チート転生テンプレもの   作:Reppu

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「やっと、解放される」

 

シートに深く腰掛け、俺は溜息と共にネクタイを緩めて正装を脱ぎ捨てる。これ永遠に終わらないんじゃね?と思わせてくれる出発式典が漸く終わり機上の人となった俺は、早速余所向けの仮面を外し、気楽な恰好に着替えた。

 

「お疲れ様です、長谷川司令。…あの、なんでパイロットスーツなんですか?」

 

副官としてブリッジに詰めていた佐伯大佐がおかしな物を見る目で聞いてくる。いやあ、大佐なんて階級の人を顎で使う日が来るとか、人生解らないものですね。まあ人類救うとかもっと予想してませんでしたけども。

 

「式典は終わりましたからね。あんな堅苦しい恰好は趣味じゃないんですよ、実用性って大事だと思いません?」

 

その点このパイロットスーツはいいぞ、機能性の塊と言っても過言では無い。温度調整機能に各種循環装置、緊急時用のソーラーパネルによる充電まで出来る優れもの。防弾防刃耐衝撃にパワーアシストまで付いてます。まあそのせいでお値段は第二世代戦術機と同じくらいするわけだが。だがそう言う意味では身分に見合った高い服を着用していると言っても良いのではないだろうか?

 

「本当に権威とかそういうのに喧嘩売るのが好きですよね、社長」

 

「そんなことありませんよ」

 

ちゃんと敬意も持っているとも、彼等がちゃんと人類に役立っている内はな。ボトルに入ったスポーツドリンクをこちらに放り投げながら、そんな事を口にする上総君にそう言い返す。ルクレツィア達は最近俺のそばを離れて各種業務の統括に集中していて、その代わりと言ってはなんだが正式にカンパニーに籍を移した旧帝国軍の皆さんや国連の方々が補佐として周りに控えてくれている。因みにあの取調室の常連だった金髪ちゃんも居たりする。ぶっちゃけ地球統一政府が米国主導で結成されつつあったからそっちに残っていた方が安全安心の出世コースだと思ったのだが、本人曰くそんなに良い職場環境じゃないらしい。

 

「組織の意思決定者達の意見が統一されているだけでもうこっちが遙かに上。隣の同僚が信じられる時点で比べるべくもない」

 

とは入社当日の彼女の言葉である。同期の皆さんが深く頷いていたのが印象的だった。まあウチは意思決定してんの俺だけだからな、統一もクソもないワンマン企業である。普通に組織としてはこっちの方が数段ヤバイ気がするんですが良いんですかね?

 

「それで社長。当面はニューエデンとインダストリアル1から月の制圧とのことですが」

 

ああ、そんなこと言いましたね。汎用型のスペースコロニーであるヘイヴン1がラグランジュ3に出来た時点で、国連に解放していたニューエデンの方からは段階的に退去頂いていた。そして先日目出度くヘイヴン2と3が稼働したことで、ニューエデンは完全に我が社の施設として復帰した次第である。それを橋頭堡として、我が社主導で月のハイヴ攻略は行われる予定である。因みに当初想定していた国連からの参加表明はなかった。地球ハイヴの権利を丸投げしたため、その利益調整に手間取っているのもあるが、何より宇宙での交戦経験を持つ合衆国が及び腰だからだ。まあ月面は地球の比じゃないくらい過酷な環境だからな。人口も減りに減った今の人類では、貴重な人的資源をそんな場所で消耗する訳にはいかないというのが本音だろう。後、ウチがハイヴの利権に拘りを見せなかったから、月のハイヴも簡単に買い取れると踏んでいるんだと思う。くっくっく、全くもって甘いとしか言い様が無いな人類!

 

「うん、その予定。大体1週間くらいかな?」

 

「…はい?」

 

地球経済を崩壊させないためにある程度今までは自重していたが、宇宙ならば何も問題ない。これから進出してくる彼等のために、存分に地均しをしておいてやろうじゃないか。

 

「暁改の生産も順調だし、拡張兵装の生産も開始したからね。順調に行けばそのくらいで終わると思うよ」

 

何せ月面は植生の復旧とか一切関係ないからな。軌道上から存分に焼き払ってやろうじゃあないか。

 

「拡張兵装…。あの巫山戯たの、本気で造ってたんですか?」

 

引きつった表情で佐伯大佐がそんな事を言ってくる。

 

「と言いますか量産してますけど?」

 

拡張兵装は戦術機に宇宙戦艦並の戦闘能力を付与出来たら素敵じゃない?という正気を疑われるコンセプトで設計された装備だ。当然誰も理解を示してくれなかったので、俺とルクレツィアで設計から試験まで全て行った贅沢な一品である。元ネタは当然某デンドロなアレである。設計っていうのは自由じゃなきゃ駄目なんだ、コストとか、後コストとか、それからコストなんかに縛られず、孤独で、それでいて自由で…。なんて好き放題やった結果、真面目に造ったら宇宙戦艦よりお高い追加装備になってしまった。出来上がった図面を見た設計部三人娘の皆さんから、

 

「ああ、社長もストレス溜まってたんですね」

 

って慈愛の目で見られたりもしたが、気にはしていない。装備している主砲だけで初期型のコロニーレーザーと同等の火力を有しているから地表のBETA共をそれは効率よく焼き払ってくれる事だろう。操縦にニュータイプ的な適性か、機械的にその能力を取得する必要があるから現状動かせるのが俺とシスターズくらいなものという問題はあるが、月攻略の暁にはシスターズそのものを規模拡大する予定である。何せ最終目標は創造主とかいう自己中宇宙人とのOHANASIだからな。武器がどれだけあっても困ることはない。

 

「連中をとっとと太陽系から追い出さないとね」

 

笑いながら俺はポケットの中にある神器を取り出し電源を入れる。チープな電子音を響かせて神器の画面に光が点った。うん、まだ動くな。

 

「社長?」

 

それを見て不思議そうな顔をする上総君に俺は笑いながら口を開いた。

 

「ちょっと確認をね」

 

暁遥なり。人類の夜はまだまだ明けそうにない。




終わり。
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