アイズの性格改変のメインのお話です。
頑張って削りましたが前の二話より少し長いです。
ポンポン時間が飛び、概ね日記調です。
アイズが目を覚ましたとき、周囲には何もなかった。誰もいなかった。
見たことのない景色。家も、父も、母も、見慣れた木々も、おもちゃも、いつもでも傍にあったものが一つもない。
ただ泣き喚き父と母を求めるも今日に限って二人は来てくれなかった。
再び目を覚ましたのは真夜中で、アイズは漸く自身の足で二人を探し始める。
凍えるような寒さも、涙混じりの泥も、乾燥のあまり痛む目、鼻、喉も気にならず、焦燥じみた大きな恐怖に囚われ大声で父母を呼び、何もない辺りをギョロギョロと見まわし、声が枯れても声を張り血を吐きながら歩き続けた。
その果てに、見慣れた大海を見つける。
父や母に抱かれて、木々を抜けた先に見た穏やかな海と、三人で作った砂の英雄が居た。
ボンヤリと背後を、自身が歩いてきた大地を振り返り、もう一度海と、砂の、動かない英雄を見た。
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金髪金眼の少女が窓からさす朝日に目を覚ました。
「ユメ・・・・・・」
人間味を感じさせない無表情に平坦な声で呟き、ゆっくりと音を立てずベッドから出る。
と同時。
「どこ行く気だ? アイズ」
小さなこの部屋のどこにも居なかった男が、音もなく目の前に立っていた。
そのことに驚きもせず、まるで男が見えていないかのようにアイズは扉へ向かう。
「トイレ」
と、敵意に満ちた声で返しアイズは部屋を出て行った。
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アイズが男の家に軟禁されて半年ほどが経過した。
その間、男は毎日同じことを聞く。
――何があったのか、覚えてることを全て、詳細に話せ。
半年もあればアイズもいくつか学び、男に敵意や嫌悪を向けたところで無意味だからと素直に毎日、同じ答えを繰り返した。
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アイズが軟禁されて十ヵ月が経過したころ、遂にアイズがキレた。
いつも通り、男と向かい合わせで食事をしていたアイズがうっかりといった具合に椅子の下にスプーンを落とす。
これまでも何度か同じことがあったし、そのときと同様にスプーンを無視してアイズは食事を続ける。
そしてこれまで同様、男は何も言うことなくアイズの椅子の下へ手を伸ばしスプーンを取り。
「思い切りが良いというか、そんなにアッサリ殺そうとするんかい・・・・・・」
子供の細腕とはいえ全力で首筋に振り下ろされたナイフがへし折れ、スプーンの真横に落ちた。
アイズは信じがたいその光景に、折れたナイフを握りしめ呆然と固まった。
「殺そうとしたんだから、殺されたって文句はないだろ?」
つい反射的に「待って」と言いかけたアイズは意地で口を
容赦なく顔面を殴り飛ばされ意識を失った。
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前歯一本、奥歯二本を失くしたアイズが奇麗な顔で不貞腐れ、目の前で動かず、また動きを封じてくる男と睨み合う。
それが数時間続いた頃、数時間ぶりに男が同じ質問をした。
「俺を殺してどうしたかった?」
「・・・・・・オラリオにいく」
「ンー? じゃオラリオに行ったとして何ができる?」
「つよく、なる」
黒々とした覚悟を口にしたアイズを男は嗤った。
「ハッハッハッハッハ! 無理無理! お前じゃ強くなれないよ。あまりにも弱すぎる! ハッハッハ!」
――やっぱり、また笑った。またバカにした。お父さんとお母さんの友達だと言いながら、仇を討とうともしない弱虫のくせに。
しかし、何を思おうとも言い返すことはできない。ついさっき何もできずに殺されかけ、自分の弱さを理解させられたばかりだから。
「ッ・・・・・・!」
