チート転生テンプレもの   作:Reppu

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面白くない事になっている。夕呼先生から報告を受けた俺の心境はその一言に尽きた。

 

「甲1号、国連呼称H1ハイヴ周辺のBETAは既に50%が改造種に置き換わっている。これも厄介だけど。それ以上にこれは…」

 

ボパールの反応炉に接続した情報収集ユニット。彼女を通して地球におけるBETAの個体数とハイヴの分布が確認された。だが俺はこの情報を即座に共有すべきか本気で悩んでいる。

 

「まあ、こんな事を突き付けられたら、大混乱が起こるわよね」

 

夕呼先生もそう言って天を仰ぐ。

 

「通常型のハイヴとは異なりモニュメントを持たず、地上へ連絡するゲートすら無い隠れたハイヴ。差し詰めスリーパーハイヴとでもいった所ですか」

 

「昨日今日じゃないわね、多分マンダレーの辺りから準備が始まっていた。作業機械のくせに小賢しい事するじゃない」

 

通常型のハイヴが建設を妨害された事に加えて前線で損耗が増大したのを受けて、連中作業ユニットの製造に特化したハイヴを建設しやがった。

 

「前線で旧種が減らないはずね。H1を中心に更新した余剰が馬鹿みたいに送り出されてる。それも地下を通して」

 

「最悪ですね」

 

「最悪よ」

 

ゲームにも登場した母艦級BETA。H1近傍に増設されたスリーパーハイヴで真っ先に増産されたそれが、現在進行形で地球の全てのハイヴを繋げている。既に接続済みだったボパールでは、現在もカシュガル方面から地下で流入してくるBETAを殲滅し続けている。通路自体を崩落させようかと思ったが、ムラマツにむしろ進行ルートが変化する方が危険だと指摘されたため、現状のような場当たり的な対応になっている。

 

「改造種だけじゃなく、既に新種も絶賛製造中」

 

「首狩りをしようにも、現状の戦力でH1のBETAを封じ込めるのは困難です。特に地中回廊は手が出せない」

 

「H1が陥落すれば、残存するBETAが周辺のハイヴへ移動する。勿論そんな数を受け入れられるハイヴは存在しないから、連鎖的に再侵攻を誘発させるわね」

 

「ですが時間はかけられません。これを見る限りスリーパーハイヴはBETA製造に特化している分従来のハイヴより生産スピードも製造能力も1ランク上です」

 

連中には環境保護や持続的社会だなんて概念は無いからな。時間をかけた場合、地球が食い尽くされる心配だってある。

 

「解っているけど、具体的なプランは?」

 

足りない分は補うしかないだろう。問題は相手が頷いてくれるかだけど、それ程分の悪い賭けじゃないと俺は思っている。

 

「この星の明日の為に、今こそ人類は一丸となって事に当たる。となれば最高ですが、まあ足りない分を補填頂く程度なら協力を得られるのではないかと」

 

「とんでもない楽観論が飛び出たわね。上手くいかなかったらどーすんのよ?」

 

そうなってしまえば、しょうがないよね。

 

「協力出来ないと言うならそれは最早BETAに利する人類の敵です」

 

全員を救うのが最上。けれど出来ないのなら一人でも多く救えるプランに変えるしかない。…強化したのは正解だったな、こんな事を考えても気持ちは微塵も揺らがない。

 

「全員で連中の腹に収まるよりはまだマシでしょう」

 

表情を強張らせる夕子先生に、俺は笑顔でそう告げた。

 

 

 

 

「虫の良い話だと思わないかね?散々我が国を弄んでおいて、唐突に協力しろとは」

 

皮肉気に頬を歪めたのは合衆国陸軍において重要な地位を占めている将軍だった。彼は手にしていた葉巻を灰皿に押し付け、周囲を見回した。紫煙の漂う部屋に集まった男達は彼の発言に首肯する。

 

「彼らが我が国の市場に参入して以降、経済界は致命的な状況に陥っていると言っても過言ではない」

 

「東洋のサルは商いのやり方も知らないと見える」

 

