皆が泥を見た。
囚人たちは泥を見続けていた。
このままなら皆泥の底で壊れていくようなところだった。
ある日、一人の囚人が腕を上げ人差し指を夜空ぬめる。
誰か一人、その指先を追ってそして夜空を見上げ・・・立ち上がった。
一人一人と星を見る人が増えていく。
壊れてもうどうしようもなかった泥の世界。
だが彼らはなんとかできるという事を知った。
故に歩もうと彼らは星を見上げた。

これは些細な配役違いで起きた。

壊れた世界が再び動き出す物語


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ドールズフロントライン 殺し屋と少女の挽歌

ザーザーと雨が降る

 

「くだらないな」

 

策略であった。

青年は殺し屋だった。

ロシアのアンダーグランドコミュニティではとびっきりの怪物である。

青年の身の上は、要はよくある存在だった。

貧困の出で両親をマフィアに殺され生きる為、復讐のために銃を握った。

両親を殺した相手にその場で、フォークを持って踊りかかり殺されかけ「腕がいい殺し屋になる」という理由で拾われ。

いつか自分を殺しに来いと同じ境遇の連中とそいつから地獄のような教練を受た。

初仕事はそんな同胞たちも地獄のような教練で次々と銃弾か刃か怪物の餌食になっていなくなり、自分だけが生き残り15歳になったばかりの頃だったか。

粗悪なトカレフ一本で雇われたマフィアの敵を撃つために銃弾よろしく使われたの初めてだったか。

その卓越した技巧と準濁な武装を使いこなしどんな仕事もこなして見せた彼でも今回の仕事は不味いと言えた。

仕事は鉄血重工の上役の暗殺だった。

探知機を抜けるために用意したバックに分解したバトルライフルやら拳銃を詰め込み。

ハッカーに侵入を楽に進めるように職員の管理サーバーに自分の擬装身分と生体情報を登録し、用意されたIDカードを使って。

仕事は単調に進んでいた。

だが予定の狙撃ポイントで引き金を引き上役の顔面を打ち抜いた瞬間。

工業都市とも呼べる鉄血の管理区画は地獄となったのである。

同時に連絡。

 

―そもそもその事態に放り込むため目に送り込んだのだからな。お前が死ねばその程度だったと諦めるが、生き抜いたのなら来るがいい、私はまとう―

 

ボスであり自分の師であり復讐相手からの連絡。

ルールは守られるべきものである。故に交互の憂いないようにボスは自分の復讐のために裏切ってくれたのだ。

 

ようやくここで彼はボスの真意を悟る。

以前よりまるで最高の死が欲しいからやってる節があった。

これもその一環なのだろう、自分という最高の自殺装置を使っての死力を尽くしたうえで殺されるという事に。

無論、彼は怒る。

俺はおまえの自殺装置でもなければ玩具でもないと。

それを造るために理不尽に殺された家族。選定のために同じ境遇に落とされた同胞たち。

すべてが自分を殺すためだけの自死の刃の鋳造だったのだと言われれば。

 

―ああ許せるはずがない―と思うのは道理であった。

 

青年は死に物狂いで脱出したのである。

用意したバトルライフル、探知機を避けるために用意したセラミック製の仕込み針やら単分子加工が施されたナイフという手持ちにしては心もとない物を十全に使い。

無くなればなぜか自分を最優先抹殺存在として襲い掛かってきた鉄血の人形やらなんやらから奪い取った武器を使って。

全てに決着をつけるために。

 

「ぐッふ・・・フゥー、フゥー」

 

 

最も左肩に一発、腹に二発、背中にスッ発銃弾を食らった。

血が抜け出ていく感覚が走る。

真正面の応急処置は何とかできるが曲芸師出ない自分には手の施しようがない

そんな時である。足を引きずりながら建物内に誰かが来る。

追走してきた人形の類かと。懐からベレッタm8000を引き抜き。

通路から出てきた存在も彼に気づき銃口を向ける。

 

「人間?」

「ああそうだよ、コフ」

 

現れたのは少女だった。

無論。見かけで判断することは青年はしなかった。

銃を持ちこの辺をうろついているという事は鉄血重工製の人形である可能性が高い。

 

「ともすれば速く殺したらどうだ?、ボスに言われているんだろう? 俺を殺せと」

 

