ネカマ傾国記~TS転生した元ネカマガチ勢は乙女ゲームの世界で元気に傾国の美女やってます~   作:哀上

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第五話 足して四捨五入すればギリ魔法使い

 第五話 足して四捨五入すればギリ魔法使い

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 耐久戦になりそうだな、キリ!!

 

 魔法使えるようになりました! やったね。

 

 なお、耐久戦にはならなかった模様。予想は外れるものと相場が決まってるからね、仕方ないね。

 

 別に、俺に実は魔法の才能があったとかそんな都合のいい展開ではなかった。できればそうであってほしいという俺の望みは華麗にスルーされたらしい。現実は非情である。

 

 まぁ、いろんな意味でそれ以上のご都合展開だった気がしないでもないが、それにちょっとズルした気もするが、とりあえず俺は魔法が使えるようになった。重要なのはその事実である。過程は一旦おいておこう。

 

 使えるようになったとはいっても、まだ魔力を操作して軽いものを動かすぐらいのもので、実用性皆無のゴミ魔法だ。こんなもので戦える気がしない、使えても目隠し程度。何なら魔法に集中力を使ってしまう分、何もせずに剣で切りかかった方が強いまである。

 

 前世の世界にあったとしてもスマホ浮かべたり、文字通りゴミを確実にゴミ箱にシュート出来たり、その程度のものだろう。なんだろう、このダメ人間製造機は。便利そうではあるが、友達に見せても冷めた顔で「で、そのマジックの種は?」とか言われそうな実に地味な魔法だ。

 

 俺の魔法の才能に関しては恵まれているどころかむしろ絶望的な気配すらする。魔法が使えるようになればこっちのものだと魔力の増量に熱を燃やしたのだが、これがびっくりするほど増えない。

 

おかしい、テンプレではもっとこう……

 

 何とか魔法が使えるようになったのはいいが、一向に成長する気配がないとは一体どういうことだろうか? 俺はどこまで行ってもダメ人間がお似合いという神の思し召しだろうか? 誠に遺憾である。

 

 なぜ耐久戦にならなかったのかといえば、要するに俺の魔法の才能には耐久戦になるほどの伸びしろがなかったということにだ。これほど悲しいことはない。

 

 ちょっとずるしたとはいえ、魔力の操作自体は割とあっさり出来るようになったのだが……魔力量、これがびっくりするほど成長しない。

 

 魔力をすべて使い果たしてみたり、体内を血液に沿うように魔力を行き渡させてみても、体のどこかから魔力をくみ出すようなイメージをしても、空気中から魔力を体内に取り入れようとしても……

 

 とにかく片っ端から試しては見たのだが、うんともすんともいいやしない。なぜだ? やっぱり、俺に才能がないからか……しかし、いくら才能がないとは言ってもピクリともしないというのもおかしな話だと思うんだ。

 

 もしかして、この世界は生まれた瞬間から才能によって魔力量が決まっていて後からではどうしようもないみたいなタイプの世界なのだろうか?

 

 もしくは、レベル制の世界でいくら訓練してもレベルを上げなければ意味がない、またはレベルアップの時に補正値として少し上乗せされるような世界観なのだろうか?

 

 現実逃避を試みるも、どっちも違うと現実が訴えかけてくる。だって、隣で幼女がバケモノかと言わんばかりの魔力をたぎらせながらなんかすごそうな魔法陣を光らせ未知の金属を錬成しようとしているのだから。

 

 初めて会った時から天才だったような気がするが、初めはここまでバケモノみたいな魔力はしていなかったと思う。確実に成長している。それも、ものすごい凄いスピードで……恐ろしい子。

 

「おねえちゃん、どうしたの?」

 

 やっぱり、ズルしたのがまずかったのかもしれない。でも、ああでもしないと魔法使えるようになれなかっただろうし。

 

 ちなみにお姉ちゃんとか呼ばれているが、別に妹じゃない。この幼女と出会ったのは、私がまだ魔法のまの字もつかめず迷走していた頃だ。

 

 迷走して瞑想、ぷっ

 

 ……

 

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 魔法の訓練を初めてしばらくたった。

 

 瞑想して自分の中の何か特別な力を探してみたり、もっと単純に魔法を唱えて見たり、神様に力を貸してくれるよう頼んでみたり……

 

 とにかく片っ端からそれっぽいものを試していった。前世アニメや漫画で見た訓練シーンを思い出しながら、出来そうなものをとにかく試した。しかし、一向に攻略の糸口が見えない。

 

 それも当然だろう、だって本物の魔法なんてもの見たことないのだから。

 

 イメージとしてこんなものだろうという予想はあるし、おそらくこういうことすれば使えるようになるんじゃないかなという妄想もある。でも、そんなの全部カンでしかないわけで、いわゆる中二病の妄想と何も変わらない。

 

 どっかに魔法のハウツー本が落ちてたりしないだろうか? まぁ、まず落ちてるわけがない。魔法というのは限られた人しか使わないし、その限られた人が上流階級に固まるもんだから基礎的なものでさえ馬鹿みたいに高いらしい。そんなものが貧民街に落ちているわけないし、もし落ちてたとしても一瞬で拾われ金に変わることだろう。

 

 せめて魔法を見る機会でもあれば、何かきっかけがつかめそうな気がするんだけどなぁ。魔道具とかそれこそ魔法師とか……王都だとそれほど珍しくないとも聞くし、何なら魔道具のおかげで夜もそれなりに明るいとかなんとか。

 

 全部破壊されて売り払われる未来しか見えない。

 

 こういうところで本当に貧民の家に生まれたんだなと実感する。そして、成り上がるチャンスというものの少なさに階級社会の非情さをしみじみと感じる。

 

 未練たらしく魔導書を探しキョロキョロしながら歩いていると、視線の先に小さな子供がいた。女子供は滅多に出歩かないというのに、珍しいな。なんて思ったが、どうやら魔導書を探して歩いているうちにいるうちにいつの間にか貧民街から出ていたらしい。

 

 え、なんで女子供が出歩かないのかって?

