ネカマ傾国記~TS転生した元ネカマガチ勢は乙女ゲームの世界で元気に傾国の美女やってます~ 作:哀上
第七話 弟子と魔力を手に入れた!!
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「けいやく?」
幼女が頭にハテナを浮かべながら、こてんと首をかしげる。契約とは? といった様子である。何かというと……それを今必死に頭をひねりながら考えているところである。
まず、それっぽい理由付けが必要になる。当然だ。存在しないものこそ、現実的でリアリティーのあるものでなければならない。現実がいくらファンタジーで非現実的な事象に襲われようとも、それはどこまで行っても現実であることに疑いはない。
例えば、史上最年少でプロの世界に身を投じ、そこから連勝を重ね、最年少記録を大量に樹立し、一年半後にはすでに全プロの参加する大会で優勝するまでになったという人物がいたとしよう。
もし、こんな人物が物語の世界で出てきたらどう思うだろうか?
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名無しのモブ
はいはい、チート
名無しのモブ
なろう系乙
名無しのモブ
俺つえ―ww
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しかし、もし現実に存在したら?
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名無しのモブ
現実が物語を超えやがった
名無しのモブ
○○の作者現実に越されて涙目
名無しのモブ
現実文庫からとんでもない本が出版されたと聞いて
名無しのモブ
発売時、現実的じゃなさすぎるとか批判されてたのに現実に追い越されたの草
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そういうことである。現実は現実的でなくても許される。むしろ現実的でないほど素晴らしいとされるが、物語はそうはいかないのだ。もちろんファンタジーであれば話は変わってくるが、現実路線で現実以上に強い登場人物を描くことは不可能なのである。
いくら幼女に話すものとはいえ、あからさまな作り話というのはあまりよろしくない。相手は幼女ではあるが俺の数十倍の魔力を持つ存在、侮っていいはずがない。
それなら騙すなよ。そう思う気持ちもわかる。しかし、騙して利益が得られるのだったら迷わずその選択を取るべき、そう前世のネカマ時代の記憶が教えてくれる。前世で相手にしてたやつらも、言ってしまえば今の俺と幼女程度の差があった。
実力面でも、知能の面でも。
……女キャラを前にすると知能が幼女レベルに下がるオタクたち。見た目はオタク頭脳は幼女とか嫌すぎる。
侮っていい相手ではないが、逆に過剰に怖がって利益を得るチャンスを棒に振るのは愚か者のすることだと思う。「何もしないことは最大のリスクだ」って何処かの偉い人も言ってた。機会損失ってやつである。
……たかが幼女を騙そうというだけで、俺は何をやっているのだろうか。というか、幼女を騙すって冷静にどうなんだ? 人として超えてはいけないライン、その向こう側にある物事の気がしないでもない。
いや、これを逃したらいつこんなチャンスあるかなんてわからない。こんな階級社会の中で成り上がるために使える力が手に入るかもしれない瞬間なんて、人生でそうあるモノではないはずだ。
それに、俺が目覚めさせてあげたんだからちょっとぐらい美味しい思いしても文句は言うまい。え? お前は適当言っただけで幼女が自力で目覚めただけ? 確かに事実はそうかもしれん、しかし幼女の中では……な。
なに、最悪バレてもそれがある以上なんとかなるさ。さぁ行こう、より良い未来を我が物にするために、
「契約って言っても、そんな大層なものじゃないよ。ただ、ちょっとした儀式みたいなものをするだけだから。やりたい? 私の弟子になってみたい?」
「うん、やる!! おねえちゃんのでしになって、おねえちゃんみたいなすごいまほうつかいになる!!」
あくまでも、俺が幼女を弟子にして利益を享受したいのではなく、幼女が俺の弟子になりたい。この前提は非常に重要である。弟子としようという立場以上に、お願いしたものとされた者っていうのは直感的にどっちが上かというのがわかりやすい。
これが立場とごっちゃになったりすると、上下関係が変にこじれて面倒になったり、それこそ立場では上だけどほぼ言いなりみたいな状況が完成したりする。いわゆる『好きになった方が負け理論』その応用である。先に頭を下げた方が負けなのだ。
後は簡単だ。正直この世界の常識が微妙な俺にとって、この世界での常識の範囲内で現実的なラインというのはよくわからない。前世を引きずる俺からしたら、話の中に魔法とかいう言葉がでた時点で眉をひそめて、その怪しい会合のばから抜け出すことを考えるだろう。
しかし、魔法が実在するこの世界で魔法というのが話の隅に出てくることに何らおかしなことはないだろう。これは何となく予想がつくのだが、こういうのがいくつもあるのだ。魔法関連はもちろん、前世より遅れた文明を理由に、前世ではほぼ形骸化していた身分制度を理由に、この世界にはこの世界特有の様々な常識がある。
常識のずれというのはひどく面倒だ。なぜなら、ズレてしまった常識の中で当然だと思いこんでしまうことがあるからだ。たとえば「ネットワークビジネスがー」とか「今度、投資のセミナーがあるんだけど…」とか「〇〇神以外の神は全て偽物であり」とか「契約しないと逮捕されることになるぞ」とか……完全に地雷である。が、彼らは大真面目に言っている。勧誘しようというときにそれが出てくる時点で、常識のずれというのがいかに恐ろしいのかわかるというものだ。
でも、いったん今は大丈夫だ。だって、相手も幼女だから。おれが前世の価値観に引きずられて常識からずれてるとしたら、幼女は言葉通りの意味で常識なんてほぼないだろう。
そして、そのほぼに触れないようにする方法も簡単だ。この幼女は、さっき俺に教わる形で魔法を使えるようになった。つまり、さっき俺が教えた口から出まかせで適当並べた魔法理論が幼女にとっての魔法の常識となったわけである。
それに沿うように展開していけば、それはもう楽勝であろう。
「じゃあ、さっきみたいに私に魔力を流して。ほんの少しでいいからね」
「はーい」
後はもう流れ作業だ。
最低限、事故にだけ気をつければいい。例えば幼女にもばれてしまうような明らかな矛盾とか、設定に詰まってどもり不信感を持たれたりとか。
そして、なによりも。魔力の流されすぎで破裂したなんて悲惨なオチにならないように。
「私の中に、あるあなたのその魔力の源ある場所と同じ場所に、ゆっくりと注いでくれる?」
「こう?」
ゆっくりと魔力が流れ込んでくる。これで二度目だが、やっぱり不思議な感覚だ。でも、高揚感を覚える。これでついに俺も……
「その少量の魔力をゆっくりと自分の源からはがして、そっと私に受け渡して」
「……ん!」
魔法使いになれる!!
