ネカマ傾国記~TS転生した元ネカマガチ勢は乙女ゲームの世界で元気に傾国の美女やってます~   作:哀上

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第六話 この幼女はわしが育てた

 第六話 この幼女はわしが育てた

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 この幼女、天才だったらしい。

 

 目の前で幼女がふわふわと宙に浮かんでいる。

 

 ?? 突然のこと過ぎて、脳が情報を全く処理出来ていない。えっと……まずいったん情報を整理しよう。何事も落ち着いて冷静に対処すれば何も問題はないってばっちゃが言ってた。

 

 ええ~と、俺は幼女に魔法使いだと適当言って、そしたら魔法を教えてほしいと頼まれて、魔法の使い方を知らないどころか本物の魔法すら見たことがなかったのに魔法を教えることになり、ごっこ遊びのつもりで適当にそれっぽい指導をして、結果俺の指導を受けた幼女が目の前でふわふわと空中に浮遊していると。

 

 ……?? なんでそうなった?

 

「え? うわぁ!?」

 

 目をつぶって空中に浮かんでいた幼女は、今更自分が浮遊していることに気が付いたらしい。

 

 地面と自分の間の空間を凝視してみたり、地面に向かって手を伸ばしてみたり、と思ったらあたりをキョロキョロと見回してみたり、とにかく落ち着かない様子である。

 

「ほ、ほんとにういてる」

 

 気持ちはわからないでもない。目を開けたらいきなり宙に浮いてたなんて、それは大層衝撃的だろう。

 

 でも、俺の衝撃はその比ではないと思う。例えるなら、超能力教室なんて詐欺で稼いでいたら、ある日生徒が本当に超能力に目覚めてしまったみたいな。いや、比喩でも何でもなくまさにそんな気分である。

 

 そして、驚いているのと同時に俺は結構へこんでいたりする。いや、ガチで。魔法って、こんなに簡単に出来るようになるものなのかと。

 

 いや、幼女が特別なだけだとは思うんだけど。でも、目の前でそれほど優秀だと思っていないような、何なら自分よりかなり下だと思っていた相手が、俺がどんなに頑張っても出来る気配すらなかったことをあっさりと成し遂げてしまうのを見ると……

 

 なんといえばいいだろうか。ガチってテスト勉強したのに、勉強なんて全くしてなさそうな陽キャに点数負けたみたいなそんな気分である。もはや悔しくもないというか、自分が情けなくて才能の差に絶望する。

 

 ……もしかして、奇跡的に俺が適当言ったのが正しい魔法の訓練の手順だったり? ほら、全く勉強してなさそうで実は俺以上に勉強してたあいつみたいな感じで。

 

 えっと、まずは目をつぶって全身から力を抜く。それから体の奥を意識して、何か不思議なものを探る。暖かかったり、冷たかったり。柔らかかったり、硬かったり。人によってばらばらで、とにかく自分にとって特別な何かを……

 

 何か……

 

 なにか……

 

 ナニカ……

 

「おねえちゃん?」

 

「え?」

 

 危ない! 危うく、意識がどこかに飛んで行ってしまうところだった。幼女の声を掛けられたおかげで、何とか戻ってこれた。

 

「めをとじてゆらゆらしてたから、だいじょうぶかなっておもって」

 

 寝落ちしかけたともいう。

 

「大丈夫、何も問題ないよ」

 

 それにしても、特別な何かというのが全く持って見つからない。いや、特別な何かってなんだよ。あったかかったり、冷たかったり。柔らかかったり、硬かったりって。そんなのもはや何でもいいまであるじゃねぇか。

 

 20代~80代の女または男、みたいな範囲の大雑把さである。考えたやつはろくな奴じゃねぇな。もっと伝える努力をしろ。はい、俺ですね。言い訳するとですねまず伝える努力も何も伝えるための中身がなかったって言いますか、中見ないのになぜか幼女にはその中身が伝わってしまったみたいな。

 

 もしかして……

 

 俺は、自分に魔法の才能があるとは決して思ってはいない。それは母親から見ても明らかであるし、魔法がそれなりの教養と才能を必要とすることも何となく想像が出来ていたから。

 

