チート転生テンプレもの   作:Reppu

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「いよいよクソゲー感が出てきたじゃないか。大変結構」

 

俺は皮肉気にそう笑い頬杖をついた。重慶での一件はカンパニーを通して国連並びに取引先の各国へと連絡、中華統一戦線からはめっちゃ遺憾の意を表明されたが、じゃあ今後は自分達だけでどうぞって言ったら沈黙。ついでに大人しく資料も提供いただいた。結果から言うと新種はかなりの数が確認されたが、完全な代替は出来ていないようだ。特に地表に展開している戦力は従来の種が殆どだったらしい。尤も光線級とその直掩は新種に置き換わっていたそうだから、こちらの光線級吶喊は従来型のものに戻さざるを得なくなった。しかも高出力化している分重金属雲の濃度を高くする必要があるとの事だ。不幸中の幸いは射撃インターバルに変化が無い事だろう。

 

「しかし嫌らしい事をしてくれる」

 

便宜上新種と呼称しているこれらだが、新たな種としては認定されていない。何故なら全て既存の連中と姿形が変わらないからだ。だから新種と言うよりは性能向上型とでも言うべきなんだろう。因みに外観上の差異は無いが、戦場で見分ける事は出来なくはない。内包する熱量が凄まじいからサーマルセンサーで確認すれば判別出来るし、視覚的にも常に体から蒸気のような物を発生させているので余程視界の悪い環境や夜間でない限り目視で識別は可能だ。とは言えこれに絶対の保証は無いし、何より光線級は解ったところで対処が難しい。特にこれまで突っ込んでくるだけだった突撃級が直掩に加わり、小型種の盾役になっている。そう、変化は新種が現れただけじゃない。連中はこちらの戦術に合わせて兵科の運用方法を更新してきたのだ。これに対し軍関係者は顔を青くし、一部の学者さん達は狂喜したそうな。何でも戦術的な戦力運用を行えるのは知能がある証拠だから交渉の余地がどうとかこうとか言っていた。寝言なんで全然聞いていなかったがそんな事を熱弁していたとルクレツィアが教えてくれた。

 

「知恵があるなら最初の攻撃を受けた時点で何らかの交渉をしようとするだろうに」

 

学者先生方の明るい未来予測はどうでもいいとして、喫緊の課題は欧州並びに中国方面の戦力だ。ウチが戦力を投入しているインド亜大陸と中東、それからロシアは消耗戦に付き合えるが先の二つはそうもいかない。特に欧州は米国にTYPE-96、帝国では瑞鳳と呼ばれている野分の改良型を大量発注しているものの、主力の大半は未だに米国から格安で供与されたF-15や16といった第二世代戦術機だ。レーザー蒸散塗膜は流石にウチ製の物を使っているが、新種の特に要塞級などに対しては完全に戦力外になってしまっている。合衆国も事態を重く見て国内向けに生産していたF-4J2を一部欧州へ供与するなどの対応を進めているが、今日明日で何とかなる事でもない。中国方面は帝国軍が更なる増援を約束してくれたが、その見返りとして雷の優先供与とメーカーのライセンス生産を要請された。まあ、作りたいと言ってくれる分には全然構わん。生産ラインだって今回の攻略で増産出来る予定だしね。

 

「地下連絡路との切り離し完了。続いて全エアクッションの正常作動を確認」

 

「メインジェネレーター出力安定しています。各部ミノフスキークラフト正常作動、ストライダー01起動します」

 

オペレーターの言葉と共に部屋が僅かに揺れ、続いて静かに体が椅子に押し付けられる感触が来る。ストライダーの名に相応しくBETAによって均された大地を滑る様に進んでいく機体の足元には、随伴の陸上打撃群が文字通り群れを成して続く。ヘヴィ・ホーク級陸上戦艦をベースに建造されているこの艦は順調に数を増やして現在同型艦は400を数える。半数はソ連とアラビア半島、そして地中海方面に展開しているから、ストライダーに随伴しているのは200隻程だ。正直高雄級ことネェル・アーガマの量産体制が整うまでの繋ぎのつもりだったのだが、曲射可能な大口径実体弾の必要性が高まった事から今後も継続して調達する予定だ。

 

「すごい音だね」

 

そんな事を呑気に口にしたら横でそれを聞いたカトウが苦笑しながら返事をした。

 

「外はこの比ではありませんよ。何しろこれだけの構造物が200キロで動き回っているのですから」

 

全長2.4km、全高600m。本来存在していた世界では、スピリット・オブ・マザーウィルと呼ばれていたものがストライダーの正体だ。アームズフォートと言うかつての呼び名に相応しく、圧倒的な火力と要塞のごとき防御力と補給能力を兼ね備えたこの兵器を今更準備したのには訳がある。端的に言ってしまえばハイヴ攻略後にその場に居座る為だ。ハイヴは攻略後国連の管理下に置かれる事になっているが、はっきり言って悠長に調査を待っている時間が惜しい。特に俺がコロニーなどをポイントで購入したせいでカンパニーは驚異的な建設能力を持っている事にされてしまっているから、放っておいたら徒に時間を食いつぶされる事になるだろう。新種が出てきてもハイヴ攻略が成功したなら、多分彼らは俺をBETA以上の脅威と見做すだろうことは想像に難くないからだ。かと言って今放り出したら確実に人類は滅びる。

 

「無様だね、結局人類の天敵ENDかな」

 

皮肉が口からこぼれるのが止められない。何処で間違ったのかな、でもまあせめて人類を救うという約束だけは果たすとしよう。俺はその為にここに来たのだから。

 

「アラビア半島とインド北部の状況は?」

 

気持ちを切り替えて、傍に立つカトウに問いかける。

 