 

 そんなの危険だからに決まってるだろ。人攫いや奴隷商ならまだましで、肉屋なんてやつもいるらしいからな。捕まれば最後……

 

 なら、なんで俺が出歩いているのかだって?

 

 俺のママンの職業を言ってみろ。貴族の側室になれるレベルの容姿だぞ、気に掛けるやつも多いだろうな。こんなところで井の中の蛙をやっているようなやつでも、井戸の中で蛙に逆らえるような奴はいないのだから外に出ない限り限定的な絶対的王となることができる。

 

 その上、俺はママンにそっくりだ。そりゃね。

 

 ママンの生き方もそれはそれでアリだとは思うのだが、いかんせん男と寝るとなると前世の男の記憶がひっかかる。俺にはとても出来そうにないな。それに、文明の進んだ先進国で育った俺にとって最低限度の生活が、この世界基準で言えば生半可な物では足りないというのもある。

 

 幼女の方も俺に気が付いたらしく、トテトテとかわいらしく走って寄ってくる。あんまりこっちに来ない方がいいと思うんだけど。一応貧民街の外ではあるのだが、かなり近いことには変わりないし。

 

 そういうの教わってないのだろうか? 知らない人にはついていっちゃダメよ的な。

 

「ねぇ、ねぇ。なにしてるの?」

 

 駆け寄ってきた幼女は、躊躇うことなく俺に抱きつきこてんと首を傾げる。

 

 ……

 

 はっ、一瞬固まってしまっていた。何だろうこの生物、かわいすぎる。

 

「魔法の訓練をちょっとね」

 

 魔導書を探して歩き回るのは、広義の意味では魔法の訓練と言ってもいいだろう。……多分。

 

「まほう!? すごい!!」

 

 どうしよう。幼女からの純粋無垢な視線が痛い。

 

「おねえちゃんって、まほうつかいなの?」

 

「まだ見習いだけどね」

 

 前世と今世合計すれば……ギリ届かないけど、まぁ魔法使い見習いって言っても怒られないと思う。え? そういうことじゃないと思う? ……俺もそう思う。

 

 でも、こんなキラキラした目で「おねえちゃんって、まほうつかいなの?」って聞かれて、あなたはいいえと答えられますか? 答えはNO。

 

「すごい! すごい! わたしもやりたい」

 

 え?

 

 え~っと。それは、ちょっと難しいかもしれないというか、まだ俺が使えないからそもそも教えられないというか……

 

(幼女の純粋な目)

 

 かわいい幼女にお願いされて断る男なんている? いねーよなぁ。

 

「もちろん、今日から君も魔法使いだね」

 

 僕と契約して魔法幼女になってよ。

 

 ま、正しい方法なんて知らないんですけどね。逆説的に言えば、契約しても無害? やったね。

 

「やったー!!」

 

 いわゆるごっこ遊びの延長みたいなものだろう。人形遊びとか、おままごとみたいな。要はごっこが出来ればこの幼女もそれなりに楽しんでくれるだろう。そして幼女が楽しむのを見て俺も満足と。

 

 犯罪? 少女と幼女がごっこ遊びするほほえましい光景ぞ? これが犯罪に見えるのは主の心が汚れているのではなくって?

 

「まず、正座しよっか」

 

「せいざ?」

 

 ああ、そっか。正座ってこの世界にないのか。いや、単純に幼女だから知らないってだけの可能性もあるけど、でもそういやこの世界にきてから正座なんて見た覚えがないな。

 

「こうだよ」

 

 手本を見せてやる。

 

「こう!」

 

 すると幼女がまねる。なにこのかわいい生物。

 

「目をつぶって、全身から力を抜こう。そして体の奥に意識を向けて、何か不思議なものはないかい? 暖かかったり、冷たかったり。柔らかかったり、硬かったり。それは人によって感じ方が違うけれど、とにかく何か自分にとっての特別なものが……」

 

 もちろんでまかせである。それっぽい雰囲気を出そうと頑張ったのだが、幼女はうんうん唸って実に楽しんでくれている様子である。よかった。

 

「あった!!」

 

 どうやらあったらしい。ほんとにそんなものがあったのかは知らないけど。

 

「そしたら、それを優しく包み込むように触れてみて。ゆっくりと。そーっと。そしてそこからほんの少しだけ力を掬い取って、ゆっくりと全身をめぐらせて。指先まで、全身を隅から隅まで」

 

 幼女はかなり真剣みたいだ。目をつぶって、手のひらを前に差し出し、険しい表情をしている。

 

 ほっぺた突っついたら怒られるだろうか?

 

「ゆっくりと浮かぶ自分をイメージしてみて。地面からほんの少しだけ、ふわりと浮かび上がる自分を……」

 

 幼女が、ゆっくりと浮かび上がった。

 

 え!?

 

 ……え??

 

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