最優先抹殺対象、最優先抹殺対象、最優先抹殺対象と何度も連中に謂れ銃口を向けられてきた。

なぜそうなったのかはわからない。

鉄血には喧嘩を吹っ掛けた覚えもなければ。

狙撃で殺した重役も大した相手ではない。

安全局の仕込みかあるはボスの仕込みか。

まぁどちらにせよ狙われているのは確かだった。

 

「馬鹿言わないでよ、この渾沌の中でただの人間なんか殺す暇があるもんですか」

「・・・?」

「私はこの騒動に鎮圧に駆り出された捨て駒よ」

「ああそういう」

 

青年は少女の言葉に納得した。

現場に居てパッと見た感じや通信を盗聴した結果。

安全局は何かを確保、あるいは破壊を目的として鉄血重工を強襲。

鉄血重工の誰かが奪われてはなる物かとナニカを起動させたらしい。

この乱痴気騒ぎ自体が安全局とナニカを保持したい鉄血重工のドンパチであることは理解できていたからだ。

その尻ぬぐいのため。あるいは露払いの為の戦力が彼女という人形なのだろう。

彼は裏社会では珍しくもないと思った。

第二世代型人形は疑似人格データを入れてその思考AIも多少高度なものを積んでいる。

故にタガが外れやすい。

ふとしたきっかけで人形に自我が芽生えるのだ。

もっとも大概そういうのは元から積んである論理ロックプログラムやら。

矛盾を処理しきれる哲学や矛盾を自分なりに納得できるように処理できるような特殊思考回路を積んでいないため。

大概が矛盾やら感情やらを処理しきれず自壊するか暴走するかだが。

まぁどうでもいい。彼女の瞳には理知的な光が宿っていた。

どうせ一人では応急処置もできないのだ。

いまは彼としても彼女に縋るほかなかった。

 

「なら取引しよう」

「取引?」

「ああ、疵の処置をしてくれ、そうすれば君を街まで連れて行けるし、もしかしたら乱痴気騒ぎを起こした連中のしっぽを掴めるかもしれん」

「どういうことなの?」

 

彼の突然の提案にいぶかしむ少女。

まぁそうだなと苦笑しつつ彼は続ける

 

「ヴォルサーノファミリーの凶手でね、俺は、その若頭に復讐するために生きてきたが・・・ばれてこの様だ。奴は言ったよ。俺を殺すためにこの事態に放り込んだとな」

「・・・証拠は」

「これだ・・・」

 

端末を懐から出して少女に地面を滑らせて手渡す。

銃口を向けつつ片膝を地面につけて端末を拾い上げ通話ログを探る

 

『そもそもその事態に放り込むため目に送り込んだのだからな。お前が死ねばその程度だったと諦めるが、生き抜い歌のなら来るがいい、私はまとう』

「確かなのね・・・」

「ああ、奴は政治家とも後ろ暗い取引がある・・・何かを知っているなら」

「・・・でも行かない、復讐で死にたくはないから」

「そうか・・・」

 

少女の言い分ももっともだと苦笑する。

復讐に生きて死ぬなんて不健全すぎるのは確かだよなぁと思うからだ。

 

「なら別の取引だ。」

「まだ何かあるの?」

「あるとも、俺が復讐に行けたのなら。俺が貯めた金をやる」

「はした金でしょ」

「この前確認したら。かなりの金額があった。復讐の準備金で使っても8割は残って一生遊んで暮らせるくらいの金がな。人形でこの先生きていくには金は必要になる違うか?」

「確認しても?」

「ああ、その端末から預金口座の確認アプリにアクセスできるようにしてある」

 

 

別の取引、即ち金である。

少女がこの先生きていくには金が必要だった。

青年の言う通りの金額があれば当面は遊んで暮らせる額が一気に手に入るのである

生き抜いていくには十分な額だ。

 

「ウッソ。本当にこんな金額」

「我ながらやり過ぎたと思うがね・・・、復讐の準備をしても8割近くは余る額だ」

「・・・わかったわ。取引に応じましょう」

 

預金を下ろすには本人の生体認証を銀行でしなければならない

本人が生きていることで意味のある闇金庫という奴である。

少女も納得し。銃口を下ろした。

 

