チート転生テンプレもの   作:Reppu

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「必殺っ!ファントムキック!」

 

巨大な一つ目小僧を横薙ぎに数体纏めて蹴り飛ばす。軽量化されたとは言え総重量50tを超える鉄の塊に時速500kmで濃厚な接触を果たされたそれらは、見事に体の一部を削り取られながらもんどり打って倒れる。だがこのチート野郎容赦せん。

 

「からのナッコォ!」

 

健気にこちらを見つめてくる巨大な瞳に容赦なく拳をたたき込む。想定よりも柔らかかった照射粘膜をあっさりと拳が突き破り内部組織を破壊する。そのままアッパーカットの要領で拳をねじり上げ破壊面積を広げたところで殴りつけた個体は活動を停止した。そのタイミングを待ちかねたように複数の光線級が照射を開始するが、俺は笑いながら機体を操作する。

 

「そいつは悪手じゃろ」

 

右足で地面を蹴りつけ一気に距離を詰める。照射している個体は3体、一匹目は着地と同時に左足で踏み潰す。二匹目はそのまま左足を軸に足払いをかけ右足を叩き付けた。最後は右手で捕まえるとそのままさっさと握りつぶす。時間が惜しい、巻きでいこう。

 

「流石に討ち漏らしでも結構な数だな」

 

飛びかかってきた戦車級を空中にいるうちに殴り飛ばしながら思わずそうぼやいてしまった。光線級吶喊。対BETA戦闘における人類側最強の矛である砲兵、その攻撃を阻む光線属種の排除を目的とした戦術だ。その内容は極めて単純にして明快。BETA群の最後方に配置され砲弾の迎撃を行う光線級に対して戦術機で突撃、これを排除するというものだ。成功すれば残るBETAを砲撃で叩き放題となるので圧倒的有利を作り出せる為に、戦術機の用兵としてかなり認知度が高い戦術だ。しかしBETAの集団を飛び越えて最後方にたどり着くだけでも相応に骨の折れる作業であり、更にそこから照射を受けたらまず間違いなく死ぬ相手の群れに飛び込むというのだから、衛士に求められる才覚はただ腕が良いだけでは済まされない。そんな金銭に換算することすら馬鹿らしい人材を捨て駒にして成り立つのがこの戦術である。

 

「流石旅団規模。光線級だけでもとんでもない数だ」

 

俺もたどり着くまでに殆どの弾薬を消耗してしまい、こうして残敵掃討に格闘戦なんかをやる羽目になっている。

 

「近接兵装はオミットしたけどブレードベーンくらいは設けるべきだったな」

 

忍びより足にかじりついた戦車級を踵落としの要領で振り落とし、そのまま素早く踏みつけて染みにする。ついでに左腕を懸命にかじっていたヤツも握りつぶしつつ引き剥がした。

俺が落ち着いていられるのは非常に単純な理屈で、この機体には光線級と戦車級が脅威では無いからだ。ガンダム世界で実用化されている対ビームコーティング技術の基礎である臨界半透膜技術のおかげで重光線級の照射1回分を耐えきれる対レーザー性能と戦艦の装甲すら上回る硬度と靱性を誇る超硬スチール製の装甲のおかげで戦車級に囓られても精々歯形が付く程度なのだ。だから注意しなければならないBETAを重光線級のみに絞れるので、戦闘の難易度が通常の光線級吶喊に比べ格段に下がるのだ。

 

「これで最後」

 

BETAに逃げるという行動パターンは存在しない。最後の一匹になっても懸命に照射を行おうとしていた光線級を踏み潰し突撃を成功させた頃、通信が回復してきた。どうやら途中から迎撃能力が極端に下がったために、アンチレーザー弾を撃たずに通常砲弾だけを撃ち込んでいたようだ。

 

『ヘッド―ターより、せん―告ぐ。効力射―りょう。全機、残敵掃討に移れ!』

 

『こちらコマンドポスト、トイボックス1聞こえるか!?応答せよ!繰り返す、こちらコマンドポスト!トイボックス1応答せよ!』

 

ほんの数分だというのに懐かしいオペ子さんの声を聞き、俺は通信を繋げる。

 

「こちらトイボックス1、光線級吶喊に成功。しかし弾薬を全て射耗しました。補給のため後退の許可を」

 

俺がそう告げるとまた騒がしい音が響き、お話相手がオペ子さんから佐伯中佐へと代わった。

 

『こちらコマンドポスト、とっとと帰ってこい大馬鹿者!』

 

「トイボックス1了解。即時後退します」

 

俺は笑うのを堪えながらそう返事をし機体を空へと進める。今はまだほんの一時。だが見ていろよBETA共、この空もすぐに取り返してやるからな。

 

 

 

 

帰還したF-4JXを見て、佐伯中佐が最初に感じたのは恐怖だった。彼女は光線級吶喊後に彼の発した言葉を誤解していたのだ。

 

(全弾射耗、か)

 

F-4JXは極めて高い火力と継続射撃能力を持つ機体だ。故に彼女は自身に理解出来る範囲に機体性能を落として考えていた、壮絶な砲撃戦で辛くも光線級を討ち滅ぼしたのだと。だが、彼女達の前に現れた機体の姿はどうか。

