チート転生テンプレもの   作:Reppu

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その日、人類は一つの確信を得る。

 

―理不尽はいつも空から降ってくる―

 

心を震わせるような檄文も、誰もが叫び出したくなるような演説も無く。実務的に通達された史上最大の反攻作戦は、正に粛々と開始された。

今から24年前、ユーラシア大陸の真ん中あたりに降って来た異星人共。人類の嫌悪感を何処まで引き出せるかに挑戦したような醜悪な外見をしたそれらは瞬く間にユーラシア大陸を文字通り貪り、幾つもの巣を造り出した。多くの命が失われ、幾つもの国が地図から消えた。しかしそれは失われたもののほんの一部に過ぎなかった。圧倒的な力で地球を征服する宇宙人。そんな人々が思い描いていた恐ろしい宇宙人などよりも、本物は容赦がなかった。彼らにとって、地球は食い荒らすだけのものでしかなかったのだ。支配してもらえるなどなんと思い上がった考えだろう。連中にしてみれば地球はただの資源であり、そこに住まうものなど全て合わせてもその他僅かな何かにしか分類されないものなのだ。

そんな戦争と言うよりは死に際の人間に施す延命処置のような絶望的な戦いが24年続き、ユーラシアの大部分が呑み込まれた頃、彼らは突然現れる。

カンパニーと言う誰がどう聞いてもふざけた名を名乗り。

商人と嘯きながら、そのくせ経済活動など素人どころではない杜撰な行いで。

そしてその代表は、太古の英雄もかくやといった伝説をこの大地に刻みこむ。

そして今日、彼らの偉業はまた一つ増える事になるだろう。それは多くの人々が望んだ希望であり、願望。追い出された大地に突き立てられた、数多の不恰好なオブジェを打ち砕くという幻想。しかし幻は彼らの手によって、真実へと裏返る。

 

「空から恐怖の大王が降って来た。随分と気が早い話だが大歓迎だ。何せ彼らの銃口はこちらを向いていないのだから」

 

目の当たりにした国連兵士がそう呟いた。赤く、赤く空に尾を引く流れ星。それに向かって大地から幾つもの光が伸びた。事前爆撃で発生した重金属雲にその進む先を露にされながら、自らに向かい来る異物を排除せんと、BETA達が迎撃を試みたのだ。だがその光は流星が生み出した禍々しい障壁によって容易く捻じ曲げられる。

 

「少しだけ、ほんの少しだけだが、BETAに感謝してもいい気になったよ。カンパニーはインペリアルジャパンのメーカーだろ?もし奴らが地球に現れずに、呑気に人間同士で戦争なんてしてた日にゃ、あれと戦っていたのは俺かもしれなかったんだからな」

 

後に欧州方面の支援として展開していた合衆国の軍人がそう嘯いたという。

 

「昔、核を創った科学者が言ったそうだ。第三次大戦がどのような戦いになるか解らない、だが4回目は簡単だ、石とこん棒で戦う事になる。残念だが学者さんの言葉は間違いだな。3回目があったら、人類は滅びるぜ」

 

数を増やす光条を意に介さずに人工の流星は、聳え立つモニュメントと呼ばれる構造物へと突入してゆく。

 

「…頼んだぞ」

 

誰かがそう口にする。それは戦場に居る全ての兵士の思いの代弁だった。

 

 

 

 

宇宙世紀の科学技術とML機関による重力制御。それらを踏まえてもまだ自身に襲い掛かる数Gの負荷の中、アリスは口角を吊り上げる。最早人よりも見慣れた不細工な炭素系作業機械共が懸命に攻撃を仕掛けて来るが、彼女とその愛機にとって障害にはならなかった。

 

「見つけたぁ」

 

唐突であるが、ハイヴにおいて最深部に到達する最短のルートは何処かと言うのは、攻略の上で最も検討される内容である。アリの巣よりも複雑かつ広域に張り巡らされた地下茎構造内を侵攻するには当然莫大な資源を消費する事になる。兵站を維持することまで考慮するならば当然その距離は短ければ短いほど良い。さて、その様な状況で誰の目にも単純かつ最短に見えるルートが存在する。それがメインシャフトと呼ばれるハイヴ中央に設けられた巨大な縦穴だ。何しろこの穴はハイヴ建設の際、中核となる頭脳級を最深部に設置するために構築され、その後も拡張に合わせて使用され続けるからだ。誰もが知る最短ルート。しかしそれを選ぶ馬鹿は居ない。第一にハイヴの直上は光線級の防空が最も分厚い空域であり、まずもってそこまで侵入出来る戦力が存在しないからだ。更に望外な奇跡によって潜り込んだとしても、メインシャフト内にも光線級は待ち構えている上に、侵入経路上射線を妨害しうる障害物が存在しない。加えてその上部には最低でも数十メートルのモニュメントが地上に突き出しているのだ。輜重車両による兵站線の構築など出来る訳がない。

そんな誰もが解りきっている有り得ない道を、アリスは突き進む。時間にして僅か2秒という常識に喧嘩を売る速度でメインホールに到達した彼女は、混乱するかのように明滅を繰り返す頭脳級に対し、可憐な笑顔で口を開く。

