ウマ娘三部作Firstシーズン 片翼の撃墜王 ~イカロスの黎明~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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はーい!お客様ご注文でーす!!
ナイスネイチャとトレーナーさんのと出会い、一丁入りまーす!!
(よろこんでー!!)


…書き始めた当初はプロローグでしか出てこないちょい役の予定だったのですが、
気が付いたらキャラ設定が出来ていました。

まぁ、それでも本当に出番はちょっとしかないですが、楽しんでいただけると幸いです。



前触れ

 

 

 

 

 

今でもそうだけど、特にあの頃のアタシほど、その数字に愛された人類は、有史以来いなかっただろう。

 

トレセン学園に入り、最初にもらった生徒証に書いてあった生徒番号は、333333だったし、出席番号も33番。くじ引きをすれば、大体出るのは3等賞だし、小テストを受けても、その順位は大体3位。

…挙げ句の果てには、卵を割ると、最初の一回はほぼ100%の確率で三つ子が出ることに気付いた時には、変な笑いが出た。

 

3、さん、サン、参、三、弎…

 

他にも色々あるけど、ここまで3が続くと、呆れを通り越して笑いが出てくる。祝福と呪いは紙一重だとはよく聞くけど、まさにそれは至言だとアタシは思う。だから、それは勿論トレセン学園に来た目的であるレースにおいてもそうで…

 

「あ~…また三着か。

…本当に縁がある数字だよね、アタシにとって」

 

…その時もう何度目か分からない3着のレース結果を見るアタシは、流石にもう疲れていた。

どんなに足掻いても、努力しても、アタシでは決して一番になれない。それなのに、周りの子は皆キラキラしてて、まるで物語の主人公みたいにぐんぐん実力を伸ばしていく。

 

それを見ている内に、何だか全てがどうでも良くなっていく。このままでも良いんじゃないのか、と心の中の誰かが囁き始める。3位だって十分に凄いことだ。ならそれでもう良いじゃないか、と。

 

だから、それ以来アタシは自分に対して一切希望は持たないことにした。どんなに頑張っても才能には叶わない。そう思うようになった。

 

…ほどほどでも良いじゃないか、別に1等賞にならなくても死ぬわけじゃない。それなら、モブはモブらしく、立場を弁えて、それなりをキープし続ければ良いじゃないか。あの頃アタシは、本気でそう思いかけていた。だからもし、あの時…

 

「き、君!ちょっ、ちょっと待ってくれ!ってうわ!!」

 

「…へ?アタシですか…って、ひっ!?」

 

そう、もしあの時、転んで水溜まりにダイブした挙げ句に、上から降ってきたペンキのバケツを頭から被り、何だかよく分からないドロドロのお化けみたいになったあの人に出会わなければ…

 

「お、お願いだ!は、話を…」

 

「きゃっー!化け物ー!!」

 

「ぐはっ!!」

 

…多分アタシは、今ここにはいなかったんじゃないかな?。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「さぁ、各ウマ娘達が一斉にスタートしました。特に出遅れた子はいないようですね」

 

「そうですね。皆キレイにスタートしましたね。それでは現在の状況を見てみましょう。まずはメジロパーマー選手が先頭集団から抜け出し、トップを独走しています」

 

「彼女の基本戦法は大逃げですからね。序盤から力強い走りで、全体のペースを作っていきます」

 

「続いて、その後にワールドレガシー選手、続いてダイタクヘリオス選手が続いています」

 

「一番人気のトウカイテイオー選手はどうですか?」

 

「彼女は後方集団と真ん中の集団の間あたりに着けていますね。普段の位置よりは少々後ろ目の場所に着けているような気がしますが、彼女の脚質を考えると、あそこからでも十分に先頭集団をとらえることができるのではないでしょうか?」

 

解説の人の声がレース場に響く。

レースはまだ序盤だけど、周囲の人々も、自分達が応援しているウマ娘達に声援を送っている。そんな熱狂に包まれたレース場の片隅で、マヤはレースを見守る。

 

「…」

 

レースはまだ最初の4コーナーを過ぎたあたり。

解説の人が言った通り、宝塚記念でも大逃げで逃げきったパーマーさんが、先頭集団を引っ張り、それに追随する形で他のウマ娘達が続いているという形だ。逃げウマ娘である彼女が出てくるレースならそこまで珍しくない立ち上がりであり、まだレース序盤ということもあり、そこまで大きな動きはない。

 

気になるのは、一番人気のテイオーちゃん。あの子は先行だけでなく差しもできる子なんだけど、差しを狙うにしては少々後ろ気味に付けている。何か意図があるのかもしれないけど…今のところはまだ何も動きはない。

 

そこまで考えて、マヤはパーマーさんの後ろに着ける先行集団に目を向ける。そこにはクリスマスカラーの勝負服を身に付けた一人のウマ娘がいて...

 

「…ネイチャちゃん」

 

内枠故にインコースを懸命に走る彼女を見ていると、あの日の彼女との会話が脳裏をよぎった…

 

 

 

・・・・・・

 

 

「…アタシねマヤノ、実はメイクデビューする前、トレセン学園辞めようとしてたんだ」

 

お互いに注文の品を食べ終え、デザートが来るまで沈黙していたネイチャちゃんは、唐突に口を開いた。しかも、その内容は初耳かつ、衝撃的なもので…

 

「…えっ?そうなの!?」

 

「…まぁ、もちろん昔の話だよ?別に今はもうやめようなんて思ってないから、そこは誤解しないでね?」

 

内容が内容なだけに驚くマヤに、ネイチャちゃんは慌てて手を振る。だが、流石に今まで聞いたことすらない話だったために、思わず追及してしまい…

 

「な、なんで…?」

 

「あ~、それ聞いちゃう?