だからただ、零れそうになる涙を堪え必死に男を睨むことしかできない。
そして不意に沸いた大きな怒りが。
「つよくなるッ!」
口をついて吐き出されたとき、アイズは驚いた。
自分が吼えたことにも、男が笑うのを止め、その目がこちらを覗き込んでいることにも。
目の前に座りいつもの様に顔を顰める男が、とても大きく恐ろしく思えた。
それでもアイズは睨みつけることを止めず、ジリジリと首筋が焼けるような錯覚すら覚えるも、さらに苛烈に睨みつけた。
「俺はお前らを見ていた。アルバートとアリアがお前の下から消えたあの時も、お前が一人で泣き喚いている時も、海まで歩いて気を失った時も」
不意に口を開いた男の話はあまりにも衝撃的で、しかし、アイズは理解できない焦りが湧いて混乱していた。
なぜか男の話に恐怖を感じ、自分で自分が分からず衝動的に喚き散らしたくなる。
まるで自分が二人いるかのような気味の悪さに逃げ出したくなり、暴れそうになる体を、しかし怒りが許さない。
睨み合いを続けたまま、怒りや吐き気、理解不能の恐怖や悲しみ等、様々な感情を制して、堪え続ける。
「だから俺に嘘は通じない。お前自身をどれだけ騙そうとも俺は騙されない。真実を答えろ。そうすればオラリオに連れて行ってやる」
――何があったのか、覚えてることを全て、詳細に話せ。
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アイズがキレたあの日、結局アイズはいつもと同じ答えを返した。
不安げに、確かめるように、いつも通りの話をした。
翌日からもひと月以上同じように答え続けたが、日に日に言葉は減り、拙くなり、声が詰まり、ふと「家は壊れてた」等話が変わることもあった。
そして遂にいつもの問いに何も返せなくなったアイズは部屋に逃げ込み扉を塞ぎ閉じこもる。
そのまま一歩も部屋を出ず、一言も喋ることなく半年が経過した。
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唯一の扉が開かぬようベッドで押さえつけ、扉を背に座り込んでいても気づけば目の前に男が現れ睨みつけてくる。
――私の弱さを責めるように、面倒くさそうに今日も聞いてくる。
「何があったのか、覚えてることを全て、詳細に話せ」
その言葉を聞くたびにアイズの胸の奥、その中心が凍り付いたように苦しくなり、何も考えられなくなる。
今日もいつも通り、そのまましばらく耐えていると男は手に持った着替えとお湯を置いて消え去った。
着替えと食事を終わらせないと、いつまでも男は消えない。
だからアイズは汚れた服を脱ぎ、お湯に沈んだ手拭いで体を拭いて新しい服を着た。
服を着ている最中男が現れ、手に持った食事を置いてお湯と汚れた服を持ってまた消える。
その後食事を終えさえすれば、もう一度現れた男が食器とともに消え去り明日までは現れない。気持ちを少し落ち着ける。
そんな日々が続いた。
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もう四日間、
――私を置いて・・・・・・行かないで!
むだ。何を言っても、お父さんとお母さんは行ってしまう。
分かっているのに、悲しくて寂しくて、夢の中の私は二人に手を伸ばす。
けど――
――ふと、男が居ることに気付いた。今日もいつも通り睨みつけてくる。
昨日までは何も感じなかった。だから無視できていたのに、今日はなぜかムシャクシャしてつい睨み返した。
それが良くなかったのか。
肩をつかまれて、すぐ目の前に男が居ることに気付いた。
驚いて離れようとして、今いる場所が・・・・・・・・・・・・
「やっぱりお前、ここで起きた事もう思い出してんだろ?」
「・・・・・・ぅ・・・・・・ン・・・・・・」
私こんな声だっけ・・・・・・? ちがう・・・・・・?
私の声、変・・・・・・。
弱そう・・・・・・怖がってるみたい・・・・・・喋ったら変だって、弱いって知られる?
