チート転生テンプレもの   作:Reppu

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作戦そのものは極めてシンプルだ。いや、シンプルにせざるをえない。何せ地球規模で同時多発的に攻撃を実行するのだから、複雑な計画など提案したところで破綻するのは目に見えている。

 

「だからと言って重金属雲を使わないなんて出来ないものねぇ」

 

俺の書いた滅茶苦茶な作戦内容を読みながら、夕呼先生がそう苦笑した。まあさもありなん。

 

「97式以降の機体が普及すれば可能ですが、残念ながらそこまで待っていると地球が食い尽くされかねません」

 

「こっちも相当貪っているものね?」

 

そう返せば夕呼先生は愉快そうにそう笑った。仕方ないだろう、物量に対抗するために最も有効なのはやはり物量なのだ。BETAの数に押し負けないだけの戦術機や火砲を用意しようとすれば、必然相応の資源を消費する事になる。でもこれでもかなり配慮しているんだぞ?宇宙で建造している装備の殆どは移動中のユノーで採掘を始めて賄っているし、武装の多くもビーム兵器に転向する事で砲弾に用いる装薬や弾体分の金属も節約している。ついでに装甲にもセラミック複合材にすることで従来の総ガンダリウム合金製よりは使用量を減らしている。まあ、ムーバブルフレームを採用する都合上、旧来の戦術機に比べればどうしても使用する金属量は増えてしまうからギリギリまでそれを抑え込む為に、機体のサイズまで第二期MSに準拠させている。それでも生産する数が数なので消費する資源はグロい事になっている。

 

「だからこその作戦ですよ」

 

アリス達用に建造した試製97式。そしてシスターズの直轄戦力として配備されているダミー達、彼女達を用いてH01を除く全ての通常型ハイヴに対し同時に反応炉破壊を実施する。

 

「逆転の発想という訳ね、H01を先に潰して玉突きの大侵攻が起きてしまうなら、先に移動先を潰しておけばいい。言い出すのがアンタじゃなければ、頭のおかしい馬鹿の戯言だけれど」

 

現状最も危惧するべきなのは、連中が陣地を構築し終えて、そこに十分な兵力を充足させる事だ。解りやすく言えばハイヴ同士の移動網が完成し、そこに十分な数のBETAがいる状態だ。対人戦とは異なると言うものの、準備された敵陣に遠征軍で挑む事は戦術上最も困難なシチュエーションの一つである。

 

「幸いにしてまだ、スリーパーの方は生産特化型のため補給能力は高くありません。兵站が整えられてしまう前に叩かなければ、今まで以上の泥仕合に付き合わされてしまう」

 

「そして余力を残した状態でここを勝つ必要が人類にはある」

 

夕呼先生の言葉に俺は黙って頷く。月面のハイヴはまだ残っているし、火星に至っては手付かずなのだ。こんな所で死闘を繰り広げている場合ではない。

 

「ソ連はこちらの提案に乗った。帝国と大東亜連合、それに国連も協力してくれるでしょう。残るは欧州と合衆国、それにアフリカ連合か」

 

意地悪な笑顔でそう嘯く夕呼先生に俺は苦笑する。大丈夫ですよ、冥夜ちゃんだって言っていただろう?

 

―人類を無礼るなってさ―

 

 

 

 

物言わぬ躯となったかつて“執事”のコードネームで呼ばれていた男を感情の籠らぬ目で見つめながら、テオドール・エーベルバッハはその体を拘束されるままに任せていた。

 

「久しぶりね、…なんと呼ぶべきかしら?」

 

「好きに呼ぶと良い」

 

「そう、ならもう一度。久しぶりね、テオドール。息災のようで何よりだわ」

 

そう昔と変わらぬ口調で告げて来るグレーテル・イェッケルンにテオドールは皮肉の張り付いた顔を向ける。

 

「アンタがここに居るという事は、俺のオトモダチ共は俺の事を売ったのか?」

 

「残念ながら少し違うわね。貴方を利用していた連中は政争に敗北したの。ここに私がいるのは、そうね、神様のお導きかしら?」

 

グレーテルの言葉にテオドールは喉を鳴らして笑う。

 

「見ないうちに随分と皮肉が達者になったんだな」

 

神の言葉を騙り組織を纏めてきた彼に向かって神の導きを口にするなど、正にこれ以上ない皮肉と言えよう。しかしテオドールの様子に対し、グレーテルは静かに笑みを浮かべて口を開く。

 

「そうね、所で知っている?東洋では神様は一人ではなくて沢山いるそうよ。私達の信じていた神様は確かに救ってくれなかったけれど、全ての神様がそうとは限らないみたいなの。だから、まだ私は神様は居るって信じられる」

 

そう言いながらグレーテルはゆっくりとテオドールへと近づき、決定的な言葉を口にする。

 

「カティアは助け出したわ。今はアネットが傍で守っている」

 

彼女の台詞にテオドールはひと時呆然とするも、意味を理解するにつれ、その表情を驚愕へと変える。その様子を見て、グレーテルが彼女らしい勝気な笑みを浮かべた。

 

「今はこの世界で一番安全な場所で保護されている。感謝しなさい?これでも私、頑張ったんだから」

 

「無事、なのか?カティアは、生きてっ!?」

 

「生きているし、勿論無事よ。流石に貴方を動かす命綱を粗略に扱わない程度の分別はあったみたいね。まあそれはそれとして、地獄には落ちて貰ったけれど」

 

