チート転生テンプレもの   作:Reppu

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「第四次光線級吶喊成功、砲撃を再開します」

 

「107戦術機大隊、全弾射耗。補給のため後退します。112戦術機大隊を投入。戦線を維持します」

 

「観測班より通信。ハイヴ南東に新たなBETA群が展開中です」

 

「呆れる物量だな」

 

艦長席に身を預けた男が辟易とした様子でそう呟いた。データリンクによって齎されている数字によれば、既に陸上戦艦群は弾薬の50%を撃ち切っている。だというのにBETAはその数を減らしているようには一向に見えない。叩き潰した端から補充されているからだ。

 

「誘引状況は悪くないか。この辺りが潮時だろう」

 

その言葉に合わせて艦隊の動きが変わる。それまで強引と思える程前進を続けていた陸上戦艦が速度を落とし、合わせて周囲に展開していた戦術機と攻撃機の部隊も守勢に転じる。瞬間、第一軍とBETAの間に空間が生まれるが、直ぐにそれはBETAの逆撃で埋められる。その様子を見た男は皮肉気に顔を歪ませた。

 

「所詮知恵の無い駒では読みきれんか」

 

BETAは学習する。だがそれは管理ユニットである重頭脳級と呼ばれる個体のみの話だ。目の前に居る有象無象はそれによって運用されている作業端末に過ぎず、そこには意思も知恵も無い。ただ与えられた命令通りに動くだけの存在である。故に戦場における変化に即座に対応出来るような能力はBETAには無い。だから、巣に最も近づいた強力な戦力が一転して囮として敵を引きつけているなどという状況にも簡単に引っかかる。

 

「仕事が楽なのは良いことだが。いかんな、腕が鈍りそうだ」

 

押し寄せるBETAを前に男はそう不敵に笑った。

 

 

 

 

『総指揮官。時間です』

 

「思ったより早かったね。ウチの皆は優秀で助かるよ」

 

包囲環が閉じたのが4時間程前。作戦開始から現在はほぼ一日が経過しているから、大体20時間くらいで成功させた事になる。戦術や戦略に詳しい人間なら発狂しかねない侵攻速度だ。

 

『最終フェーズに移行しても宜しいでしょうか?』

 

「勿論。こっちも十分休ませて貰ったからね。これ以上寝たら牛にでもなっちゃうよ」

 

そう言って俺はコックピットへと収まる。完全に調整の済まされた機体は直ぐに起ち上がり、即時出撃可能であることを俺に伝えてきた。

 

『それはいけませんな。総指揮官の健康の為にも急ぐとしましょう』

 

冗談に合わせるように艦が加速する。現在位置はハイヴから北東に約400キロの地点。この艦隊の足なら、目標まで30分と掛らない距離だ。艦橋で周囲を見ている国連軍の士官さんは今頃びびっているかもしれない。こんなデカブツが浮かぶだけでも想像出来なかっただろうに、それがマッハで飛行するなど理解の範疇を超えているだろう。そんな埒もない事を考えている内に、地平線の向こうから趣味の悪いオブジェが見え始める。こういうのはインパクトが大事だ。派手にいこう。

 

「ムラマツ、ハイパーメガ粒子砲の使用を許可する。目標、目の前のクソダサい前衛芸術。跡形も無く吹き飛ばせ」

 

『了解しました。高雄、愛宕、摩耶全艦ハイパーメガ粒子砲射撃態勢。発射まで20』

 

「発射次第突入部隊を展開。即時ハイヴ攻略にかかる。全機用意」

 

続くカウントを聞きながら俺はそう口にして、一度上唇を舐めた。さて、主観的には久々の、体感的には初めてのハイヴ攻略だ。

 

『発射』

 

静かな口調でムラマツがそう告げると同時、これまでの比では無い閃光が空を焼き一瞬でハイヴの上部構造物、通称モニュメントへと突き刺さる。ネェル・アーガマ級を改良して生み出された高雄級航空巡洋艦は連続射撃能力こそ獲得出来なかったが、威力が10%増しであるにもかかわらず、ハイパーメガ粒子砲射撃時に動力ダウンによる各火器が使用不能になるといった諸問題を解決している。三隻から放たれた光条はモニュメントを根元から吹き飛ばし、あっという間に瓦礫の山へと変える。

 

「うん、すっきりした。では全機出撃」

 

それをモニター越しに確認した俺は、自機を降下ハッチへと移動させ、躊躇無く空へと飛び出した。大して高度は取っていなかったため即座に地表に到着、降下時の速度を殺さぬまま予定していたゲートからハイヴ内へと飛び込んだ。

 

「こんにちは、死ね」

 

随伴していた僚機と共に、侵入して直ぐに担いでいたハイパーメガキャノンを構え、躊躇無くぶっ放す。ドリフトと呼ばれる通路部にたむろしていたBETA共が一瞬で高温に晒され分子へと戻る。うん、ビーム兵器の良いところだ。実弾だと死骸が邪魔になって仕方ないのでこれだけでもビームを主兵装に据えた価値があると言うものだ。サンプルを欲しがっているどっかの女狐さんとかはブチ切れそうだが。

