From ハムナプトラ to アベンジャーズ   作:注ぎグチ

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難産で変更しました。

久々の投稿です。
恥ずかしながら、戻ってきました。
今後の更新は不定期になってしまいますが長い目で見守ってください。

それでは5話どうぞ。


第5話 地元の皆様、こんばんわ

「みなさん、こんばんは。

 男と女に悩みは付き物。パーソナリティ アッレクス・オコーネルです。

 このラジオは、カップルの悩みを解決するため、みなさんからのお便りがドシドシ送られてくるラジオ番組で・・・」

 

 毎度お馴染み歴史豆知識だが、現時点でラジオ放送はそれなりに普及している。

 ラジオが世界に初めて登場したのは1900年で、カナダの電気技術者レジナルド・フェッセンデンが、距離約1マイルでの、音声の送受信に成功した。1906年12月24日にアメリカのペンシルベニア州でクリスマスの挨拶をラジオ放送した。それ以降、世界各地で実験、試験的なラジオ放送が行なわれた。アメリカでは1920年11月2日に世界初の公共放送を行なったと言われている。最初の放送は、アメリカ大統領選挙の開票結果で、ハーディングの当選を伝えた。

 イギリス初のラジオ放送は1922年2月、イタリア出身の発明家グリエルモ・マルコーニが設立したスタジオから行なわれました。

 ちなみに日本は1925年(大正14年)3月22日午前9時30分に、社団法人東京放送局(現NHK東京放送局)によって発信されました。東京・芝浦の東京高等工芸学校内に設けた仮設スタジオからの第一声が、「アー、アー、聞こえますか」だった。

 

 そんな感じでラジオというものは多くの人に認知され、様々な番組も放送されている。

 

「コメンテーターはロックナーとハフェズ。ゲストにイムイムをお呼びしてお送りいたします」

 

 もちろん本当に放送している訳ではない。そういったテイで進めている。

 

 急に呼ばれたかと思えば、なにやらしゃべり始めた僕をロックナーが訝しげに見つめてくる。

 そんな目で見られても僕はめげない。

 

 なぜ、こんなことしているのか。

 時間は少し戻り、日が暮れて野営で夕食を済ませた頃に遡る。

 

 

 

 

 

 

 日中はラクダの背に乗り、ゆらゆら揺られながら砂漠を進んで行でいた。移動中は暇なものだ。

 エジプトの景色は僕にとって、見慣れたもので目新しいものは無い。

 ラクダの上でハフェズから借りた(強奪した)本を読み、夕食後はロックナーとボードゲームで遊んでいた。

 

「・・・おい」

 

「なに?」

 

「リバーシというのはこうなるものなのか?」

 

 盤面は黒一色。もちろん僕が黒だ。

 

「雑魚w」

 

「貴様っ!」

 

 初心者狩りしてしまったので、途中から鬼ごっこになった。

 それ以降、二度とリバーシしてくれることが無くなった。

 

 暇つぶし相手がヘソを曲げてしまったので、新しい相手(おもちゃ)を探していると、微妙な距離感のイムホテップとミラがいた。

 

「・・・」

「・・・」

 

 同じ焚き火に当たりながら、何か話すでもなく、初々しい恋人のソレという雰囲気でもない。

 イムホテップの方は何度か声をかけているが、ミラの方が心此処に在らずという感じだ。

 

 そんな2人の空気が気になるのか、ハフェズが岩陰から2人のことを心配そうに見守っている。

 

 なんだこの構図。

 

 しばらくする空気に耐えかねたミラが自身の天幕へと入っていってしまう。

 イムホテップは捨てられた子犬のような顔をしてその後姿を目で追う。

 そして岩陰でアワアワするハフェズ。

 

 本当になんだこの構図。

 

 世界征服を企てる一団がなに青春ラブコメみたいなことしているのだか、呆れてしまう。

 そんなことを考えながら焚き火に近づいていく。

 

 

「こんばんは」

 

「・・・お前か、今日は話をする気分じゃない」

 