 でも、それなりに努力すれば何とかなると思っていた。簡単な魔法ぐらいだったらある程度使えるようになる、それぐらいの才能はあるはずだ。そんな根拠もない実に甘い想定をしていた。

 

 その認識が甘すぎたのかもしれない。俺に魔法の才能がないっていうのは少ないって意味じゃなくて、文字通りの意味で0という可能性も……

 

 どれだけ努力しても、たとえこの先魔導書を手に入れたり、魔法師の人に直接教えを乞うことになったとしても、決して使えるようにはならない。そんな、文字通りの才能無しという可能性ももしかすると……

 

 いや、あきらめるのはまだ早い。

 

 これまで俺は魔法を見たことすらなかったんだ。やみくもにやってて成果なんて出るはずがない。努力というのはしっかりと方向性を見定めて、正しいものを積み上げる必要がある。

 

 え、目の前にいる幼女を見ても同じことを言えるのか? こいつみたいな天才は例外である。魔法を見たことすらなかった奴の適当な指導で、一瞬で魔法使えるようになる奴なんて参考になるはずがないし参考にしていいはずもない。全く別の人種である。

 

「魔法使いになった感想は?」

 

「すごいよ!! あのね、からだのなかがほかほかあったまってきて、そしたらからだがぶわーってういてるみたいで、めをあけたらほんとにういててね、すごかった!!」

 

 せっかく目の前に魔法使いがいるのだし有効活用しない手はない。しかも都合がいいことに俺のでまかせで魔法に目覚めたから、俺の言葉をいいように解釈して飲み込んでくれることだろう。本当は本人の資質のおかげで勝手に目覚めたも同然ではあるが。

 

「ちょっと手を握ってもらっていい?」

 

「うん! こんどはなにするの?」

 

 犯罪? うるさい黙れ。

 

 イエスロリータノータッチ、ただし幼女同士の触れ合いは大歓迎。だろ? 俺はどっからどう見ても幼女、それが幼女と手をつないで何の問題がある。誰がどう見てもほほえましい絵面じゃないか。

 

 TSはNG? いや、TSこそ至高? 

 

「そしたら、ゆっくりと魔力を流してみて」

 

「おねえちゃんに? わかった!!」

 

 ゆ、ゆっくりだよ。ほんとだからね。さ、先っちょだけだからね。入れちゃダメって……あ、入って……

 

 ……反省してます。すいません。

 

 これが、魔力か。初めて感じるものだから、何とも言い表せない不思議な感覚だ。ただ、この世界の人間の体だからなのかしっかりとそこに何かがあるというのは感じ取ることが出来る。

 

 この感覚をしっかりと覚えこませて、そして体の中から探せば……

 

 魔力の感覚を初めて感じて、一つ分かったことがある。俺にはどうやら心底才能がないらしい。喜ぶべき部分があるとしたら、どうやら0ではなさそうだということぐらいだろうか。

 

 魔力が全くないというわけでもないのだが、本当にちょびっとしかない。どれぐらいちょびっとしかないかというと、今幼女に俺の体に流してもらってる魔力量より余裕で少ないといえばいいだろうか。これは幼女がすごすぎるのか俺がダメすぎるのか……

 

 とても何かに使えるような量ではない。異世界人として最低限生命を維持するのに必要、その程度の量しかないのかもしれない。でも、全くないのと少しあるのでは全然違う。少しずつでも増やしていけば、いつかはきっと……

 

 どれほど時間がかかるのか気が遠くなるような作業かもしれない。しかもこの基礎量から予想できる驚くほど低い才能、もしかしたら一生かかっても微量しか増えないかもしれない。

 

 せっかくの異世界、魔法使えないとかひどくないっすか? もしかして、あと数年たって前世と足して30超えて正式な魔法使いになったら、魔力量爆上がりしてガチの魔法使いになれるみたいな展開あります? 無いですか、そうですか。

 

 ……って、幼女さん。いつまで俺に魔力流して? 

 

 何処か苦しいような、何かに圧迫されているような、そんな気がする。

 

 魔力流されるのなんて初めてだし、なれないとこ使ってるから? いや、ちょっと待て。なんか嫌な予感がする。これガチでやばいかもしれない!