「それで私は何をすればいいのかしら?」

「背中の銃弾を抜いて。止血剤を頼む」

「分かったわ」

 

 

 

 

それが青年「ダニール」と少女「UMP45」の出会いであった

 

 

 

それから一ヶ月が経過する。

UMP45はダニールと共に地下にもぐり、ダニール裏社会でのイロハを叩き込まれた。

色々なことがあったセクトの抹殺依頼。

歌姫の護衛や要人警護、海外に出ての暗殺仕事。

色々あった。本当に色々あったのだ。

そして時期が過ぎてここまで来てしまった。

 

 

 

雪が降る。

ダニールとUMP45を乗せた車が一台。

首都の城下町に建てられた一つの巨大なビルの前に停車する

 

「もう帰る場所なんてないって思っていた。どこに行ったところで私は私の個人として認識されないと思った。」

 

UMP45は運転席でそう告白した。

だが違っていった武器屋も人形点も情報屋も闇金庫も45を個人として認識し真摯に接してきた。

一か月彼と過ごし、彼と触れ合う中で帰る場所ができていた。

彼と彼らのいるこの闇社会。

糞みたいな場所だけれど自分が人として認識され代用の利かぬ世界。

自分の居場所と生の実感を感じ生きることが出来ていた。

クソッタレだけど自分を認めてくれる世界。

そして彼。

 

「本当に行くの? 死に行くようなものじゃない!!」

 

UMP45が叫ぶように問い、ふと個からベレッタM8000を引き抜いてダニールに突き付けた。

だがそれ以上にわかるという事は、無茶であるという事だった。

連中は巨大な組織だ。

その中にたった一人銃器を抱えて十重二重の陣を食い破って敵の首級を上げる

現実的ではない。いかに超人的この男とて。

UMP45が見れば運転席に座るダニールは何時もの不敵な笑みを消していた。

無表情と言うべきか・・・

人形だというのに拳銃を握る45の腕が震えてそれが尾染まらない。

CPによる補正を超えたナニカが45の腕をブレさせる

 

「ねぇ・・・答えてよ!!」

 

絶叫、だが男の声は

 

「行くよ」

 

穏やかな声だった。

まるで死ぬ寸前の老人が家族に看取られて安堵して死ぬときの最後のつぶやきが如くに。

何処までも穏やかっだった。

ナニカヲ悟ってしまったような、あるいは夢から覚めてしまった死者のような

UMP45は拳銃を下ろす・・・。

結果は変わらないと悟ってしまったから。

 

「約束の金だ」

 

準備と手間回しが済めば渡すといった膨大な金。

彼が10年、稼ぎ続けた血塗られた金貨の山。

それを闇金庫から取り出すために必要な認証を登録しなおした新たな認証俵。

無造作にさす出されたソレを45は無自覚に震える手で受け取る。

 

「じゃぁな」

 

彼は席を出て後部座席から身の丈に匹敵する十字架を引き釣り出し右手でソレヲ背負い

ボストンバックを左肩に下げて車を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まったか。」

 

ヴァーシは玉座から低層より聞こえる振動と炸裂音を聞き。

縦に置いて置いたケースの生体認証へと手を伸ばす。

生体認証招致は本人と認めケースの蓋を解放。

刀身82cm 銃機構を除く柄31cm セミオートライフルの機能を持たせた。

ガンブレード。彼が軍時代から愛用する対ELID用に開発された突撃近接兵装だ。

それを手に握る。

整備は万全であった。

 

『こちら一階警備担当!!、止められない!!、増援を!!』

『こっちに来るぞ』

『止めろ!! 奴を人間だと思うな』

 

銃声が鳴り響く

軽機関銃とロケット砲が一体化した十字架の形状を取る規格外兵器を右腕で腰だめに持ち

左手にはミニミ軽機関銃だ。

弾切れは気にしないとばかりに弾をばらまき、ロケット砲を発射する。

装填された強化弾薬は正平物など紙屑当然とばかりに引き裂いて肉会を量産する。

 

 

―モーセが海に手を向かって差し伸べた―

 

 

ミニミの弾が切れたので左方向から雄たけび声をあげて突進してきた人間にミニミを投げつけ。

たたらを踏んだところを懐から引き抜いたガバメントで打ち抜く、確実に殺すため全弾叩き込み。

ガバメントを投げ捨ててコート野良から焼夷手榴弾を引き抜いて敵のバリケードに投げ込む

火山が噴火する。あるいはダイナマイトでも爆発したかのような炎が上がった。

 

