ユメミグサロンパ   作:24社長

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chapter2『奇怪的ファウル 廻る螺子は何を想う』
日常①


気が付けば膝をついていた。

 

はたりはたりと垂れる汗すら歪んで見える。

 

グラグラ、ユラユラ

不安定な視界に酔いゆっくりと目を瞑れば、

 

………………。

 

 

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「どうだろうか!」

 

 

講堂へと皆を呼び出した奉憧くんは、元から置かれていた真っ白のホワイトボードに「運動会!」と黒いペンで大きく書き出した。

 

 

「う〜ん?どしたの急に、運動会やりたいってことぉ?」

 

「ああそうだともユキくん!僕含め、最近活発的に動くことが減っただろう?」

 

「だから運動会か。体を動かすのに最適なイベントではある、でもなぁ…」

 

 

それだけの気力が俺達に残されているか分からない、と流星くんは申し訳なさそうに目を伏せる。

 

仲間思い、友達思いな奉憧くんのことだ。

きっとすごく考えて考えて考え抜いて、いくつかの候補の中から最適解とした答えが運動会だったんだろう。

 

それでも何かを楽しめるほどの余裕が無いのも確かであって、中には親しい子が…なんて子もいるわけで。

良い案だと思うにしろ、そう簡単に頷いてもいいものなのかと俺は考えてしまった。

 

そんな考えを汲み取ったのか、はたまた察したのかは分からないけれど奉憧くんは静かに笑って首を振る。

 

 

「…いや。乗り気でないのなら無理にOKしなくてもいいのだよ!他の案も考えてみるよ、気分転換は大事だから」

 

 

呼び出してすまなかった、時間を奪ってしまったねと謝りながら彼は「次の案」を見つけようと顎に手を当て、真剣な表情に。

 

刹那、えーっ!と間延びしたようなおっとりとした声が上がる。ユキちゃんだ。

 

 

「運動会やめちゃうのぉ!?」

 

 

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「あ…お、俺も。いいと思ったけど、お前のその提案」

 

 

言葉につんのめりながらも、まどかくんも肯定の意を示す。

宇流賀ユキと同意見だなんて!と小声で喜ぶまどかくんが視界の端に見えて思わず口を締めてしまう。

 

そっか、彼は芸能人が好きだから。

 

 

「運動着なんてのはあるのかしら…此処って」

 

「やるとしたら体育館になりそうだね♪」

 

「その辺も併せてモノクロックちゃんに聞いてみましょうか!」

 

 

続けざまに、オレーシャちゃんと未依葉くん、そして飛鳥ちゃんも案外肯定的な考えを見せてくる。

それを受け、当初は乗り気で無かったり、反対するように彼を見ていた子達もゆっくりと「良いかもしれない」と頷くように。

 

奉憧くんはとても、とても、嬉しそうに笑っていた。

 

 

____

 

 

…日陰に入ってひとやすみ。

 

どこからともなく現れた、毎度の如く神出鬼没なモノクロックさんがそれはそれはとても素敵な舞台を用意してくれた。

 

気が緩めば、「外に出られた」と勘違いしてしまいそうなほど、精巧に外の風景を模した箱庭。

照りつけるライトは太陽のようにギラギラと輝き、人工芝も人工土も本物のような見た目と手触り。

 

いろいろあった。たくさん笑った。

 

例えば、

 

 

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パン食い競走でオレーシャちゃんが立ち止まってもぐもぐとパンを食べようとしていたり、

 

玉入れで琉霞くんが度々向こうチームの色の玉を間違えて自チームのカゴへと投げていたり、

 

飴玉探しでえがきちゃんが口元粉だらけの場面をユキちゃんに見られてしまって恥ずかしがっていたり、

 

…くす、と思い出し笑いをしてしまう。

 

口元の緩まっただらしのない顔を見られないようにとタオルを顔に押し付けていると、遠くから拡声器越しに聞こえてきたモノクロックさんのアナウンス。

 

 

「最後の競技は徒競走!オマエラ、好きな子にアピール出来るようにきちんと準備しておくこと!」

 

「やっと最後かよ……くそ、何で俺が…」

 

 

鬼コーチも涙を流すほど鬼だったモノクロックさんをじとりと見る蒼太郎くん。彼はほとんどの競技に出されていた気がする。ぺたんとした髪が肌に張り付き、ほんの少しだけ幼くなったよう。

 

水飲み場へと向かう琉霞くんとあるむちゃんを横目で見ながら、適当な木の根元に寄りかかって座る。

目的地が同じだから一緒に向かうことにしたのかな、なんてことも考えてみたり。

 

 

「ふう…流石に少し疲れました……」

 

「最後の競技には出場なさるのですか?」

 

「いいえ。…ラピスは出場するのでしょう?私、応援してますわ!」

 

 

今日もあの二人は仲睦まじい。

日が昇り影の入ったベンチに座り、穏やかに会話を広げている。

 

俺達にとっては着慣れたジャージでも、お姫様とその執事にとっては目を見張るものらしく、撫でたり引っ張ったりしてキャッキャと何かを語っていた。

彼女達の方がよっぽど良い素材の服着てそうだけど…。

 

 

「かなくん」

 

『ん、あ、グレちゃん』

 

「随分お疲れなのね、差し入れ食べられるかしら?」

 

 

手にははちみつレモン。

部活みたいだ、なんて内心少しだけはしゃいでしまう。

差し入れにはちみつレモン、ふふ、舞台裏の楽屋で貰ったりもしてたなぁ…

 

 

「オレーシャちゃんとえがきちゃんにも手伝ってもらったの。あの子たちも配り歩いてる頃じゃないかしら、本当はもっと早くに渡すつもりだったのだけれど」

 

『あはは、休憩時間って本当すぐに過ぎるよね』

 

「そうね…あっという間だわ」

 

 

ありがとう、と受け取って早速ひとつつまんでみる。

 

はちみつの甘さとレモンの酸味が絶妙なバランスで絡み合っていてとても美味しい、かつ、味が濃すぎず薄すぎずで食べやすい。

 

 

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元々疲労回復効果があるとは聞いていただけに、これは中々…うん、心做しか元気になった。

 

 

「そろそろ始めるってさ、向こうの…人たくさんいるとこに来てくれる?」

 

『分かった。そっか、麻堂くんが最後の競技の点呼係なんだね』

 

「そ。ミスしたら何されるか分からないし、こうしてリスト見ながら声掛けてんの」

 

『あはは…まあ、ありがとね!グレちゃんもまた後で、はちみつレモン美味しかったよ!』

 

「徒競走頑張ってね、かなくん」

 

「僕も次行かなきゃなぁ。あーあ、勝手に集まってくれれば楽なのに…」

 

 

集合場所に着き、案内された位置へと立つと横には既に美織くんとラピスくんが立っていた。

ぽっかりと空いた俺の隣を見るに、まだ全員が揃ったわけではないみたい。

 

 

「あとひとり?」

 

「多分。…あでも、もうすぐじゃないかな、ほら、歌方の隣に向かってきてるみたいだから」

 

 

美織くんの指差す方向には、相変わらずマスクを身に付けている琴梨くんが。

 

 

「あ…っ、お、俺、遅れ…っ?ご、ごめんなさい…!」

 

「いいえ大丈夫ですよ、集合時間は過ぎていませんので。ね、一条様」

 

「それじゃあ一番の人は走る用意してくださあい!」

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