 イムホテップに声を掛け、焚き火を挟んで向かいに座る。

 アム・シェアーへの旅の中、暇なときに古代エジプトのことをいろいろ話し合った。

 

 彼は自身の時代のこと、僕はその後の時代のことなどを話し、それなりに友好を深めていた。

 

 今の姿はとてもじゃないがスーパー砂漠パワーを身に宿した不死身のミイラとは誰も信じないだろう。

 なんだかとても居た堪れない。

 

「はぁー・・・」

 

「・・・」

 

 気まずい。

 

 

 

 

「・・・野郎ども、集合!」

 

 

 僕はあまりの空気に話を聞いてやろうと考え、ロックナーとハフェズを召集した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は現在に戻る。

 訳もわからず集められたロックナーとハフェズ。

 

 

「・・・早速、行きましょう。

 ラジオネーム イムホテップさんから頂きました。」

 

「本名ではないか、それ」

 

 ハフェズ!シャラップ!

 

「皆さん、こんばんは。はい、こんばんは。

 最近、彼女を冥界から蘇らせたんですが、どこか余所余所しいです。生前はもっと距離が近かったはずなのですが、そばにいるとどこか居心地悪そうにしています。どうすればいいでしょうか?」

 

 遠距離恋愛中の彼女に久しぶりに会ったけど、どこかそっけない感じ?

 

「浮気ですね」

 

「おい」

 

 ロックナーにツッコまれる。

 

「そ、そうなのか!?」

 

 冗談だ。落ち着け。

 

「そもそも術は成功しているの?アナクスナムンの魂は呼び戻したんでしょ?」

 

「・・・」

 

 最初の目的地であるカルナック神殿に着いた晩になにやら儀式をしていたのは知っているので聞いてみる。

 

 イムホテップは数瞬、考えた後に口を開く。

 

 反魂の術の際に前世の記憶を強く呼び覚まし、ミラの意識を奥底に止め、アナクスナムンの意識が表層に出やすいようにしたと。

 しかし、思いのほかミラとアナクスナムンの同調率が高く維持できずにミラ魂が色濃く残ったという。

 

「・・・アナクスナムンの魂はその身に宿した。成功だ。間違いない。おそらく、二人の魂が交わったことで記憶の混乱があるのだろう。・・・しばらくすれば以前の彼女に戻るはずだ」

 

 アナクスナムンを前世とするミラは最高の寄り代であるはずだ。

 彼女はアナクスナムンとしての記憶を受け入れていたはずだ。同調が弱まってしまったのは自身の在り方に疑問が生じてしまったからなのでは?

 

 

 僕のせいですか?

 

 

 僕があの時、ミラに声を掛けたことを知るハフェズはこちらを見てくる。

 おい、そんな目で見るなバレるだろ!慌ててフォローする。

 

「今の彼女のはミラでもあり、アナクスナムンでもあると。・・・考えてみなよ。3000年前の恋愛感と現代の恋愛感が同じなわけないじゃない?それに戸惑ってるんじゃないかな?」

 

「・・・そうなのかな」

 

 情けない声を出すな。

 

「コメンテーターのロックナーさん。どう思われますか?」

 

「俺に振るのか。・・・そうだな。男女のことはわからんが、これからどう接して行くかが大事なんじゃないか?」

 

「ハフェズは?」

 

「私も同意見だ。此処で距離を置いてもいいことは無い。深追いしない程度に普段どおり接するのがいいのではないでしょうか。それに主がアヌビスの軍を手に入れれば彼女の心も自ずとこちらに向いてくるのでは?」

 

「なるほど・・・」

 

 二人の言葉にイムホテップが頷く。

 

 おっと、ハフェズがなにやらイムホテップの思考を誘導しようとしている。

 ハフェズの言葉に反論するため、イムホテップへ問いかける。

 

 

「イムイムはさ、本当に世界征服がしたいの?」

 

「なぜそんなことを聞く?」

 