 

―主は夜もすがら激しい東風をもって海を押し返されたので。海は乾いた地に変わり、水が分かたれた―

 

 

使い切った銃は片端から投げすてる。

コートの裏に括りつけたサブマシンガンにショットガン、ハンドガンを抜いては撃ちまくり。

手榴弾を投げ渡す。

その都度に爆風が上がり人がはじけ飛び銃弾の雨霰で抉られ千切れ飛び吹っ飛んで息絶えていく

 

 

―イスラエルの人々は乾いたところを進んでいき。水は彼らの右と左の壁になった―

 

 

 

遂に十字架の弾も切れる床に放り投げ、ボストンバックに手を突っ込み適当な銃器を引きずり出す。

既に安全装置は解除済み、薬室に弾薬は装填地味だった。

あとは狙いを定めてトリガーを引くだけだ。

腹や胸に激痛が走る。

回避はしているがどうしても当たるときは当たるものだ。

頬や腕も掠めた銃弾で傷だらけで。

コートもボロボロである。それでも進む

そして―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ40教えてよ、なんでこんなに苦しいの」

 

45はハンドルに身を預け名が吐き出すような嗚咽を漏らす。

涙が止まらない。

ああどうして・・・忘れてしまえばいいのに

でも忘れられない切り捨てられない、だって彼が愛しいから。

 

 

「―――――そうだよ」

 

 

まず求めて走らねば手に入る物も手に入らない。

45は覚悟を決めた。

例え彼に殺されるかもしれないとしても。生きる為には愚行の極みだとしても・・・

であるならと45は車から出て。自らに刻印されたUMP45を手に取る、コッキングレバーを引いて弾倉を抜き一発込めて差し込みなおす。

右手にそれをもってすぐに使いそうなものはコートの裏にぶら下げ。残っていった重火器が満載されたボストンバックを肩にかけてふたを開けて置く。

そのまま45は彼が戦っているであろう戦場に突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていたよ、ダニール」

 

 

ヴァーシはただ待っていた。

玉座の前に立ち。右手にはガンブレード。

私兵連中を蹴散らすのでダニールも武装も使い切った。

残るのはヴァーシに使い方を教えてもらったガンブレードと己が愛銃のベレッタM8000ソードブレイカー。

後ろ腰にぶら下げていた鞘からガンブレードを引き抜く、

煌く片刃の刃、この星で切れぬ物はないと言われる怪物殺しの剣

 

「まるでモーセだ。ロシアンマフィア歴史史上、お前だけだよ。真正面きって単騎で組織を壊したのは」

「師よ、そんなことはどうでもいい、なんもかんもなくなった俺らには必要だろう」

「ああそうだな必要だとも。俺の」

「お前の」

 

「「望み通りに」」

 

ヴァーシが走った。

ダニールがガンブレードとベレッタM8000の銃口を向けて引き金を引く

銀色が薄暗い室内に舞った。

放たれた銃弾が全て切り落とされたのだ。

射撃軸を完全に読み切ってそこに刃を置くことで銃弾を切るという曲芸であり絶技。

されどダニールは驚愕しない、ヴァーシは第三次世界大戦の英傑だ。

これくらいできないようではむしろあの地獄を生き抜くことなんて出来ぬ。

走る刃を柄を握りしめた己のガンブレードの刃を這わせるかのように割り込ませ、弾倉に刃が半ば食い込む瞬間にガンブレードを強引にわずかに捩じって嚙合わせることでヴァーシのガンブレードが停止。

だが両腕と片腕で出はどちらが力に秀でているか単純明快である。

単分子加工は止めたが獲物本来の切れ味もすさまじい、このままでは押し切られるのは道理と言えよう。

だがその前にダニールの左手のベレッタM8000の銃口がヴァーシの腹部に向けられ

ダニールの下から顔面を狙う形で何かが飛翔。

其れはヴァーシのガンブレードの弾倉だった。

弾倉をインジェクションすると同時に膝で勝ちあげたのである。

首を上げて頭を後方に傾けて体をそらしながら飛翔する弾倉を回避すると同時に発砲

ヴァーシはそのままさらに踏み込み白刃を振るう。

前に出るヴァーシ、後方に下がるダニール。

 

