ネカマ傾国記~TS転生した元ネカマガチ勢は乙女ゲームの世界で元気に傾国の美女やってます~   作:哀上

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第九話 オリジン

 第九話 オリジン

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 俺がこの世界の主人公じゃないなんて言うのは、とうの昔に気がついてはいた。

 

 いや、イタイ中二病を引きずっていたから勘違いしていたとかいう話ではなくって、誰だって異世界に転生したら自分がこの世界の主人公なのかなって思うだろ? この世界は俺を中心に回ってくれる、そんな都合のいい世界なのかなって。

 

 でも、早々に理解した。「俺はこの世界の主人公じゃないんだろうなぁ」って。転生者なんて出生は特殊そのものだし、実際俺は特別な存在なのではあると思う。ただ、それは主人公ほどの特別さではない。

 

 比重としては、原作という創造神によって描かれすでに完成した世界に、後からそっとトッピングのように乗せられたオリ主といったレベルだろう。確かに特別で、神の手によって疑似的に世界の中心にいるように錯覚し、しかし結局その世界の外様でしかなく世界の中心から最も遠い場所にいる存在。

 

 ネトゲであれだけ好き放題して、子供ながらに大金も稼いで、ネット上では大騒ぎされ……でも、結局リアルでは教室の中心には陽キャどもがいて、陰キャの俺はクラスの端っこで居心地悪く読書でもして暇をつぶしていた。

 

 TS転生なんて二次創作系のテンプレな気がするし、俺の生まれがそもそもラノベの主人公っっぽくないのだ。うりをやってる女のもとに生まれた父親不明のTS少女とか、絶対に主人公じゃない。魔法の才能もなく、容姿だけが取り柄の主人公とか……なろう系な世界観のこの世界に不似合いすぎる。

 

 結局俺は主人公にはなれなくて、どこか本質と外れたところでやっと好きにできる。そんな小心者でどうしようもない存在なのだ。

 

 それに比べ、幼女はどうだろうか?

 

 一昔前、異世界物の主人公といえば男というのが定番だった。しかし、死ぬ直前ごろには悪役令嬢もののブームが来ていたし、女主人公というものは昨今のラノベ界隈ではそれほど珍しいものではなくなってきているように思う。

 

 そして、そんなことはどうでもいいと言って捨てれるほどに、この圧倒的な才能が幼女を主人公たらしめている。圧倒的な魔力量に適当な説明を聞いただけでその日に魔法を使えるようになってしまう才能、その異常性がこの幼女を特別だと世界が認めている証拠そのものである。

 

 何気に庶民の街で育つところも主人公ポイント高い気がする。後出しで色々出てくるのはあるあるなので、本当に庶民なのかなんて知らんけど。

 

 どういうストーリーなのかなんていうのは正直言って想像できない。似たものなんてのはいくらでも見た覚えがあるが、異世界物の数が多すぎるだけで一切参考になんてなりそうにもない。

 

 魔王とか勇者が実在する世界のようだし、勇者になって魔王と戦うという王道展開も普通にあるとは思う。そのためのこのけた違いな才能という線も。ただ、その流れで主人公が心変わりして人類の敵に回ったりするのがなろうの醍醐味なわけで……

 

 結局、この世界観と幼女を前世でぴたりと見た覚えなんて言うものはないので一切の参考にならない。単に俺が知らない作品なのか、それともそもそもそんな作品なんてレベルではなくて神が大舞台の上でリアルショーでもやって楽しんでいるのか。

 

 仮にそれが分かったところで、何かあるというわけでもないのだけれど。ただ、俺は転生なんて言本当に特殊な経験をして、本物の特別になって、それでも結局世界の中心にはなれないのかと少し悲しくなっただけだ。

 

 そんなの仮になれたところで、俺にふさわしくないなんて言うのはわかっているのだけどさ。でも誰もが一度は夢見る物だろ? 自分を中心に回ってくれる都合のいい世界というものを。きっと素晴らしく楽しい世界の違いない。

 

 かつての人々が天動説にしがみつく理由もわかるというものだ。世界には自分を中心に回っていてほしいのだ、ほかの何かを中心に自分がその周りをまわらされていると初めて突き付けられた時屈辱的で仕方のなかったことだろう。

 

 しかしまぁ、せっかく転生したというのにそんな世界の隅に置かれるというのはどうしても癪ではある。選ばれた存在ではないとはいえ、前世より確実に特別ではあるのだ。手が届きそうなら手を伸ばして悪いことがあるのだろうか?

 

 ただこの世界で生きるのではなく、この世界で好きに生きるという。そんな主人公じみた、アンチ・ヘイトでバーが真っ青に染まってしまうようなそんな人生。

 

 実に楽しそうだとは思わないかい?

