作者は文才のない素人ですので、温かく見守ってください。
第1話 どうも転生者です
暗闇が広がる遺跡内。松明が置かれ、この空間を支える何本もの石柱を浮かび上がらせている。床に積もった砂は長い時の流れを感じさせ、壁に刻まれ所々欠けた象形文字もそれを増長させる。
多くの遺跡は地形、時には砂、時には太陽。自然的要因や人為的、はたまた超常的なものによりその発見が難しくなっていた。まるで神秘への冒涜を許さないかのような意思を感じられることも暫しある。それを呪いと呼ぶ人もいるだろう。
少なくない人数が歴史的な発見、あるいは埋まっている宝を求め、命を散らしていった。
そして、ここにもまた身に降りかかる災難を恐れずに挑むものがいた。
お宝を目の前に、慎重にあたりの気配を探る。異常はない。いや、こんな場所にお宝があること事態が異常ともいえる。これに手を出すのは愚かなことかもしれない。それでも目の前にあるモノはその魅力を遺憾なく発揮している。
一歩、また一歩。徐々に近づいていく。目の前まで来たところで止まり、もう一度あたりを観察する。
・・・・・・・・・何も起きない。
息を殺し、念入りに辺りを窺う。・・・・大丈夫いける。
いざ、お宝に触れる。
動かした瞬間、・・・地面が崩れた。
「キーーー!!」
「ひゃっはー!僕のネズミ捕りは世界一位!」
木霊する悲鳴と喝采。
哀れ、まんまとお宝(チーズ)に釣られた砂ねずみ と 自身が作った罠の出来に興奮気味な少年がそこにはいた。
こんにちは、アレックス・オコーネル 8歳。
転生者です。
両親の遺跡調査についてきて、エジプトのルクソールに来ています。
かつてテーべがあったとされる場所。
テーベはナイル川沿岸に位置し、中王国時代から新王国時代のエジプトの首都だった都市。太陽神であるアメン神信仰の総本山として栄え、古代エジプトの芸術や宗教を物語る数々の遺跡で名高い。ナイル川東岸には、エジプト最大の神殿であるカルナック神殿や副殿のルクソール神殿があり、二つの神殿は、スフィンクスを両側に配した長い参道でつながれている。一方、西岸はネクロポリス(死者の町)となっており、10年ほど前にツタンカーメン王の墓の発掘で脚光を浴びた、数十人のファラオが眠る王家の谷やラムセス2世の王妃ネフェルタリの墓で知られる王妃の谷がある。墓の内部には彩色の美しいレリーフが施されたものもあり、古代エジプトの死生観が間近に感じられる。そのほかにも、弔いの儀式が行われたハトシェプスト女王葬祭殿やメムノンの巨像、ラムセウムなど見どころが多く観光地としても有名だ。
生前?前世?では、ツタンカーメン王の墓は100年近く前に発見されていたが、今生では10年前の出来事だというので驚きである。今は1933年 ヒトラーがドイツ首相に就任した年である。今後、世界は第二次世界大戦へと向かっていくことだろう。
まだ6年と言えばいいのか、たったの6年しかと言えばいいのかわからないが、大戦を思うとなんとも憂鬱だ。“原作”でアレックスがアメリカの大学へ留学していたのは一種の疎開だったのだろう。
“原作”そう原作だ。
転生して8年間で気が付いたのだが、ここは古い映画『ハムナプトラ』の世界である可能性が高い。
イギリス ロンドンにある屋敷に生まれた俺は、母から寝物語として聞かされる古代エジプト史や遺跡探索の話に興味を持ち、屋敷の本棚をあさって読みふけるような子供だった。母はそんな僕を見て喜び様々な王朝時代の逸話を語り、父はそんな母を呆れた顔で見ていた。2人の愛情を一身に受けた俺はすくすく成長していった。
父 リック・オコーネルはアメリカ人、元フランス外人部隊所属、嫌いなものは動くミイラ。母 エヴリン・オコーネルはイギリス人とエジプト人のハーフ、趣味は古代エジプト史で博物館勤務 司書 兼 考古学者。そんな母のおかげで家の本棚には古代エジプト関係の本が所狭しと詰め込まれ、様々な歴史的物品が置いてある。
子守唄代わりとして語られた両親の馴れ初め。
母はカイロの博物館で働いていた頃に父と出会ったらしい。何でも伝説の死者の都『ハムナプトラ』を舞台に蘇ったミイラとドンパチした末、攫われた当時の母を救い出し、ミイラを倒して世界を救った。その後、一緒にイギリスへ渡り結婚。冒険で得た財宝を使いロンドンの郊外に屋敷を建て、俺が生まれた。
うん、なんか聞いたことあるな?