「土台無理な話なのだ。幾ら人の真似事をしてもサルはサルでしかない」

 

相手を貶めながら彼らは笑う。多少溜飲を下げたところで、最初に言葉を発した男が話を戻す。

 

「要求は我が国が配備を進めている量産型XGシリーズと戦術機甲部隊。最低でもXGは全機出してほしいそうだ」

 

「ふざけた話だ。連中は合衆国国民の命を何だと考えているのかね?」

 

相手の要求に別の男が憤慨する。彼らにとって国民の命とは国家の貴重な財産であり、彼らの為に消費されるべきものだった。他国の都合で消費されてよい命など一つもなく、全て自分達によって利用されるべきだと本気で考えている。

 

「経済界の混乱は今も続いていると言うのに、あの小僧は乗り気だというじゃないか?」

 

その言葉に、彼らと席を共にしていたリチャード・ホークは悲し気に頭を振って見せる。

 

「既に大統領は正常な判断が出来ていません」

 

「仕方のない事だ、彼らの武器は確かにインパクトは十分だからな。だが、あの程度既存の兵器でも十分に実行出来る範囲だ」

 

リチャードの言葉に、老人が鷹揚に頷いて見せる。ここに居る者達は一様に従来の兵器産業から莫大なリベートを得ていた人間だ。故にカンパニーの台頭によって、利益を著しく損なっていた。そして戦争を商売、武器を商品と捉えている彼らは、本気で自分達の扱う商品がBETAに対抗しうると考えていた。

 

「ことここに至ってはやむを得まい」

 

「うむ、民意に反した専横を政府が成すと言うならば、我らは武器を手に取って抗うとしよう」

 

 

 

 

「同志サンダーク、党中央は何と言っているかね?」

 

溜息を隠そうともせず、ブドミール・ロゴフスキー中佐は目の前の男に尋ねた。

 

「戦力提供に極めて協力的な姿勢です。遺憾ではありますが、祖国の技術水準はこの大戦で合衆国に大きく差を付けられてしまいました。巻き返すには彼らを頼る必要があるでしょう。…我々が最有力候補のようです」

 

そうだろうとブドミールは頷いた。П-3計画は当初こそソ連独自の、もっと言ってしまえば彼らの計画であったが、現在は物資、技術両面でカンパニーと親密な関係を構築している。

 

「欲を言えば、後1年は欲しかったな」

 

「肉体的な不利は例の機体が軽減してくれます。実戦にも十分耐えられるでしょう」

 

「同志イゴーリはぼやいていたがな。だがあれの計画より使い勝手もいい、ただでさえ我が国は西側の連中に非人道的な国家だなどと喧伝されているからな」

 

プロジェクションとリーディングと言う特殊能力を用いた疑似的な未来予知。その最良の結果を機体側に再現させる上で問題となるのが、人間という脆弱な部品だ。計画の主任科学者を務めているイゴーリ・ベリャーエフは、この人間から機体の限界機動に耐えられない部分を削ぎ落し、完全な部品として組み込むことでこれの解決を考えた。だが当然そんな事をすれば部品としての寿命は著しく低下するし、万一にも情報が他国に漏れた場合には国際的な非難は避けられない。第一、大真面目に人類を救うために行動しているカンパニーに知れたなら、逆鱗に触れるどころの騒ぎではないだろう。

 

「参加させる戦力は如何程に致しましょう」

 

「解りきった質問をしてくれるな中尉。参加可能な人員と機体は全てだ、チップが多いほど見返りは大きいのだからな」

 

 

 

 

「野分の訓練を受けると思って来てみれば、触った実機は雷で、今慣熟訓練をしているのは97式かぁ」

 

「一体何機新型が出来ているのよって感じよね」

 

友人たちの言葉に、内心同意しつつ篁唯依は内心溜息を吐いた。戦術機の開発が容易ではない事は、父やその友人である巌谷のおじ様を見ていれば嫌でも解る。そして、カンパニーの機体がこれまでの戦術機と全くの別物であり、中でも97式と呼ばれているペットネームすらまだないこの機体が、最早比べるのもおこがましい程の性能を有している事も彼女は理解していた。

