ウマ娘三部作Firstシーズン 片翼の撃墜王 ~イカロスの黎明~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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Q.これいつの有馬記念?

A.URAファイナルズの後の有馬記念です。
本作ではURAファイナルズはマヤちゃんの育成3年目で開催されたことになっておりますので、去年の有馬記念ではナリタブライアンとマヤちゃんが激突しています。

ですので、ナイスネイチャのアプリストーリーにおけるトウカイテイオーに勝った有馬記念は、この世界には存在していません。トウカイテイオー復活の有馬記念は存在しているのですが、この世界ではナイスネイチャはまだ一度もトウカイテイオーには勝てていないのです。

…え?それならテイオー復活の有馬記念はいつか?
そんなあなたにはシングレ1巻のこの言葉を送りましょう。



この世界に生きる彼女達の運命は
    
まだ誰にも分からない



…アニメ2期の終わり方からして、アプリ版における3年間を超えても、彼女達は走り続けるのではないかと作者は思っていますので…



開戦前夜

 

「では、1番ナイスネイチャ選手。

続いて2番…」

 

前に出てポーズを取り、それが終わると後ろに下がって、次の選手に場所を譲る。

今日のレースを走るウマ娘達の顔見せ兼、コンディションなどの確認の場であるパドックは、実際にレースを走るアタシ達ウマ娘や、敵陣営の偵察を行うそれぞれのトレーナー、そしてレースを観戦する観客達など、多くの人にとってとても重要な意味を持つ場であるが、それでも突き詰めて言えばやることはそれだけだ。

 

そんな意味や意義こそ重要なものの、それ自体は特に何ら負担にはならないパドックを終え、アタシは地下バ道を歩く。

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ…

 

靴の底に付いている蹄鉄が、コンクリートの地面に当たって音をたてる。そして、周りが壁に囲まれた空間のために、その音がとてもよく反響する。

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ…

 

中山競バ場の地下バ道は、他のレース場のものに比べて比較的短い。だから、こうして普通に歩いていても、出口にはすぐに着いてしまう。

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ…

 

心臓の音がうるさい。外は凍えるほどの寒さであり、その冷気はここ地下馬道にも一部流れ込んできている。

でも、今のアタシにはそれが特に寒いとは感じない。なぜなら、緊張と高揚で、アタシの体が熱くなっているから。吐く息の白さとは裏腹に、アタシの内側は赤く燃え盛っているから。

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ…

 

目の前に、光が見えてくる。あれをくぐった先は地上であり、そこから先はアタシにとっての戦場。

有マ記念…年末最後のG1であり、今年最後の栄誉を得るチャンスを巡り、全国から集まった精鋭達が、血で血を洗う争いを繰り広げる、人外魔境にして、死地。そして、アタシにとっては…

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ…

 

光はもう目の前だ。あれをくぐった瞬間に、アタシの戦いは始まる。

アタシは一度だけ立ち止まる。そして、胸の中の猛りを鎮めるように、深呼吸をする。

 

(…大丈夫。アタシならできる)

 

深く、そして大きく深呼吸をする。レースに出るのは別に初めてではないけれど、やはりこの瞬間は一番緊張する。だからこそ、それに囚われて動けなくならないように、それを力に変えて精一杯走れるように、アタシは一度だけ立ち止まる。

 

スゥー…ハァー…スゥー…ハァー…

 

ゆっくりと息を吸い、そしてゆっくりと吐き出す。それだけで、胸の中の狂おしいほどの熱量が、次第に落ち着いていく。

 

「ふぅー…」

 

強張っていた体から程よく力が抜け、全身に力が満ちていく。これで、もう大丈夫だ。

 

(…今なら)

 

…何だって出来る気がする。そこで脳裏をよぎったのは、今日までの日々。何度も負けて、何度も泣いて…それでもトレーナーさんと歩いてきた今日までの日々。だから…

 

(…今日こそ、アタシは…!!)

 

両手を握りしめる。ようやくここまで来た。そして、今度こそ、今度こそアタシは…

そんな思いを込めて、地下馬道の先に待つ光に向けて、一歩を踏み出そうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「ネイチャちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

中山競バ場の地下バ道。そこから地上へと向かうネイチャちゃんを、マヤは引き留める。

 

…あと一歩、あと一歩のところで地上に出るところだったネイチャちゃんは、そんなマヤに対して特に怒ることもなく振り返った。

 

「…来てくれたんだね、マヤノ」

 

その顔はとても穏やかで、そして、今から戦いに行く顔には、とても思えないほどにキレイで…

だから…

 

「…!!」

 