 

ごきげんよう。そして、ごきげんよう(こんにちは、死ね)

 

手にしていたロングメガバスターの銃口は既に向けられていて、言い切った彼女は躊躇なくトリガーを引く。レーザーとは異なりながら、それでいて連中のそれと同等以上に明確な破壊の意思を内包したそれが容赦なく頭脳級に突き刺さる。内包した運動エネルギーと熱量を思うさま解放したそれは、瞬時に頭脳級の表皮を食い破り、体液に莫大な熱エネルギーを伝播させた。

 

「いつ見ても最悪の姿ですが、散り際は一層見苦しいですね」

 

瞬時に沸騰した体液が水蒸気爆発を起こす。破孔を受けて強度の下がっていた頭脳級の外殻はそれに耐え切れず次々と亀裂を生じさせ、最後には盛大に爆発した。降り注ぐ体液を冷めた目で見ながらアリスはそう冷ややかに断じる。その間も僚機である彼女のダミーは周囲から流入してくるBETAを次々と屠っていく。その情報を共有したアリスは眉を顰める。

 

「逃げ出そうとしない?いえ、これは…遅滞戦闘を試みているのでしょうか?」

 

彼女に任された目標はH06。旧ソ連領エキバストゥズに建設されたハイヴだ。H01から見てボパール、重慶とほぼ同じ距離にあるこのハイヴは既に30%近くが改造種、そして数%であるが新種に置き換わっている。であるにもかかわらず、彼女が相手取っているのはどれも旧種のBETAばかりだ。

 

「戦力の温存を学習した?作業機械風情がやるではないですか」

 

そう嗤いながらアリスは侵入してくるBETAを薙ぎ払っていく。元より多少の間引きは行う予定だったのだ。作戦完了後に掃討を受け持つ人類軍の戦力を勘案すれば、ここで想定より減らしておいても罰は当たるまい。そう考え継戦を選択するが、直ぐにBETAに対し違和感を抱く。

 

(投入している戦力に偏りがある?いえ、これは)

 

僚機のデータにも即座にアクセスし、頭脳級撃破後からのログを彼女は確認する。そして自身の疑念を確信へと変える。

 

「旧種の要撃級と戦車級しか投入していない?こいつらまさか!」

 

BETAは炭素生命の特徴を持つが作業機械である。当然そうであるからには、それぞれの種には戦闘とは異なる本来の役割が存在する。突撃級であれば地表構造物や岩盤の破壊であるし、要撃級はそうして出来た資源の粉砕である。

 

「間に合え!」

 

叫ぶとともにアリスは機体を即座に全力稼働させ、装備された武装を使い手当たり次第にBETAを吹き飛ばす。だが、既に目標を達成したであろう個体がメインホールから離脱を始めていた。

 

「逃がすな!」

 

焦りから必要のない言葉を発しつつダミーへと命令を送る。しかし役目を終え、壁役として押し込まれてくる要撃級から機体を保護するために、二人の機体はラザフォードフィールドを展開してしまった。

 

「クソっ!」

 

機体のプロトコルに強引に介入しラザフォードフィールドを解除した頃には、メインホールに残るのは彼女達の機体とフィールドによってすりつぶされたBETAの死体だけだった。

 

 

 

 

「それなりの割合が回収されたと見るべきですね」

 

作戦の第一段階完了の報告もそこそこに、アリスが険しい表情で報告を上げて来た。内容は戦車級による頭脳級残骸の回収。戦闘経験を十分に積んでいたマスターであるアリス達はともかく、今回の作戦の為に急遽独立した思考を与えられたダミー組は当初の計画通りに作戦を遂行した。このため全ての頭脳級の破壊には成功したが、相当量の残骸がBETAによって持ち去られるのを静観してしまった。いや、最寄りのハイヴからの回収を防げただけでも運が良かったと思うべきか。

 

「回収されたのは残骸とはいっても、連中は有機作業機械よね?だとすれば」

 

「即時とまではいかないでしょうが、再生は難しくないでしょう」

 

以前からBETAに関しては不可解な点が多かったのだが、頭脳級から情報を引き出したおかげでかなり多くの事が解って来た。その中で今回警戒すべき点は戦車級の作業内容だ。これまでは補助的な掘削作業と運搬であると考えられていたが、これに加えこいつらには他のBETAの保守点検作業が含まれている事が解った。特に注目するべきはこの能力が頭脳級にも適用されるという点である。

 

「単純な修復程度ならばまだ良いのですが」

 

「過去の事例から考えて頭脳級の組み立てくらいは普通に出来るんでしょうね。それどころか」

 

「はい、連中はそれなりに柔軟です。対処するべき問題に対しては即応すると言ってもいい」

 

既存のハイヴをほぼ全て喪失した連中が、呑気に再建するとは思えない。そもそも連中は既に生産特化型とは言え、改造頭脳級を量産し始めているのだ。回収した部材を使って補給機能を追加する位はやりかねない。

 

「連中の位置情報が手に入るのは幸いね」

 

「簡単に手出しできない位置ですけどね」

 

