ネカマ傾国記~TS転生した元ネカマガチ勢は乙女ゲームの世界で元気に傾国の美女やってます~   作:哀上

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第一話 おそらく、死亡しました

 第一話 おそらく、死亡しました

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「はぁ~、疲れた」

 

 今日は定期テストの最終日だった。結果はボロボロ、まぁそんなことはやる前からわかっていたので特に思うところはない。テスト勉強なんて全くしていないので当然の結果である。

 

 緊張などせず軽い気持ちで挑んだつもりだったのだが、普段の授業と違って妙に疲れた。周りの緊張感とかもあるんだろうが、テスト中特有のあのへんな空気感のせいだろう。あの空気、ほんとどうにかしてくれないだろうか。

 

 まぁ、仮になくなったとしてテスト真面目に取り組む気になるかと言ったらそれは別の問題だけど。そもそも、俺がまじめに取り組んだとして上がる成績なんて微々たるものだろう。そんな微々たるものにあそこまで労力をかけられるクラスメイト達が信じられない。何食って育ったらあんな風になるんだろうか。

 

 誰かが言っていた言葉だけど『漠然とした未来の不安をちょっと和らげる程度のために大切な今を犠牲にする価値は本当にあるのだろうか?』これ、本当に金言だと思う。俺の座右の銘だ。刹那主義ともいう。

 

 まぁ、おかげで俺は留年手前の落ちこぼれなのだけれど。

 

 本当は、今日のテストもさぼりたかったのだ。こないだアプデでアイテムのドロップ確立に一部補正が入って、うちで独占してる狩場がかなり旨いって話で大手にばれる前に甘い汁吸えるだけ吸おうって話してたのに。欠席したら問答無用で全教科単位なしで留年確定させるとか、あのクソ教師。

 

 ……そもそも、このテストの手ごたえだと結果留年確定した説あるけどな。はぁ、まじ無駄だったわ。さっさと帰ってログして慰めてもらおう。

 

 ネトゲは居心地がいい。学校でも家でも居場所のない、俺の唯一の憩いの場だ。誰もリアルの俺なんて知らないから、なりたい自分になることができる。みんな優しくしてくれるし、アイテムも頼めばなんだってくれる。

 

 まるで、本当のお姫様になったみたいな扱いをしてくれる。え? 貢がせてるだけだろって? 違うよ、本当にくれるんだもん。何十万も課金してガチャ回さなきゃ手に入らないような装備もたんまりと。

 

 たまにもめることもあるけど、そういうとき簡単に関係リセットできるのがリアルと違っていい。関係を築くのをためらわずに済む。今所属してるところは、入ってまだ短いけど雰囲気もいいしみんな強いし結構いい場所だと思う。

 

 一回大きくことを起こしちゃってから、有名になってしまったらしくメイン垢だとなかなかギルドに入れてくれないんだよね。あれは楽しかったけど、さすがに一時の快楽に身を任せすぎたかな?

 

 早く帰ろう、みんな待ってるから。

 

 

「え?」

 

 背中に強い衝撃を感じた。よく前に倒れなかったなってぐらい、背中を強く押されたように思う。押された部分から鈍い痛みを感じる。

 

 ったく、疲れてんのに。誰だよ。

 

 一瞬友達かとも思ったが、よく考えれば俺にこんなことしてくる友達はいない。おそらく、クラスの陽キャ連中の誰かだろうと思った。陽キャっていうのは親しい親しくないにかかわらず、雑な絡み方をするものだ。いや、奴らのカテゴリーでは同じクラス=親しい判定なのかもしれないが。

 

「はぁ、はぁー」

 

 後ろから荒い息遣いが聞こえる。これ、陽キャじゃないかもしれない。こういうことするときは数人のグループでいるか、そうじゃなくてもすぐなれなれしく話しかけてくるもんだろ?

 

 恐る恐る、ゆっくりと振り返る。

 

 

 ……誰?