ここに来るまでに、マヤの中には色々な思いが渦巻いていた。直接会って話したいこと、言いたいこと、ネイチャちゃんの話やテイオーちゃんの話を聞いて思ったこと、兎に角いろんなものが、全部ごちゃごちゃになってマヤの中で暴れていた。

 

だから、直接会いに来た。この胸の内にあるものを、ネイチャちゃんに聞いてもらいたくて。でも、その顔を見た瞬間にわかった。わかっ・・・ちゃった。今、マヤが言うべきこと。大切な友人に言うべきことは…

 

「…って」

 

誇り高き挑戦者に言うべきことは…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…勝って!ネイチャちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あいよ!ネイチャさんにまかせときなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とびっきりの笑顔でネイチャちゃん

が親指をたてる。そして、今度こそ地下バ道の先の光の中に消えていく。そして…

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

「3枠1番ナイスネイチャ選手、4番人気です」

「未だG1で勝ち星をあげることが出来ていませんが、それでも菊花賞や宝塚記念など、名だたるレースで常に入着をしている安定感のある子です。今回こそ、一着になれることを期待したいですね」

 

出走するウマ娘達がゲートに入っていき、一人一人の枠順、番号、その日の人気、そしてそれに対する解説の一言が読み上げられていく。

 

アタシは自分の番号が読み上げられているのを聞きながら、少しだけ目をつむる。そして、少し前にテイオーと話したことを思い出す…

 

 

・・・・・・

 

 

「ずる~い!ネイチャはマヤノに直接応援に来てもらえるなんてぇ! 良いな良いな~!!」

 

ゲートに入る前のわずかな時間、アタシがさっき地下バ道にマヤノが来たことを話すと、テイオーはぷくっと頬を膨らませながらそう言った。

 

「でもあんた達同室でしょ?それなら、地下バ道には来なくても、朝には流石に応援のメッセージくらい直接もらってるでしょ、テイオー?」

 

「うぅ~、それはそうだけどさ…」

 

だから、別にマヤノがアタシだけを贔屓しているわけではないことを言ったんだけど、テイオーはそれでも納得のいかないというような表情をしている。

 

「それでも、同室のボクを差し置いて、マヤノがネイチャを応援しにいったのがなんかく~や~し~い!!」

 

そしてプンスカという擬音が出そうな感じで腕をバタバタさせる。そして…

 

「ふんだ!こうなったら、ボクがこのレースで一番になって、ネイチャの応援に行ったことを、マヤノに後悔させてやるんだ!!

 

…だからネイチャ」

 

そこで、今までの子供っぽい行動が嘘のように、テイオーは闘志に溢れた顔をしてこちらに向き直る。そして…

 

「…絶対に負けないからね!」

 

そう言ってくるから…

 

「…アタシだって負けるつもりはないよ。むしろ…」

 

同じく闘志を剥き出しにして答える。

 

「…今日こそは、アタシが勝つ。テイオーこそ、負けた時の言い訳考えといたら?」

 

 

 

 

 

 

「…へぇ?」

 

 

 

 

 

 

そう答えた瞬間に、全身に重いプレッシャーがのし掛かる。

 

「…へ!?」

 

「…何!?」

 

「…っ!!」

 

近くでストレッチをしていたウマ娘が、あまりの怖気に何事かとあたりを見回す。その他のウマ娘も、テイオーの放ったプレッシャーに当てられて、大なり小なり混乱している。

 

(…すごい)

 

そして、それを直に当てられたアタシは、それに耐えながらも内心感嘆する。

そう、ここは有マ記念。日本全国から集まった精鋭達が、年末最後の栄光を手にするために争う場所。そして、当然その場に集まる精鋭達も、レースの格付けの中で最も上の格付けであるG1の常連ばかりであり、中にはそれらのタイトルを取ったことが有る者だって何人もいる。

 

(そんな選りすぐりの猛者達さえも恐怖させるなんて…)

 

やはり、このウマ娘はただ者ではない。レースの天才、そして幻の三冠ウマ娘。歴史にifはないけれど、もしこの子が怪我をしていなかったら…

 

 

 

…していなかったら…なんだ?

 

 

 

…ガッ!!