「だって、ちょっとうまくいってないとはいえ彼女を蘇らせる願いは叶ったわけじゃん。このまま二人でどこか静かに暮らせばいいんじゃない?」

 

「それは・・・」

 

 二人は禁断の恋に落ち、それが露呈した為、ファラオを殺した。

 自らの命と引き換えに恋人を逃がしたアナクスナムンを蘇らせることが彼の目的だったはずだ。

 

「イムイムはホムダイの代償に何かに引っ張られているんじゃないの?」

 

 その言葉に反応したのは二人。

 イムホテップとロックナーだった。

 

 ロックナーは以前に僕が話した内容を思い出しているのだろう。

 少し不安げにイムホテップの顔を見つめている。

 

「・・・」

 

 イムホテップは完全に僕の意見を否定できないのか黙ってしまう。

 

「主よ。恐れることはありません。主自身の為にも彼女の安全の為にもアヌビスの軍は必要です」

 

「・・・そうだな」

 

 ハフェズめ。

 ここで食い下がってもしょうがない。

 イムホテップは既に心を決めたようだ。

 

 簡単にはながれを変えられないようだ。

 

 

 

 その日はそのまま解散し、各々就寝となった。

 

 翌日には青ナイル川へ到着した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 リック達は飛行船で川の流れる渓谷を進んでいた。

 

 

「これは青ナイル川だ。もうエジプトは出ただろう」

 

 

 青ナイル川は、スーダンを流れる川でエジプトの暮らしに不可欠である。青ナイルは、スーダンの首都ハルツームで白ナイル川と合流し、その後はナイル川としてエジプトを流れアレキサンドリアで地中海に注ぐ。長さこそ白ナイル川より短いが、エジプトに流れ着く水の56%は青ナイル川に由来する。 スーダンにおいても青ナイル川は重要な資源であり、スーダン国内の電力の80%はロセイレスダムとセンナ―ルダムの2つのダムで賄われている。これによって、高品質な綿花のほか小麦や飼料作物の産地であるゲジラ平原の灌漑などが行われている。

 

 

「古代にはこの辺りは先王朝の土地だったの。アム・シェアーのオアシスもこのあたりのはず」

 

「必ずアレックスを見つける。目印を追えばきっと見つかるさ」

 

「ええ、そうね…」

 

 着実に近づいている。

 焦りは禁物。わかっているが逸る気持ちを抑えるのは難しい。

 

 

 

 …ヒュウ~ ッ…バッ……

 

 不意に風の音に紛れて何かが砕けるような音が聞こえ始めた。

 

「…」

「…」

「…」

 

 リック以外の仲間も不穏な気配を感じ始める。

 

 

 

 船の後ろから冷たい矢のような疾風が吹き抜けた。

 

 

 ゴオォォッザッパァーン!!

 

「大変だ~!」 

 

 次の瞬間、狭い渓谷の間を音が猛烈な速さで迫りくる。轟音と共に青い巨大な壁のようなものが押し寄せてくる———。

 

 イジーが叫ぶがそんなこと全員がわかっている。

 これは自然現象じゃありえない!そんなことを考えていると迫りくる水壁に顔のようなものが揺らめき、目が合う。

 

 ニチャア

 

 笑った。

 

 あの野郎!

 砂以外も動かせんのか!?心の中で悪態をつきながらどうすべきか考え、飛行船を操舵しているイジーへ指示を飛ばす。

 

「イジー!右へ周れ!面舵!面舵だ!」

 

「ッ!」

 

 ブースターを点火し、加速する。

 

 

「キャッ!」

 

 急な加速に倒れそうになるエヴリンの体を支え、船体に摑まる。

 

 水の壁が追ってくる。

 飛行船は枝分かれした右の渓谷へ猛スピードで突入する。

 

 追ってきた水壁は岩壁に打ち付けられ勢いが弱まりながらも追い縋ってくる。

 

 

 バシャー!