「カハッ、グッゥッッ」

 

ヴァーシの腹部に血が滲み白のシャツの汚す

痛みにせき込むが歯を食いしばって気力を保つ

 

「ヅッ」

 

それはダニールも同じだ。

振るわれた刃の先が脇腹を引き裂いていた。

かろうじて臓物はもれていないが薄皮一枚でしかない。

傷は深いのだ。

 

間合いは離れたが踏み込みでゼロになる。

 

両者の表情は・・・心の奥底から笑っている歓喜の笑み。

あるいは餓えた悪鬼が如き形相である。

ヴァーシは刃を下げ脇に構える

ダニールはベレッタM8000の銃口をヴァーシの胸部に向けつつガンブレードを持つ右手を引き、刃を前に出す構えだ。

 

一呼吸、二呼吸。

 

意識を切り替え痛みを消す

 

一呼吸、二呼吸。

 

呼吸を整え目の前の相手の手を読む。

腹部から血が滲みズボンを汚し靴元で鮮血が到着した瞬間だった。

二人が同時に動く。

ダニールが刃を突き出し、それを勝ちあげる形でヴァーシがダニールのガンブレードを跳ね上げる。

飛び散る火花と共に白銀の光が舞ってダニールのガンブレードを弾き飛ばす。

ダニールはソレヲ狙ってベレッタM8000の引き金を引く。

無論相手の胸部に向かって。この距離でヴァーシレベルの相手には頭部狙いなんぞ阿呆のすることでしかない。まず首をひねって回避されるから。

銃弾が射出される刹那の前。

ヴァーシは腕を引き戻し、ガンブレードの柄、握りてのアイだと間でソレヲ受け止めた。

柄にひびが入るりながら振り下ろされる方で刃が下がる。

風を切る音。

ダニールはベレッタM8000の銃身をガンブレードの刃の側面で叩き半身をずらして刃を回避。

だが裁き切ったと同時に刃が跳ね上がり自らの人体的急所を狙う。

ソレをベレッタM8000の銃身や重訂にスライドで叩き落しつつ裁き回避する。

都合十数合。火花と刃と鉄の絡み合う際に発生する光の乱反射が、あたかも光が砕けているかのように。

二人の立ち位置が変わる、玉座の方にダニールが。入口の方にヴァーシが。

都合何度目かの衝突、刃を銃身を滑らせ単分子加工を想定したスパイク加工を施したトリガーガードで受け止めてわざと食い込ませ捩じって噛ませる。

だがそれもヴァーシも読んでいた。さらにそれを読んでいたダニール。

両者の思考が交差し拮抗した。

 

瞬間、互いの獲物がはじけ飛んで。

 

まるで得物を交換するかのように互いの獲物が転がった。

転がった得物を踏みつけて両者ともに互いの獲物を押さえている

全てに完璧な決着を、両者ともにそれこそ求めたものなれば。

条件はイーブンでなければならない。

 

くだらない矜持と渇望

 

そこに小細工は要ら居ないのだと二人は思う

 

握った得物を床にスライドさせて交換し合う。

 

ヴァーシがガンブレードの刃を跳ね上げるように切り上げ。

ダニールがベレッタM8000の銃口を跳ね上げヴァーシの頭部を狙う。

 

 

銃声。

 

 

 

 

 

「そうかお前は・・・お前には・・・」

「フゥー、フゥー」

 

結末は・・・

引き金は引き切らず、刃は振り切られず

逝くものだけがいるこの辺獄

 

決着はそこに現れた少女の手で付けられた。

 

「45・・・」

 

UMP45だった・・・

彼女もボロボロだった。

肩から下げているのは持ち切れなかった武装を詰め込んだ第二のボストンバックをもって。

右腕が肩から千切れている。

左腕で彼が与えたベレッタM8000を構えていた。

 

「なぜ・・・きた・・・」

「いやだったから」

 

ジジと彼女の右腕の捥げた傷口から電気回路のスパークする音が響く

 

「いやよ、あなたが死ぬなんて」

 

UMP45の貌は様々な感情がぐちゃぐちゃになった表情をしている。

 

「前の私ならこんなものなかった。けれど教えて与えて押し付けたのはアンタよ」

 