 

 

 

「…えっ!ちょっとあなた何やって!?」

 

「だ、大丈夫!?係の人呼んでこようか!?」

 

「…」

 

直後にとったアタシの行動に、周りのウマ娘達が狼狽える。慌てて係の人がアタシに大丈夫かと聞いてくるが、別にこんなものなんてことない。

…ちょっと拳が当たる場所が悪くて、歯で口の内側を切ってしまっただけだ。

 

アタシは自分の口から垂れた血を拭い、改めて目の前の相手に向き直る。そこには、目を細めたまま無言でこちらを見るテイオー…帝王がいて…

 

「…何度でも言うよ、テイオー…。

今日は、今日こそは…アタシが勝つ」

 

「…」

 

…そうだ、何を弱気になっているんだ。アタシはテイオーに勝つ。そう決めたんだ。その為に頑張ってきたんだ。なら…

 

「…だから!アンタは負けた時の言い訳でも考えときなさい!!」

 

…口にするべきは諦めなんかであってはならない!絶対に倒す、その覚悟だけで良い!!

間違えるな!アタシはアンタの獲物なんかじゃない!アンタの喉笛を引きちぎる狼だ!!

 

そう決意を込めて、テイオーの目を真っ正面から睨み付ける。

 

周囲が静まり返る。

…一秒か、一分か、一時間か。実際にはそう大した時間ではないにもかかわらず、それでも永久に近い時間がたったその時。

 

「…あはっ」

 

 

 

 

 

 

 

「あははははははははははははっ!!」

 

 

 

 

 

突如テイオーは爆笑した。可笑しくて、可笑しくてたまらないとでも言うように、心の底から嬉しそうに、楽しそうに。そして…

 

「…いやぁ、ごめんねネイチャ。別にキミのことを笑った訳じゃないんだ。もし気に触ったなら許してくれないかな」

 

そう断ったあとで

 

「そっか、ネイチャ。ようやく、ようやく本気でボクに勝つって、そう言えるようになったんだね?なら…」

 

 

 

 

ノ ゾ ム ト コ ロ ダ ヨ

 

 

 

 

「…ひっ!?」

 

「…なっ!?」

 

「…」

 

先ほどまでのプレッシャーとは比べ物にならないほどの、あまりにも桁違いの圧が周囲に放たれる。その圧力は、普通の人ならまともに浴びれば一瞬で気絶してしまうほどのものであり、流石にここまで来るほどのウマ娘達の中に、それで体調に異変をきたす者はいなかったが、それでも皆顔を青くしたり、冷や汗をかいている。

 

「…ネイチャ」

 

そんな圧力を放ちつつ、アタシの方に近づいてきたテイオーは…

 

「勝つのはボクだよ」

 

そう小さくつぶやく。そしてアタシの脇をスッと通り抜けて、後方のゲートに向けて歩いていく。気が付けば、ゲートへの入場の時間になっており、他のウマ娘達も慌ててゲートへ向かう。

 

そんなテイオーの後ろ姿を見ながら、アタシは…

 

「…それでも、アタシは勝つよ」

 

そう呟いて、彼女の後を追った…

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

「さぁやって来ました5枠11番トウカイテイオー選手、今日の一番人気です!」

 

「あの有マ記念の奇跡の復活劇から向かうところ敵なし。今日も今日とて絶好調です。今回のレースでも、その天才的な走りを存分に発揮してもらいたいところですね。」

 

 

…目を開ける。すでに出場ウマ娘は全員ゲートに入っている。となると、後はスタートするだけだ。

 

スタートの体勢をとって、じっと待つ。さっきまで歓声が上がっていた客席も、今は静かだ。そして静まり返ったレース上を、一筋の風が吹き抜けた瞬間に…

 

「…!!」

 

ゲートが開く。

 

…今、この瞬間、年末最後の大一番、有マ記念が始まったのだった。

 

 

 




Q. 作者さんはさ、自殺が趣味なの?(真剣を肩に担いでトントン)

A. ままま、待ってください!これには訳があるんです!!(縄でぐるぐる巻き)
  
この作品におけるネイチャさんは、他の作品のネイチャさんよりも覚悟がガンギマリなんです!そしてアニメ2期の菊花賞の描写からもわかる通り、彼女はテイオーさんのいない菊花賞でも全身全霊で走り抜けたという自負があるんです!

ですから、テイオーさんの威圧に一瞬怯み、その矜持を自身で壊しかけた憤り、自分への情けなさからあのような行動に出たんです!もう一度テイオーさんに立ち向かう覚悟を決めるため、いわばその証明としてのあの行動なんです!!決していたずらにあんなことをさせているわけではないんです!!

Q. へぇ~…

A. (…もっとも最大の原因は、気が付いたら作者の手から離れて、帝王ムーブどころか魔王ムーブをかまし始めた、どこぞのテイオーさまなんだけど…)

Q. …作者くん、聞こえてるんだよ?つまりキミはボクのせいだって言いたいのかな?(釘バットを構えてニッコリ)

A. ぁ…



※なお、残りはスタッフがちゃんと処理(意味深)しました。



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