 

 

 水を被りながらも飛行船を上昇させていく。

 

 何とか高度を上げ、水壁の範囲から逃れる。

 

 

「聞いてないぞ、こんなの!」

 

 そんなこと、こっちが言いたい。

 

「おい…見ろよ!」

 

 ジョナサンの声にみんなが船の先を見る。

 

 渓谷の先に広がっていたのは繁茂する熱帯林。外周には円形に岩壁が立ち並びその中に森が広がっていた。

 

 望遠鏡を覗き込めば、熱帯林の中央にピラミッドが見える。

 

 ピラミッドの頂点が太陽光を反射し、光っている。おそらく伝説の通りなら、巨大な宝石が鎮座しているはずだ。

 

 

「アム・シェアーだ…」

 

「ああ、そのようだ…」

 

 

 オォォォォォォッザッパァーン!!

 

 

「また来た!摑まってろ!」

 

 しつこい!またもや水壁が迫ってくる。

 飛行船は再びブーストにより加速していく。

 

 ゴォォォォォォップスッ…プスッゥ カタカタカタッ

 

 しかし、長続きしない。

 燃料切れか、はたまた故障か。渓谷を抜け切る前に飛行船の加速は止まってしまった。

 

「こいつはやばい…摑まれー!」

 

 俺たちは水壁に飲み込まれ地面へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 時は流れ、川でイムイムのびっくり人間ショーを見せられた後、ハフェズ一行はアム・シェアーの熱帯林へとたどり着いていた。

 

 おそらく両親は無事であろう。ここまで大きく道筋から外れる行動をとっていないからよほどのことがない限り、原作通りに生き延びているはずだ。

 

 それを示すように、アーデスおじさんの(ホルス)がロックナーにより狙撃されていた。

 

 あれは墜落現場から高台へ移動している証拠だ。

 

 撃たれたホルスには悪いが、両親の無事に胸を撫で降ろしたのはハフェズ達には悟られていないはずだ。

 

 

 今は中央のピラミッドを目指して夜の熱帯林を進んでいる。

 

「見てよロックナー。あのピラミッドは黄金でできてるらしいけど。全部で幾ら位になると思う?」

 

「知るか」

 

 熱帯林は険しく、僕では草木に埋もれてしまうのでロックナーに肩車してもらいながら進んでいる。

 なんやかんやで、藪に悪戦苦闘していた僕を何も言わずに担いでくれる当たり、好感度は悪くないようだ。

 

 道中、ずっと遊んでたしね。

 

 

「主よ、もう小僧は必要ありません。殺しますか?」

 

 それに比べてこのハフェズのおっさんよ。

 何が殺しますかだ(怒

 

 そんなに帽子にサソリ入れたのが気に入らなかったのだろうか。

 

 毒の弱い奴だから頭が腫れるくらいで済んだろうが。

 

「まだ腕輪が必要だ。ピラミッドでアヌビスの軍を解き放つ鍵となる」

 

「腕輪は鍵でもあると?」

 

 不機嫌そうにおっさんが俺を見る。べぇー。

 

「それまでは生かしておけ」

 

「…はい」

 

 一瞬悔しそうにするも、目的地に着けば殺してよいと判断したのかこちらを嘲笑い進みだした。

 

「あんにゃろう」

 

 どうやら僕の努力の賜物か知らないが、客人扱いのため、ピラミッドまでは命は大丈夫なようだ。

 

 この旅ももうすぐ終わりである。

 

「…」

 

 黙々と進むロックナー。

 

「ねぇ、ロックナー」

 

「なんだ?」

 

 初めに比べれば態度がだいぶ柔らかくなったな。

 

「短い旅だったけど、楽しかったよ。」

 

「…あぁ」

 

 最初は被害者と誘拐犯だったが、この旅を通して僕はロックナーにお世話されっぱなしだった。

 

 肩車という高い視点であたりを見渡していた時、遠くの茂みから何かが動いて揺れているのが見えた。

 

 その揺れは一つではない。身を捩りながら辺りを見渡す。

 四方八方から徐々にこの隊列に近づいてこようとしている。

 

「おい、あまり動くな「ロックナー、なんか来る」っ!」

 

 その言葉と共に湿気を含んだ生ぬるい風が吹き抜ける。

 

「なんだ?」

 

 ハフェズも気が付いたようだ。

 

「油断するな!広がれ!」

 

 ロックナーが指示を出し、隊列が広がる。

 

 

 どうやら、お越しになったようだ。

 

 

 ギャアアアアーーーーー!

