この世は謎に満ちている。
答えを知りたいという思いは、人が誰しも抱くであろう欲求のひとつだ。
そんな謎と向きあい、己の知力で答えを追い求める者たちが愛してやまない競技。
それが『クイズ』だ。
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「何なんだ、こいつら!?」
昼下がりの小さなレストラン。
本来穏やかな時間を過ごすはずの憩いの場は、突如としてパニックとなっていた。
客や従業員たちに襲いかかる無数の軍勢。
それは、まるでガラスのような煌めきを放つ結晶の粒が集まってできた人形。
大人の人間と同じくらいの大きさのその人形たちは、ゾンビのようにフラフラと蠢いていた。
「こ、来ないで!!」
厨房から騒ぎを聞きつけて様子を見に来た、ポニーテールの女性料理人が叫ぶ。
彼女のそばへと歩み寄るのは、周りの人形たちとはまた違った姿の異形。
頭部、胸部、両肩……
身体中にビスやコードで魚の骨が取り付けられたような不気味な意匠を持ち、青い色の肌をした怪人と形容すべき異形が、彼女へ迫る。
「教えろ、貴様の知っていることを!」
怪人は女性へと、その手を伸ばす。
女性が恐怖のあまり、目を瞑ったそのとき。
「救えよ世界、答えよ正解……」
そんな声が響いた。
女性も、怪人も、その声のほうへ視線を向ける。
「誰だ!」
怪人がそう叫ぶと、先ほどの声の主が、ゆっくりとその姿を現した。
頭にはオレンジ色のクエスチョンマーク、胸には「○」と「×」の文字。
さらに右半身に赤、左半身に青のクエスチョンマークが数多く描かれている。
「問題!」
そんなアバンギャルドなデザインの異形は、怪人を指差しながら問いかける。
「トドの詰まりの『トド』とは魚である。○か?✕か?」
怪人は、その問いを聞くや否や、ハハハと高笑いをする。
「なにを聞くかと思えば……答えはもちろん✕。トドは水辺に棲むが魚ではなく哺乳類だ!」
怪人がそう答えた瞬間、怪人と、その周囲の人形たちに雷が落ちる。
「ぐはぁ!?」
その一撃で人形たちは消し飛び、怪人も思わず地に膝をつく。
「答えは○。この場合のトドとは哺乳類のトドではなく、鯔という魚のことだ。鯔は出世魚。成長に伴って呼び名が変わる。トドはその呼び名のひとつだ……」
「貴様……なかなかの知識の持ち主だな……」
怪人がさっと手招きをすると、どこからともなく大量の人形たちが現れる。
「……ダストに用はないんだけどな」
アバンギャルドな異形は、やれやれといった様子ながらも、ダストと呼んだ人形たちと対峙する。
襲いかかるダストの軍勢。
しかし、その攻撃を全て難なくとかわし、カウンターぎみにパンチやキックを叩き込む。
そのひとつひとつの攻撃が電撃を放ち、ダストを一撃で粉砕していく。
「問題!クラゲを漢字で書くと『海の月』である。○か?✕か?」
ダストたちは、互いにキョロキョロと見合って首を傾げる。
「答えは○だ!」
ダストたちに電撃が走り、全てが爆散していく。
「……逃したか」
アバンギャルドな異形は辺りを見渡し、そう呟く。
「あ、貴方は……?」
一部始終を目撃した女性は戸惑いながらも問いかける。
すると、アバンギャルドな異形は装甲が剥がれ落ちるように青年へと姿を変える。
「堂安主水……ただのクイズプレイヤーだ」
青年は、女性へそう告げた。
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「まぁ、とりあえず落ち着いてコーヒーでも飲めよ。おやっさんのコーヒーは美味しいぞ?」
「あの、堂安主水っていうと、あの有名なクイズ王の……?」
「クイズ王って言い方は好きじゃない。俺はただのクイズ好きだ」
喫茶店に場所を移した二人。
他に客はいなく、カウンター席に横並びになって話をしている。
「それで、そっちの名前は?」
「わたしは、碓井歩美。あのレストランで働いてます」
「で、クエスタライザーに襲われる心当たりはある?」
「……クエスタ、ライザー?」
初めて聞く単語に困惑する歩美。
「そうだな。無関係じゃないから一応説明するか」
そう言うと、主水は懐から取り出したものを歩美へ見せる。
それは『?(クエスチョンマーク)』の形をした宝石のように見えた。
「クエスチョンクリスタル、略してクエスタル。いわば『疑問の結晶』だ。そして、これは人を怪物へと変える力を持っている」
「怪物……って、さっきの青い奴?」
「あぁ、あれは『解人クリスタライザー』……疑問の結晶に囚われ、答えを求める『解答人間』つまり『解人』。因みに、周りにいたキラキラしたゾンビみたいな奴らは零れ落ちた結晶の欠片。『クエスタルダスト』ってとこかな」
主水の話をどこか信じられないといった様子で聞く歩美。
しかし、先ほどの光景を思い出し、紛れもない現実だと再認識する。