 

 太った男だった。脂ぎった顔を歪めて過呼吸のように激しく息をしている。全く見覚えのない顔だ。

 

 背中にまだ違和感がある。なんか生暖かいし、こいつに触れられてるんだと思った。気持ち悪い!! 手を払おうとして背中に触れた手に、べっとりと何かか付着した。

 

 生暖かくて、なんかドロドロしている。意識すれば、背中全体になんか生暖かくてぬるぬるしたものが服との間にあって気持ち悪い。嫌な予感がした。何となく、最悪の映像が想像できてしまった。

 

 そんなのただの妄想だ。そんな都合のいい現実が欲しくて、ばっと引っ込めた俺の手は……真っ赤に染まっていた。

 

 

「あ、ああ……」

 

 それを見てしまったせいだろう。これまでずっと混乱していた俺のポンコツな脳みそが、現実を理解してしまったらしい。

 

 背中に激痛が走る。これまでの人生で一度も感じたことのないほどの、すさまじい激痛だ。

 

 病院。早く119番掛けないと。救急車、早く、

 

『グサッ』

 

 

 また、背中に衝撃が、

 

 混乱していた俺の脳みそは、一番重要な情報の処理を後回しにしたらしい。俺こいつに刺されて……

 

 とにかく逃げないと!! 119も病院も後回し、とにかくこいつから逃げてから。

 

 足がうまく回らない。走り出そうとして、数歩歩いて何もない地面につまずいて転んだ。早く立ち上がらないといけないのに。

 

 視界がぼやけて、手にも力が入らない。

 

『グサッ、グサッ、グサッ、グサッ』

 

 うつ伏せに倒れこんだ背中を男にめった刺しにされる。男は狂ったように笑い声をあげ、何度も何度もザクリザクリとナイフを突き立てる。

 

 これは、終わったな。血の海に浮かびながらどこか他人事のような思考、非現実過ぎていろいろな部分がマヒしてしまったのだろう。

 

 人生の終わりって、案外あっけないんだな。

 

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 え?

 

 気が付くと、金髪碧眼の美人さんの顔が視界いっぱいに広がっていた。

 

 は?

 

 俺は確か、そう男にめった刺しにされて……おそらく、あそこで死んだ。俺に医学の知識なんてものはないが、あれほどめった刺しにされて生きられるほど人は丈夫に作られてはいないと思う。

 

 じゃあ、これは何なのだろうか? ここは、どこなのだろうか?

 

 ……もしかして、これが死後の世界ってやつか? こんな場所見覚えないし、俺の人生で金髪碧眼の美女とのかかわりなんてまずなかった。何らかの軌跡があって一命をとりとめたとしても、目が覚めたら目の前に金髪碧眼の美女がなんて展開になることはまずないだろう。

 

 ここは死後の世界で、この美女が女神様っていうファンタジーな結論の方がまだ納得できる。こんなに自愛の目を俺に向けてくれるのだ、女神様に違いない。

 

 でなければ、金髪碧眼の美女に慈愛の目を向けられることなんてまずないだろう、ラブコメ主人公じゃあるまいし。

 

「……ぎ、ぎゃ」

 

 声を出そうとして見るも、全くもって発声出来ない。死後の世界ってことは、体のない魂だけの存在みたいになってるってことだろうし、それも当然か。一度たりとも魂から声を出したことなんてないのだから、いきなりやって声が出る方がびっくりだろう。

 

 体育会系のやつらは初っ端からすらすら話せたりするのだろうか?

 

 それにしても、神様って本当にいるんだな。俺天国に行けるとは思えないし、でも地獄は勘弁してほしいなぁ。できれば転生したいっていうか……

 

 というか、死んで気が付いたら目の前に神様ってこれ転生のテンプレパターンだよね? 転生ルート入ってるって思っていいんだよね?

 

 はいはい、俺異世界転生希望します!! 出来れば王道のファンタジー世界で、チートもたっぷりおにゃしゃす!

 

 俺つえーして、無双して、そんな妄想誰でも一度はしたことあるだろう。

 

 ……あれ? 女神様が首をかしげてる。もしかして、通じてない? 神様だと心読めたりするものだと思ってたけど、この女神様そういう能力はない感じ?

 

 マジっすか。

 

 俺はしゃべれないし、神様が心読めないとなると何も進まないし何もわからないんだけど。俺勝手に異世界転生だと思い込ませてもらってますけど、本当にそれが正しいかもわからないし。

 

「ぎゃ、ぎ……ぎゃ」

 

 しゃべろうとしても、うなり声みたいなのしか出せない。これは詰んだのでは? もしかして俺が何とかしゃべれるようになるまでずっとこのままっすか? というか、これしゃべれるようになるのか?

 

 女神様は首を傾げた後、何かを話した。

 

 もうだめぽ。言語も違うっぽい。これでは女神様の話にジェスチャーのみで答えるという最終手段が……意思疎通不可能とか本当にどうしろと?

 

 俺が絶望していると、おもむろに女神様が服をはだけさせ胸を露出した。

 

 ……え??

 

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