 

 

 地元民の方々(小っちゃなミイラ)が…

 

 

 

 

 

 

 

 あちらこちらから響く絶叫。

 

 部隊は次から次へと襲い掛かってくる小っちゃなミイラ達に襲われる。

 

 応戦しようにも大人の肩近くまで伸びた草木に隠れ素早く動く地元の方たちには、銃では狙いが付かない。

 

 無闇に発砲し、けん制しようとするが、吹き矢で針山のような顔になって倒れていく部隊。

 

 ウワアアァァー!ギャアアアァーー!

 

 部隊のものが次々と殺されてゆく。

 

 隊列などあったものではない。

 

 陣形は崩れ、敵味方入乱れ混乱状態。

 

 

 ――アレックス~!!

 

 

「! パパァ~!」

 

 

 そんな中、パパの声が聞こえてきた。

 遂に追いついたらしい。

 肩車のおかげで隊列の左側、遠くの方から駆けてくるパパとアーデスおじさんが見えた。

 

 どうしたものか、周りには地元の方々がいらっしゃって下手に動けない。

 しかも、現在ロックナーに肩車されている。

 

 あれ?合流できなくね?

 

 数瞬考えていると、地面にポイッされた。

 

「…好きにしろ」

 

「どうして?」

 

 ここでロックナーに開放されるとは思わなかった。

 

「ガキは嫌いだ。だが・・・ガキを抱いて泣く親を見るのはもっと嫌いだ」

 

 

 唖然とする僕に対しロックナーはアーデスの方へ突っ込んでいった。

 

 ポカーンっとしていたら横合いから衝撃を受け横へ飛ばされる。

 

 地元民にやられた人が倒れてきて吹っ飛ばされたらしい。

 

 ッァシシシャアアァァァァー!

 

 地元民と目が合った。

 

 正確には目があるであろう場所にはぽっかりと黒い穴が開いていて目は無かったのだが。

 

 急いで立ち上がり走り出す。

 

「パパァン!へるぷみーーーーー!グエッ」

 

 必死に走っていると急に横ベクトルが掛かり、変な声が出た。

 

「ッパパ!」

 

「ようやく追いついた。口閉じてろ!舌噛むぞ!」

 

 どうやら無事に拾ってもらえたらしい。

 肩に後ろ向きに担がれながら、周りの様子を確認する。

 

 イムホテップとアナクスナムンはなんかハンドパワー的なので大丈夫そう。

 

 ハフェズは部下を盾にしながら逃げて行ってる。クズ。

 

 ロックナーはアーデスとの決着を着けようとしているようだ。

 お互いの剣を激しくぶつけ合っている。

 

 少し悲しい気持ちになるが、浸っている時間はない。

 

 部隊は壊滅状態。散り散りになっている。

 生き残りで背中合わせに応戦しているようだが時間の問題だろう。

 

 

 猛ダッシュで離脱する僕たちにも地元の方々が迫ってきている。

 

「パパ!後ろ後ろ!」

 

 その声に振り向きながらショットガンを放っていく。

 

 バァンッ! バァンッ! バァンッ!

 

 飛びかかってきたミイラを次々に撃ち落とした。

 向き直り再び走り出す。

 

「弾込め!」

 

 パパがショットガンを渡してくる。

 それを慌てずに受け取り、肩掛けのシェルベルトを(まさぐ)り、弾を込めていく。

 屋敷で銃の手入れを手伝っていた甲斐があったな。

 

「あいよっ!弾込め一丁!」

 

 リロードした銃を返す。

 

 再び振り返り発砲。

 

 バァンッ! バァンッ! バァンッ!

