チート転生テンプレもの   作:Reppu

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「さて、次はボパールか重慶か」

 

地図を眺めながら俺はそう口にした。年が明けて早くも1ヶ月が経過した。当初の予定ではここで暫く守勢に回ることになると考えていたのだが、まさかの事態が状況を変える。

 

「正直に申し上げまして、これ以上国連軍で戦線を抱え込むことは不可能なのです。しかし攻略した以上、そのまま放置とはいきません」

 

深刻な顔で相談に来たのは国連軍の東南アジア担当官だった。東南アジア方面の各国はインド亜大陸失陥後長らく戦線を維持していたが、これらの国は元々国力が低く、その代償を人的資源の消耗という形であがなっていた。当然そんな状態だから今回押し上げた戦線を維持するような兵力は無いし、BETAに侵攻されて荒廃した土地を再生させるだけの余裕も無い。そもそもそんな事が出来るなら各国共同で亡命先のメガフロートを買うなどという発想にたどり着かないだろう。国連軍としても各国の協力が得られなければとてもではないが戦力が足りない。そこで白羽の矢が立ったのが俺達というわけだ。

 

「マンダレー基地の状況は?」

 

「拠点としての諸機能は全て獲得しています。資源採掘システムも稼働中、現在の備蓄量は3%。試製95式の生産ラインは1基が稼働中。F-4J2の生産ラインについては4基が稼働しています」

 

「流石に採掘システムも一基だけじゃ厳しいか」

 

とは言え今回入手したポイントは既に殆どを木星開発に回してしまった。大型の輸送船ではなくミノフスキードライブ搭載型の中型艦艇を複数獲得し、ヘリウム3をピストン輸送する計画だ。はっきり言ってコストパフォーマンスは最悪だが、養わねばならない従業員も居なければ、設備や装備の維持メンテナンスもどうせ自前で完結するから気にしなくて良い。そういうのは同業他社が出てきたら考えることにする。

 

「基地周辺に追加で生産拠点を建造することを推奨します。F-4J2の増産に対し弾薬の生産量が不足しています」

 

何せチートで生産拠点を増やせるこちらと違って、普通の企業は建物を一つ増やすだけでも大騒ぎだ。当然こちらの生産速度に追いつけるはずもないので、自前の戦力についてはほぼ全てを自給している状態なんだが。

 

「まあ多くて困ることもないしね」

 

戦線を維持しつつ攻略部隊を編成するなら更なる戦力の増産が必要だし、例えウチで使わなくなっても国連軍とかに供与してもいい。そう考えて生産用拠点を3個ほどポイントで購入し基地の近くへ配置する。RTSゲームのような感じで即座にガワが建設され、画面上に建設完了までの時間が表示される。まあ、この後はルクレツィアに丸投げするから大体見てないんだけど。

 

「戦力的に楽なのは重慶。攻略後が楽なのはボパールかなぁ」

 

再び地図を拡大してそう呟く。重慶は建設から2年、対してボパールは5年が経過している。当然規模はボパールの方が大きい。加えて重慶は中華統一戦線がまだ十分に機能しているから攻略難易度で考えれば重慶なのだが。

 

「問題は攻略後だよな」

 

国土奪還はユーラシア各国の悲願であり、今回のマンダレーのような特別な理由がない限り元の国家が領有権を主張するのは間違いない。重慶に関しては攻略後当然中華統一戦線がそう主張するだろうし、それが出来るだけの体力もあるだろう。だがそうなると俺達としては都合が悪い。

 

「陸路でカシュガルを攻略する事を考慮すれば、敦煌を落とすのに重慶は兵站拠点として押さえておきたい。けど許可するとは思えないんだよなぁ」

 

余裕がなかった以前ならまだしも、ここの所の中華統一戦線は順調だ。その状況で国連軍や、まして一企業の戦力と独自の拠点を国内に素直に置かせるとは考えにくい。どころか前回の陽動作戦の戦果を考慮すれば、近い内に独力で重慶の攻略とか言い出すかもしれん。

 

「かといって今更供給を絞って足を引っ張るのもな」

 

そんなことをしておいてこちらが主導で攻略するなどと言っても反感を買うだけだろうし、何より戦力が足りなくなる前にと攻略を前倒しにされたりしたら目も当てられない。中華統一戦線の主力は未だに殲撃8型と10型だから、間引きならともかくハイヴ攻略となればどれだけの損害が出るか想像も付かない。

 

「うん、中国方面は任せちゃった方が面倒ないかな」

 

そんな事になるくらいならむしろ積極的に支援して落として貰った方が面倒が無くて済む。

 

「そうなるとボパールか。ちょっと現有戦力じゃ心許ないかな」

 

ボパールは3年前の時点でフェイズ4まで成長している。マンダレーのハイヴが2だったから、更にそこから2段階上のサイズになる。だがこの差は深刻だ。何せ単純な巣としての規模は5倍、当然内部は複雑化している上に、内包しているBETAの数に至っては全く不明なのだ。何しろ無数に存在するホールと呼ばれるドリフトの結節点に師団規模のBETAがたむろしているような場所である。地表に出ている20万なんて数字は何の予測材料にもなりはしない。現行機よりも圧倒的とは言え、無敵ではない以上過信は禁物だ。実際に月では二個中隊規模では推進剤と冷却剤が不足して撤退に追い込まれている。