これ、絶対まずい方法な気がするんだよね。才能の一部を奪ってるみたいな、そういう系統な予感がする。でも、ほら魔力覚えさせてあげたの俺だし、ウィンウィンみたいな?
え? アウト?
いや、ほんとにちょっとだよ。というか、ちょっとしか俺には入らない。そもそも魔力量が違うということは入れる器の大きさも全然違うわけで、満タンまでもらっても1パーセント行くか行かないかぐらいでしかない。
だから、ね。
「これぐらい、かな?」
「基本的には自分の魔力で満たされているからそれほど量が入るものじゃないし、形式的なものでしかないからほんのちょびっとでいいんだよ」
「へぇ~、そうなんだ!」
幼女からしたら、あまりに微量だったからだろうか? 幼女が首を傾げた。
いや、それ量が少ないんじゃなくてお前の保有魔力量が馬鹿みたいに多いだけだからな。俺の魔力量満タン限界まで魔力詰まって、器たっぷたぷだから。そう言ってやりたいのだが……
幼女に俺の魔力量が少ないのはばれない方がいいような気がする。あこがれの魔法使いのおねーちゃんという方が何かと便利に色々とできるだろうし。
「これで契約完了っと。どう? 弟子になった感想は」
「う~ん、よくわかんない」
ふぅ~、これでとりあえずの目的は達成。『リンアは魔力を手に入れた!!』ってね。これでようやっとまともな魔法を使えるようになるってものだ。初期値の低さには苦労させられたわ。
それにしても、まさか異世界にきて初めて貢がせる相手が幼女とは……
幼女とは……
幼女に貢がせる。あれ? 冷静になってみると、もしかして俺ってかなりのクズなのでは?
ま、まぁ一旦おいておこう。とりあえず軽くフォロー入れて、また今度も搾れるように……
?? あれ?
俺の思考腐り過ぎでは?
相手がオタクから幼女に変わったせいで、ガチ目にクズなやつの思考回路みたいになってしまってる気がする。オタク相手でもひどい? いや、別にオタク相手ならええやろ。
とりあえず、これを元手に何とかして魔力を伸ばして行って……もしかして、あっという間に成長させて最強になって無双しちゃったり?
『異世界転生たら才能0だったけど、幼女から才能奪って成り上がる』
……なんだこのゴミ。
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最強無双、そう思っていた時期もありました。現在、最強になるどころか俺の魔力は成長してくれる気配すらありません。
どうしてこうなった?
魔力をすべて使い果たしてみたり、体内を血液に沿うように魔力を行き渡させてみても、体のどこかから魔力をくみ出すようなイメージをしても、空気中から魔力を体内に取り入れようとしても……
とにかく片っ端から試しては見たのだが、うんともすんともいいやしない。
なぜだ? やっぱり、俺に才能がないから……でも、いくら才能がないとは言っても全く伸びないというのもおかしな話だと思うんだ。だって、普通に考えたら少しぐらい伸びるもんだと思うでしょ?
もしかして、この世界は生まれた瞬間から才能によって魔力量が決まっていて後からではどうしようもないみたいなタイプの世界なのだろうか?
もしくは、レベル制の世界でいくら訓練してもレベルを上げなければ意味がない、またはレベルアップの時に補正値として少し上乗せされるような世界観なのだろうか?
無意味な現実逃避を試みるも、どっちも違うと現実が訴えかけてくる。
隣で初めて出会った時ですら俺の何十倍もあった魔力を、初期の俺に比べて数百倍にまで膨れ上がらせている幼女。成長しすぎてもはやバケモノである。
これを見るに、どうやらそういう世界ではないらしい。
なら、才能の差だろうか? 確かに、俺と幼女の間にはあり得ないほどの差がある。しかし、いくら俺に才能がないとは言ってもピクリとも成長しないというのはおかしな話だ。
いや、実は何となく原因に心当たりがある。やっぱり、ズルしたのがまずかったのだろう。
はぁ……至極単純で、実に当然な話だ。
元は他人の魔力だもんね、成長なんてするはずないよね。
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