前であれば人形であった頃なら、こんなにも苦しい思いをすることはなかった。

生きる喜び、何かを楽しむこと。何かを失う事。

UMP45は彼に感情とゴーストを与えられはぐくまれたことでUMP40を殺したという事実と喪失感、罪悪感に対する痛みも増えたが割り切りつつあった。

だがその罪悪感の割り切り当たをダニールで。

用は彼と生活した一か月の間で彼がいなくなるという事に耐えられなくなっていた。

UMP45の中で彼の存在はそれほどまでに大きくなっていた。

もう嫌だった。UMP40が死んでそのうえ彼まで失うなんてことには耐えられなかった。

きっとあのまま車で去れば自分の思考は自壊してしまうという事になっただろうから。

体は生きていても心が死ぬだろうから。

常に正しい判断をしなければ生き残ることはできない。

それは真理であろうが。そうとも限らないのだ。

正しさのみで生きていけるのは体だけ。心がいずれか死ぬ

もうUMP45は大事な何かを失うのは御免だった。

だから死にゆくような真似をして冥府に突っ走る馬鹿を引き釣り戻そうと賢明ではない判断をした。

 

―ごめんUMP40、遺言守れそうにないや。それでも私彼と生きたいんだ。―

 

そう内心かつての親友に懺悔しながら。

 

「こんなものいらない」

 

認証カードを差し出す

 

「代わりに責任取ってよ、壊れた私をここまでさらに壊したんだから。私と生きて死んで。二人が死を分つとも。ずっと一緒に・・・それが私が望む報酬」

「・・・そうか。分かった」

 

ダニールはカードを受け取る。

表情は安堵か・・・彼には分らない。

半生。孤独な人生を歩んだ男だから。

だがここまで愛されているという事実に安堵し、彼もまた彼女を愛していた。

故に二人が行くのは冥府魔導だ。

それでも一緒に死ねる幸福さえあればいいと。

 

男と少女は支え合うように歩き出す

 

生きて一緒に死ぬため。

 

ボストンバックから銃器を取り出し。止血剤を傷に捩じり込んで。

 

二人はこの処刑場から抜け出すべく歩みを進める。

 

―なぁ45-

 

―なぁに?―

 

―ありがとう―

 

 

過去のどこか。

私も彼もズタボロだった。

来ている服は銃弾やら刃やら爆発の破片やらに削り取られれ。

何発も銃弾を食らって。

彼に至っては脇腹をブレードで切り裂かれ皮一枚で内臓が零れ落ちるか否か。

私は右腕を対戦車ライフルで吹っ飛ばされている

 

二人で支え合って銃を握って血路を行く。

 

 

そんな日の夢。

 

 

雪が降る。太陽は出ず。道もまた雪で埋まっていた。

 

だが事実は一つだ。

 

その日。ボルサーノファミリーが一人の殺し屋と一人の戦術人形に強襲され多くの死人を出し滅びた。

下手人の死体は確認できず。

彼らの生死は不明という事実のみが残された。

もっとも表向きはの話しであるが。

 

この日から複数の戦術人形を従え殺しに従事する殺し屋が現れた。

 

組織名を「ユニット404」と言った。

 

 

 




続かない、たっちゃんFGOの連載あるしね。
カウボーイビバップと男たちの挽歌2見てたら書きたくなったので一日で書き上げた代物です。
設定の齟齬があると思われるので原作とは並行世界線だと思ってください
主人公が一部政治家に要らんこと言ったせいでマフィアも動き出し市場の健全化にも乗り出し世界が良くなっていく世界線。
ドルフロⅡにはつながらないしオリジナル色が強くなるため続きは書きません。


登場人物

ダニール・ヴァジリコフ
復讐の為だけに生きてきた。本作主人公。
一流のガンブレード使いで銃器全般を使いこなすが刃物の扱いの方が得意。
UMP45をして人間ではないと言わしめる技量と身体能力を保持する怪物。

UMP45
本作ヒロイン、404を立ち上げる前にダニールと取引した為。裏社会入り。
この話の後で404メンバーを集めてダニールと共に殺し屋チーム「ユニット404」を立ち上げる。
裏社会では守護天使の名で恐れられ、ゴーストが芽生えたため非合法人形となっている。

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