グレーテルの回答にテオドールは俯き、そして自らの頬を濡らすものに気が付いた。涙など、とうの昔に無くしたと、流す権利など失ったと考えていたそれが、滂沱となって零れ落ちる。東ドイツの崩壊後カティアは疎開した人々に声をかけ続け、東西ドイツの統一を目指し行動していた。故郷を取り戻したその先で、再び自らに降りかかった悲劇が二度と起きぬ事を願って、彼女は奔走したのだ。だがそれを良しとしない者達も居た。東側諸国から身の安全を保障するため。親し気な様子で近づいてきた彼らにカティアが囚われると、その身柄を盾にテオドールらは都合の良い走狗に仕立て上げられた。融和を口にしながらも、東側の支援を受けている彼らの存在は、さぞ使いやすい駒であったのだろう。気が付けば彼らにとって都合の良い火種を生み出すテロリストに落ちぶれていた。

 

「さて、説明も終わったところでさっさと済ませてしまいましょうか」

 

そう言うとグレーテルはホルスターから拳銃を引き抜き、テオドールの額へと突き付ける。そして彼が言葉を発する間もなくトリガーを引いた。

 

「…難民解放戦線の主犯、“指導者”の死亡を確認した。時間を記録!」

 

ハンマーの落ちる小さな音だけを響かせて何も吐き出さずに役目を終えた拳銃を仕舞いつつ、グレーテルが大声でそう宣言する。テオドールを押さえていた兵士が即座に拘束を解き、愉快そうに時間を告げる。事態の急転についていけず戸惑うテオドールに、グレーテルは悪戯が成功した子供と同じ表情で問いかけてきた。

 

「さて、名も無い死体君。君には2つの道がある。一つは全てを消えた過去にして、ただの人としてやり直す道」

 

沈黙で応じるテオドールにグレーテルは笑みを深めつつ続きを口にする。

 

「もう一つは、私と同じ神様を信じて、再び人類の剣として立ち上がる道。さあ、どっちにする?」

 

答えるまでも無い問いに、テオドールは久方ぶりに本当の笑顔を浮かべながら口を開いた。

 

 

 

 

「これは一体どういう事かな、リチャード?」

 

合衆国の政治的中枢であるホワイトハウス、その最たる場所と言える大統領の執務室には、今多くの男達が詰めかけていた。

 

「見ての通りですよ、大統領」

 

その最前列で笑顔を浮かべている親友にマイケル・ウィルソン・Jr.が問いかけると、彼は大仰な身振りでそう応じた。

 

「判断に困るな」

 

副大統領の後ろに居並ぶのは合衆国の重鎮と呼んで差し支えない面々だ。そして更にその後ろには、武装した兵士達が武器を携えて待機している。机越しに大統領は彼らを見つめるが、その顔触れに一定の法則がある事にすぐ気が付いた。何故なら彼らはカンパニー出現後、協調路線を打ち出した大統領に一貫して反対の立場を取り続けた者達だったからだ。

 

「そう言わず良く見たまえ、これが君の行ったことの結果だ」

 

言いながらリチャードはゆっくりと大統領へと近づき、彼の背後へと回り込む。そしてゆっくりと肩に手を置くと口を開いた。

 

「見ろ、よく見るんだ。実に素晴らしい光景じゃないか」

 

喜色を抑えられない声音でリチャードは言葉を紡ぐ。

 

「特に彼なんて最高だ。あの笑顔、解るだろう?勝ちを確信した勝者の笑みという奴だ」

 

「ああ、よく見えているとも」

 

リチャードの言葉に、大統領は沈痛な面持ちで応じる。この状況は、彼が想定していた中でも、相当に悪い状況である事は認めねばならなかったからだ。

 

「うん、宜しい。しかし実に…」

 

そう言って強く大統領の肩を叩くと、リチャードは笑ったまま言葉を続ける。

 

「そう実に滑稽な姿だとは思わないか?彼らは今、自分の勝利を確信しているんだ。だから重要人物全員が集まるなどという危機的状況下で、あんな阿呆面を晒せる」

 

リチャードの言葉に即座に呼応したのは、彼らの後ろに控えていた兵士達だった。即座に手にしていた火器を居並ぶ重鎮達へ向けて構える。安全装置の解除される音が耳に入ったことで、重鎮達は漸く自分達こそが、網に捕らえられた哀れな獲物である事を自覚する。

 

「リチャード!貴様裏切ったな!?」

 

この期に及び的外れな非難を浴びせて来る男に向かって、リチャードは笑顔のまま口を開く。

 

「馬鹿を言わないで頂きたいな。私がこれまで、そしてこれからも忠誠を誓うのは合衆国に対してのみだ。恨むなら我が国の国益を損なうような愚かな選択をした自身の不明を恨みたまえ。連れていけ」

 

喚く男たちが執務室から連れ出されたところで、大統領は小さくため息を吐く。

 

「出来れば、穏便に済ませたかったのだが」

 

「マイケル、誰にでも慈悲深いのは君の美点だが、欠点でもある。救いようのない馬鹿というのもこの世には居るのさ、残念ながら我らが合衆国もその例外じゃない」

 

親友の言葉に一度だけ首を項垂れ、ゆっくりと顔を上げる。

 

「カンパニーへ連絡を、合衆国は全面的に彼らの要請を受け入れる。稼働している戦略機動航空要塞は全て欧州へ派遣する。護衛の戦術機部隊もだ。副大統領、直ぐに計画を立案し、実行したまえ」

 

そこには優しいマイケルはおらず、決意した合衆国大統領が座っていた。




Q:米帝様がいい人過ぎない?ナンデ?

A:B級SFにおける自陣米国はヒーロー枠だから 10%
  マイケルに大統領魂がインストール済みだから 90%
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