その話を聞いて思い至ったのは映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』である。
過去の世界に転生しただけかと思っていたが、両親の馴れ初めを聞いて映画の世界だとわかった。当時5歳。
ハムナプトラはシリーズモノであり、1は前述のとおり両親の出会い。
続編の『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』は前作から8年後。正にこの遺跡が始まりとなり、息子のアレックス・オコーネルこと僕が登場する映画だ。
ハムナプトラ2はアヌビスの腕輪をきっかけとして復活するスコーピオン・キングを倒して世界を救う物語である。
スコーピオン・キングとは5000年前に存在した最強と名高い戦士のことで、彼は世界を自らの手中に収めるために大きな戦争を起こす。しかし、7年間もの激しい戦いの末、スコーピオン・キング率いる軍は敗北を喫してしまう。アム・シェアーの聖なる砂漠まで逃げ延びたが、命が尽きようとしていた彼はアヌビス神へ「自らの命を助けてくれるのならば、身も魂もアヌビス神の僕になる」という誓いを立てた。その願いを聞き入れたアヌビスは自らの軍勢をスコーピオン・キングへ授けた。彼はその軍隊を率い、敵を打ち倒すことに成功する。そして約束通り、アヌビス神はスコーピオン・キングを自らの僕とした。
そのスコーピオン・キングの腕輪「アヌビスの腕輪」が納められているのが今来ているこの遺跡である。
話を現在に戻そう。
両親の遺跡調査についてきた俺は、探検気分を味わおうと意気揚々と遺跡の奥へ行こうとし、父に止められた。何でも安全が確認できるまで、入り口でお留守番。ネズミ捕りでも作っていろとのこと。
「真に遺憾です」
「そんな言葉どこで覚えた?」
っと呆れ顔で小突かれる。
仕方なしにと、罠製作に取り掛かったが、作り始めるとこれはこれで楽しい。思わず熱中しすぎてしまった。何個目かのトラップでようやく砂ねずみを捕獲でき、テンションが最高潮に達したのが冒頭の俺だ。
「さて、どうなることやら」
原作の流れを考えると此処に来るのもいやだった。母にごねてみたが、「じゃあ、お留守番する?」と言われた。
アレックスがいないと危機的状況を回避できないので、僕は手のひらを返して「すっごい楽しみ!」と笑顔を両親に向けたのだった。
僕にはチートなんてものは無い。目が覚めたら赤ん坊だった。どうやって死んだかもわからない。あるのは朧げな前世の知識のみ。
命の危険があるため、原作がスタートしないのがベストだったが、8歳児に出来ることなど特に無い。大人しく流れを見て臨機応変にいくしかない。
可能ならよい方向へ向けさせ、無理なら原作に沿う。家族と命大事に。
これが原作を乗り切るにあたり、俺が決めた当面の行動方針だ。
今後の展開に思考を割いていると入り口から人の気配がした。どうやら原作通り彼らが来たようだ。
身を隠すために木材とロープで組まれた足場へ上る。現れたのは三人の男だった。
「ノック ノック、誰かいるか?」
三人が銃を手に周囲を確認し、誰もいないことを確認すると一番背の低い小太りの男が他の二人に指示を出す。
「ジャックとスパイヴィーは“例のモノ”を探せ。俺はオコーネルを…」
そう言って銃を手にした小太りの男が奥へ進んでいく。
残されたのは一番背の高いノッポと一番ガチムチの男、二人は広間に積まれた荷物の物色を始める。おそらく例の腕輪を探しているのだろう。
残念ながらソレはまだ奥にある。
この三人は原作で言う敵側が雇った盗賊で腕輪とオコーネル一家三人の命を狙っている。
原作ではアレックスがここに残った二人にちょっかいを掛けて、追い詰められる展開があるが、わざわざ危険な状況にする必要もないので、大人しく気配を消しておく。
この後の展開は、母がトラップを作動させナイル川の水が押し寄せて来る。
袋小路へ追いやられた両親は溺れてしまいそうになる。
先ほどの盗賊達は何も出来ずに我先にと逃げていくことになるはずだ。
ゴゴゴゴゴゴォー
しばらくすると、遺跡全体が揺れ始める。
今頃、両親は「戻しても、もう遅い!」「リュックに入れて!」「置いてけ!」「もう遅い!」とコントのようなことをしていることだろう。
ちょっと見てみたかったなっと思っていると、
「スパイヴィー、ジャック! ズラかるぞ!」
先ほど奥へ行った小太りの男が声を荒げながら入り口へ通じる通路へ走り去っていく。残された二人も訳が分からないながらも、今も続く揺れから異常事態だと認識し、慌てて後を追う。
三人が消え、いまだに揺れが収まらない広間にひょこっと顔を出し、足場を降りる。
目的の壁は…っと確認する。
父の刺青と同じ瞳が入ったピラミッドに二人の王の花枠(カルトゥーシュ)が描かれた壁。アレだ。
目的の壁を見つけた俺は、「絶対に触るな」と言われた父の荷物から“筒状のモノ”をひとつ手に取り、壁に掛け寄る。
壁の隙間から水が滴って来ており、なにやら壁の向こうから水音と声のようなモノが聞こえる。どうやら、既に危機的状況らしい。
ポケットから取り出したマッチを擦り、“筒状のモノ”へ火を付ける。ソレを壁の窪みへ差し入れて、急いで石柱の裏へ避難する。
………ドゴーーン!!