…まぁ、大した理由じゃないよ。単純に成績不振。どんなに頑張ってもレースで良い結果を出せない。何度やっても1着になれない。

…トレセン学園ではよくある話でしょ?」

 

「…ぁ」

 

…故に、その言葉に沈黙してしまう。

…そう、マヤ達が通う中央トレセン学園は日本一のウマ娘達の名門。故にその生徒達はレースをするにあたり、最先端のトレーニング設備や、豊富なサポートを受けることが出来るが、逆に言うとそんな素晴らしい環境で練習するために、日本中から集まってきたウマ娘達と鎬を削らなければいけない。そしてそれ故に、当然その争いについていけずに脱落する者も中にはいる。いやむしろ、それが大半だ。

 

トレセン学園の校訓は「唯一抜きん出て並ぶものなし」であり、正しくは「Eclipse first, the rest nowhere」。

これはつまり、輝くことができる者以外は、取り残されるということに他ならず、それ故に毎年多くの入学者を向かえるトレセン学園は、同時に毎年多くの退学者も排出する。そして

 

「…その…」

 

「あはは、別にマヤノが悪いんじゃないから気まずく感じる必要はないよ。

まぁ、確かにこう言うこと言ったらそう聞かれるのは当然だよね。

…アタシこそごめんね」

 

それについて少なくともマヤは何も言えないし、言うべきではない。何故なら、マヤは才能があった側、それこそ他者を蹴落とした側であるからだ。間違っても同情の言葉などかけてはいけないし、それについての批判などもっての他だ。だからこそ、マヤは何を言って良いのか分からず、黙りこむしかない。

 

マヤが食後の飲み物として頼んだオレンジジュースとは違い、ネイチャちゃんの頼んだコーヒーは、暖かい飲み物だからか、薄く湯気を上げている。

 

流石にお昼のピークは過ぎたのか、先程に比べればお客の数は随分と減っていて、残っているのはマヤ達みたいな女性客ばかりだ。まばらになった客席にちらほらと腰掛けた彼女達は、皆雑談に花を咲かせている。

 

そんな光景を尻目に、気まずい沈黙を強いられたマヤに、ネイチャちゃんは語り続ける。

 

「3着…レースを終えたアタシが見上げた先の掲示板には、あの頃いつもその順位が書いてあった。何度頑張っても、結果は同じ。本当に呪いか何かなのかと言いたくなるくらいにその数字はいつもアタシの隣にあった」

 

「…」

 

「だからかな、入学当初は絶対にここで成り上がって見せると思っていたはずなのに、気が付いたらそんなハングリー精神はなくなってた。

むしろ、もう良いんじゃないか。三着も立派な順位だ、頑張ったじゃないか。

…そんな言い訳の声が、自分の心の中で段々と大きくなっていって…」

 

「…」

 

「だからね、あの頃のアタシは途方もなく疲れていた。手を伸ばしても理想に届かない、むしろ現実は足掻けば足掻くほどに泥沼みたいにアタシを飲み込んでいく…

本当にもう心が折れかけてたんだ」

 

それは、絶望の記憶。

テンプレで凡庸で、それでいて世の中にありふれている類いのものではあるが、それだけに本人にとっては深い深い苦しみと悲しみの記憶。

…自分で言うのもなんだけど、間違いなく天才の類いであり、故にそんな数多の絶望の山の上を駆け抜けてきた側のマヤには、到底想像もつかないような壮絶な記憶がネイチャちゃんの口から語られていく。

 

そう、だからこそ…

 

「だったら…どうして、ネイチャちゃんは諦めなかったの?」

 

そんな質問が口をつくのは当然のことで…

 

 

 

・・・・・・

 

「…?少し全体的なウマ娘達の速度が速くないですか?」

 

「…そうですね。確かにかなりハイペース気味なような…あっ、後方の子が仕掛けましたよ!…えっ?このタイミングで!?」

 

「…いえ、それだけではありません!全体が突如として速度を上げていきます!トップを走る、メジロパーマー選手、ダイタクヘリオス選手達が手にしていた後方集団とのリードが急速に詰まっていきます!一体何が起こっているのでしょうか!?」

 

…レースの実況の声で唐突に意識が覚醒する。

気が付けばレースも中盤、先頭はパーマさんとヘリオスさんの二人が大逃げをしていて、後の子達がそれを追いかけるという形だったはずだけど、まだスパートをかけるタイミングでもないはずなのに、一人のウマ娘が急速にスピードを上げたと思ったら、それに釣られるように全体のスピードがいきなり上がった。そしてそのせいで、ただでさえハイペース気味だったレースがさらに高速化し、先頭の二人の保っていたリードも徐々に消えていく。

 

その一種異様な光景にレース会場がざわつき始める中、マヤは再びコースに目を向ける。すると、いきなり後方から上がってきた集団に巻き込まれて自分のペースを失いつつあるネイチャちゃんが見えて…

 

(…ネイチャちゃん!)

 

マヤはただ、その姿を見ていることしか出来なかった。

 

 

 




…おかしいなぁ、ウマ娘の脚力って文字通り馬力が違いますよね?

厳密に言えばマヤちゃんのトレーナーちゃんはちょっと違いますが、
それでも、うちのトレーナー連中は、なぜそれをまともに喰らって普通に生きているのでしょうか?

やっぱりあれですかね?この世界の人間は誰もが潜在的にウマ娘因子を持っているから、現実世界の人間よりも強いんですかね?
それだとやっぱり幕末とかは、この世界の人間達は皆リアルる〇剣みたいなことしてたんですかね?


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