ウマ娘三部作Firstシーズン 片翼の撃墜王 ~イカロスの黎明~【完結済み】 作:DX鶏がらスープ
~???side~
「…え?」
気が付くとマヤは知らない場所に立っていた。
白
その場所の特徴を一言で言い表すとしたら、その単語だけで十分で、同時にそれ以上の単語は必要ない。むしろ余計だと言っても良い。
上も下も横も目の前も、360°見渡す限りの全ての空間が白く、それ以外のものは何もない。いや、むしろ白という色さえ存在しないのかもしれない。そんな不思議な空間。
だからこそ…
「あれ?マヤさっきまで病院にいたよね?」
記憶を辿ると、確かにそうだ。
マヤは自動車に轢かれそうになった子どもをかばって怪我をして、それで病院に運びこまれて、それでお見舞いに来たネイチャと話して…
「…確かそれから頭が痛くなって…うぅ、そこからが思い出せない。いったいどこなのここ…」
と言うか、なんかここどこかで見たことがあるような…
そうして何かを思い出しかけたその時だった。
「それだよ、それ!
いや~やっとお前もお約束のなんたるかが分かってきたんだな?マヤ!」
そんな意味の分からない声が後ろから聞こえてきたから…
(………………え?)
ドクンと心臓が跳ねる。
「いや~、これはあれだね、三度目の正直って奴だね!やっぱりこういう立場に立った以上?
一回位はこういうことやってみたかったんだよ!
本当に感無量だな!!」
そんなバカみたいな事を言う声を、マヤは確かに聞いたことがあったから…
(…うそ…だよね?)
ドクンドクンと心臓の音がうるさい。でも…
「前とその前はすぐに気付かれちゃったからな…
まぁ、それでこそ我が愛バって感激するところではあるんだけど、やっぱりお約束ってやつは大事!これ常識!!」
聞いてるこっちが恥ずかしくなるような、その声は確かにマヤの後ろから聞こえるから…
(まさか!まさか!まさか!!)
もう心臓は破裂寸前。だからこそ…
「…それじゃあ自慢の愛バがやっとお約束を守ってくれたことだし、今度は俺の番だな」
振り向いたマヤの目に飛び込んできたのは…
「…よく頑張ったな。マヤ」
くたびれた黒いスーツに黒い中折れ帽子、黒いサングラスの、白いブーケを持った男の人で…
「ぁ…」
それはずっとずっと……
「…お疲れ様」
珍しくサングラスを外して両手を広げたこの人は、マヤがずっと会いたいって、心から思ってた人だったから…
「…!!」
駆け出す。
一歩進む度に周囲に色とりどりの花が溢れ、足元は茶色のレンガの道になっていく。今まで何も無かった空間に青い空が滲みだし、そこに七色の色彩で虹が描かれる
「…!!」
恥も外聞もなく、全力で駆け抜ける。そして進むごとに、病院着が溶けて、淡いオレンジ色のウェディングドレスへと変化していく。どこからか、鐘の音が聞こえる。
そして…
マヤがトレーナーに抱きついた瞬間に…
「トレーナーちゃんっっっっ!!」
…全ては完成した。
あたりには一面に、赤、青、黄、その他様々な色の花が咲き乱れ、レンガで作られた道の向こうでは、白いチャペルから祝福の鐘が鳴り響いている。
青く晴れ渡った空には虹がかかり、飛び立つ白いハトの群れが、二人の幸せな門出を祝福している。
そして…
「…長い間待たせてすまなかったな、マヤ…」
舞い散る花吹雪の中、マヤを抱き締めるトレーナーちゃんの服装は、白いタキシードになっている。それは、普段あんなにダサい恰好ばかりしていたトレーナーちゃんには珍しいほどに、ビックリするほど似合っている。そして…
「ううん!ううん!トレーナーちゃんがいてくれれば、もう何もマヤはいらない!!だから!だから!!」
ポロポロ涙を溢しながら、トレーナーちゃんに抱きつくマヤの服装も、いつかの日の淡いオレンジ色のウェディングドレスになっていたから…
「…あぁ、そうだな。だからこそ、今度は俺からだな、マヤ」
そしていつかのブーケを渡しながら…
「マヤ、俺もお前の事が好きだ。だから、これからは…」
トレーナーちゃんがマヤに、マヤに…
「ずっと、一緒にいてくれるか?」
プロポーズしてきてくれたから…
「アイ・コピー!!」
ここまで読んでいただいて本当に、本当にありがとうございました!
それでは、またいつかどこかで!!