でも答えないと・・・・・・
「落ち着け、ゆっくりでも少しずつでも良いから、全部話せ」
「――・・・・・・あの日、の――」
一年以上前から、お父さんは体調を悪くしてた。
最初は何日か動けなくても、すぐに元気になって普通に動けてた。
でもどんどん動けない時間が増えて、元気な時間がへっていった。
一か月以上寝込んで、その間は一人で歩くこともできなくて、たまに、何時間か自分で歩けるようになっても、またすぐに寝たきりになる。
そんなのが半年くらい続いて、ある日突然、お父さんが寝てる部屋に入っちゃダメって言われた。
お母さんが、初めて見た怖い顔で、絶対にダメだからって、約束した。
お父さんに会えなくなって三ヵ月が過ぎたころ、その日はお母さんが一人で外に行く日だった。
たまにオラリオに行って、色々な薬を買ってくる日。
私はその日も寂しかったけど、約束を破るつもりはなかった。
これまでもずっと守ってきたから、お父さんに会いたくても良いよって言われるまで我慢するつもりだった。
けどその日、お父さんの部屋から初めて聞いた変な音がして、どんなに大声でお父さんを呼んでも返事がなくて。
お父さんが心配で怖くて、静かにお父さんの部屋をのぞいた。
変な音はお父さんのベッドの上で、黒いかたまりが息をするみたいに動くたびに鳴ってた。
叫びそうになったけど声を抑えて、お父さんを扉の隙間から探した。
けど、お父さんの白い髪の毛はどこにもなくて、そのかわりにまっ黒なかたまりが苦しそうにベッドの上で寝てた。
――「お父さん」
泣くのは我慢したけど、まっ黒いのに声をかけていた。
けど、お父さんも、そのまっ黒いのも返事をしてくれなくて、我慢できなくなったから自分のベッドに飛び込んで声を出さないように泣いた。
そのまま眠って、起きたときはお母さんが帰ってきてた。
お父さんの部屋から苦しそうな声は聞こえなくなってたし、部屋から出てきたお母さんもいつも通りだったから、私もいつも通りにした。
その日からお父さんの部屋は何の音もしなくなった。
それから二ヵ月くらいして、あの日になった。
あの日、家が突然揺れて崩れて、黒い竜が見えて大きな鳴き声がして体がしびれて、お母さんが目の前で黒い竜と向かい合ってた。
黒い竜の周りで強い風がうずまいてて、私の周りには暖かい風が吹いてた。
さっきまであった崩れた家とか、少し離れたところの林とか、ずっと遠くの森とか、全部消えてなくなってたし、それをやった黒い竜が私を見てたけど。
風が暖かくて、落ち着いて、大丈夫なはずないのに、大丈夫だと思って、少しだけ私を見たお母さんの顔が悲しくて、私は眠ってた。
だから、お父さんは殺されたんじゃなかった。
お母さんは分からないけど、たぶんもう、いない。
そのあとのことは、まえに話した通り。
「――うん、事実だな。いつ思い出した?」
「四日・・・・・・まえ?」
「ほ~。それでダンマリ決め込んだってことは、オラリオはもういいのか?」
「・・・・・・もう、いい」
「へぇ?」
私はお父さんのこともお母さんのこともよく知らなかったし、教えてもらえなかったし、一緒に居てもくれなかった。
だから、もういい。
黒いr・・・・・・お父さんがお母さんを殺したとしても、お母さんは仇を討ってほしいって思わないだろうから。
「怖がるなよ、考えすぎだ。お前はあんなにも愛されていただろう?」
「・・・・・・」
「アルバートはともかく、最後までお前を守ったアリアを見たんだろう。報われねえよ、父親相手だから仇討ちはしないだなんて、お前らしくもない。邪魔だからって俺にナイフ突き立てた威勢の良さはどうした?」
「まもってなんて、いってない」
「話をずらすなよ。お前は、アルバートを殺してアリアの仇を討とうと一回くらいは考えただろう?」
「・・・・・・k」
「けどお前は、分からなかった。それでアルバートのこともアリアのことも大して知らないからって、怖くなっt」
「ッ怖くない! 私は! 復讐より! お母さんが守ってくれた命を、大事に、しt」
「確かに、そういう悩みだと言われれば、そうなのかもしれないと思える話だ。けどその悩みは胡散臭い。さっきは勝手な考えを語ったがお前の心はお前にしか分からない。俺が確信を持つにはお前自身から教えてもらうほか無いが、今お前から聞いた本音は嘘くさい。なにより
「っおびえてない・・・・・・」
「まあそれも含めてお前の本心は分からないから、良いよ。オラリオに行かないならそれでも良いし、別の場所に行きたけりゃ連れて行ってやる。どこにも行きたくなければ一生俺の家に住んだって良い。食事も服も、生活の面倒はなんでもみてやるよ、アルバートとアリアに頼まれたから。ただ最後の最後にひとつ、俺が言っても信じないだろうけど、俺は断言できるぞ。アルバートもアリアもお前を心底愛していたし、お前と一緒に居たいと願っていた。それを信じず自分から逃げれば、アイツ等の愛情を踏み
&&&
翌年の末、『仮面』の男と金髪金眼の少女がオラリオを訪れた。
次話で漸くオラリオ入りします。
クドいので説明はないんですが次話冒頭の時点でアイズの復讐心は完全に消えてます。無です。
なのでこの作品のアイズは若干のんびり(?)余裕のある(?)雰囲気です。
尚、オラリオ入りする際の年齢は十歳ちょっと前の九歳です。多分あってるはずです。