勿論ハイヴ内に突入せずに処理する手段が無いわけではないが、奥の手は出来るだけ残しておきたいと言うのが本音だ。なんせオリジナルの攻撃時にはタイムラグ無しに対策してくる可能性も十分に考えられるし。

 

「枝葉の方は力押しで処理出来るくらいの戦力は必要だよな」

 

正直なところ、今ある戦力を全てつぎ込めばオリジナルハイヴの攻略も多分可能だ。だがその先にはあまり楽しくない未来が待っている。何故なら現段階で既にオリジナルハイヴには天文学的数字のBETAが確認されているのだ。ハイヴを攻略、即ち反応炉であり司令塔である重頭脳級を破壊した場合、こいつらが一斉に全てのハイヴへ移動を行うのだ。それは間違いなく前線ハイヴの飽和を意味し、大規模侵攻の誘発を確実に起こす。それを防ぎきるだけの戦力を人類は持っていない。そう考えて俺は一度息を吐き出した。

 

「焦らず行こう。時間は有限だけど、決してゼロじゃない」

 

気分を変えるべく、俺はルクレツィアに向かって別の質問を投げかけた。

 

「えーと、それからまたハニトラさんが来たんだっけ?」

 

「次世代型戦術機の衛士育成カリキュラムの作成への協力要請ですね。指導教官2名と候補生8名です」

 

全員女性と言う時点でもう語るに落ちてますよね。ただまあこっちの意見でこれまでのような格闘戦偏重から砲戦に戦術を転換してるからな。協力してくれと言われれば是非もあるまい。丁度良い先輩方もいることだし。

 

「面倒は一期生の皆に見て貰おうか。悪いけど一人フォローについてやってくれる?」

 

ここの所海外と積極的に関わっているから日本帝国政府も焦っているのかな?割と初期の対応とか悪かったから、俺達が見捨てるとか思っているかもしれない。別に邪魔さえされなければ出て行く気はないんだけど、言ったところで信用されないだろう。女にだらしないってのはこっちが意図的に広めた認識だから仕方ないけども、アンカーベビーならぬアンカーワイフにする気満々とかいくら健全な男だと言っても躊躇するわ。ああ、けど武家さんとか的には政略結婚とか常識の範囲なんかな?

 

「了解しました」

 

次に攻略するのはどちらになるにしてもフェイズ4以上。今回の潰したマンダレーの数倍の規模になる。突入する戦力も今回より遥かに必要になると考えれば、当面は戦力の増強に努めなければならないだろう。

 

「出来れば彼女達が戦場に立つ前に地球くらいは綺麗にしておきたいね」

 

俺はそう願わずにいられなかった。

 

 

 

 

「初めまして。皆さんの教育担当を仰せつかりました、賀東と申します」

 

そう言って目の前の女性は優雅に一礼をした。それを受けて如月佳織中尉が返事をする。

 

「ああ、ご苦労。これからよろしく頼む」

 

その言葉に対し、賀東と名乗った女性は顔を上げると笑顔のままに言い放つ。

 

「まず皆さんに重要なお知らせがあります。この場所では帝国での身分、家柄などは一切考慮されません。武家の出身だからと舐めた態度を取りますと相応の対応をしますから留意してください。それから皆さんの建前上の立場がこの場所における正式な立ち位置となります。不適切な行為や不用意な行動を取った場合即刻たたき出しますのでこちらも注意下さい。最後に、この基地における法はあちらにいらっしゃいますルクレツィアさんになります。解らない事は彼女に随時質問する事をおすすめします。勝手な判断は全員が不幸になりますからそのつもりで」

 

そうまくし立てると、一呼吸をおいて彼女はもう一度笑顔で口を開いた。

 

「それらを踏まえまして、改めて皆さんの教育担当を仰せつかりました、賀東と申します」

 

「「よ、宜しくお願いします!」」

 

そう再び会釈をする彼女に向けて、全員が慌てて唱和する。

 

「結構です。では早速ですが強化装備に着替えて集合して下さい。シミュレーターを用いて講義を行います」

 

「な!?お待ち頂きたい。私と稲葉はともかく、他の者はまだ何も訓練を受けていない候補生です。シミュレーター訓練に耐えられるとは思えません!」

 

その言葉に賀東は笑顔で応じる。

 

「ああ、そう言えば斯衛で運用しているのは初期のモデルでしたね。問題ありませんよ。現行モデルのコアモジュールは中学生女子の平均的な体力で問題無く操縦可能です。帝国軍向けのものは既に更新されていて、既存の機体も随時交換していくと聞いていたものですから」

 

「いや、しかし、十分な座学も終えぬうちから…」

 

なおも言いつのる如月中尉に対し、賀東は判りやすく溜息を吐きながら答える。

 

「習うより慣れろ、実践に勝る経験は無い。長谷川様の教えです。彼女達に必要なのはまず何より機体を手足のごとく動かせるだけの経験です。新モジュールは直接操作する範囲が増えた分、直感よりも経験がものを言いますから」

 

黙り込んでしまった相手に賀東は冷たい視線を送りながら言葉を続けた。

 

「如月中尉、貴女はここへ何をしにいらしたのです?これまで通りのカリキュラムで良いと言うなら長谷川様の手を煩わせる必要などないでしょう。同じ女として恋愛に現を抜かすなとは申しませんが、せめて建前は全うするべきだと思いますわよ?」




ハニトラさん達は今日も元気に頑張っています。(ルクレツィアの監視付き)
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