 

 ……

 

 しかし、もし幼女が主人公だと仮定すると。俺は主人公の才能を日夜少しずつ奪いながら自分の才能にドーピングしているわけだが、これは大丈夫なのだろうか? いざというとき、その少しの才能の差でラスボスに負けて世界がバットエンドに向かったりしないだろうか?

 

 この世界で好きに生きた結果、世界がバットエンドに向かって歩みを進めることになりました。そんな未来はごめんである。

 

 いや、おそらく大丈夫だとは思っているのだ。そこらへんはご都合主義という名の修正力が頑張ってくれると信じている。二次創作でオリ主が原作ブレイクしようとしてもなかなか壊せないっていうのは鉄板だしね、これぐらいなら大丈夫でしょ。

 

 ……大丈夫だよね?

 

 主人公最強の無双系作品であることを願う。それなら、多少の弱体化はむしろ物語を面白くするスパイスになる。……もしダークファンタジーな、それもかなりシリアス系だとしたら? 

 

 それ言いだしたらそもそもバットエンドが正史なんて原作もあるわけだし、いくら心配してもキリがない。前世の俺の終わりのように、結局物語の終焉は唐突なのが自然なのだろうし。

 

 何より、楽しいかもしれない未来を、俺が歩めるかもしれないこの世界の正道を、そんな夢物語を見る方がずっと楽しくて健全である。

 

 しかし、そうか。この世界の主人公女か……

 

 元ネカマでTS転生者の俺としては、主人公は男の方が絶対にやりやすかったのだけど。異世界転生か異世界転移もので前世童貞のひきこもりなんかだとベストだ。前世さんざん俺のキャラに貢いでた層だから。

 

 女相手だと、この恵まれた容姿をとにかく生かしにくい。現代はジェンダーだなんだといわれて同性愛は尊重されてきてはいるが、この階級社会でそれが尊重されているようにはとても思えない。つまり、普通に貢がれるより一段高い壁があるということだ。

 

 まぁ、階級社会でも昔の日本のように同性愛に対してかなり寛容という可能性もなくはない。

 

 本来異性同性問わず性行為そのものが禁止だった仏教で、日本は『稚児灌頂』なんて同性愛どころかショタコンを儀式にしてしまったわけだし。貴族が美しい少年と床を共にするのは何ら珍しいことではなく、天皇の命令で作られた和歌集言ってしまえば国主体の出版物にですらそういう歌が乗る程度にはメジャーだった。美少年に色仕掛けを掛けられ暗殺された武将なんていうのもかなり多かったとか。

 

 昔の日本のジェンダー意識というのは現代よりもかなり進んでいて、同性愛のみならずロリコンショタコンにすら深い理解があったとか。まぁ、その後欧米の影響でタブー視され、違法行為となり、病気と言われるようになり……

 

 文明レベルでいえばどちらも変わらないわけだし、棒の転がり方次第といったところだろうか。

 

 どっちにしても、それは相手側の問題である。俺個人としても、女と長いことうまくやれるイメージというのがあまりわかない。リアルでは陰キャ過ぎて女子とのかかわりなんて一切なかったし、ゲームではそもそもの母数が少なかったというのもあるが、その少数にすら蛇蝎のごとく嫌われていた。

 

 女というだけでネトゲでは誰もが多少の姫扱いを受けるわけで、それを俺に根こそぎ持っていかれるのが気に喰わなかったらしい。ネカマばれ前はぶりっ子だなんだといわれ、ネカマばれ後はそれはそれで……

 

 しかし、多少苦手意識があろうともこの幼女との仲をこじれさせるわけにはいかない。個人的に世界の中心にいるようなやつに思うところはあるが、それはそれこれはこれ。俺が楽しむにはどうしたってそういう奴の力が必要である。

 

 仮に主人公じゃないにしても、才能ちゅうちゅう吸ってるのばれたうえで仲互いとか、死あるのみだ。とても勝てる相手じゃないというのは、結局変わらないのだから。

 

 今更ながら、この行為の危険さをまざまざと思い知ったところではある。しかし、いまさらやめてももう遅いしそれなら甘い蜜は吸えるだけ吸うべきであろう。

 

 ま、何とかなるでしょの精神は意外と大事だ。借金で自己破産したじっちゃが言ってた。

 

 なに、今は意識していないとはいえ貢がれている状態だ。つまり俺の囲いである。囲いの管理はお手の物、前世でさんざんやってきた唯一の特技と言ってもいい。億を搾り取った手腕見せてやるさ。

 

 そしてこの世界を作った神だか天才だか、見てるのか知らないが。お前が大切に生み出した主人公、その才能を吸ってお前が魂削って生み出した世界で、世界観ぶち壊しながら好き勝手生きて見せる。

 

 なんたって、アンチ・ヘイト上等なTSオリ主だからな。

 

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……囲いの管理ができるなら『破壊神』とか『ギルドクラッシャー』なんて通り名つかなかったのでは?

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