。」

 

 そんなことをしているうちにトリエルさんと少し離れちゃった。待ってくれているから行かないと。

 

「なんだこりゃ?血か?」

 

「いや、ただの落ち葉みたい。カサカサするよ。」

 

 言っているそばから気を取られてしまった。長方形の形に真っ赤な落ち葉が散らされている。……やっぱり目に悪いし、なんだか隠し扉を疑っちゃう配置。教会の経験のせいかな。

 ……もう進もう。

 

 

 あの子も落ち葉が気になったのかな。奥の落ち葉がいっぱい溜まっているところで手をかざして、トリエルさんはそれを階段の上から見守っている。

 ……階段の上には何かの入り口らしきものがある。あそこに進むんだろう。入口の周りにツタが生えているから、落ち葉の事も考えるとここには植物が思ったよりあるみたい。……葉を落とすような木は見当たらないけど…… まあ、今は進もう。

 

「さあ、あなたたちは今日からここで暮らすのよ。」

 

 入口を通った先でトリエルさんはそう言った。

 暮らす……?今のところ生活できそうなスペースは無いけど、もっと先にあるのかな?

 

「おいレイ……暮らすって」

「しっ。後で話そう。今はトリエルさんの話を聞くべき。」

 

 ここで暮らすと言われてザックも困惑しているみたい。私もまだこの状況に理解が追い付いていないし、情報が全く足りない。

 だけど、今私たちは警察に追われている身、ここで身を隠すというのも悪くはないかも。

 

「遺跡の仕掛けについて教えておくわね。」

 

 

 そんなことを考えているとトリエルさんが動き出して、床のスイッチのようなものを踏みだした。……随分大きいスイッチ。トリエルさんのサイズに合わせてあるのかな?

 ……踏まれて押し込まれたスイッチが戻ってこないけど、次通るときには戻ってるのかな。

 いけない。考え事ばかりしてトリエルさんの話を聞き逃したら元も子もない。集中して聞こう。

 

「ここにはたくさんの『パズル』があるの。侵入者を撃退する昔からの技術よ。」

 

 パズルって技術なのかな……?いや、そもそもそれはパズルと言うより罠なんじゃ?

 

 

 ……違う。きっとこれは子供への配慮だ。小さい子でもわかるように言ってくれてるんだ。……優しい人なんだろうな。

 

「部屋を移動するときはパズルを解かないといけないわ。」

 

 ……流石に住む部屋にはないよね?

 

「だからよく見て慣れておいてね。」

 

 そう言うとトリエルさんは行ってしまった。このパズルはトリエルさんが解いてくれたってことでいいのかな。解き方を教えてもらってない……どういう法則なんだろう?あの子ももう行ってしまったみたいだし……

 

「おいレイ、なんか書いてあんぞ?」

 

 そう言ってザックが指さした先には、石板みたいなものがあった。文字が書いてあるみたい。

 

「『先へ進みたくば、迷いを捨てよ。真の勇者も愚か者も、中間の道は進まず』……だって。」

 

「……どーいう意味だ?」

 

 さっきトリエルさんはパズルの説明の時に、『昔からの技術』と言っていた。トリエルさんから見てもパズルは昔の技術ということ。おそらくそれが使われているこの場所も昔からあったはず。

 今いる場所はレンガらしきものでできていてあまり壁の劣化はないけれど、さっきいた場所はレンガのひび割れが薄く見えた。薄く見えたということはこのレンガは適宜修繕されているんだろう。だとしたら昔からあったとしても綺麗なことが説明できる。

 つまり、これは『先人の教え』みたいな物なんだろう。

 

 ただ、それが分かったところでこの言葉の真意はわからない……どう説明しようかな。

 

 

「よくわかんねーけどよ、とりあえずお前でもわかんねーことがあったら壁ぶち破って先進めばいいーんだろ?」

 

「……いいと思う。」

 

 うん、これくらいの心持でいいような気がする。これはそこまで気にするものでもないと思うし。

 

「そろそろ行こう。ザック。」

 

「おー。」

 

 進むごとにトリエルさんたちを待たせてしまっている……次からは気を付けよう。

 

 今考えるべきことはあの子とのコミュニケーションかな……この先のパズルは私たちで解くことになるだろうから、必然的に話さないといけなくなる。まだ名前すらわからないから大変かもしれない……でもザックは小さい子との会話は苦手だろうから、私が話しかけなきゃ。

 

 ……私も得意とは言い難いけど。

 

 

 今度はザックと一緒にパズルを解くのもいいかも。……ちょっと楽しみ。

 

 

 不思議と口角が上がった(少し自然に笑えた)気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

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