スリーパー型は既に10近くが稼働している。その内6体はH01近傍に存在するが、残り4体はどのハイヴからも比較的離れた位置に設置されていた。まあ幸いにして進入路は確保出来ている。

 

「作戦計画第三段階の一部前倒しを提案致します」

 

「まあそうなるわよね」

 

後ろに控えていたルクレツィアの言葉に夕呼先生が同意を示す。俺もその意見に賛成の意味を込めて首肯した。

 

「ムラマツ隷下の部隊を投入する。バックアップは予定通りカトウ隷下の部隊から出す。突入はノギンスクとブダペストから、編成はムラマツとカトウにお任せで」

 

俺の言葉にルクレツィアが静かにお辞儀をする。それを確認して俺は席を立った。

 

「念のため作戦の第二段階も早めたいな。国連軍の用意は済んでいるんだよね?」

 

「各国軍の展開率は96%まで完了しております。我が社からの支援は滞りなく済んでおります」

 

ならば問題無いな。

 

「シスターズの参集が済み次第、作戦の第二段階に移行する。大盤振る舞いだ、長良型で参加可能な艦は全て投入する」

 

当初の予定では金剛型とパプワ級だけで長良型は引き続き資源運搬のつもりだったが仕方ない。日程を繰り上げる分はこちらが戦力を補填する必要がある。

 

「戦後の補給計画に23%の遅れが生じます」

 

「喫緊の問題解決が優先。戦後のことは戦後の俺に悩んで貰うよ」

 

そう言って俺は手を振って部屋を出ると、笑いながら呟いた。

 

「さあ、あ号標的に挨拶といこう」




話を書いているより、作中に出す中2設定機体を考える方が楽しくて困る(困ってはいない。

と言うわけで今回の自慰設定。

長良型巡洋艦
カンパニーが資源輸送用という名目で量産しているクラップ改級巡洋艦。元々地球での戦闘が終結次第月及び火星への遠征が確定していたため、その際の戦力を同時に調達するべく建造されていた。ベースとなったクラップ級に比べ船体が延長され機動兵器の運用能力の向上が図られている他、連装2基のみであった主砲も艦橋前面に1基増設され火力も向上している。最大の変更点は推進器をミノフスキードライブに置き換えている事で、これにより推力の大幅な向上に加え既存の推進剤スペースを貨物スペースや居住区画に置き換え長期航海にも対応している。


それと名前だけ出てきた可哀想な子、べ、別に忘れてた訳じゃ無いんだから!

試製96式
95式“雷”は高性能ではあったが内装火器を充実させた事により機体そのものが複雑化し生産性、整備性に問題を抱えていた。カンパニーはこれらを莫大な生産能力で強引に解決していたが各国への供与には課題の多い機体となってしまっていた。特に先に売り出されていた野分と駆動方式が異なる点は看過できない問題であると認識していたブリッジス女史はこれらの問題を改善した機体として試製96式を開発した。
本機は雷と異なり機体構造を極力簡素化する事を目指したため内蔵火器を一切装備していない。また他機種では標準的なブレードエッジ装甲なども省略されており、極端に近接兵装の少ない機体となっている。これは本機がML機関搭載機であり、接近した敵に対してラザフォードフィールドによる迎撃が想定されていたからである。加えて莫大な電力供給が担保された同機は椀部のコネクターを中継し接続型のメガ粒子砲を運用可能としたため徹底した砲戦でイニシアチブを取る事が期待されていた。
しかしBETA側の改造種が現れたことでカンパニーは更に一歩踏み込んだ改革が戦術機に必要であると考えた。特に注目されたのが本機機体サイズだった。同機は設計裕度を大きくとっていたために大型化しており、全高が20mに達している。この点に対し、単一機体に使用する部材の総量を減らす事で最終的な生産台数を確保したいと考えたカンパニーは徹底した小型化を断行。結果従来機より更に一回り小型な試製97式が完成している。余談であるが小型化によって資源の消費こそ抑えられたがパーツ毎に見た場合小型化の弊害で加工コストが跳ね上がっており、各国へ供与可能なML機関搭載機は未だ完成していない。


試製00式
本来2000年に配備を目標として設計されていた第二期戦術機。BETAの改造種が現れたことで繰り上げ採用が決定し、最終的に試製97式の名前が与えられ、少数ながら量産配備されている。同機は戦術機という概念を一新させた野分・雷と同じく第二期と呼称されているが、その一方でML機関の採用や小型化、他惑星での運用を前提とした設計であるという観点から、第三期戦術機と呼称する専門家も少なくない。機体性能こそ後に正式採用された97式を凌駕しているが、それはパイロットへの配慮を一切していないためであり、本機の限界性能を引き出すには文字通り人間を辞める(あるいは元から人外である)必要がある。武装面は97式と全て共通であるが、外部増設ブースター(通称VOB)の接続が可能であることや、フレームにフルサイコフレームを採用しているためファンネルなどのサイコミュ兵器も運用出来るなどの差異がある。現在長谷川専用機を含め27機が建造されており、そのほぼ全てがアリス率いるシスターズとそのダミー達によって運用されている。
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