「それで、その解人がなんでレストランを襲ったんですか?」
「その答えは俺のほうが聞きたい」
主水は歩美をまっすぐと見つめる。
「奴らは『謎』に囚われ、ただひたすらにその『答え』を求める。そして、答えを知る者からそれを奪い取ろうとする」
そう言って、主水は歩美を指差す。
「つまり、君はあの解人が求める答えを知っているというわけだ」
「……分かったような、分からないような?」
歩美はなんとなく分かったといった感じで頷く。
「とりあえず、君はまた襲われる可能性が高い。何か気づいたら俺に連絡してくれ」
そう言って、主水は歩美に連絡先を渡すと喫茶店から出ていった。
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「それで、答えを奪えずに逃げ帰ってきたと?」
青い解人はとある研究室の中、白衣を着た3人の研究者に囲まれていた。
そのうちのひとりであるメガネをした男性が、高圧的に詰め寄る。
「まさかあんな奴に邪魔されると思ってなかったんだ。次は確実に奪う」
「お願いしますよ、貴方の能力には期待しています」
メガネをかけた高圧的な研究者にそう言われ、青い解人は部屋を出ていった。
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「これは、しばらく営業再開できそうにないなぁ……」
歩美は荒れ果てたレストランを改めて目にし、そう愚痴をこぼした。
やっと見つけた理想の職場。
常連客にも囲まれ、充実した日々を送っていた。
その平穏な日常は一瞬で崩壊してしまった。
「なんでこんなことになっちゃったかなぁ……」
「それはお前が『答え』を知る者だからだ」
その声に、歩美は思わず振り向く。
「さっきの青い解人!?」
「今度こそ教えてもらうぞ、答えを!!」
青い解人が歩美へ飛びかかろうとした、そのとき。
「待ちな、解人」
レストランの入口から飛び込んできたのは、堂安主水。
跳び蹴りを解人へと喰らわせ、歩美から引き離すと、ふたりの間に割って入る。
「何者だ!?」
「……俺が誰かって?」
主水は首にかかった銀色に輝く『クエスチョンマーク』のペンダントを指で摘む。
ピコピコン!ピコピコン!ピコピコン!!
鳴り響く音に合わせ、主水の腰に赤と青の配色が目立つベルトが巻かれる。
そして、ベルトと似た色彩をした赤と青のクエスチョンマークを象った板をベルトへと差し込む。
「変身!」
『ファッション パッション クエスチョン!クイズ!!』
堂安主水の体が、赤と青の光に包まれる。
そして、その光の粒子が主水の体を変貌させる。
「貴様は!!」
青い解人は驚く。
頭にオレンジ色のクエスチョンマーク、胸に「○」と「×」の文字。
右半身に赤、左半身に青のクエスチョンマークが数多く描かれた戦士が、再びその姿を現した。
「救えよ世界、答えよ正解。問題!」
変身した主水は解人を指差す。
「俺の名前は何だ?……」
「何かと思えば、簡単だ。お前はクイズ王の堂安主水だろ!」
そう答えた解人の身体に電流が走る。
「アババババ!」
「……問題は途中だ。ただし、変身者『堂安主水』ではなく、変身後の姿の名を答えよ」
主水は解人へ、そう言い放つ。
「変身後の名前だと……?」
「あぁ、というわけで再出題だ。俺の名前は?」
「そんなの知るか!」
そう答えた途端、また解人の体に電流が走る。
「正解は『クイズ』……俺の名は『仮面ライダークイズ』!」
そう名乗りを上げた戦士『仮面ライダークイズ』は、青い解人を再び指差した。
「クイズ……ぐはっ!!」
度重なる電撃。
蓄積されたダメージにより、解人は立ち上がるのも儘ならず、膝をつく。
クイズはその様子を見ると、ベルトからクエスチョンマークの板を引き抜く。
次の瞬間、クイズが手にしたクエスチョンマーク(?)はエクスクラメーションマーク(!)に変化した。
そしてクイズは、再びそれをベルトに挿す。
『ファイナルクイズフラッシュ!!』
ベルトから鳴り響く電子音声。
「最終問題。お前は俺の攻撃に耐えられる。○か?✕か?」
そう言って跳び上がるクイズ。
空中に○と✕のパネルが投影される。
青い解人はまだ膝をついたまま、しかし両腕をクロスするように身構えた。
「○だ!」
そしてクイズが、投影された『✕』のパネルを跳び蹴りで突き破る。
その勢いのまま、解人の胴体を蹴り抜いた。
青い解人を取り囲むように○と✕のシンボルが回転し、電撃を浴びせ……
クイズが着地した瞬間、その背後で解人は爆散した。
「仮面ライダー……クイズ……」
歩美は、そう呟いた。
【次回予告】
主水「……この謎はまだ解けていないってことか」
歩美「お待たせしました。これが私の得意料理です!」
解人「さぁ今度こそ教えてもらうぞ!」
『第2問 解人が求める答えとは何か?』