 

『申し訳ありません、運動性を確保するために追加装備を排除してしまいまして』

 

見当違いの謝罪をしてくる相手に、本当は解っていてこちらをからかっているのではないかと佐伯中佐は眉を寄せた。全身を文字通り隙間無くBETAの体液まみれにしたその姿は、間違いなく射撃戦だけで終えた姿では無い。その想像を裏付けるように戦闘ログを確認すれば、F-4JXは光線級の集団に突入する前にほぼ全ての弾薬を使い切っており、光線級に対して使用したのは400ミリ榴弾4発に120ミリAPHE弾12発という、使ったと言うのもおこがましい回数だった。確かにこれらの威力は絶大だった。400ミリによる攻撃で光線級の60%が撃破されているし、120ミリは確実に重光線級を1体ずつ仕留めている。それは良い。問題はその後だ。

 

(この時点で文字通り全火器を射耗。つまりこの機体は残った40%の光線級と10体以上いた重光線級を殲滅したのだ。それも丸腰で)

 

それがどのようにして成されたのかは、その姿が何よりも雄弁に語っている。この異常さは戦術機に少しでも関わったことのあるものならば誰でも解るだろう。千に届こうとするBETAを相手に文字通りの殴り合いを演じて、あまつさえ無傷で勝利して帰還するなどという存在は、既存の戦術機と同列に語ることが出来るものではない。

 

「武器弾薬はチェイサーが使っている物の予備がある。推進剤も問題ない。現在残敵掃討を行っているが、もうすぐ追撃戦に移行するだろう。HQからの要請次第ではあるが再出撃の可能性がある。対応出来るか?」

 

内心の恐怖を悟られぬよう努めて冷静にそう彼女が告げると、通信相手である男は気負い無く答えた。

 

『はい、機体に異常はありません。補給頂ければすぐに戦線へ復帰可能です』

 

「解った。想定外の事態は発生したが、先ほどの戦闘ログを確認する限り予定していたテスト項目は消化していると考える。以降はHQからの要請があるまで待機とする」

 

そう言い通信を切った途端、佐伯中佐の着けているヘッドセットに秘匿回線の呼び出しが掛る。予想通りの人間からの通信に彼女は胃が痛くなるのをはっきりと自覚したが、表面上は平静を装って対応する。

 

「どうしましたか。ホアン大佐」

 

『どうしたとはつれないじゃないか。英雄の心配くらいしても罰は当たらないだろう?』

 

「英雄、ですか」

 

歯切れ悪く返す佐伯中佐に対して大仰に溜息を吐きながらホアン大佐は続ける。

 

『一応空気を読んで砲兵の増援による形勢逆転とはしているがね。少なくともHQに詰めていた連中は知っているぞ。この結果はお前さん達が持ち込んだたった1機の戦術機によって起こされたという事をな。なあ、サエキ。私が腹芸は好きじゃないことくらいお前も知っているだろう?一体何なんだ、あれは?』

 

「あれが何か、ですか」

 

そう口にしたきり、佐伯中佐は言い淀んでしまう。ホアン大佐はかけがえのない戦友である。嘘は吐きたくないし、知りうる限りの情報は共有化したいとも思う。だが今の佐伯中佐は、それが出来るだけの情報も権限も持ち合わせて居なかった。

 

「申し訳ありませんホアン大佐。我々も解らないのです。あれについては何も知らされていないのです」

 

その言葉にホアン大佐は再び溜息を吐いた。そこに含まれる諦めの感情を佐伯中佐は感じ取り、申し訳無さから自然と拳を握り絞めた。

 

『知らないか。お前さんがそう言うならば、そうなんだろうな。じゃあ別の質問だ。インペリアルアーミーはあれを量産するつもりなのか?』

 

「そのように伺っています。今回はその実績作りだと」

 

即答する佐伯中佐の耳をホアン大佐の笑い声が打つ。

 

『そいつは僥倖。今でも頼りになるお前さん達がもっと強くなるなら大歓迎だ。まあ、贅沢を言えばこっちにも少しばかり融通して貰いたいところだがね』

 

「申し訳ありません、小官ではお答えできかねます」

 

素直に答える佐伯中佐の言葉に、ホアン大佐は喉を鳴らして笑う。

 

『だろうね。まあいいさ。久しぶりの大勝ちだ、今日の祝賀会には参加してくれるんだろう?英雄に一杯奢るくらいはさせてくれ』

 

その一言を最後に通信が切れる。佐伯中佐は大きく息を吐き出し、自身の思考を切り替えることに努めた。得体の知れない連中である。目的も、行動原理も、そして持ちうる技術さえ不明な彼らの異質さは、BETAにも勝るとも劣らないだろう。それでも言葉が通じるだけで遥かにマシと言えるし、BETAに対する姿勢は人類にとって好ましいものだ。ならば利用できる限りは利用するべきだろう。

えり好みが出来るほど、人類に余裕は無いのだから。




大体書きたいことは書き終わりましたのでここから主人公はドンドンアホになります。
内容も薄っぺらくなっていきますのでご了承下さい。
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