 

「ストップ! ストーップ!!」

 

「?? おねえちゃんどうしたの?」

 

 ふぅ。止まってくれた。

 

 いや、実際危険だったのかどうかなんてわからないんだけど。でもかなり嫌な予感がしたし、体のどこかわからないけど変な部分が悲鳴上げてるような気がしたし、即止めてもらって正解だろう。

 

 少し流してもらったぐらいで俺の魔力総量超えてたわけで、限界超えて魔力流され続けるとかあまりいい結果は想像できない。内側から破裂みたいな最悪の結末すらありえそうだし。

 

「いや……まだ今日魔法使えるようになったばっかりでしょ? いきなり短時間で使いすぎるのは体に良くないから」

 

 主に、俺の体に悪い。

 

「そうなんだ! おねえちゃんってすっごいものしりなんだね。まほうとかもなんでもしってるし」

 

「まあね」

 

 何でも知ってる。(何もない空欄から勝手に天才が読み取って理解しただけ)

 

 勘違いモノの主人公かな?

 

「まだまだたっぷりあるけど、きょうはもうやめたほうがいいのかな?」

 

 たっぷり。

 

 え、たっぷりあるの? マジで?

 

 空中に浮かんで、俺にあんなに魔力流し込んで、それでもまだたっぷり残ってるの? 今日、魔法使えるようになったばっかりなのに?

 

 やっぱ天才は違うな。比べることすら烏滸がましい。

 

「ちなみにどれぐらいあるの?」

 

「ううんっとね。うかんだり、おねえちゃんにまりょくおくったり、あとりょうていっぱいやってもだいじょうぶ」

 

 空中に浮いて、魔力流し込んで、それが後両手いっぱい……

 

「そ、そんなに!?」

 

 いや、俺の何十倍魔力量あるんだよ。流し込まれたのですら倍ぐらいあったのに、少なくとも20倍? 宙に浮いてたのも合わせてもっとか。下手したら100倍ぐらいあるのでは?

 

 才能、なんて残酷なんだ。

 

「え? すごい??」

 

 幼女がうれしそうな顔でどや顔をする。

 

 才能の差を見せつけられ、そのうえでのどや顔。普通ならかなりイラっと来る場面なのだが、でもかわいいから許しちゃう。

 

「すごい!」

 

「ほんと!? いつかおねえちゃんみたいになれる?」

 

 俺みたいに? それはなんだ、魔法が使えずに迷走している俺みたいにってことか? 新手のあおりかな?

 

 多分、無理だと思うよ。魔力増やすみたいなのはよくテンプレで見るけど、魔力減らすのなんてあんま見たことないし。というか、そもそもからしてあこがれる物でもないと思うんだ。

 

「……そ、それはどうだろうね」

 

「むぅ~、でもがんばるもんね」

 

 そう、まぁ頑張るっていうなら頑張るといい。実際問題、俺にあこがれる要素なんてあったか? 非常に疑問である。まぁ、あのでまかせ魔法指導のこと言ってるんだろうけど。

 

 この子は将来詐欺師とかに騙されそうな気がする。光る原石だ。盗まれるタイプの。

 

 ……

 

 やっぱり、将来じゃなくて今騙されるかもしれない。どうせ盗まれるんだったら、その光る原石俺が貰っちゃってもいいよね。なに、安心して欲しい。そんな悪いようにはしないから。

 

「じゃあ、私の弟子にしてあげよっか?」

 

「でし? なる!!」

 

 俺に魔法教わったんだし、弟子みたいなもんだよな。でもって、俺無料で弟子取るタイプの師匠じゃないんですわ。やっぱり、自らが積み上げてきた極意を教えるわけだからね。それなりのものを用意してもらおうかなと。

 

 なに、そんな無茶は言わないさ。

 

「なら、契約しよっか」

 

「けいやく?」

 

 ただ、魔法を教えたお礼にちょっとしたお返しをもらおってだけだ。別に何もおかしなところなんてないよね?

 

 本当に、ちょっとしたものでいいんだよ。例えばそう、手に入れたばかりでまだ思い入れもなく大して惜しくもないものだとか、無駄に量があって少しぐらいあげてもいいと思えるものとか……

 

 師匠のおかげで手に入ったものを少しおすそ分けするとか。

 

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