「我が艦隊の移動に合わせ戦線を押し上げております。現時点では双方共に損害報告は上がってきておりません」

 

「新種の出現報告は?」

 

「重光線級も含めてございません。ただし、各戦線で対光線級吶喊用の配置が行われています」

 

「戦術レベルでの対応は想定内だけど、新種が確認できていないのは妙だね」

 

俺の言葉にカトウは顎をさすりながら口を開いた。

 

「形状に変化が無く熱量が高い。つまり材質ではなく密度や内包するエネルギー量の増加で強引に性能を上げているのだと推察されます。となれば、製造コストも相応に増加しているかと」

 

「つまり容易に置き換えられるほどの生産体制は各ハイヴで整っていない?」

 

「地表の個体に交ざり始めたら危険な状況でしょう」

 

つまりそれはハイヴ内が全て新種に置き換わっているという事だからだ。

 

「次期量産モデルの生産を急がないとね。その為にもボパールはウチが占領する必要がある」

 

目下の目標は技術ツリーに存在する人造型アトリエの解放だ。これはハイヴ内に存在するグレイシリーズの精製能力を人類が機械的に模造したものだ。生産量は大きく劣るが自前でグレイシリーズを供給可能に出来る魅力は語るまでもないだろう。特に次期量産モデルはML機関を標準装備としている上にラザフォードフィールドの使用を前提にしているのだ。むしろ我々にとって必須と言えるだろう。問題は解放するためのポイントが文字通り天文学的な数字である事だ。ルクレツィアの試算ではハイヴを2つ潰して足りるかどうかというところらしい。

 

「最悪ボパールから継続してマシュハドを攻略する」

 

それで足りなければアンバールだな。地理的に言えばアンバールを先に落としてしまいたいのだが、あそこは聖戦連合が奪還を掲げている地域だから、占拠して拠点化を進めるとどんなトラブルがあるか解らない。急いで攻略を進めた結果、BETAと人類相手に二正面作戦を最前線で展開するなんて事になったら流石に手加減出来なくなってしまうだろう。

 

「あまり悲観的になるものでもありませんよ」

 

自然と漏れた溜息に笑いながらカトウがフォローを入れてくる。悲観的かな?俺としては結構現実的な状況分析のつもりなんだけど。

 

「考えてもみてください。人類は総人口の半数以上を失っています。それだけ強大で交渉不能な相手と戦っていても一つにまとまる事が出来ていない。ならば例え力が上でも言葉が通じて話が出来る相手に足並みを揃えられると思いますか?私はそれ程人類を信頼出来ません」

 

それは半分が俺をリラックスさせるための軽口で、もう半分は戦術型ドロイドが出した冷静な状況判断なのだろう。状況に焦っている俺なんかよりよっぽど信頼できる判断だ。そう考えれば少しだけ肩の力が抜けた。

 

「そうだね。不謹慎ではあるけど、人類の愚かさに期待しよう」

 

俺はそう言って椅子へ体を預けた。

 

 

 

 

「貴女まで付き合う必要はなかったでしょうに、蓮川さん」

 

「その言い方は酷いよ、山城さん。私だって武家の娘ですよ?」

 

そうすました顔で返事をする蓮川伊予を見て、山城上総は思わず苦笑を漏らした。

 

「あら、武家の娘なら猶更ではないかしら?長谷川様は庶民ですもの。家の格を下げてしまうわ」

 

解っていてそう口にする上総に対し、伊予は素直な意見を口にした。

 

「それは太平の世での話でしょう?乱世において家を守るのは家格ではなく実力です。世界屈指の有力な家と結ぶのは当然の選択です」

 

同じ結論に達した者同士、二人は気安く微笑みあう。

 

「本音を言えば、私ではなくて篁さんが来るべきだと思うのだけど」

 

「正直難しいでしょうね、彼女は譜代武家としての価値観に良くも悪くも染まっているから。貢物としての立場は受け入れられても、自らを売り込むのには慣れていないわ」

 

「そんな悠長な事を言っている場合なのかな?」

 

カンパニー相手に駆け引きをしているつもりになっている。そんな城代省のお偉方を想像し、伊予は困った笑みを浮かべる。一度その内に入り込めば、情報など開示されていなくても嫌でも理解できる。カンパニーは自分自身を上手く利用させる為に、敢えて隙を作って技術や資源を無償で吐き出しているのだ。それこそ本当に対価を払わねばならないとするならば、帝国の全てを差し出しても全く足りはしないだろう。

 

「いっそ、一度滅びた方が良いのかもしれないわ」

 

不穏な事を上総が口にするが、それを否定するだけの反論材料を伊予は持っていなかった。長く続いた幕府から民主国家へと方向転換を図ったものの、多くの旧弊的価値観を残し続けているこの国は端的に言って歪だ。国民を代表する政府と武家の棟梁たる将軍家、そして帝と言う権力の分散は正に諺にある船頭を多く乗せた船なのだろう。更にそれぞれが目指す行き先が違うのだから始末が悪い。伊予の言葉通り太平の世であれば、その歪も多少ましであっただろうが、乱世の国難においては致命的と言えた。

 

「あれもその一手かな?」

 

肯定も否定もせず、伊予はそう口にする。ここの所上総が精力的に外部と連絡を取り、武家民間を問わず多くの人間をカンパニーへ積極的に勧誘しているのだ。仮に全員が集うなら、カンパニーの経済的影響力はとてもではないが無視し得ないものになるだろう。

 

「そんな大それた事ではないわ、知人に良縁を紹介しているだけですもの」

 

そう言って上総は笑いながら続ける。

 

「でもその結果としてカンパニーがこの国を乗っ取ってしまったとしても、それは仕方のない事ではないかしら?弱く民を守れない者は指導者たる資格がないのだから」

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