 

(雷の段階で、既に1機で帝国軍全てを敵に回しても勝てるような機体だった。そしてこの機体は…)

 

量産モデル。大量配備の為に要求値ギリギリまで機能を削ぎ落した機体。額面通りに受け止めれば、それはまるで粗製濫造をオブラートに包んだかのような言葉だ。そして事実カンパニーにしてみれば、その通りの機体なのだろう。原型となった試製97式はたったの4機でアンバールから溢れ出るBETAから中東を守護し続けているのだ。先日のボパール攻略においても、追加装備を使用したとはいえ、新種相手にまたも単騎での光線級吶喊を成功させると言う理不尽な戦果を打ち立てている。尤もこちらに関しては余りにも非常識な速度と動作であったため、以前とは異なり教本に取り入れられる事は無いようだが。

 

「あの機体の性能を100%引き出せるなら、単独でハイヴも攻略出来るわよ」

 

97式の設計者であるミラ・ブリッジス女史が忌々しそうにそう言ったのを唯依は覚えている。そしてそれが事実であろう確信も彼女にはあった。

 

「97式に慣熟するのは良いけれど、私達これからどうなるのかしら?斯衛にはこの機体、配備されないでしょう?」

 

慣れていざ戻ってみれば、与えられるのは野分だった。では笑えないと能登和泉が眉を寄せる。その問いの答えを既に知っていた唯依は苦笑しながら応じる。

 

「多分、悪いようにはならないと思う」

 

先日の休暇で実家に戻った際、唯依は崇宰恭子から武家界隈が近々荒れる事を伝えられた。そしてその直後に97式への機種転換である。つまりそう言う事なのだろう。

 

(今までは斯衛に戻る前提の訓練だった。でもこれはカンパニーの正規部隊と同じ訓練内容。つまり私達の身柄は、正式にカンパニーに引き渡されたと考えられる)

 

そして自分達よりも遥かに練度の高いユウヤ・ブリッジスや、難民からの志願者すら未だに戦闘には投入されていないのだ。ならば戦場を知ることになるのは、当初言い渡されていたよりも確実に遅くなるだろう。

 

「とにかく今は慣熟に集中しよう?もっと練習しておけば良かったなんて後悔だけはしたくないもの」

 

「そうだね」

 

「ええ」

 

頷く二人を見て唯依は立ち上がる、丁度休憩時間も終わるタイミングだったからだ。そんな彼女達にカンパニーへの正式な就職が言い渡されるのは、それから3日後の事だった。




国家解体戦争とか、絶対面倒だからしたくないよね。

以下、作者の自慰設定

97式『正規量産型』

試製97式は文字通り規格外の性能を発揮したもののパイロットへの負荷が激しく、アリスを中心とした特別派遣班(通称シスターズ)及び長谷川誠二の実質専用機と言って良い機体となってしまった。加えてカンパニーの特異な環境から建造費も度外視されていたために、他国で真面目に製造する場合、合衆国であっても数機で1年分の軍事予算が吹き飛ぶという馬鹿げた数字であった。このため正規量産型では過剰とも言える性能の見直しに伴う機体構造の簡略化、搭載される動力・電子装備のダウングレードが行われている。特に機体価格の大半を占めていた動力・推進器・電子装備のダウングレードは大幅な性能低下を起したものの、何とか戦術機と言い張れる価格までコストを抑える事に成功している。
火力面では従来機の雷とほぼ同程度に収まった一方、ML機関と熱核融合炉の同時搭載によって防御力及び機体出力は大幅に向上、特に近接格闘戦においては機体の軽量化も相まって既存機体とは一線を画す性能を誇る。当然のように斯衛が欲しがったが、新たに就任した政威大将軍の、
「幼少より鍛え抜いたと誇る斯衛の武は、武具の優劣程度で霞むものなのか?」
という一言で立ち消えとなっている。
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