 

 そしてダッシュ!ひとまず追ってきていた地元民は片付いた。

 

「アレックス!」

 

 ママとジョナサン叔父さんと合流。

 

「ママ!」

 

 強く強く抱きしめられる。――ああ、よかった っと安堵の声が聞こえる。

 久しいぶりに感じる母の愛に胸が温かくなる。

 いい年した精神年齢なのに涙が出そうだ。

 

 そんな感傷に浸っている後ろで、息の上がっているパパと叔父さんがなんか言ってる。

 

 

――何だいあのちっこいミイラどもは!?

――地元民さ

――本当か?

――ああ、気にすることは無い

 

 

 とんでもない地元民もいたもんだ。

 

 とりあえず、当面の問題解決をしないと。

 

「パパ、ママ、早くピラミッドに行ってこの腕輪外さないと『ああ、外さなくったっていいよ。似合ってるし』」

 

 叔父さんシャラップ。最後まで聞け。

 

「似合う似合わないの問題じゃなくって! 付けてから7日の日の出前にピラミッド入らないと僕は死ぬんだって!今日だよ!」

 

「それ本当なの!?」

 

 ママが驚いている。

 装着してから7日なのか、付けた日を1日目とするのか知らんが、早い方なら今日の日の出が対象のはず。

 

 

 ―――ギャワgyワgyワgyワアアァァアア

 

 

 地元民が追い付いてきたようだ。

 草木を揺らしながら迫ってくる。考えてる暇はない。

 

「よぉし、行こう!」

 

「気にするなって、言ってたじゃないか!?」

 

 ジョナサン叔父さんがなんか言ってるけど、僕達はピラミッドへ向けて走り出す。

 

 ものすごい数が追ってくる。

 

 パパに手を引かれながら必死に目を凝らす。

 少し先に崖に掛かった倒木のようなシルエットが見える。

 

「パパ、あそこ!」

 

 暗い森の中であらかじめ知っていたからわかるが、この暗さでは下手したら崖に落ちることだってあり得そうだ。

 そんなことを考えながら倒木を渡りきる。

 

「待ってくれ!」

 

 いつの間にかはぐれていた叔父さんが合流。どうせコントのようなことをしていたのだろう。

 

 叔父さんが倒木を渡るのを確認しながら、パパにマッチを渡す。

 手に持った≪筒状のモノ≫から延びる線に火をつける。

 

「何するんだ!?」

 

 その様子を見ながら倒木を渡り切った叔父さんがパパに尋ねる。

 

「ピンチの時はコイツに限るよ!」

 

 そう言ってダイナマイトを投げる。

 

 倒木を渡ろうとしていた地元民がそれをキャッチ。

 そのまま倒木の真ん中に来たところで大爆発。

 

 ドッゴーーーーォォン!

 

 倒木は砕け、それを渡っていた地元民共々谷の底へ落ちていった。

 その様子を見届けるのもいいが、原作と同じでそこまで余裕がない。

 

「リック、空が…」

 

 一息つく暇もなく、空が白んできた。

 

「ママ達はここにいて!嫌な予感がするんだ!」

「ちょっと、アレックス!どういうこと?」

 

 説明したいが時間がない。

 

「ああもう。とにかくここにいて!日の出になってからピラミッドにきて!パパ、早く行こう!」

「っ!行くぞぉ!」

 

「リック!?アレックス!?」

 

 ピラミッドに向けて再び走り出す。

 

「急げ!朝日が昇る!」

 

 パパに手を引かれ必死に走る。

 これ間に合いますか!?

 ここで死ぬのは勘弁願いたい。

 

 !? 空が明るくなって行くに連れ、腕輪をしている部分が痛くなってきた。

 

「パパ!腕輪が痛い!」

 

「ッ!パパが連れて行ってやる!」

 

 そういうとパパが僕を担いだ。

 

 ものすごい速さで走っていく。

 後ろを走っていたママたちとの距離がぐんぐん離れていく。

 

 ピラミッド前の広場に入った。その直後、太陽が顔を覗かせ始めた。

 

 日の光がぐんぐんと僕らを追ってくる。

 

 もう少し、あと少し。

 

 光と夜の境界がすぐ後ろまで迫りくる。

 

 もうすぐそこだ!間に合え!まずい追いつかれる!