数瞬の後、轟音とともに壁が崩れた。
ドバシャー!!っという音と共に大量の水が広間へ流れ込む。その中には苦しそうに咳き込む両親の姿も見受けられた。
「ゲホッ カハッ」「オホッ ケホッ」
どうやら無事なようで安心した。
父が咽ながら状況を確認している。
母が無事であることに安堵し、後ろの壁を見て、俺の顔を見て、手にあるマッチを見て、その後ろの開けられた自身のバッグを見て、もう一度俺を見る。
なんだかとても疲れた顔をしている。
「ピンチの時はコレに限るよね!」
褒めてええよ、パパァン。
腰に手をやり、ちょっと誇らしげに胸を張ってみる。
「…はぁはぁっ 後、で、コホッ 、お話、だぞ」
息を切らしながらの説教宣告に驚愕。
何で!?原作よりも被害少なく助け出したのに!
だから思わず言ってしまった。
「真に遺憾です」
また小突かれてしまった。
―――ハムナプトラ “死者の都” ―――
ファラオの息子が葬られる場所であり、エジプトの財宝が封印されている伝説の場所。
かつてリックとエヴリンはここで目を覚ました古のミイラと戦った。
今は全てが砂に埋もれてしまった場所には多くの人が集まっていた。
先導する者達は赤い民族衣装に身を包み、雇った現地民に指示を出し大規模な発掘作業が行われていた。
目的の3つ、そのの内2つは既に見つかった。
「“死者の書”は死者を甦らせる」
「そして“生者の書”は―――命を奪う」
「それは俺の仕事だな」
赤い民族衣装に身を包んだ屈強な大男の黒人 ロックナーと妖艶な美女 ミラが二つの本を前に言葉を交わす。彼のしたり顔で放たれた言葉にミラは少し笑ってしまう。
確かにこの大男にかかれば古代の魔道書など使わずとも、いとも簡単に人を殺める事が出来るだろう。剣や銃火器、ナイフや手裏剣に至るまで様々な武器の扱いに長けた凄腕の殺し屋。特に剣術に至っては、かのメジャイにも勝るだろう。先の発言にも納得してしまう。
―――もうすぐ。後は彼を見つかれば・・・。
ここに至った経緯を思い返す。
彼女はかつて幻覚に悩まされていた。その中で自身は古代エジプトのファラオの妃だった。しかし、自分は神官と恋に落ちてしまう。許されない恋。度重なる密会の末、ファラオに露呈してしまう。恋人と二人でファラオの命を絶つが、親衛隊 メジャイに見つかり、恋人を逃がすため、自ら残り、その命を絶った。必ず甦らすという恋人の言葉を胸に―――。
自分が自分でないような感覚に自殺を考えたこともあった。日に日にやつれる自分を見て、輝かしい幻覚のソレとは大違いだと失笑していた。
そんな体も心も疲れていた頃、少しでも幻覚を何とかしようと古代エジプトについて調べていた時に出会ったのが、指導者 ハフェズが率いる邪教集団だった。そこで彼女は自身がアナクスナムンの生まれ変わりであることを教えられる。あの黄金の彼女こそ自分自身であると。
それからは記憶を受け入れ始めた。
本当の自分であり、今の自分はそれを忘れているだけであると。
ハフェズ一派に協力し、嘗ての恋人 イムホテップを甦らせることが出来れば、本当の自分を取り戻せる。
嘗ての煌びやかで自信に満ちていた甘美な本当の自分に!
ゴゴゴゴォ
思考を巡らせ手いると地響きの後、背後の離れた発掘場所から悲鳴が木霊する。どうやら“ハズレ”を引いた作業員が襲われているようだ。
古の財宝が眠っているだけあり、ここには多くの罠が仕掛けられている。それは砂に埋まってしまった後でも変わらず、死者と財宝を守っているのだ。
これまでに多くの作業員が犠牲になってきたが想定内だ。そのために多めに雇っているし、足りなくなれば補充してくればいい。
今回もロックナーの部下たちがすぐに鎮圧するだろう。
そんなことを考えていると、また別の発掘場所から大声が聞こえる。
―――見つけたぞ!
私は急いで声の上がった現場柄向かう。
周りの作業員を掻き分け、中央に集まるハフェズとロックナーのもとへ行く。
地下からは結晶化した水晶の中に入ったミイラが引き上げられていた。
近寄り、手をかざすと不思議な感覚とともに“彼”を感じることができた。
ああ、ついに見つけた。
―――これで、本当の私に・・・
多くの人に紛れ、引き上げられた“ソレ”を見据える者がいた。
「また、見つけ出すとは愚かな・・・」
野次馬作業員の喧騒の中に紛れ、その男の声を聴いている者はいない。
彼は古よりファラオとその財宝を守ってきた者 メジャイ。再び邪悪が解き放たれようとしていることに憤りを感じていた。
暫くすると奴らが動き始める。
どうやらアヌビスの腕輪を狙っているようだ。
「やつらの次の目的は腕輪か・・・急がねば」
行き先を把握した男は静かに人の中に消え、この場を離れる。
行き先はロンドン。古い友人に挨拶しに行こう。
男の影は夜の砂漠に解けて消えた。
次回、早めに投稿できたらいいなぁ
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