 

『前方500にホールを確認、射撃開始』

 

先行しているハヤタがそう宣言すると同時、再びハイヴ内が光に包まれBETAが消える。メインシャフトと呼ばれるハイヴの中心エリア、そしてその下にあるメインホールに存在する反応炉を吹き飛ばせばハイヴは死ぬ。そしてフェイズ2のハイヴにおける最外縁のゲートからメインシャフトまでの距離は凡そ2キロメートル。この新型にかかれば正に瞬きする間の距離だ。再び見つけたホールと呼ばれるドリフト同士を繋げている部分に居たBETAを吹き飛ばし、突入から僅か5分で俺達はメインシャフトへ到達してみせる。

 

「落下物に巻き込まれたか。数が少ないな」

 

メインシャフトへ飛び出したこちらを待ち構えていた重光線級が迎える。多くがモニュメントの崩落に巻き込まれたのか、数はそれ程多くない。しかも至近距離であったから、初期照射を終えるより先にこちらのビームが次々と暢気にこちらを見つめている一つ目を撃ち貫く。宇宙世紀なガトーさんが見ていたらつい鎧袖一触とか言い出しそうな光景を量産しながら、俺達はメインホールへと降り立った。

 

『全周防御!撃ちまくれ!』

 

アラシの叫びと同時に、俺の周囲へ集まった友軍機が円陣を形成。即座に周囲へ向けて破壊の光をまき散らす。この場所は連中の最終防衛ライン。フェイズ2という生まれたばかりのハイヴでもそれなりの数のBETAが襲いかかってくる。以前の野分だったらあるいは詰め寄られていたかもしれない。

 

「悪いね!強くってさ!」

 

高らかにそう告げて俺は青白く光る反応炉を照準、ビームの奔流をたたき込む。僅かに耐えるそぶりを見せた反応炉だったが、数秒と経たずに外壁が溶融。破孔から得体の知れない溶液をまき散らしつつ、発光を停止した。同時にそれまで損害も気にせずに突っ込んできていたBETAが停止しメインホールから次々と逃げ出していく。それを見て俺はハイヴ攻略成功を確信した。

 

「イデ、小隊を一つ索敵に回してアトリエを確保しろ。残りは撤退するBETAの追撃、続け!」

 

『『了解』』

 

どう言う仕組みかは解らないが、BETAの連中は自分のハイヴが落ちた事を直ぐに察知できるらしい。ならば地上の奴らも最寄りのハイヴへ向けて移動を開始するはずだ。

 

「ハヤタ、先行してムラマツとデータリンクを確立しろ。動きが変化している筈だから気付いて居るとは思うが取りこぼしは避けたい」

 

『了解しました』

 

「イデは国連軍が使用するドリフトを重点的に掃討、お客様はデリケートだから一匹たりとも残すな」

 

『了解です』

 

「アラシ、暴れろ。全兵装の自由使用を許可する」

 

『待ってました!』

 

俺の命令に従い周囲を固めていた機体が四方へ散っていく。俺も直轄の小隊機を率いて適当なドリフトへと飛び込んだ。何せここからはボーナスタイムだ。出来るだけポイントを稼いでおきたい。

 

「さあ、仕上げといこうか」

 

 

 

 

「これは本当なのかね?」

 

報告を受けた男は、信じられずにそう問い返した。

 

「監視衛星からのデータも確認しましたが、間違いありません。モニュメントの倒壊とBETAの離脱を観測しております」

 

興奮気味に告げる士官の前で、男は震える手で眼鏡を外し顔を覆った。

 

「なんと、なんと言うことだ」

 

育ちかけとは言え、ハイヴを僅か2日で攻略。更に残敵を掃討中とのことだが、こちらも危うげ無く終わることは1日たらずで包囲環を形成してみせた連中の兵力からすれば間違いないだろう。

 

「神は、まだ人類を見捨ててはいなかったっ!」

 

滂沱と流れる涙を彼は止めることができなかった。彼が国連軍参謀総長の座に就いてから3年が経つ。前任者が実行したスワラージ作戦による国連への不信と常任理事国からの圧力の中、何とか人類の戦力回復と防衛線の維持に腐心してきた彼にとって、今回の作戦はあまりにも博打が過ぎる内容だった。自分の首が飛ぶ程度ならば安いもの。これ以上の国連軍の権威失墜は独断専行の呼び水になりかねず、そうなれば早晩ユーラシアを囲む防衛網は破綻していただろう。進退の窮まった彼に残された道は、無能として無責任に後続へ席を譲るか、博打とも思える作戦を何としても成功させるかの二つだった。かくして神は彼を見捨てず、人類は明日を繋ぐ。そして彼らの実力を正しく認識した彼はある決断を下す。

 

「人類の剣を曇らせる訳にはいかん」

 

翌日、国連軍はカンパニーに対して同盟を提案する。超国家組織が一企業と対等であるとする姿勢は大小の波紋を投げかけることになるのだが、まだそれは先の話である。

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