 

「パパ!」

 

 その声に反応し、パパが地面を思いっきり蹴り、ダイブする。

 

 それはほぼ同時だったろうか。何とかピラミッドの中に滑り込むことに成功する。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、、まったく、、、パパに、、なるって、のは、、大変だ、、はぁ、はぁ、、、」

 

 息も絶え絶えにそう言って地面に手足を投げ出すパパは端的に言って最高に格好良かった。

 

「だね。でも、パパは最高だよ!」

 

「はぁ、はぁ、、さんきゅ、、」

 

 

 カシャッ

 

 

 アヌビスの腕輪が外れて地面に落ちる。

 

 その瞬間、ハッ!っとなり入口へ視線を飛ばす。

 入口のその向こう。日の光に照らされた広場には母とジョナサンがこちらを見て安堵している。

 

 

 時間はない。

 

 

 すぐに走り出す。

 

 ちょうど、母が走り寄る僕を両手を広げて待つ。

 

 そのすぐ後ろの森から2つの影が二人に迫る。

 

 

 来てしまった。

 

 さらに近づく影。僕は叫ぶ。

 

「ママ!後ろ!」

 

「ッ!?」

 

 アナクスナムンが短剣で襲い掛かる。

 母はそれを受け止めるが広場に並ぶ石像の台座に押しつけられてしまう。

 

 気が付いたジョナサンが止めに入ろうとするが、イムホテップに殴り飛ばされる。

 

 父が起き上がり駆け出す。

 

「エヴリン!」

 

 距離が遠い。

 

「死になさい」

 

 アナクスナムンが両手に力を込めていく。

 

「あ、あ、、」

 

 やめてくれ。

 声が掠れる。全力疾走で声がうまく出ない。

 

 父が僕の後を追う。

 

 間に合わない。

 

 短剣がその切っ先を徐々に近づけてゆく。

 

 時の流れがゆっくりに感じる。

 

 

 

 そして、そこに飛び込んだ僕は、3人共もみくちゃになって倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・っ!・・・っ!・・・アレックス!」

 

 父が僕を呼ぶ声に気が付く。

 

 声の方を見ようとするが、瞼が異様に重い。

 

 手足がしびれた様に力が入らない。

 

「・・・ゴフッ」

 

「喋るな!あっ・・ああっ!どうすれば!?」

 

 父のぬくもりは感じられるが、声が遠くに聞こえる。

 

 おなかがアツい。

 

 やっとの思いで瞼を開けた先に短剣が深々と刺さった、僕のおなか。

 

「・・・間に合った」

 

 飛び込んだ瞬間に見えたのはアナクスナムンの驚いた顔だった。

 

「どうしてっ!?」

 

「わが身を盾にするとは・・・アナクスナムン!行くぞ!」

 

「けけけっ・・・母からの・・無償の愛が・・・一方通行なわけ・・ないだろう」

 

 イムホテップとアナクスナムンの声が遠ざかっていく。

 

 ぼやける視界で遠ざかる二人の目を見ながらニヤリと笑ってやる。ざまぁ。

 

 

「アレックス!」

 

 母が僕に手を伸ばしてくる。

 

 よかった。助けることができた。

 本来、母のおなかに刺さるはずの短剣は僕のおなかにINしてしまったけど。

 

 伸ばされるその手を僕は握り、

 

「・・あ・・・らー・・ょ」

 

 あ、やべ。声が出なくなってやがる。

 

 伝えないといけないことがあったのに言葉にできない。

 

 体が寒さを感じ始める。

 

 両親が必死に呼びかけてくるが、それに返事する余裕がない。

 

 視界がぼやけて光が広がっていく。

 

 

 

 光に飲み込まれ、

 

 

 そして、

 

 

 

 僕は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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